Fate/stay night BS×BS   作:征嵐

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 某菌糸類の神くらいの文章力が欲しい今日このごろ。

 さぁ、呪文を唱える準備はいいな?

 さぁリピート。「深く考えてはいけない。そういうもんだ。」


1,邂逅

 その少年は、体内に無数の剣を宿していた。

 

 その少年は、体が剣で出来ていた。

 

 前者は正確ではなく、後者はただの直喩だ。だが、その微妙と言えば微妙で、奇妙と言えば奇妙な"縁"は、今まさにその一生を終えようとして、それでも「運命」に抗う少年を救うのに十分な働きをした。

 

 「助けて貰ったんだ。助けて貰ったからには、簡単には死ねない。俺は生きて、義務を果たさなければいけないのに、死んでは義務が果たせない···!!」

 

 薄暗い土蔵の中、文面だけ見れば命乞いにも取れる、しかし、声色からは圧倒的な怒りと戦意が迸る言葉が投げつけられる。言葉を吐いたのは赤髪の少年。投げ掛けられたのは、深紅の槍を持つ青髪の男。少年の胸元は血で染まり、尻餅をついている。男は慣れた手つきで槍を構え、その心臓を目掛けて突き立てる。回避も防御も不可能。少年に許されたのは、ただ吐いた言葉の続きを口にすることだけ。

 

 「こんなところで意味もなく、平気で人を殺す、お前みたいな奴にッ──!!」

 

 絶叫する。少年が、土蔵の空気が、土蔵の中に満ちる魔力(マナ)が、世界が、一斉に叫び声を上げる。

 

 「七人目のサーヴァントだとッ!?」

 

 男は驚愕の声を上げ、槍を素早く攻撃から防御へと引き戻す。火花を散らし、自分から飛んで勢いを殺した青髪の男が、開けっ放しの土蔵の扉から中庭へと吹き飛ばされる。

 

 「えーっと、お前が俺のマスターなんだよな?」

 「───!!」

 

 座り込んだままの少年が、自分を救った者を見つめる。

 

 自分よりも少しだけ黒の入った赤っぽい髪に、白いTシャツと黒い半ズボンを纏った少年。自分と同年代か少し年下と思しき容貌。その辺りを歩いていても、季節柄「寒くないのかな、あの服装」と言われるだけで済みそうな様相だが、しかし。その右手には、腹に大きな赤い宝石の埋め込まれた、分岐した刃を持つ禍々しくも美しい、彼の身長を超える大剣を携えていた。

 

 「···だな、うん。サーヴァント、セイバー。召喚に応じ現界した。マスター、指示を。」

 「マスター、って···痛ッ!?」

 

 セイバーと名乗った少年は、座ったままの少年の左手を一瞥すると、土蔵の外へ向き直った。

 

 「契約はちゃんと成立してるな。ヨシ···いや、良くないな。なんだコレ···魔力が全然来ない···。」

 

 ぶつくさ言いながら、セイバーは土蔵からゆったりとした足取りで歩み出る。青髪の槍兵から見れば良い的だろうが、彼も彼で、律儀に中庭で待っていた。

 

 「お待たせ、ランサー。」

 「遅い現界だな、セイバー。」

 「あぁ、俺が七番目──ラストなんだっけ。情報どうも。」

 

 ランサーは顔を歪める。情報を渡してしまったことに起因する歪みではなく、むしろ、その顔は笑みの形に歪んでいた。どうでもいい情報ということもあるが、主たる理由は違う。彼の槍兵の実戦で培われた観察眼が、目前の"敵"に対して、全力で「戦闘回避」を叫んでいるからだ。どのような敵に際しても逃げず、どのような苦境でも、その最期でも折れなかった心が、恐怖しかけていた。それでも、絶対に折れない心が折られかけても完全に恐慌に陥らなかったのが、彼の槍兵の英雄としての格であると言えよう。

 

 「テメェ、どこの英雄だ。」

 「はぁ? 名を聞くならお前がまず名乗れよ。」

 

