この空を飛びたくて(仮)   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第四十六話 保健室

保健室に着いたのはいいものの、ボーデヴィッヒさんは寝ていた。 お見舞いに来たのはいいものの、はっきり言って暇だ。 いや、そもそも目が覚めていたとしても何を話せと? 俺はボーデヴィッヒさんをとっつきでボコボコにしたわけで、被害者と加害者でどう話せと? あー、戦闘不能にするために君をとっつきでどついたんだー。 あー、そうなんですかー。 なんて、朗らかな会話になるわけがない。 織斑先生、何を考えて俺にお見舞いをしろと? 人選間違えてるし、会話にすらならないかもですよ!まぁ、そのことも考えずに、お見舞いを了承した俺も俺だが。 とっつきでどつきまわしたこと謝れればいいかなーって感じだったんだ、深く考えてなかった...... ともかく、ボーデヴィッヒさんが目を覚ますまで、適当にいるか。 そう思ってスマホを出し始めた矢先、目を覚ましたようだ

 

「んっ...... ここは?」

 

目を覚ましたボーデヴィッヒさんは起きようとしたのだろうが、体が起こせずに顔をしかめていた。 山田先生曰く、疲れて眠っていただけっぽいけど。 それとボーデヴィッヒさん、オッドアイだった。 眼帯をしていたからわからなかったが、隠していたほうはきれいな金色だった。 いつまでも黙っているわけにはいかないし、ここがどこくらいは答えてもいいかな

 

「ここは保健室。 ボーデヴィッヒさん、俺が誰だかわかる?」

 

「ん? あぁ...... 二人目か」

 

悲報、俺は名前を憶えられていなかったでござる。 そのことに少なからずショックを受けながら、話を続ける

 

「えーっと、直前までの事は覚えてる?」

 

「・・・・・・私は、負けたのか?」

 

今までの自信にあふれていたボーデヴィッヒさんは何処に行ったのか、今のボーデヴィッヒさんはどこか危ない感じがした。 ともかく、ボーデヴィッヒさんに状況説明をする。 一応、織斑先生には機密事項だが、状況の説明はしてもいいといわれている。 まぁ、本人にもかかわることだしね

 

「うん、まぁ、そうかな。 俺がボーデヴィッヒさんにとっつきでどついて、地面にたたきつけられたのは覚えてる?」

 

「あぁ......」

 

「その後ボーデヴィッヒさんは黒い泥のようなものに包まれたんだ。 織斑先生がVTシステムと言えばわかるって、言ってたけど」

 

「VTシステム...... ヴァルキリートレースシステム。 あの時、私が望んだからか。 力が欲しいと、教官のようになりたいと......」

 

それっきりボーデヴィッヒさんは喋ることなく、膝を抱えて丸まってしまう。 うん、正直言ってついていけない。 いや、あの後織斑先生から詳しい説明があったから知ってるといえば知ってるけど。 ヴァルキリートレースシステム。 ISコアを解析して分かったことだが、シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されたものは機体の損害がレベルDに達し、最大限に達したボーデヴィッヒさんの負の感情を起動キーに発動するように設定、欺瞞されていたらしい。 ちなみにISコアだが、奇跡的に無事だったらしい。 良かったよかった。 負けそうになった時に力を望むのは当然だし、織斑先生のようになりたいと思うのも間違ってないと思う。 まぁ、その者にはなれないけどね? 今回、いくらシステムや無理やり体を動かしたといっても、織斑先生の動きには程遠かった。 流石に実物を知っているせいか、剣の振り方が雑だし、何よりも動きが雑すぎる

 

「うーん、別にボーデヴィッヒさんが言ってることおかしくないと思うけど」

 

「気休めはよせ......」

 

「いや、負けそうなときに力があればとも思うし、誰かを目標にするのはいいことだと思うよ? 俺だって、師匠、山田先生を超えることが目標だし。 まぁ、今回みたいに織斑先生になるのはやりすぎだと思うけど」

 

「貴様に、貴様に何が分かる!!」

 

突如怒り出す、ボーデヴィッヒさん。 えぇ、何か気に障ること言いましたか? 普通に慰めてただけだと思うんですが? 慰めはいらないとか? なら、目の前で落ち込まないでください。 怒りのままに、ボーデヴィッヒさんは自分のことを語り始めた。 なんとボーデヴィッヒさんさん、試験管ベビーらしい。 より正確に言うなら戦闘のためだけに生み出された、遺伝子強化試験体。 別にボーデヴィッヒさん自体にそのことに不満はないらしく、気にしていないとのことだった。 非人道的だとか、本人が思ってもいないのでそこについてはツッコミは入れないことにしておく。 本人が言うには、優秀な成績を収め続けたらしい。 過去形なのは、ISの登場によって。 ISの登場によって、こういう言い方は嫌なのだが、世界の兵器の主流はISになった。 もちろん条約によって兵器としての使用は禁止されているが...... 話はそれたが、ボーデヴィッヒさんは適合性向上のために肉眼へのナノマシン移植手術が施されたらしい。 結果は失敗、左目は変色して金色になり能力を制御できずに成績はガタ落ちしたそうだ。 出来損ないの烙印を押されたボーデヴィッヒさんだったが、そこで織斑先生の登場だ。 文字通り教官として、ボーデヴィッヒさんと言うより、IS専門になった部隊の指導をしていたようだ。 やっぱり、教官だったんだなあの人。 しかも軍隊の。 関係ない思考になったのは、訓練メニューを聞いてだ。 たぶん、あの人が普段厳しいのって、周りがキャッキャウフフな学生っていうのもあるんだろうけど、軍隊でたたき上げた指導法があるからな気がしてきた。 さておき、指導を受けたボーデヴィッヒさんは文字通り体に覚えさせる訓練で、見事部隊最強に返り咲いたのだ。 ちなみに、今回の転校の真意は、織斑先生にもう一度ドイツの部隊に戻ってほしかったから、だそうだ。 本当に織斑先生好きだな、ボーデヴィッヒさん。 さて、話は聞いたが

