この空を飛びたくて(仮)   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第十話 更識簪

朝、いつもの時間通り目が覚める。 隣を見ればベッドには簪さんの姿が。 顔は穏やかだしよく眠っているようだ。 昨日の今日でここまで違いが出るとは、いやいい傾向なんだけどさ。 とりあえず、だ。 いつまでも見ているのは簪さんに悪いし、それに俺の理性が耐えられない。 今も寝ながらなんか艶やかな声が聞こえるし...... 無心で着替えて部屋を出る。 ランニングをしながら思うのだが、この学園はいろいろな意味で男にやさしくない。 体操服とかなんでブルマなんだよ、水着も旧スク水だし。 まぶしいんだよ太ももが、マニアックなんだよ衣装が。 しかもさしかもさ、同室が女子だから発散できないじゃん? 溜まる一方なんだよ!こちとら性少年なんだよ、年頃なんだよ!!だから皆さん、もうちょっと恥じらいと言うか、慎ましさを持ってください

 

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「蒼海君、早く」

 

「そんなに急がなくても大丈夫だから、ご飯も食堂も逃げないから。 時間は有限だけど」

 

「そう、時間は有限。 だから早く」

 

「聞こえていた......だと?」

 

朝の日課が終わり部屋に帰ると、少しご立腹な簪さんがいた。 昨日の夜は布仏さんを誘うところまでしか話していなかったので、そのことが話をしたかったらしい。 いや、あの、昨日も俺朝出かけてたでしょ、分かるじゃん? そんなこと本人に言えるはずもなく、平謝りしながらシャワーを軽く浴びて着替えて部屋を出る。 食堂に行く廊下を二人で並んで歩きながら、布仏さんをいつ誘うか話していた。 放課後いきなり誘うのもあれなので、朝、または昼のご飯時でもと言う話になった。 まぁ、簪さんは朝から誘う気満々なので、俺は腕を引っ張られながら食堂に向かっているところだ。 なんか視線を感じるのだが、腕を引っ張られているため確認できない。 いつもの好奇の視線ではなく、嫉妬とかそこら辺の視線なのだが。 それでもいいものではない。 食堂について目当ての着ぐるみ人を探すが、見つからない。 見つからないが、萌え袖の制服を発見!

 

「簪さん、あれ」

 

「本音!」

 

俺が指さした方向を見ると、一目散に駆け出す簪さん。 おおぅ、少し遠いがよくわかったな、俺もかろうじてだったのに。 とりあえず長くかかったら朝食を食べる時間もないので、俺は簪さんの分の食事を手にしつつ、早く来てと言わんばかりに手招きしている簪さんの方に向かう。 布仏さんはそんな簪さんの姿に目を丸くしていた。 まぁ、昨日までの態度を考えたら、俺も布仏さんみたいな反応するわ。 合流したのはいいのだが、頬を膨らました簪さんに怒られたでござる

 

「遅い」

 

「えぇ...... 理不尽だろ。 とりあえず、簪さんの分」

 

「つばっち、どういうこと?」

 

布仏さんが不思議そうな顔で聞いてくる。 まぁ、ねぇ、昨日と今日でここまで変わったのだ、不思議でも仕方がない。 だが俺はそれに答えず、簪さんを見る。 確かな意思を覗かせる瞳で頷く簪さん

 

「本音、話があるの」

 

「なに~、かんちゃん?」

 

「かんちゃんはやめてね、今は」

 

なんというか癒されたは。 簪さんを見ると、力が抜けたように布仏さんを見ていた。 だが、いい感じに力が抜けたように見えた

 

「今まで断っておいてこんなこと言うのは虫がいいと思うんだけど、お願い本音!私のIS、完成させるの手伝って!!」

 

頭を下げる簪さんに、布仏さんは

 

「簪ちゃん...... うん!うんうん!!かんちゃーん!」

 

「きゃっ!? 本音?」

 

「もちろん手伝うよ、かんちゃん!」

 

「ありがとう、本音」

 

「仲良きことは美しきことかな、てか?」

 

