Fate/stay night BS×BS   作:征嵐

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 感想を糧に生きています。

 今回はちょっと詠唱ポイントがある。


4,セイバーとの会話

 side 士郎

 

 

 ──夢を見た。

 

 無数の剣が生い茂る、不毛の丘。世にあっては名剣、宝剣と謳われるであろう数々の剣が、無限に──いや、"無限"などこの世には存在しない。だが、数えることができない程に膨大ならば、それは無限であることと、尽きないことと遜色ないのではなかろうか。

 

 無数の鉄。無限の剣。無彊の鋼。それらは悉くが()()()()()()()

 

 剣は、死んでいた。無機物である剣が死ぬとはどういうことか。剣のもつ切れ味や殺傷力を落とすために刃をなくすことを「刃を殺す」というが、そういうことか? 

 

 否。

 

 剣が錆び朽ちたか?

 

 否。

 

 曲がり折れ、実用に堪えないか?

 

 どれも、否。

 

 武器が武器足り得なくなる条件など一つだけ。()()使()()()()()()()()

 

 担い手を失った。愛用者が絶えた。使用者が消えた。ただそれだけの理由で、この剣たちは、この剣の丘(はかば)に眠っているのだ。

 

 それが、どうしようもなく寂しく感じた。

 

 

 

 ──世界が切り替わる。

 

 いや、本当に切り替わったのだろうか。目に映るのは、やはり無数に突き立つ、武器。先ほどと違うのは、槍や斧といった剣以外の武器まであることか。それに、砂漠のように乾ききっていた大地は潤い、鮮やかな芝生に包まれている。

 

 先ほどの世界も、かつてはこうあったのかと錯覚させるほどに似通った世界。ただ絶対的な差異がある。この丘の剣は、まだ()()()()()

 

 主に仕えている。使用者を守護している。敵を殺している。武器として「生きている」。

 

  (あれは···?)

 

 剣の丘の遥か頂上に、ひとつの人影を見た。目を凝らすより早く、一陣の風が吹く。世界そのものの魔力が大きく動いて発生したその風は、豊かな芝生を微かに揺らす程度の勢いにしかならない。しかし、端くれとはいえ魔術師である士郎にとって、それは木々すら薙ぎ倒す暴風に他ならない。目を閉じ、体を縮めて遣り過ごす。

 

 「ふぅ···。···っ!?」

 

 数秒もの間吹き続けた暴風が漸く止み、目を開けると、またしても世界は一変していた。

 

 「人···!?」

 

 違う。そう本能が叫んでいる。だが、目に映るのは、確かに両足で緑の大地を踏みしめる、視界を覆うほどの少女たちだった。

 

 「え、あ···」

 

 たった二つしか使えない魔術のうちの一つ、強化の魔術を使う過程で磨かれた「解析」の目が、明確に「これは人ではない」と告げている。

 

 かつての記憶が、「敵対したら今度こそ死ぬ」と叫んでいる。

 

 だが。十数年しか使っていないが、十数年の間使い続けて来た、器官としての目と脳は、「常識」を以て、目の前のヒトガタたちを「人間である」と認識していた。

 

 「あ、れ···?」

 

 分からない。理解できない。否。理解してはならないのか。そういうモノも混じっているようだ。

 

 「えぇ。それで正解よ、マスターのマスター。私たちを理解できるのは、()だけだもの。」

 

 正面から掛けられた声。いつか聞いた綺麗な声に導かれて、丘を少し上る。

 

 「止まりなさい。ここは、貴方が来て良い場所ではないわ。」

 

 そう言って、十数歩先に佇む銀髪の少女は、ドレスを翻して周囲を指す。

 

 「なっ!?」

 

 周りに居るのは、悉くが美人·美少女だった。男であれば「ここで死んでもいい」とすら思えるほどの楽園だが、しかし。彼女たちは思い思いの武器を携え、目の前のたった一人を除いて全員が、俺のことを睨んでいた。

