織斑が出て行ったことで集まる視線だが、もういいです諦めました。 俺はよっぽどなことがない限りここから動かんぞー!とりあえず普通では耐えられないので、寝ようとしたのだが声をかけられた
「ねぇねぇ~、ちょっといいかなぁ~」
「はいはい、何でしょう? えっと、たしか布仏さんだったかな」
「そうだよ~」
俺の目の前で妙に間延びした声で体を揺らしている少女は、布仏本音さん。 妙に間延びした声と萌え袖と言うか、袖がかなり長いので覚えていたが、どうしたのだろうか
「それで、何か用かな?」
「さっき使った扇子、見せてほしいんだ~」
「あぁ、さっき挨拶代わりにやった扇子ね、はい」
「ありがと~」
そう言って俺から扇子を受け取り開いてみたり、裏返してみたりして調べているが何か見つかるわけがない。 まぁ、当たり前だよなー。 本当にタネも仕掛けもなく、こういっちゃなんだが女神の力でやってるわけだし。 ・・・・・・言ってて悲しくなってきたが、こんな宴会芸のようなもので神の力とは......
「本当にタネも仕掛けもないんだね~、体の方にあるとか~?」
「企業秘密」
そうして扇子を受け取り、聞いてくる布仏さんの追及をごまかす。 馬鹿正直に女神の力です、なんて言っても信じてもらえないだろうしな。 言うつもりもないが
「教えられないお詫びと言っちゃなんだけど、これを上げよう」
「飴!」
「かなり甘いよ。 いつも持ち歩いてるんだ、糖分補給にちょうどいいからね」
「甘くておいしいよ~!」
「それはよかった」
飴を食べてゆるゆるの顔になった布仏さんを見ながら、ほっこりしていると予鈴が鳴る
「飴ありがとね、つばっち!」
「つばっち?」
「あだ名!」
どうやらであって数時間であだ名がついたようだ。 翼だからつばっち。 うーん、安直。 悪い気はしないけどね。 そんなことを考えながら授業準備をしていると、織斑たちが帰ってきたようだ。 時間ギリギリまで逢瀬とは、やりますなー。 そのあとすぐに山田先生が教室に入ってきたので気持ちを切り替え、授業に臨む。 授業は山田先生の丁寧な説明とホログラムモニターのおかげで、かなりわかりやすい。 それにこんなのは基本中の基本だ、なので理解できて当然のはずなのだが...... 俺の隣の男子は挙動不審だ。 えぇ、マジですか? これ、あれじゃないか、同じ男だから面倒を見ろなんて言われたらたまったものじゃないのだが。 理解しようとするならわかるのだが、挙動不審なままノートすら取ってない。 基本がわからないのはしょうがないにしても、一応ノートだけでも取っておくと思うのだが。 ちなみに俺はこの手の基本知識は、復習がてらノートにメモを取っている。 さっきも言ったが、山田先生の説明は分かりやすいし、ちょっとしたうんちくは聞いていてためになる。 そんな織斑の様子が気になったのか、山田先生は織斑に声をかけていた
「織斑君、わからないところはありますか?」
声をかけられて肩が跳ね上がる織斑、その様子に気が付かづ山田先生は声をかけている。 私、先生ですからか、優しいな。 その様子に観念したのか織斑は挙手し
「先生...... 全然、わかりません」
と言い放つ。 すると、山田先生は目に見えてうろたえ始める
「えぇ!? 全然ですか...... 皆さん、今のところまででわからないところはありますか?」
山田先生に全員に聞くが、誰も反応しない。 まぁ、ここら辺初級も初級ですからね。 IS学園はそこら辺の高校より偏差値も高いし、このくらいは大丈夫だと思うが。 全員、返事がないのにホッとしている山田先生だが、何故か思い出したように俺のほうを向く
「ええっと、蒼海君は?」
「問題ないですよ? 山田先生の授業とってもわかりやすいですし」
「そうですか? ありがとうございます!」
そんなキラキラした目で見られても、普通の感想言っただけですよ、普通の。 それと織斑、何で裏切られたみたいな顔で見られなきゃいけないんだ。 普通にお前の勉強不足だろうが。 なんというか、本当にこの先大丈夫なのだろうか? そんな俺たちの様子を見かねたのか、教室の前方に座っていた織斑先生は立ち上がり、織斑のほうに歩いていく
「織斑、お前入学前に渡した参考書は読んだか?」
「ええーっと、あの分厚いやつですよね?」
「そうだ、必読と書いてあっただろう?」
「あー、あれですか。 間違って捨てました」
はぁ? あれだけ裏にも表にも必読と書いてあって、何故捨てれるのか。 こいつは本当に大丈夫なのだろうか?
