to be with...   作:ペンギン13

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恐怖のレストラン

皿に山盛りになったフライドポテトを1本引き抜いて口に運ぶ。軽やかな食感とジャンクな塩気に、つい2本3本と手が伸びてしまう。

夕食時のファミレスはそれなりに混雑していて、人の話声や食器の音で騒がしい。

口にまとわりつく油気をドリンクバーのコーラで流し込む。

 

「陽さんはどーして、リサ姉の師匠になったの?」

 

スタジオでの濃密な時間を過ごした後、あこちゃんと燐子に連れられてファミレスへとやってきた。

このファミレスにはRoseliaの打ち上げやミーティングで頻繁に訪れているらしく、ここに連れてきて貰えたことが、ふたりとの距離が縮まった証のように思えて、無性に嬉しかった。

 

「リサにお願いされてかな。きっかけは俺の失言からだったけど」

 

「あのときは驚きました・・・」

 

まだ2ヶ月も経っていないのに随分昔のことに思えてしまうが、あのときの凍りついた空気とみんなの唖然とした表情は今でも忘れられない。

しかしあの失言が無ければ今のこの状況は存在していないのだと考えると、人生というのは本当にわからないものだ。

 

「いいなーリサ姉、あこも弟子やりたい!あこも弟子にしてよー!」

 

「その話題はデリケートなんだって・・・。ていうか、あこちゃんはドラマーなんだからドラムの先生に学ばないと」

 

「でもでも、たまに陽さんがくれるアドバイスって毎回当たってるもん。ドラムの師匠も出来ちゃうって!」

 

「技術的なアドバイスじゃないから出来てるんだって。実際に叩いて見せたり出来ないんだから、師匠は無理」

 

それなりに長く音楽に携わっているから、音の良し悪しだったり、リズムのズレを指摘することは出来るが、ベース以外の楽器で技術的な指導をすることはとてもじゃないが出来ない。

ドラムは色々な楽器の中でも特に基礎が重要になってくる楽器だ。しかも間違ったフォームでプレイを続けると私生活に支障をきたすレベルのケガを負うことだってある。

技術的にも、身体的にもこれからが伸び盛りのあこちゃんには、学ぶならしっかりとドラムを修めた先生が必要だ。

 

「うー、やりたいなー弟子・・・。あっ、師匠やってくれるなら、リサ姉の水着の写真あげるよ!」

 

「・・・話を聞こうか」

 

「あ、あこちゃんダメだよ、怒られちゃうよ・・・」

 

慌てる燐子の声に「ちょっとくらい大丈夫だって!」と能天気な返事を返すと、あこちゃんは刺々しいデザインのケースに守られたスマホを取り出し、慣れた手つきで操作する。

あわあわと慌てる燐子と、鼻歌混じりにスマホをいじるあこちゃんの姿に心が和む。

水着の写真といっても、そう大したものじゃないだろう。学校の授業の水着姿かもしれない。

 

「ほらコレ!リサ姉かわいいいでしょ!」

 

「・・・」

 

対面から差し出されたスマホの画面には、なるほど確かに水着姿のリサがいた。

身にまとっているのはオレンジと白を基調にしたビキニタイプの水着で凝ったデザインをしており、リサの白い肌に大変に映えている。

胸元に飾られたフリルや、スラリと伸びた綺麗な脚、装飾品の数々がリサの魅力をこれでもかと倍増させており、想像以上の破壊力にちょっと言葉が出てこない。

俺の無言をどう受け取ったのか、あこちゃんは画面をスクロールして次々と写真を見せてくれる。

 

水滴を滴らせるリサ、かき氷を頬張るリサ、遊び疲れたのかシートの上で寝そべるリサ。

自分の知らないリサの魅力的な姿に頭がクラクラしてくる。

所々に見切れる、健康的に日焼けしたあこちゃんの姿が微笑ましい。

 

ーー次の瞬間、暴力的な何かが目に飛び込んだ。

 

「あ、あこちゃん、そ、それはダメ!」

 

「えー、りんりんかわいいから大丈夫だって!」

 

対面の座っているはずのふたりの声が遠く聞こえる。

スマホの画面には、フリルやリボンがあしらわれた少し幼いデザインの、黒いワンピースタイプの水着をまとう燐子が映し出されていた。

リサやあこちゃんのビキニタイプの水着に比べると、露出は確実に抑えられているのだが、そのせいで視線はある一点へと集中してしまう。

 

凄いとは思っていたが、その、これは本当に凄い・・・。

目の前に座る燐子が、布面積の多い清楚さに満ちた服をきている分、写真とのギャップが背徳感を誘い、見てはいけないものを見てしまったような気持ちだ。

・・・もちろん、目は離さないけれど。

 

「陽さんもりんりんの水着かわいいと思うよね!」

 

「よ、陽さん、見ないで、下さい・・・」

 

「あこちゃん、いくら欲しい?」

 

「陽さん!?」

 

燐子が聞いたこともないような大声を上げる。

もちろん冗談なのだが、燐子の反応が思っていた以上に面白かったので、悪ノリして本当にポケットから財布を取り出し

 

「楽しそうだねー、陽さん?」

 

その手を見慣れた白い手にガッシリと掴まれた。

地獄の釜の底から這い上がってくるようなドスの効いた声は、俺のよく知っているものとはだいぶ違うが、しかしそれは間違いなく彼女の声で

 

「ふたりと仲良くなれたみたいで安心したよ。思ってたのとちょーっと違うけど?」

 

「・・・リサ、なんでここにいる」

 

振り返った先には見たこともない壮絶な笑顔を浮かべた、制服姿のリサが立っていた。

 




Twitterの方で教えて頂いて気づいたのですが、日間ランキングで19位に入っていました・・・。
いまいち仕組みがわかっていないのですが、身に余る光栄なのだと認識しております。
この作品を読んで頂いている皆々様と、登場人物の皆のおかげです、ありがとうございます。
またそろそろ投稿を初めてひと月程になりますが、お気に入りが600件を、感想が50件を、評価が40件を超えておりました。
沢山の評価に戦々恐々としております。本当にいつもいつもありがとうございます。

今後なのですが、こういったお礼を活動報告の方で述べさせて頂こうかなと思っております。
ハーメルンさんでの作法的にどうなのかという不安はございますが、お話を読んで頂いた後にお茶を濁してしまっているような気がしてしまいまして・・・。
まだ何かと不慣れな私ですが、このお話ともども、どうかどうかよろしくお願い致します。
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