俺は日替わりの定食を食べ終え、静かに席を立つ。 なんというか、感動の場面で俺がいるのは場違いなような気がする。 それに、何と言うか見ていて微笑ましいしね。 まぁ、二人が嬉しそうで何よりです。 食器などを返却し、俺はゆっくりと廊下を歩く。 そういえばいつの間にか、嫉妬と言うかジェラシーと言うか、そんな感じの視線が消えていたのだが些末なことか。 少し早めに切り上げたためか、余裕を持って教室前に着いた。 扉を開け、中を入ろうとすると後ろから声をかけられた

 

「つばっち」

 

「布仏さん。 簪さんと話しついた?」

 

「うん」

 

布仏さんは嬉しそうに笑っていた。 良かったよかった

 

「それでねつばっち、ありがとう」

 

「ん? なにがさ」

 

いきなりお礼を言われて首をかしげていると、嬉しそうに説明してくれた

 

「かんちゃんの事。 かんちゃんからああやって手伝ってくれなんて、言われるなんて思ってなかったから。 かんちゃんの事、説得してくれたんでしょ?」

 

「説得ねぇ...... 別に説得なんてしてないよ? ただ、簪さんはただ区切りをつけたいだけどと思うよ?」

 

「区切り...... お嬢様とのこと?」

 

「おおぅ...... 本当にいいとこの育ちなのね、まぁいいけど。 そのお嬢様がお姉さんのことを指してるならそうなんじゃないかな?」

 

嬉しそうな表情から一転、細められた目は前に見たときのように開かれている。 真剣な話のようだ。 やはりと言うか、簪さんが思い詰めていた理由は薄々は感づいていたようだ。 まぁ、いろいろと事情があるから喋らなかったんだろうけど

 

「かんちゃん、そこまで話したんだ。 うん、でもやっぱりつばっちのおかげだと思う。 だから、ありがとう。 かんちゃん、少し吹っ切れたみたいだから」

 

「・・・・・・そっか」

 

俺の言葉でいい方向に向いたのなら、それはよかった

 

「それと、放課後はよろしくね~」

 

「そこも聞いたか。 我流だから役に立てるかわからないけど、手伝うと言った手前、やれるところまではやるさ」

 

「にひひ。 かんちゃんが絶賛してたし、期待してるよ~」

 

「わーい」

 

思わず棒読みになてしまう。 いやまぁ、整備とかはできるけど、ISの製作は初めてだ。 いくら途中まで完成しているとはいえ、俺みたいな素人に毛が生えて程度の俺が役に立つのだろうか? やばい、なんかそう考えるとおなか痛くなってきた。 今からでも断ろうか? ぶっ殺されそうな気がするけど。 内心不安に思いながら、教室を空けようと一歩前に踏み出そうとしたのだが、後ろから抵抗を感じた。 見てみると、布仏さんが裾を握っていた。 しかも珍しいことに、萌え袖から手を出していた

 

「布仏さん?」

 

「本音」

 

「ん?」

 

「本音でいいよ。 これからかんちゃんのISで一緒に作業するし、それにお姉ちゃんいるから」

 

新情報をゲットした。 お姉さんがいるらしい。 お姉さんも、布仏さんのように、いや、本音さんのようなのだろうか? まぁ、些末なことか

 

「ならよろしく、本音さん」

 

「うん!えへへ~」

 

元気よく頷いた本音さん。 いつものような笑顔ではなく、一回だけ見た無邪気な笑顔だ。 名前で呼ばれたのがそんなにうれしかったのだろうか? 俺を置いて先に教室に入る本音さん

 

「おはよ~!」

 

「おはよー。 あれ、本音なんかいつもより機嫌良いね、なにかあった?」

 

「むふふ~」

 

「というか、顔赤くない?」

 

「そんなことないよ~」

 

教室が少し騒がしい。 こんな教室に入らないとだめですか? ダメですか、そうですか...... 諦めて教室に入ると、何故か本音さんがくっついてきて黄色い歓声があったのだがなんなんだ? どっちにしろ騒がしく、その騒がしさは先生たちが入ってくるまで続いた。 なぜか俺だけ出席簿で殴られたでござる、解せぬ

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