 ──沈黙。

 

 定番と言えば定番の返しだが、流石にこの空気の中では相応しくない答えだった。

 

 「コホン。で、ランサー。どうする?」

 「どうする? とは、また随分な質問じゃねぇか。俺が退くって言やぁ、お前は後ろからバッサリ行くだろうが。」

 「ソンナコトネェヨ? ···じゃあ、どうするんだ?」

 

 愉快そうな笑いの絶えないランサーに対して、セイバーは真逆で同じ表情を、つまり、酷薄な笑いを浮かべて言う。

 

 ざりっ、と、ランサーの足が砂を踏みしめ──駆ける。地面を陥没()()()、全ての力を推進力にして槍兵は身体を、そして槍を使う。初撃──いや、初撃は先の土蔵でのセイバーの一閃か。二撃目にして決定的な一撃となり得る鋭い刺突は、セイバーの大剣によって弾き落とされた。

 

 圧倒的な運動量によって動かされた穂先は、そのまま地面に埋まる──かに思えたが、そこはランサーとて熟練の戦士。槍が単一の生物であるかのように動き、刃がセイバーの首元へと走る。槍とは違い、降り下ろした大剣はそう易々とは引き戻せない。

 

 「ッ···と!!」

 

 結果、セイバーは致命の一撃を避ける為、大剣を手放して十歩分ほどを一足に跳躍する羽目になった。

 

 空中では姿勢の制御はほぼ不可能。その上武器もない。大きすぎる隙は、当然のようにランサーに攻撃のチャンスを与えた。

 

 「──!!」

 

 短く、鋭い呼吸。先に十歩分を跳躍していたセイバーに、ランサーは空中で追い付き、その槍を振るう。

 

 「ぐッ!?」

 

 ()()()()()()()、セイバーがさらに吹き飛ぶ。ランサーはその場に留まり、小さく後ろを振り向いた。

 

 「()()()()()。シンプルだが使い勝手のいい武器だよなぁ。」

 「あぁ、そうだな···。」

 

 吹き飛ばされた先で、セイバーが回避の為に置き去った筈の大剣を構えていた。

 

 「今ので大体の実力は把握出来た。どうだ? まだ初日だしよぉ、ここらで一旦終わらねぇか?」

 「そっちが優勢なのにか? はっ、怪し過ぎるね──ッ!!」

 

 今度はセイバーから距離を詰める。足を止めての斬り合いではなく、相手を吹き飛ばし、追撃して吹き飛ばし、さらに追撃する。そういう戦闘スタイルこそが、大剣を持ちながらも機敏に動けるセイバーに合っている。

 

 「ちィ──流石に重いな。」

 

 深紅の槍を撓ませながらも、ランサーは退くことなく大剣を受け止めた。そのまま槍を軸に回転し、セイバーの腹を蹴り飛ばす。またもや大剣を手放したセイバーは、両腕を交差させて防御し、さらに自分でも後方に跳躍して威力を殺す。

 

 「なーにが"重い"だよ。事も無げに受けといて。」

 

 セイバーが、やはり手中に戻っていた大剣を構える。対するランサーは、深紅の槍の柄を両手を離して持ち、その穂先を下げるという独特の構えを取っていた。

 

 「あの構えは···!!」

 

 土蔵の出口で観戦していた赤髪の少年が呟く。その声はセイバーにもランサーにも届いた、が、双方ともそれに答える事はない。

 

 「テメェ、さっきから手ェ抜いてやがるが···こいつは、本気出さねぇと防げねぇぞ!!」

 

 ランサーが吠える。赤髪の少年は瞠目し、セイバーは嗤う。

 

 (本気じゃない!? あれでか!?)

