to be with...   作:ペンギン13

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Sexy Girls

「うわ、シャツ凄いことになってるね」

 

「すみません、お見苦しいものを・・・」

 

リビングに入ると、リサのお母さんがソファに座ってテレビを見ていた。

ついさっきまでの出来事とのギャップに現実か疑いたくなるが、ぐしゃぐしゃになったシャツの胸元の冷たさがこれは現実だと教えてくれる。

テーブルの上にはラップのかけられた皿が並んでいて、とっくに夕飯の準備は出来ていたようだ。

 

「リサはどうしたの?」

 

「寝ちゃいました。疲れてたみたいだから起こしづらくて」

 

泣き疲れて俺の上でそのまま寝てしまったリサをベッドに運ぶのは、中々に骨が折れた。

持ち上げた瞬間、ホックが外されていたスカートがずり落ちそうになったり、大きく開かれたYシャツの胸元が目に毒だったりで本当に、本当に骨が折れた。

 

「そっかー・・・泣き疲れちゃったか。寝込みを襲わなくても良かった?邪魔しないのに」

 

「娘の貞操をもっと大切にしてやってくださいよ・・・」

 

何が嬉しいのか柔らく微笑んで、とんでもないことを口にする。

むしろ襲われかけたとはリサのためにも口が裂けても言えない。

 

「冗談よ!ご飯食べましょう?おばさんお腹すいちゃった」

 

「・・・すいません、頂きます」

 

「そこは、ありがとうでいいの」と笑われてしまう。

ソファから立ち上がったお母さんは、皿にかけられたラップを手際よく外し、冷蔵庫から取り出した麦茶を透明なコップに注ぐ。

ラップの下に隠れていたのは餃子とチャーハンだった。この間ご馳走になったときも中華だった気がする。

どうしていいかわからず、立ち尽くしていると呆れたように笑って「ほら座って」と言われてしまった。

以前に座った席に腰掛ける。隣にリサがいないのが凄く違和感。

 

「簡単なものでごめんね?それじゃ頂きます!」

 

「い、いえ。頂きます!」

 

現金なもので、いざ食べ物を目にすると腹を空かせていたことを思い出した。

餃子に箸を伸ばす。酢醤油を少し付けて口に運んでみると、歯ごたえのある食感と、肉厚な皮に驚く。中から染み出す肉汁の風味が鼻に抜ける。

 

「これ手作りですか?」

 

「うん、作り置きしてたやつだけど。口に合わなかった?」

 

「まさか、美味しすぎてびっくりしました」

 

冷凍食品やスーパーの総菜の薄くて水っぽいそれとは全くの別物で、行儀が悪いとはわかっていながらも、つい箸が伸びてしまう。

チャーハンも米の一粒一粒がぱらぱらに分かれていて、自分がつくる死にかけのアメーバのようなチャーハンとは似ても似つかないものだ。

空腹も相まってあっという間に平らげてしまった。

 

「やっぱり男の子の食べっぷりは良いね。料理の作り甲斐があるよ」

 

「す、すみません、がっついちゃって。本当に美味しいです」

 

「このくらいならリサも作れちゃうから、また派遣してあげる」

 

「・・・その節はお世話になりました」

 

色々とあって失念していたけれど、そういえばリサを家に泊めてから、リサとの関係性が大きく変わってからお母さんに会うのは今日が初めてだった。

能天気な顔で餃子を口に運ぶお母さんの姿に、急に居心地の悪さを感じて、ごまかすようにコップを傾ける。

 

「リサとはもうした?」

 

「何をとは聞きませんからね」

 

変な所に入りかけた麦茶を無理やり飲み下す。

そうだこの人はこういう人だった。

勘弁してほしい、心臓に悪いなんてもんじゃない。

 

「ごめんごめん!でも付き合い始めたんでしょう?」

 

「・・・はい。すみません、ちゃんとご挨拶に伺うつもりだったんですけど」

 

「そんな堅苦しくしなくていいのに」

 

「いや、リサさんは高校生なわけですし、その辺りはきちんとしないと」

 

親からの反対や通報があれば俺とリサの関係はその瞬間、破綻してしまう。

 

