とあるレベリング代行者のSAO   作:アルファささみ

8 / 12
すっかり遅くなってしまった…
もしこの作品を楽しみにしているファンの方がいらっしゃったら申し訳ない
短いですがどうぞ


攻略会議の始まり

Side-Kirito

 

デスゲーム開始から、およそ一ヶ月が経過した。

 

 

現在の生存者数はアルゴの調べによれば8216人。たった一ヶ月で、およそ2000人ものプレイヤーが命を落としたことになる。

 

 

だというのに攻略最前線は第一層から動いておらず、誰もがこの状況に絶望している頃合いだろう。

 

 

しかし今日、この膠着状況に新たな動きがあるはずだ。もうすぐ『フロアボス攻略会議』が開かれようとしているのだ。

 

 

SAOにおけるフロアボスは、各層の迷宮区の最上階のボス部屋に居座るその階層で最強の戦闘力を誇るモンスターだ。他のモンスターと違い、名前に定冠詞の’the’がつくことや体格や攻撃力、体力やギミックの種類がこれまで戦ってきたモンスターと比べ物にならない大きさ、多さになっている。

 

 

しかし、こいつを倒さない限りはボス部屋後方の階段から初めて行くことのできる『次の層』へ向かうことができない。だからこそプレイヤーは協力して倒そうとするわけだ。

 

 

そのための会議がこの『攻略会議』。どんなプレイヤーがボス戦に参加する意志があるか確認し、タンクやアタッカーなんかの役割分担をしたり、統率するプレイヤーを決めたり、ボスの動きを確認したり。まあやることは様々だ。

 

 

元から攻略に参加予定だった俺、ユズキ、アオイは連れ立ってここまでやってきたわけだが。

 

 

「……」

 

 

さっきから目の前に座ってなんかヤバそうなオーラを出しているこのプレイヤーは、どうすればいいんだろうか。出会いはほんの数時間前なのだが。

 

 

名前も知らないそのプレイヤーは、フーデッドケープを被り顔がよく見えない。さっき出会ったときにわかったことだが、女性だった。

 

 

持っている武器は、店売りの《アイアン・レイピア》。細剣カテゴリの武器で、今俺が使っている《アニール・ブレード》に比べれば性能は低め。

 

 

しかし彼女は、俺が知る中でもトップクラスの戦闘力を持っている。

 

 

そもそも俺達が彼女と出会ったのは、薄暗い迷宮区の中。今日の午前中分の攻略を終えて帰ろうとしていたときに見つけたプレイヤーだ。

 

 

彼女の操る細剣カテゴリのソードスキル《リニアー》は、システムアシストだけでは到底出せないようなスピードと破壊力を生み出していて、ソードスキルのライトエフェクトが闇の中に輝くその様は、さながら流星のようだった。

 

 

しかし、敵をある程度倒した後に彼女は失神したようにその場に倒れてしまった。見捨てるのも忍びないと思った俺達は、俺が持っていた一人用の寝袋に細心の注意を払って彼女を入れ、みんなで担いで迷宮区の外へ運び出したと、そういうわけだ。

 

 

本人はあそこで死ぬと思っていたらしく、目覚めたと同時に恨みがましい視線を向けられた。彼女にとって俺たちの行動は『余計なこと』だったようだ。

 

 

結局それらしい言い訳が思い浮かばなかった俺は、彼女の持つマップデータが目的で助けた、と実に効率主義的な言い訳でその場を乗りきった。

 

 

店売りのアイアン・レイピアを買い込み、睡眠もすべて迷宮区の安全地帯(意図的にモンスターが湧かないように設定されている地点)で済ませ、すべての剣の耐久値が尽きるまで街に帰らない、という明らかに無茶な彼女の行動の真意を訊いたところ、このように語った。

 

 

「私はこの世界に負けたくない。ずっと街に閉じ籠って死を待つくらいなら、戦って戦って戦い続けて、それで朽ち果てて死ぬ。」

 

 

そんな彼女にユズキが、ボス攻略会議に参加することを提案。今に至ると、まあそういうわけだ。

 

 

 

 

Side-Yuzuki

 

「よーし、それじゃ、ちょっと早いけど始めさせてもらいます!」

 

 

そんな声が聞こえてきたので、今現在俺達がいる円形劇場のような施設の中央、舞台とでも言うべきなのであろうところに目をやる。

 

 

そこに立っているのはいかにも、といった感じのイケメンで、第一層の時点ではかなりレア物のはずの髪染めアイテムで髪を青く染め上げている。

 

 

「俺はディアベル。職業は、気持ち的に《騎士(ナイト)》やってます!」

 

 

所々からヤジが飛ぶ。もっともそれは、彼に対して好印象なものばかりだが。

 

 

SAOには、よくあるゲームにお馴染みのジョブシステムが存在しない。故に彼の言う《騎士》はシステムに規定されていないが、腰に差した剣や動きやすくも最低限の防御力を持つ鎧といった風貌は、青い髪と相まってそれらしい雰囲気を醸し出している。

 

 

その後の彼からの説明によれば、件のボスを発見したのは彼のパーティらしい。それで一応この攻略会議を仕切ることになったんだとか。

 

 

誰もそのことには異を唱えなかったので、会議が始まるかと思った。

 

 

「ちょお待ってんか!」

 

 

そんな声が響いたのでそちらを見ると、不思議な髪型のプレイヤーが立ち上がって舞台の方へ降りていっているところだった。

 

 

もやっとボール、とでも言えばいいのだろうか。髪がいくつもの棘のように突き出している。

 

 

「騎士はん、この場で一言言わしてもらいたい」

 

 

「待つのはいいが、意見があるなら名前を名乗ってもらいたいな」

 

 

まくしたてるもやっとボールを制するディアベル。おとなしくもやっとボールの次の発言を待つ。

 

 

「ワイはキバオウいうもんや。会議の前に、一個言わしてもらいたいことがある!こん中に、今まで死んでいった1800人に、詫び入れなあかんやつがいるはずやで!」

 

 

詫び、とは、一体どういうことだろうかと考え、一つの仮説にたどり着く。言うべきかためらっていると、意外なところから助け舟が出た。

 

 

「キバオウさん、あんたが言いたいのはつまり、元ベータテスターのことかい?」

 

 

そういうのは、先程から司会を続けるディアベル。やはり俺と同じ結論だ。

 

 

「せや!1000人のクソテスター共は、このデスゲームが始まった途端、9000のビギナーを見捨ててスタートダッシュ切って、美味い狩場もボロいクエストも、全部持っていきおったんや!こん中にもいるはずやで!ビギナー見捨てて行ったくせにのうのうとボス戦に参加してレアドロップや経験値もらったろう考えとる、薄汚いテスターがな!そいつらにこの場で詫び入れさせて、溜め込んだアイテムとコル吐き出させな、そんな奴らに背中は預けられんし預かりとうない!」

 

 

会場がざわつく。確かに、傍から見ればそのとおり、テスターはビギナーを見捨てている。だが、それはものの捉え方の差だ。

 

この場で意見するには、自分の肩書はちょうどいい。この雰囲気を鎮め、攻略会議に戻るためにも俺はおもむろに立ち上がってこう言い放った。

 

 

「俺はユズキ。ベータテスターの残骸だ。少しばかり話をしても構わないか?」




攻略会議自体は次回か、もしかするとその次で終わる予定です。
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