 「本気出したら怒られちゃうだろ? 偉いヤツにさぁ!!」

 「刺し穿つ(ゲ イ)──」

 「···あ、ヤバ。」

 

 セイバーの口から、この場にいる誰からも「は? なんて?」と言われること請け合いの言葉が漏れた。よく見れば、額には冷や汗の一筋が流れていたりする。赤髪の少年は慌てて飛び出し、槍兵は構わず槍へ魔力を流す。

 

 「──死棘の槍(ボ ル ク)!!」

 

 槍の一撃が神速で繰り出される。セイバーは、いつの間に持ち変えたのか、防御に適した幅広の大剣ではなく、鍔に兎の意匠の施された白銀の長剣を翳していた。

 

 「ッッ···!!」

 

 金属音を鳴らし、剣と槍が交差する。心臓へと駆けていた穂先は、そのままセイバーの左肩を掠め、その白いシャツを裂きながらも一滴の血も滴らせることなく通過し、蛇のような生物的な動きでランサーの手中へと戻った。

 

 「フゥ──」

 

 セイバーが長剣を持った右手を下げて手を開き、剣を落とす。白銀の長剣は地面に落ちる寸前で掻き消え、セイバーの手中には先程の大剣が握られていた。

 

 「テメェも二刀使いか。まさか、砕けど砕けど次から次へ出てきたりしねぇよな?」

 

 一刺必殺の魔槍を放ち、しかしその命を刈り獲れなかったランサーが、穂先を上に立てて言う。既に戦意はなく、先程の触れずとも切れそうな殺気も霧散している。

 

 「二刀? あぁ、まぁ、そうだな?」

 「なんで疑問系なんだよ···。あー、クソ。どうやらテメェとは相性が良くないらしい。」

 「絶対に相手を殺す──『殺してから』槍を放つ因果操作の呪槍、ゲイ·ボルク。アルスターの大英雄にそこまで言われるとは光栄だ。」

 「真名もバレたし、宝具も通じねぇ。これで不利なのはこっちになった訳だが···どうだ、セイバー。まだ終わりにする気はねぇか?」

 

 セイバーが口角を上げる。大剣の切っ先をランサーへと突き付け、一言。

 

 「良いぜ、行け。──()()()()()()()()()()()()?」

 「はっ、バレてたか。悪いな、セイバー。今度こそ本気で殺し合おうや。」

 

 セリフの内容に反して、快活で明るい声色。長年の友人のように言葉を交わし、ランサーは塀を飛び越えて走り去った。

 

 

 

 「お、おい。えっと──」

 「マスター···うわ、しっくり来ないな。お前、名前は?」

 「え? えっと、衛宮士郎。」

 「オーケー、士郎。連戦だ。まだ隠れてろ。」

 「え? あ、おい!!」

 

 セイバーは日本屋敷の広い中庭を突っ切り、門から道へと飛び出す。士郎もその後を追うが、速さが段違いだった。士郎が門から出るまでには、既に数合、剣戟の音が鳴り響いていた。

 

 

 「はァッ!!」

 「シッ──!!」 

 

 セイバーが道へと躍り出た瞬間、目に入ったのは赤い外套を纏った色黒で白髪の男と、やはり赤い服を纏った、黒髪をツーサイドアップに結った、整った顔立ちの少女。赤い外套の男は、両手にそれぞれ色の違う短剣を持っていた。即座に敵と判じて大剣を振るってみれば、左手の黒剣がそれをいなし、右手の白剣が翻った赤い外套を背景に首を断ちに来る。

 

 (うわー、殺しに来てるなぁ。)

 

 先のランサーとは違う、本気の殺意に当てられたセイバーが苦笑する。首を目掛けた殺意を後退してやり過ごすと、セイバーの目の端に士郎が映った。士郎は敵のサーヴァントを一瞥し、そのまま敵マスターへと視線を移し──硬直した。

 

 (知り合いか? だけど···。)

 

 これは「戦争」だ。敵が知り合いだからと言って、手は抜けない。この町に集まった七人の有資格者(マスター)が全七騎の超越存在、「英霊」を使い魔(サーヴァント)へと貶めて使役し、命を賭けて万能の願望器(し ょ う ひ ん)を勝ち取る、『聖杯戦争』なのだから。

 

 

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