まりなさんから逃亡し、息を切らしながらロビーに到着する。
カウンターの前に集合していた、Roseliaの面々が目を丸くして、こちらを見ている。
皆、衣装から私服に着替えて、とっても若者って感じだ。
若いっていいなぁ素晴らしい、誰かさんとは大違いだよ。
「ごめんねー、若くなくってさ・・・。後でゆっくりお話ししようねぇ」
後ろから右肩をがしっとつかまれる、怖い許してください。
「みんなごめんね遅くなっちゃって、彼が今日のPAを務めた高橋君です!」
「ちゃんと自己紹介するのは初めてですね。PAやってます高橋です、いつもありがとうございます。今日もいいステージでした」
精一杯の笑顔で賛辞を伝えると「ありがとうございます!」と大きな声で返事が。
みんなしっかりしてるなぁ。
感心していると、銀髪の娘が一歩前に出てくる。
「今日はありがとうございました。PAの担当が貴方のときは安心してプレイに集中できるから助かっています」
「え、えっと恐縮です?あとタメ口で大丈夫ですよ、気楽にして下さい」
女子高生に褒められた。素直に嬉しい。
「そう、なら遠慮なく。あなたを呼び出して貰った理由なのだけれど、今日のライブの感想を聞かせて欲しいの。PAというバンドの音が一番良く聴こえる場所から見た私たちのパフォーマンスはどうだったかを」
「いやぁ相変わらず凄かったよ、何回かPAをやらせて貰ってるけど、高校生離れしてるっていうか・・・」
こういう批評みたいなことは、あんまりやらないから緊張するなぁ・・・。
どうにか上手い言葉を捻り出そうと四苦八苦していると、翠髪の娘が凛とした声で言う。
「お褒め頂きありがとうございます。ですが出来れば改善点などを指摘して頂けると助かります。私たちは頂点を目指すバンドとして弱点をひとつ残らず潰したいんです」
他のメンバーも真剣な表情でこくりと頷く。
マジか、そういう感じか・・・。
「まりなさんから貴方が過去に、バンドでベースを弾いていたと聞きました。良かったらプレイヤーとしての意見も頂けると助かります」
まりなさんの方をちらりと睨む。
このおしゃべりババア、どうしていらないことをペラペラ喋っちゃうんだ。
あ、目が怖くなった。
「ベース弾いてたって言っても、アマチュアレベルだから大したことは言えないと思うんだけど・・・」
「それでも大丈夫です!アタシ、人からベースを習ったこととかないから、直した方が良いこととかあったら教えてほしいなーって!」
ベースの少し派手目な服装の娘が、苦笑しつつそう言った。
「俺、あんまり言葉選ぶの上手くないから、キツイこと言っちゃうかもだけど大丈夫?」
今後も顔を合わせることがあるわけだから、泣かれたりしたら気まずいなんてもんじゃない。
「は、はいっ、よ、よろしく、お願いしますっ」
「あこも、お願いします!」
気弱そうな黒髪のキーボードの娘も、ドラムの幼げな紫髪の娘も意思のこもった瞳でこちらを見る。
・・・どうにも逃げられそうにない。覚悟を決めよう。
「うんわかった、じゃあテーブルに着こうか長くなるかもだし。みんな時間は大丈夫?」
「はい!よろしくおねがいします!」
メンバーの声が揃う。
良いバンドだなぁ、みんなが前を向いていて、羨ましくなってくる。
視界の端に、妙に温かい笑みを浮かべてこちらを見るまりなさんが映ってなんだか無性に悔しい気持ちになった。