「馬鹿者が。 蒼海、確かお前はもともと整備課志望だったよな」
「はい、そうですけど?」
「ならあの程度、問題ないだろう。 発行するまで織斑に貸してやってくれ」
「えぇー......」
この時の俺は本当に嫌な顔をしていたと思う。 いや、だって捨てたような奴になんで貸してやらなければいけないのか。 完璧に自業自得だし、確かに必要ないとはいえ、あれを見返したりすると結構得るものも多いのだ。 それをみすみす手放すのも嫌なんだが
「何もずっとじゃない、発行するまでの間だけだ、いいな?」
俺が悪いわけでもないのに睨まれる。 はぁ、たぶんここで貸さないなんて選択肢はないだろうし、俺の印象も悪くなるだろう。 俺は渋々参考書を出すと、織斑先生はそれを受け取り意外そうな顔をする。 なんだその意外そうな顔? だがすぐにいつもの表情に戻り、それを織斑に手渡した。 はぁ、本当になんでこうなった
「いいか織斑、一週間以内にそれの知識を全部詰め込め。 いいな?」
「い、一週間? そんなの無理だよ、千冬姉!?」
「織斑先生だ、このバカが。 やれ」
流石の眼光に黙る織斑。 うわー、本当に怖い。 次に俺を見てくるが、参考書貸してやったんだから頑張れよ。 俺は目をそらし、再開した授業の内容をノートに取り始める。 と言うより、織斑って学習しないな。 この前の時間に二回殴られているのに、今回も二回殴られてるし。 そんなあほなことを考えながら授業を受ける
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「一夏、大丈夫だったか?」
「いやー、ほんと千冬姉にも困ったもんだよ」
休み時間にもなり、ようやく一息ついていると、隣で篠ノ之さんと織斑が会話していた。 あー、なんだろ、すさんだ心でこの会話聞いてるのはきつい。 そもそも遠くから修羅場ってるのを見てほくそ笑むつもりなのに、隣でこういう会話されたらたまったものじゃないのだが。 なんてふうに多少行儀は悪いが、机に突っ伏していると隣が騒がしい。 横目で見ると、金髪縦ロールが織斑と話していた。 俺には関係ないと思い、机に突っ伏していたのだが
「ちょっと、貴方にも用があるんですのよ!」
「そんなヒステリックに叫ばないでくれよ...... えっと、オルコットさんだっけ?」
「ヒステリックって、言うに事欠いて!あなたも私を馬鹿にしてますの?」
「いやちょっと、本当に意味が分からないんだけど......」
大方織斑が怒らしたんだろうけど、なんで俺まで飛び火したんだ? 触らぬ神に祟りなし、のごとくかかわらなかったのに。 その織斑もポカンとした顔で見てるが、篠ノ之さんがやばいな、すごい形相でオルコットさんをにらみつけてる。 そっちでけんかになろうがどうでもいいけど、俺のほうまで飛び火は勘弁だ
「まったく、これだから男性は!」
あー、これまたわかりやすい女尊男卑ですね。 くわばらくわばら
「私のような代表候補と一緒なだけでも幸運なのに、なぜそれが分からないんですか?」
その国か、よっぽど親しい国じゃないと代表候補の名前なんか知らないと思う。 俺もIS自体に興味はあっても、操縦者まで興味があるわけじゃないし。 そんなに有名になりたいなら、国家代表になってモンドグロッソで優勝してください。 なおも、俺と織斑の目の前で高らかに演説を続けているオルコットさんの言葉を半分聞き流し、そんなことを考えていた。 なんか織斑が火に油を注いだようだが、これ俺まで飛び火するよなぁ。 織斑に迫っていたみたいだけど、篠ノ之さんに引きはがされてるし。 あ、こっち向いた
「貴方は、貴方はどうなんですの!? 貴方も教官を倒しましたの!?」
「そもそもそんな時間なかったし。 俺が操縦者選考やったのが最終日らしいし、そこから書類やら勉強やらでやってる時間なんてなかった」
「そ、そうでしたの。 まぁ、それなら仕方ありませんわね」
何とか持ち直したオルコットさんだが、正直どうでもいい。 どうやら予鈴が鳴ったらしく、織斑のほうを向いて捨て台詞を吐いていた。 よかった、これで俺には飛び火しなそうだ