2018.6.10 話数修正しました
一応簪さんには許してもらい、一難は去った。 と言うよりも、なんで俺簪さんに許してもらったんだ? よくよく考えたら、簪さんは俺が介錯に呼んだだけであって、お礼こそすれど謝る必要はないのではと思った。 いやまぁ、迷惑かけたから謝るのは当たり前なのだが、これ以上気にしてたらなんかドツボにはまりそうなのでやめる。 それよりも問題は、この空気だ
「「・・・・・・」」
簪さんがいたときは何とかなっていたが、簪さんがご飯を食べて帰ると気まずい空気だ。 あの裸エプロン来ていた時よりはだいぶ緩和されたが、それでも気まずい。 とりあえず、襲おうとしたのは事実だし謝らないとな
「「あの」」
何でかなー、こういうときって話かぶるよな。 そして、余計に気まずくなる。 だが、俺はそんなこと気にしない
「あの、楯無さん!さっきは、すみませんでした!」
「え?」
頭を下げる。 一応簪さんを緩衝材にして許してもらってはいるが、それでは俺の気が済まない。 なので頭を下げる。 なんか頭を下げてるけど、楯無さんが慌てているような気がする。 何故に? 数分頭を下げていると、ようやく楯無さんから声がかかる
「あの!頭を上げて!」
「はい」
頭を上げると、何故か泣きそうになっている楯無さん。 えっと、本当に何故に? 今のどこに泣きそうになる要素があったのか、本当にわからず内心首をかしげる
「「・・・・・・」」
そのまままた無言の時間が続く。 楯無さんは何か言おうとして顔を上げるが、言うことができないのかわからないが下げるを繰り返している。 俺も俺でどうすればいいかわからず、待っているがなかなか言葉が出てこない
「えっと、楯無さん?」
「なんで、なんで先に謝るのよ......」
「えぇー...... 理不尽」
「貴方のほうが理不尽よ!人が勇気を出して謝ろうと思ってたのに、先に謝ってきて!」
「・・・・・・」
なんというか、癇癪起こした子供みたいだなーと思った。 簪さんからも聞いてた印象と違い、何と言うか微笑ましかった。 いつもはどこか大人っぽくて、猫みたいな感じの楯無さんがこんなに素直に感情をぶつけてくるなんて。 まぁ、それが俺に対する文句じゃなきゃよかったんだけどね? 今も、だいぶ前の恨み言が炸裂してるし。 どうも感じていた嫉妬の視線、楯無さんだったようだ。 今自分で自白してる。 自分が簪さんと話したくても話せないのに、赤の他人である俺が話している。 昔のように本音さんと笑い合い、俺とも笑顔で話しているのが悔しかったらしく、それがあの視線の正体だったようだ。 他にも、俺と言う人間を知るために家の人間を動かしたとか。 ん? いやいやいや、到底流せる内容じゃない。 良いところの育ちとは聞いていたが、まさか極道系? 冷汗が垂れる。 ま、まさかね...... 他にも大証の小言を貰い、ようやく気が済んだのかマシンガンのような文句や小言は止まった
「えっと、気が済みましたか?」
「・・・・・・すんだ」
どこかすねたふうに言う楯無さんに少し笑いそうになるが、そんなことをすればまたマシンガントークは再開されるだろう。 俺は空気が読める男
「あの、ところで聞きたいことがあるんですけど」
「なになに、お姉さんのスリーサイズ?」
この言葉にはさすがに呆れてしまう
「・・・・・・あの、さっき簪さんに言われたこと忘れたんですか?」
「あっ......」
どうやら忘れていたらしい。 さっき注意された中にも、軽はずみな言動はしないというものがあったのだが。 どうやら調子に乗って忘れていたらしく、青い顔をしていた。 俺はそれにため息を吐きつつ、やんわりと注意しておく
「一応言っておきますけど、そういう言動は控えておいたほうがいいですよ? さっきの裸エプロンもそうですけど、楯無さんかわいいですし魅力的なんですから。 今はほぼ女子高みたいなものですからいいですけど、社会に出たら大変ですよ? 野郎どもは勘違いしますから。 現にさっきの俺がそうだったわけですし......」
目をそらしておく。 幻覚なんだって言って手を出そうとしたわけですからね、ハハッ。 なんか注意はしたが、反応がない。 楯無さんを見てみると、なんか顔を真っ赤にして俯いてるでござる。 あれ? なんか気に障るようなこと言ったか? はっ!? 社会に出たらッて言ったけど、家が極道ならそれを継ぐ可能性があるわけで、もしかして拘束きつい家庭なら外に出ないかもしれない。 これはやってしまったか!? なんて思っていたが、それは次の言葉で杞憂だったようだ
「・・・・・・できるだけ、気を付けます」
「え、あぁ、はい」
