新・東方閉心録   作:リアス

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前話での地獄というのは比喩ではないです。


第1話 夢の中で

「……それでですね、小町はいつもサボってばっかりで……。いえ、やる時はやるんですが、やる気がなくて……」

「はあ……」

 

僕の名前は水瀬陽太(みなせ ようた)。

歳は最近十六になったばかりの高校一年生である。

僕はいつも通り学校が終わって家に帰ってきて、夕食やお風呂を済ませて眠りについたはずなのだが……。

 

「確かに現世の魂が地獄に迷い込むなんて滅多にないことですが、それでも貴方が迷い込んだことに気づかないばかりか、私の所に来るまで何の対処もしないなんて、情けないと思いませんか?」

「いや、僕には死神のことはよく分からないんですけど……」

「ああ、そうでしたね。すみません、こんな話に付き合わせてしまって」

 

今の状況について説明すると、さっきも言った通り、僕は普通に寝床についたはずだった。

だが気づくと見たことのない空間にいて、僕は困惑した。

普通に考えたら夢を見ているのだろうが、意識はハッキリしていて、今日一日の学校での出来事を鮮明に思い出せたため、もしかしたら夢ではないかもしれない、と少し怯えていたら、目の前に緑髪の少女が現れて、僕に謝罪してきた。

 

彼女の名は四季映姫。

驚くことに、彼女は自分のことを閻魔だと名乗った。

そして、ここは一応地獄なんだとか。

突拍子もない話で、普通ならそんな話を信じはしないだろうが、なぜか僕は彼女が嘘を言ってはいないと確信していた。

 

彼女の話によると、僕は今幽体離脱をしていて、魂だけが地獄に来ている状態らしい。

普通は肉体的に死んだ後に来るのだが、なぜか僕はまだ死んでないのに地獄に来てしまったらしい。

肉体は健康そのものなので、今は夢を見ているのと同じ状態らしく、命の心配はいらないようだが……。

 

かなり珍しい事例なので理由は分からないが、彼女は僕が迷い込んだのが自分の不手際だと思っているらしく、何度も僕に謝ってきた。

僕は閻魔様とはいえ、見知らぬ女の子に何度も謝罪をさせている状況に居た堪れなくなり、なんとか話題を変えようとしていたら、いつの間にか彼女の愚痴を聞かされていたのである。

 

「私に隠れて飲酒したり、現世に遊びに言ったりするんですよ? その分私の負担が増えるというのに……。一々説教をしなくてはならない私の気持ちも考えてほしいものです」

「ず、随分とアグレッシブな人(?)なんですね……」

 

話をしてみて分かったが、四季さんは普段から相当ストレスを溜め込んでいるみたいだ。

どうやら、僕(無関係の人間)との会話で、それが少し爆発してしまったらしい。

それにしても、まさか閻魔様と夢の中で会話しているなんて……。

あまりにも現実性がなく、これが夢なのではないかとさえ思えてくる(実際夢みたいなものなのだが)。

 

「そういえば水瀬さんって、人間にしては珍しく能力を持っていますね」

「能力?」

 

突然、四季さんからよく分からないことを言われた。

能力……?って何のことだろうか?

 

「おや、ご存知でなかったのですか? 貴方には“感情を読み取る程度の能力”が備わっているようですが」

「え……感情を……読み取る?」

 

それなら心当たりがある。

いや、ありすぎる。

ある日突然、僕は他人の感情に敏感に反応するようになってしまい、性格が変わってしまったのだから。

 

「どうやら、後天的に覚醒した能力のようですね。何が原因で覚醒したのかは分かりませんが……」

 

……確かに少し違和感はあった。

自分が他の人とは違うような感覚を感じることが、何度かあった。

でもまさか、そんな異能力的なものが原因だとは思わなかった。

 

「しかしこの能力、普通の人間が持っていると辛くはありませんか? 他者の感情を必要以上に感じ取ってしまうなんて、心が疲れるでしょう」

「いえ、それ程では……」

 

四季さんの言う通り、最初は確かに辛かった。

でも、周囲の人から一歩離れて生活をするようになってからは、以前ほどではないが楽しい生活を送ることができるようになっていた。

 

「……水瀬さん。貴方はもう少し、自分の気持ちに正直になった方がいいですよ?」

「……? 僕の気持ちって……?」

 

僕はその生活になんの不満も抱いていなかったから、四季さんが言った言葉の意味がよく分からなかった。

 

「……とにかく、何かあったら私のところに来なさい。少しは力になれるかもしれません」

「えっ……いや、気持ちは嬉しいんですが、四季さんの邪魔になるんじゃ……」

「私のせいで、水瀬さんを危険な目に合わせていたかもしれないのです。相談に乗るくらいなら、問題ありませんよ」

「……ありがとうございます」

 

僕はまだ、自分の能力についてよく分かってなかったが、四季さんが本当に心配してくれていることは分かったので、素直に礼を言った。

 

……そういえば、この場所にはどうすれば来られるんだろう?

普通は死ななきゃ来られないらしいけど……。

 

「さて、そろそろ現世では日が昇る頃ですし、水瀬さんの魂を身体に戻しますよ? 準備はよろしいですか?」

「あっはい、大丈夫です」

 

……もしかして、四季さんって天然?

 

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