 

 「そうか、おまえは、いや、おまえ達は···ここは···」

 「あら。存外、頭の回転が早いのね。えぇ、そうよ。私たちは()武器(モノ)。そして、ここは──」

 

 

 

 

 ──目が覚めた。

 

 一番に目に入ったのは。

 

 「うわっ!? ととと、遠坂!? なんでここに!?」

 「おはよう、衛宮くん。取り敢えず落ち着いて?」

 

 遠坂の黒い瞳だった。慌てふためく俺の様子が可笑しかったのか、少しだけ笑いを溢す。遠坂はそのまま立ち上がり──あれ?

 

 「遠坂、どこに行くんだ?」

 

 遠坂は、既に外套を隙無く纏っていた。俺にでも分かるほどの外行きの格好で、なんだって俺の部屋に?

 

 「どこって、自分の家に帰るのよ。今日は休日だけど、家でやることも沢山あるしね。」

 「あ、そ、そうか···。」

 「じゃあね、衛宮くん。分かっていると思うけど···次に会ったときは敵同士だから。」

 

 ほんの僅か、胸が詰まる。遠坂と敵対するのは今でも嫌だ。けれど。

 

 「あぁ。俺だってマスターとして参加するって決めたんだ。敵になるなら、全力で遠坂と戦う。」

 「···そう。」

 

 遠坂は短い返事を残し、お邪魔しました、と、律儀に腰を折ってから出ていった。···それを言うために俺の部屋に来たのだろうか。

 

 「···そうだ、セイバー。」

 

 体を起こし、服を着替える。この無駄に広い屋敷のどこかに居るはずの、俺の相棒を探すために。

 

 

 side out 

 

 

 

 「あ、おはほうしほう。」

 

 士郎が子供の頃に「自称保護者」と隠れんぼをする過程で編み出した、屋敷の中を効率よく歩くルート。その中でもそれなりに早い段階で覗いた居間で、「あ、おはよう士郎。」と、そう聞こえないこともない挨拶で、セイバーは士郎を出迎えた。

 

 「お、おはようセイバー。傷はもう大丈夫···そう···だな。」

 

 士郎は頬を引き攣らせている。それもその筈だ。セイバーが座った座布団の周囲には、食卓から溢れ返った食材の山が築かれていた。いや、雪崩れていた。

 

 「な、何、してるんだ?」

 「なにって、もぐもぐ、そりゃ、はむはむ、食事だよもぐ。」

 「いや、でもセイバー、それ···。」

 

 セイバーが食べているのは、()()だった。調理どころか調味すらされていない。生の野菜と、生の肉。調味料や薬味には手を付けていない。

 

 「あーーーーー!?」

 

 冷蔵庫を開け、続いて流し台の下、食材の詰まっていた棚と、順番に見た士郎が絶叫する。

 

 「もぐもぐ···士郎、うるさい。食事くらい静かにさせてくれ。」

 「言ってる場合か、セイバー!! 向こう一週間分の食材、全部食べちゃったのか!?」

 「はむはむ···いや、まぁ、戦闘さえしなけりゃ確かに一週間ぐらいは保つ量だったけど。」

 「とりあえず、食べるのストップ···。と、いうかセイバーってサーヴァント···使い魔の一種なんだろ? なんで食事が必要なんだ?」

 

 使い魔は、使役者の魔力を動力源とする。卵にすらなれていないへっぽこ魔術師の士郎にも、そのくらいの知識はあった。

 

 「そういうセリフは、ちゃんと魔力を供給してから言ってくれませんかねぇ···。」

 

 いくらか険を持ったセイバーの声に、士郎が僅かに気後れする。その隙を衝いて、セイバーは。

 

 「ぱくぱくもぐもぐもぐ···ごくっ。」

 「あ、こら、セイバー!!」

 