「陽くんならリサのこと大切にしてくれるって信じてるから。あの子があんなに人に甘えるの初めて見たもん。本当に陽くんに心を許してるんだなって、ちょっと感動しちゃった」

 

「何かを見てきたような口ぶりですね・・・」

 

「リサ、家だと陽くんのことばっかり話すのよ?それに泣き声が聞こえてきたから」

 

いったいリサがお母さんに何を話しているのか、ちょっと怖くて聞けない。

 

「年の差についても私は気にならないかな。私とパパよりも全然だし」

 

「え、そうなんですか?」

 

「そうそう!それに私、結構若いころにリサのこと産んだから、年齢に関してはパパはなにも言えないと思うよ」

 

それは良い知らせなのだろうか?わからないけれど少し驚いた。

確かにリサのお母さんは、高校生の娘を持つ母親にしては若く見えすぎる。

いま何歳なんだろう・・・。

興味はあるけれど、知ってはいけないことのような気がして、その問いは呑み込む。

 

「だから私は反対しないから安心してね?パパも私が大丈夫って言えば認めてくれるだろうから」

 

あぁ、夫婦の上下関係が見えてしまった。

俺とリサの将来の姿に見えてしまうのは、さすがに気が早すぎるだろうか。

 

「孫の顔、楽しみにしてるからね?」

 

「だからまだ高校生ですよ?あなたの娘」

 

リサそっくりの表情でからかわれて、いっぱいいっぱいだ。

満足げに笑う顔まで似ている。

まだ会ったことのないリサのお父さんとはもしかしたら仲良くなれるかもしれない。

そんな根拠のない自信が湧いてきた。

会話がひと段落したところで、麦茶に手を伸ばす。

人がそれを口に含んだところで、階段の方から何かが転がり落ちる様に駆け下りる音が鳴り響いた。

今度はさすがに咽てしまい、何事かと音のした方へ目を向けると、リビングのドアが勢いよく開かれた。

 

「ママ!陽さんもう帰っちゃった!?」

 

「・・・リサ、あんたなんて格好してるの」

 

起き抜けでボサボサの髪の毛も、涙で崩れたのメイクも、真っ赤な目もこの際良しとしよう。

Yシャツの胸元が開きすぎていることにも目をつぶる。

なんで、なんでスカートを履いてないんだ・・・。

 

「あれ、陽くんがやったの?」

 

「そんな度胸無いですって・・・」

 

慌ててリビングにやってきたリサはYシャツ1枚に靴下という、そういうのが好きな人にとってはたまらないであろう姿で登場した。

シャツの裾から思い切り見えてしまっている黒い下着から目を逸らす。

 

「あ、陽さん。・・・良かった、まだ帰ってなかったんだ」

 

「ご飯、ご馳走になってた。リサ、自分の格好見て」

 

俺の言葉にリサは、ホッとした表情の上に疑問符を浮かべ、自らの体を見下ろす。

途端に顔を真っ赤に染めると、リビングの扉を乱暴に閉めて出て行ってしまった。

階段を駆け上がる音が聞こえて、まるで先程の早戻しだ。

 

「リサのパンツが見られてラッキー?」

 

「勘弁して下さいよ・・・」

 

泣き顔に、乱れた服装がやたらと煽情的だった、脳に鮮明に焼き付いて離れない。しばらくリサを見るたびに思い出してしまいそうだ。

カラカラと笑う声を落ち着けると、リサのお母さんは少し真剣な、でも柔らかい表情を浮かべる。

 

「色々と迷惑をかけちゃうかもだけど、リサのことよろしくね?」

 

「・・・もちろんです。ありがとうございます」

 

リサとの関係を認めてもらえた安堵とともに、責任という名の重圧が背中にのしかかるのを感じた。

今までリサには沢山助けられてきた。今度は俺が助ける番だ。

なんとなくだけど方法は見えた。きっとうまくいく、きっと。

熱くなってきた頭を冷やすため、少しだけ残った麦茶を一気に飲み干す。

階段の方から控えめな足音が聞こえた。リサのお母さんが鼻歌混じりに俺の隣に並べられた皿からラップを外し始める。

その表情がリサに似てとても柔らかかったのが、やけに印象に残った。

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