to be with...   作:ペンギン13

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I Don't Know

「あこ達とも仲良くしましょう!」

 

CiRCLEで労働に勤しむ俺の元に訪れたのは、中学3年生にしては幼い印象が強いあこちゃんと、少し離れた所で顔を青くして佇む白金さんだった。

スタジオが利用中で手の空いてるうちにやってしまおうと、カウンター内の作業台にはメンテナンス待ちのリサのベースが載っている。

 

「あ!リサ姉のベースだ!修理ですか?」

 

「修理っていうか、メンテナンスっていうか、まぁそんな感じ」

 

「いいなーリサ姉。仲良くなったら、あこのスネアもメンテナンスしてくれますか!?」

 

「出来る範囲でなら。ていうか、別に仲良くなくてもそのくらいするよ?」

 

「うわーん!あこたちとはやっぱり仲良くないんだー!」

 

りんりーん!、と白金さんに抱き着く姿は、普段なら何かと俺に当たりが厳しい人が多いRoseliaの中で数少ない癒しの光景なのだが、現状ではどう反応するのが正解なのか見当もつかない。

あこちゃんを傷つけられたと思ったのだろう、白金さんが怯えを押し殺してこちらにキツい視線を送ってくるのが、精神に非常に応える。

 

「どうしたのー?なんだか賑やかだね?」

 

「あ、まりなさん、すみません騒がしくしちゃって」

 

「・・・高橋君、ついにあこちゃんになにかした?警察、呼んだ方がいい?」

 

「ちょっと待って。ついにってなんですか?」

 

ここまでの経緯と身の潔白とを、まりなさんに説明すると、ケラケラ笑われた。

こっちは必死だというのに。

この類の冤罪は男性側が圧倒的に不利なのだ。洒落にならない、人生が終わる。

 

「高橋君が我慢できなくなってついに、あこちゃんに手を出したのかと思ったよ」

 

「俺のことをなんだと思っているんですか・・・」

 

「ロリコン?」

 

「なぜ」

 

男性のベーシストは、他のパートの人に比べて変態扱いされやすい傾向があるように思えてならない。

歴史を振り返ると確実にギタリストの方が狂った人種が多いのに、この風評はどこからきたというのか。

心当たりがありすぎる・・・。

 

「冗談はさて置き、あこちゃん達と話があるなら、今スタジオを使ってる娘たちが終わるまでの30分くらい、外に出ててもいいよ?」

 

「いや、でも作業が残ってますから・・・」

 

「・・・陽さんは、あこ達と話すはイヤなんですか?」

 

「あこちゃん、何か飲みたい?白金さんもご馳走するよ。まりなさんよろしくお願いします」

 

「やっぱりロリコンなんじゃないの・・・?」

 

後ろから何か視線のようなものを感じると思ったら、作業台に出しっ放しのリサのベースが、赤く鈍く光を反射させていた。

へー?アタシをほったらかしにするんだ?

持ち主の声が聞こえた気がして背筋が冷える。その声から逃げるように外へと向かった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「あこちゃんはどれにする?白金さんも遠慮しなくていいからね?」

 

「あこは、ホットココアがいいです!」

 

「す、すみません・・・私は、ホットミルクを、お、お願いします・・・」

 

「わかった。持って行くから先にテーブルで待っててくれる?」

 

元気なあこちゃんに手を引かれて、テーブルへと向かう白金さんを見送る。

・・・マズい、ハタから見る分には天使な2人だけれど、いざ話すとなると間が持つ気がしない。

会話を回してくれる、リサの存在がこれほどまでに恋しくなるとは思わなかった。

 

「すいません、ココアとミルクとコーヒー、全部ホットでお願いします」

 

「かしこまりました。・・・高橋さんって最近、来るたびに違う女の子連れてません?」

 

「事実ですけど、その言い方はなんか違いませんか?」

 

「リサちゃんに告げ口しちゃっていいですか?」

 

「やめて。いつから仲良くなったんですか・・・」

 

最近、どんどん職場周辺での肩身が狭くなっていってる気がする。

特にリサに関しては外堀をじわじわと埋められていってるような感覚にとらわれる。

注文した品を受け取るだけで随分と疲弊した。

あこちゃんたちが談笑するテーブルへと向かう。

 

「お待たせ、席ありがとう」

 

「こ、こちらこそ・・・ご馳走して頂き、ありがとうございます・・・」

「陽さんありがとー!りんりん、リラックスリラックス!あこたちも陽さんと仲良くするんだから!」

 

「そのことだけど、どういう経緯でそうなったの?別に険悪な仲ってわけじゃないと思ってるんだけど」

 

確かにこの2人とは、リサ達ほど話すわけではないけれどそれは、ライブハウスのスタッフと演者の距離感としては間違っていないと思う。

スタッフとのコミュニケーションなんて、お互いに挨拶をしっかりするくらいで十分だ。

 

「でもでも、リサ姉とはすっごく仲良しじゃないですか?」

 

「リサはほら、弟子だから。」

 

「で、弟子・・・カッコイイッ!我も魔王たる其方の、えっと・・・其方の、」

 

「あこちゃんあこちゃん・・・」

 

「うん、うん・・・。我も魔王たる其方の軍門に降り闇の眷属となろうぞ!」

 

「誰が魔王だ」

 

「かっこいいよ・・・あこちゃん・・・」

 

かつてない混沌っぷりに目眩がしてくる。

彼女達とはどう接するのが正解なのかがまるで見えてこない。

それと、たまに見せるこのコンビ芸のようなものは、なんなのだろう・・・。

 

「弟子の件はちょっとデリケートな問題だから置いておいて。白金さんはどうなの?あんまり男の人が得意そうじゃないし、無理に親しくしなくてもライブとかのサポートはしっかりやるから大丈夫だよ?」

 

「はいはーい!あこ、その白金さんっていうのは良くないと思います!他のみんなは名前で呼んでるのに、りんりんだけ仲間外れでかわいそう!」

 

「・・・って、あこちゃんは言ってるけど、白金さんはどう?」

 

「な、名前で呼んで頂いても・・・かまいませんよ・・・?」

 

「・・・あ、あー、ごめん仕事の電話だ。少し外すね、すぐ戻るから」

 

背中越しにあこちゃんが不満そうな声を上げるのが聞こえた、それに構わず彼女達に声が届かないであろう位置まで、早足で歩く。

昨日の今日でこの状況はかなりマズい。昨日リサの対して言った言葉が全て空虚なものへと変わってしまう。

 

この距離なら大丈夫だろう・・・。

2人の興味がこちらに向いていないことを確認し、ポケットからスマホを取り出す。

着信があった形跡はない。2人には申し訳ないが、先程のは抜け出すための嘘だ。

ロックを解除すると、アドレス帳から目的の名前を探し出し、素早く発信をタップする。

 

「ーー陽さん?どしたの?」

 

電話をかけた先は今頃、部活動で汗を流しているであろうリサだった。

 




前話、冒頭での盛大な誤字、申し訳ございません、
冒頭でやらかすわけがないという慢心が、どこかにありました。
恥ずかしい気持ちでいっぱいです。

過去にも多々誤字があり、その度に誤字報告を頂けて感謝しております。
気を付けて参りますが、また盛大にやらかすこともあるかと思います。
生温かい目で見守って頂けると幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。
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