 雪崩を悉く消し去ってみせた。

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 「で、どこから話そうか。」

 「初めから頼む。あと、コレが終わったらセイバーも一緒に買い出し。···そういえば、セイバー(剣士)っていうのは、本名じゃないよな?」

 「あぁ。それは、クラス名だな。俺たちサーヴァントは、過去の英霊──って言って分かるか?」

 

 英霊。過去に存在した、いわゆる"偉人"。知性か、力か、或いはカリスマ性か、勇敢さか、はたまた強運か。その要素の如何を問わず、人類の最高峰とされる者たち。伝説であり、伝記となって然るべき、伝奇小説じみた人間を、なんなら人間以外までもを、「聖杯」は時間を遡って現代に喚び覚ます。

 

 ただし、如何に聖杯が万能とは言えど、7人もの伝説を──七柱と数えられてもおかしくないほどの存在を、そのまま呼び出すのは無理がある。無理ではないが、負荷が大きい。故に、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、そしてバーサーカーの7クラスという「枠」に当て嵌めて召喚するのだ。当然ながら、その「枠」は"人間スケール"であり、神々のような「大きすぎる」存在は入らない。

 

 そも、神の子の血を受けた杯の模倣品である「聖杯(笑)」なんぞを、ワザワザ神々が欲しがるとは思えないが。

 

 その「枠」の定める条件は曖昧だが、大まかに言えば、剣が得意な英霊ならセイバーになるし、魔術が得意な英霊ならキャスターになる。

 

 「やっぱり、その"セイバー"ってのは、本名じゃないんだな。じゃ、なんで本名を隠してるんだ?」

 「そりゃ、名前を明かすことは、弱点を明かす事に繋がるからな。」

 

 首を傾げた士郎に、セイバーが苦い微笑を浮かべる。

 

 「じゃあ士郎。お前の目の前に、どんな攻撃をしても傷つかないサーヴァントがいる。どうする?」

 「え? そりゃ···戦わなくても済む方法を探す、とか。」

 「そう。敵わない相手なら、戦闘を避けるしかない。逃げるか、或いはマスターから先に殺すか。じゃあ、そいつが「アキレウス」って名前を名乗ったとしたら?」

 「ギリシャ神話のアキレウスか? だったら···あ。」

 「そういうこと。」

 

 名前が分かれば、英霊──つまるところ死人である、それも有名な死人であるサーヴァントは、歴史書を紐解くだけで弱点が露見してしまう。かの有名なアキレウスやジークフリートであれば、調べるまでもなく知っている者も居るだろう。それを避ける為の、クラス名。

 

 「名前がバレて困るのは防御面だけじゃない。攻撃する場合でもだ。···士郎、俺たちサーヴァントには、大体一人一個、「切り札」がある。宝具って言うんだが。」

 「宝具···。アーサー王の、エクスカリバーみたいな感じか?」

 「そう。···まぁ、かの聖剣なら、名前が分かった所でどうしようもないけどな。」

 

 星の聖剣ほど極端な代物なら関係ないだろうが、例えば、「半径5メートル以内を致死性の毒ガスで満たす」という宝具だとしたら、防毒面を着けるなり、そもそもレンジに入らないなどで対策され、一方的に倒されてしまうだろう。そのような事態を避ける為にも、情報はなるべく隠さなくてはいけない。

 

 「なるほど···。ところで、セイバーの真名って?」

 「俺の真名か? あー···いや、実は名前を忘れててな···。自分が何者かは分かるし、宝具も分かる。ただ、名前だけがなぁ···。」

 「そ、そうなのか?」

 「あぁ。だから、宝具と出自だけ教えておく。」

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 この世界は、一本のロープに喩えられる。幾つもの平行世界という繊維によって編まれた、一本のロープ。その細い繊維の内側からは、宝石剣(ナイフ)量子記録固定帯( ハ サ ミ )で切り開くことも、切り揃えることもできる。