 

「うん、まぁ、それはボーデヴィッヒさんの体験だし、俺は気軽にわかるなんて言えない。 でも、君は織斑先生じゃない」

 

「なに、を?」

 

「だから君は織斑先生じゃないんだ。 憧れを持つのは構わない、俺だって憧れ、尊敬し、越えたい人がいる。 でも、どうあがいたってその人は他人だ、俺じゃない。 だから俺は、俺らしく強くなってその人に見せつける」

 

「自分らしく、強くなって......」

 

どこかボーデヴィッヒさんも思うところがあるのか、再び俯く。 そこにさっきまでの弱弱しいボーデヴィッヒさんはおらず、どうにか持ち直してきたようだ。 うーん、多分こういうことを見越して織斑先生は俺をよこしたのかな? 別に織斑先生でよくない、このポジション。 てか、織斑先生がやるべきだよね、これ? 内心ため息をつきながら、そろそろいいかと席を立つ。 だが

 

「聞きたいことがある」

 

「なに?」

 

「なぜおまえはそんなに強いんだ?」

 

何か答えを求めているような、迷っているような顔だが

 

「俺が強い? 冗談でしょ?」

 

「お前はこの平和ボケした学園で、唯一私に勝った。 それに、中国とイギリスの代表にもだ。 元日本代表候補生と組んでいたとは言え、見事な操縦だった。 だからお前に聞くんだ、なぜおまえはそんなに強い」

 

「・・・・・・」

 

何故強いか。 はっきり言って、あの時(授業の戦闘)は、山田先生のおかげなのだが...... そうだな、俺が強く見えるとしたら、それは

 

「いろいろな想いを背負っている、からかな。 朝は生徒会長(楯無さん)、昼間の授業では織斑先生や山田先生。 放課後は師匠(山田先生)、織斑先生、簪さんや生徒会長、それに鈴さんやオルコットさん。 整備なら簪さんや本音さん。 それに整備課の人達。 俺のわがままに、これだけの人が協力してくれてる。 俺の強くなりたいっていう想いにな。 だから俺は強くあろうとする。 一人で無理なら人に頼って、な。 それに相棒も力を貸してくれてるからな」

 

そう言って待機状態になった相棒を掲げる

 

「まぁ、そもそも。 相棒は翼で、俺は空を自由に飛びたいだけなんだけどな」

 

「・・・・・・ぷっ」

 

ポカンとした顔をしていたと思ったら、いきなり笑い始めたボーデヴィッヒさん。 え、なんぞ? 俺、おかしなこと言った? 俺の不思議そうな顔がツボったのか、声をあげて笑うボーデヴィッヒさん。 正直言ってひじょーに不本意なのだが、元気が戻ったということで無理やり納得した。 ひとしきり笑ったためか、すっきりした表情のボーデヴィッヒさん

 

「そうか。 うむ、そうかそうか!」

 

「何がそうかなんだ? 俺には全くわからんのだが」

 

「なに、気にしなくていい。 ありがとう、お前のおかげで私は私の道が見つけられた」

 

「それは、聞いても?」

 

「もちろんだ!私は私なりのやり方で強くなり、教官を、いや...... ()()()()()ドイツに来たいと思わせる!そして手始めに、お前を超える!!」

 

挑むような目で見られる。 そこに今までのボーデヴィッヒさんの姿はなく、どこか吹っ切れたような、それでいて闘志を燃やしているボーデヴィッヒさんがいた。 その闘志を燃やしている相手が、俺じゃなければよかったんですがねぇ...... まぁ、ここでやる気をそぐのもどうかと思うので、俺は背を向けて手をあげる

 

「あぁ、待て。 もう一つ」

 

「ん?」

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「あー、そう言うことか。 俺は蒼海翼だ」

 

「これからよろしく頼む、翼」

 

「はいはいよろしく、ボーデヴィッヒさん」

 

「ラウラでいい」

 

「よろしく、ラウラさん」

 

俺は保健室の引き戸を開け、閉める。 そして一言

 

「やっぱり、名前覚えられてなかった......」

 

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