この空を飛びたくて(仮)   作:サクサクフェイはや幻想入り

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2018.6.8 誤字修正しました。 報告ありがとうございます


第九話 前向きに

整備棟。 ISの整備等をする建物で、いくつもの部屋があるのだが一部を除いてすべてが埋まっていた。 整備は整備課の生徒たちが主導でやるわけなのだが、何故かいっぱいだった。 一斉点検か? 本当は整備課の先輩たちの技術を見ながらやりたいところだったのだが、空いているところでやることにした。 受付の人に理由を聞いても目をそらすだけで答えてくれなかったのだが。 とりあえず整備はできるということで、移動しながら拡張領域に入っている私物を高速で入れ替える。 こういう時便利だよねIS。 使用方法絶対間違っているけど。 そんなわけで整備室に入るとそこにいたのは、険しい顔をしながらISを調整している簪さんだった。 こりゃまた偶然は重なるものだ。 とりあえず近くまで移動し、使用することを告げる

 

「簪さん」

 

「・・・・・・なに?」

 

「ちょっと隣、使わせてもらうね」

 

「・・・・・・」

 

イライラしているのか、会話が終わるとすぐに作業に戻ってしまった。 わぉ、打ち込み四つでやってるよ。 両手両足とか、すごいな。 とりあえずいつまでも見ているのは失礼だし、俺は隣でラファールリヴァイヴを展開し、整備を始める。 一応内部の問題点はリストアップしておいたので、そこから先に始める。 自前のパソコンをつないで、工具を取り出し作業を始める。 別に雑に扱っているわけじゃないのだが、いたるところに問題があった。 装甲もいくつか交換だし、俺が貸してもらう前にちゃんと整備してたのかこれ? 少し整備の雑さに怒りを覚えながら整備を進めていく。 おっと、何か聞きながらやろうかな。 適当にシャッフルでー。 曲を流しながら整備を開始する。 配線系は大丈夫っぽいが、なんでこんなところに砂が入ってるんですかねぇ...... 少し内部を掃除しつつ、問題点をつぶしていく。 パソコンを見てみると、リストアップしていた問題点は順調になくなって来ていた。 ふと視線を感じそちらを見ると

 

「・・・・・・・」

 

簪さんが驚くような顔をしてこちらを見ていた。 おや? もしかして気が散ってたかな? 

 

「あー、もしかして邪魔してた?」

 

「・・・・・・そんなことない、けど。 整備、出来たの?」

 

「ありゃ? 話してなかったっけ? 元々俺の夢はISの整備関係の仕事に就くことだよ。 さらに言えば、元々はISの操縦者になって空を自由に飛びたかったというのもあるけどね。 青い狸もとい、ネコ型ロボットが出てくるドラ〇もんじゃないけど」

 

「・・・・・・・」

 

さらに驚いた顔をする簪さんだが、何故に? そんなに珍しいかな、男で整備関係の仕事目指すの。 まぁ、他の奴らはいなかったけどさ。 その間も流れる音楽に、話すときに邪魔になるから切る。 その際音楽を切ると、簪さんは少し残念そうな顔をする

 

「と言っても、我流だから少し心配なんだけど.......」

 

「大丈夫だと思う。 たぶん、そこら辺の整備課の人よりもいいかも?」

 

頬を掻きながら言うと、意外なことを言われる。 ずっと我流で勉強してからわからなかったけど、簪さん的には良いとの事。 自分でプログラムや、整備ができる人に言われると少し自信が付く

 

「そう言われると自信が付くかなー。 そうだ、部屋に行ったらさプログラム面も見てほしいんだ。 さっきも言ったように整備関連目指してたからさ、プログラムも組んだりはしてるんだけど見せる人がいなくてさ」

 

「少しだけなら、いいよ?」

 

「マジか!ありがとう!さーて、時間も限られてるし、相棒の整備終わらせないとな!」

 

「私も、やらなきゃ。 音楽はかけっぱなしでも大丈夫、迷惑じゃないから」

 

「了解」

 

またも音楽をかけ始め、作業を再開する。 相棒を整備しながら簪さんの様子を伺うと、さっきより顔は険しくなくなっていた。 音楽のおかげでいい気分転換できたみたいだ。 簪さんを見るのをやめ、こっちの作業に集中する。 内部は終わり、後は外回りの整備だ。 と言っても、目で見て怪しそうなところがあれば軽くたたいて確認くらいだが。 そんなこんなで、整備も終わり待機状態に戻す

 

「簪さーん、俺は終わったけどどうする?」

 

「・・・・・・私も行く」

 

そう言って空中投影のウインドを閉じ、こちらに歩いてくる。 簪さんのISはそのままだが、完成してないわけだし待機状態にできないのかな? それについて特に聞くことなく、簪さんが隣に来たのを確認すると歩き始める

 

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整備棟からの帰り、食堂でご飯を食べて部屋に戻る。 食後の一杯ということで紅茶を入れて簪さんに配り、一息ついているとプログラムを見せてほしいと簪さんから言われた。 特に拒否することもなく、と言うか見てほしいくらいなので見てもらう

 

「・・・・・・」

 

真剣な表情で俺が組んだプログラムを見る簪さん。 うーむ、待っている時間は居心地が悪い。 しかも真剣な表情を崩さないから、良いのか悪いのかわからん。 そんな、よくわからん状態は数分続いたが、簪さんは目をそらした。 なに? 良いのか悪いのか、はっきりしてくれ!