 

 ──そして。そのロープから少し離れたところに、他のロープがある。全く別の文明、どころか、全く別の概念で運営されている世界が。ナイフでもメスでも届かない位置で、脈々と生きていた世界。その世界では「魔界」と呼ばれていたロープは、ほつれ、ほどけ、千切れてしまった。──セイバーは、自分の所為だと語った。淡々と。騙ったようには見えなかった。

 

 「そこで暮らしてた"魔剣使い"なんだよ。俺は。槍とか弓もあるけど···愛して···じゃない、愛用してたのが剣だったから、セイバーなのかな。」

 「じゃあ、セイバーの宝具は、やっぱりあの大剣なのか? 他にも剣を持ってたみたいだけど。」

 「ん? あぁ、ラストリゾートのことか。じゃ、宝具の方も説明しておくか。えーっと···うん。これは見せた方が早いかな。」

 

 セイバーが座布団から立ち上がる。そのまま腕を一振りすると、右手には見慣れつつある大剣が握られていた。

 

 「その大剣が宝具···って訳じゃないとすると、その剣は何かの起動キー、とか? 普通の武器じゃないよな? それ。」

 「お、鋭いな、士郎。そ、これは──」

 『マスター。悪い事は言わないから、私以外も顕現させるべきよ。』

 「え? でも、今の魔力量だとキツイんだけど···。」

 

 いきなり一人で話始めた(ように見える)セイバーに、士郎が怪訝な目を向ける。セイバーは構わず、自分にしか聞こえない声と会話する。

 

 『そこまで切羽詰まっているの?』

 「まぁ、生肉とか生の野菜とかを食べなきゃいけない程度には?」

 『···そうね。他の子には、私から言っておくわ。』

 「うん。ありがとう、グラム。」

 「そういえば、セイバー、なんで食材だけをドカ食いしてたんだ?」

 

 一段落したことを察したのか、ちょうど良いタイミングで士郎が声を掛ける。

 

 「ん? あぁ。士郎は魔術師として二流だからさ、ちゃんと魔力が来ないんだよ。だから、魔力補給のため。」

 「魔力が···そうか、すまん。セイバー。俺、そうとは知らずに···。」

 「いや、構わないよ。普通に暮らす分にはそこまで魔力も食わないし、ちゃんと飯を食ってりゃ良いんだから。期待してるぜ、士郎。」

 「あぁ、任せてくれ。戦闘では役に立たない分、こういうことで貢献しないとな。」

 「──じゃ、そろそろ宝具の説m」

 

 セイバーが再度、口を開く。が、それと同時に電話が鳴る。出鼻を挫かれた感のあるセイバーが、心なしか肩を落として士郎に「出ていいよ。」というボディランゲージをした。

 

 「あ、桜? おはよう。···え? 藤ねぇの弁当? 分かった、すぐ作って持っていく。」

 「おい、マジかよ士郎···おっけ。俺も付いていくよ。帰りに買い出しをしよう。」

 「あー···いや、そうだな。そうするか。」

 

 とまぁ、そんな理由があって、士郎は右手に弁当を持って。

 

 セイバーはその後ろを、右手を銀髪の少女と絡めて。

 

 歩いていた。目指す先は、士郎の通う穂群原学園。

 

 

 

 

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 ステータス情報が更新されました。

 

   ◆   ◆   ◆ 

 

 クラス:セイバー

 マスター:衛宮士郎

 真名:??

 性別:男

 属性:中立·中庸

 

 ステータス

 

 筋力:D

 耐久:C

 敏捷:D

 魔力:EX

 幸運:B

 宝具:??

 

 スキル

 

 単独行動:EX マスター不在でも数週間は現界可能。マスターとパスが繋がっており、この時間軸に自らを固定しておく楔として機能していれば、自分の魔力だけで宝具の真名解放すら可能である。

 

 

 

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