どうやら素直に言うことを聞いてくれるようだった。 杞憂だったのはいいが、ならなんで顔を赤くしてたんだろうか? とりあえずわからないことは置いておいて、聞きたいことを聞くことにした
「それで、さっきの話に戻るんですけど」
「えっと、はい......」
なんか楯無さんが目を合わせてくれないのだが、何故? やっぱり怒らせた? などと考えながら、続きを話すことにした
「あの、俺のことを知るために家の人間を動かしたって、どういうことですか?」
「あっ」
しまったみたいな顔したぞこの人!たぶんそのことを言うつもりはなかったんだろうけど、感情の爆発って怖いね。 ため息をついて、まぁいいかってどこか投げやりの顔になった楯無さんは自分の家の説明をし始めた
「これから話すことは他言無用でお願い」
「は、はい」
「私の実家、ううん、私と簪ちゃんの実家は代々裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部なの。 そして私はその更識家17代目の当主なの。楯無と言う名前は当主の証で、代々当主が襲名してきた名前なの」
「ということは、楯無さんは楯無と言うのが本当の名前じゃないと」
「うん、そう言うことね」
バッと扇子を広げるが、そこには何も書かれていなかった。 あら珍しい。 その話は置いておいて、いいところの育ちと言うよりやばいところの育ちだったようだ。 それで今の更識家当主は、目の前のお姉さんで。 簪さんからある程度話をぼかして聞いてたとはいえ、喧嘩の原因はなんとなくわかった。 たぶん、お姉さんは優しいから、簪さんを自分と同じ世界に引き込みたくなかったんだろう。 まぁ、言い方の問題はあると思うけど。 なんか、無事に解決してよかった気がする姉妹喧嘩。 ともかく、俺の情報を調べるのにその部下を使ったと
「私的利用もいいところじゃないですか?」
「蒼海君、知ってるかしら。 往々にして、権力とは行使するためにあるのよ」
「ウインクして言うことじゃないですからね、それ」
茶目っ気たっぷりに言うお姉さんだが、たぶん大丈夫なのだろう。 でなきゃ、たぶん今ここにはいないと思うから。 俺には組織を率いた経験はないけど、たぶん生半可なことじゃないと思うから。 さて、疑問は氷解したが、大本はまだだ。 そこを聞くことにした
「それじゃあ本命です。 何故お姉さんはこの部屋に? 山田先生からは一人部屋だといわれたんですが?」
「それも、更識としての命令もあるから、かしら」
「命令?」
対暗部組織に頼むようなことがあるのだろうか? 少し考えたがわからず、素直に聞くことにした
「どういうことでしょう?」
「貴方は二人目の男性操縦者、それは知っての通りね? でも、あなたの立場は非常に危ないわ。 さっきも言った通り、貴方のことは更識の力で調べさせてもらったけど、武道等の経験はあっても、長続きしてない。 それに、貴方には後ろ盾がない」
そこまで言われて、ようやく合点がいった。 もし仮にだが、俺が政府のもの、それとは違うものにさらわれても何も守るものがいないということだ。 織斑には
「なるほど、合点が行きました」
「理解が速くて助かるわ。 それでなんだけど、なるべく私も護衛するし、私がいない場合護衛者も出すけど」
「手っ取り早いのは、俺自身が強くなれということですね」
「イグザクトリー!」
そう言って扇子には、正解!と書かれていた。 どちらにしろ俺は弱い。 武道たしなんでいるといっても、本当にかじった程度だ。 それでは、もしもの時に危うい。 自分の立場が危ういと理解したなら、俺はそこに胡坐をかいているつもりはない
「早速明日からお願いできますか?」
「おー、やる気満々ね。 流石男の子」
「茶化さないでください」
俺が真面目にしているのが分かると、お姉さんも居ずまいを正す
「ごめんなさい」
「それで、もしできればなんですが朝からお願いできますか? 早朝走り込みしてますんで、それを早く切り上げてと言う感じで」
「私としては大丈夫よ」
なら、明日からは朝からハードになりそうだ
「ところで、俺はお姉さんをなんて呼べばいいですか?」
「? どういうこと?」
「さすがに本名は教えてもらえないわけですし、でも楯無さんて呼ぶのはそれを知ったら呼べないなーと」
「貴方、律儀なのね......」
少し苦笑するお姉さん。 律儀、なのだろうか?
「私としてはそのままでもいいんだけど」
「まぁ、それなら楯無さんてこれからも呼ばせてもらいます」
「そうして頂戴。 んー、そうだ!お姉さんに勝ったら、本名教えてあげる」
「お!ちょっとやる気出てきました!」
「ふふっ、男の子って単純ね」
そう言って笑う楯無さんは、少し楽し気だった