 

「ど、どうなんだ?」

 

「・・・・・・すごいと思う。 独学でここまで組める人なんてそうそういないと思う」

 

「ほんとか!?」

 

「うん」

 

まさかの簪さんからのすごい発言。 これは嬉しい。 だが、簪さんの顔は暗いままだ

 

「えっと、どうかしたか?」

 

「ううん、気にしないで」

 

そう言って自分の机に戻ろうとする簪さんを俺はそのままにしちゃいけないと思った。 気が付いたら簪さんの腕を引いていた

 

「まった」

 

「なに?」

 

その目には明らかな拒絶の色が見えたが、俺はここで引き下がるわけにはいかない。 ここで引き下がったら、何故か手遅れになりそうな気がしたからだ

 

「気にしないでとか、その顔で言われても説得力ないから」

 

「貴方には関係ない」

 

「そうだな関係ない。 でも、はいそうですかって放っておけるほど俺は冷たい人でもないんだは」

 

「・・・・・・」

 

睨んでくる簪さん。 うへぇ、なんか余計なことに首を突っ込んだような気がするんだが、ここまで来たら引くに引けない

 

「布仏さん、心配してたぞ? 俺が無理してるって言ったら。 それに出会って二日だけどさ、毎日こんな具合じゃそのうち倒れるぞ?」

 

「・・・・・・・」

 

そう言うと、自分でも思うところがあるのか目をそらす簪さん。 何をここまで彼女を駆り立てるのか、俺はそれが無性に気になった

 

「なぁ、なんでこんなに無理するんだ? 専用機を早く完成させたい、それもあるんだろうが、それだけじゃないんだろ? なんか、理由があるんだろ? 話してみたら楽になると思う。 嫌なら独り言でもいいけどさ」

 

そう言って腕を離す。 簪さんはうつむいたままで表情は分からないが、立ち尽くしていた。 だがやがて、力が抜けたように自分の椅子のほうに歩く

 

「・・・・・・私にはお姉ちゃんがいるの。 一つ上で生徒会長をしてるんだけど」

 

ぽつぽつと語り始める簪さん。 簪さんの家、更識家は昔から由緒正しい家柄で、厳しかったそうだ。 その一個上のお姉さんは完璧な人で、小さい頃から比べられて育ったらしい。 だがお姉さんはそんなことを気にせず優しかったらしい。 そんなお姉さんを簪さんは好きだったらしいだが、ある日いきなり告げられたらしい。 もう何もしなくていいと。 その日から比べられることはなく、簪さん自身もその言葉かショックでだんだんと疎遠になっていったらしい。 そこにISの凍結が決定。 だが、簪さん自身はこれをチャンスだと思ったらしい。 そのお姉さんもISを一人で完成させているらしく、自分も一人で完成させ、あまつさえ勝負で勝てば姉を超えられるんじゃないだろうか、と。 話は分かった、でも

 

「簪さんがこれまでどういう思いで過ごしてきたのかはわからないけど、俺は簪さんのことすごいと思うよ?」

 

「え?」

 

「だってさ、そんな状況にもかかわらずさ、腐らなかったんだから。 俺だったら腐る自信があるね。 それにさ、君はお姉さんじゃない、それにお姉さんになろうとしなくていいんだ。 簪さんは簪さんだ。 まぁこういってもすぐに気持ちの切り替えはできないと思う。 だからさ、さっさと専用機完成させてお姉さんに挑もうよ。 そこで区切りつけて、お姉さんとの関係、蹴りつけようよ」

 

ひとしきり俺の言いたいことは言った。 簪さんを見ると泣きそうになりながら、でも顔は笑っていて

 

「うん、うん!」

 

笑顔で頷いていた

 

「ならまずは専用機、完成させないとな。 布仏さんに手伝ってもらえばいいんじゃないかな? 元々手伝う気だったんでしょ?」

 

「そう、だね。 ねぇ、蒼海君」

 

「ん?」

 

「蒼海君も手伝ってくれる?」

 

少し恥ずかしそうに、遠慮がちに聞いてくる簪さん。 もちろん俺の答えは決まっている

 

「俺でよければ、よろこんで!」

 

「うん!」

 

 

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