「はぁ~い」
「楯無さん。 すみませんが、今日はあんまり相手できないですよ。 すごく疲れたんで」
部屋に帰ってドアを開ければ、楯無さんが出迎えてくれる。 ニヤニヤしていたからいじられると思い、先に釘を刺しておく。 すると、不満顔に代わる楯無さん。 いじる気、満々だったんかい...... そんな楯無さんを無視し、着替えを持ってシャワー室に入る。 結局あの後着替えることしかできず、シャワーを浴びていなかったからだ。 臭くなかったかな、俺? 本音さんはそこらへん気にせず背中に飛び乗ってくるし、簪さんも気にせずに隣歩くからなぁ...... 俺臭くない? なんて聞くに聞けないし。 ともかく、シャワーを浴びて戻ると楯無さんは暇そうにベットに腰掛け、足をぶらぶらさせていた。 俺のベッドで
「あ、あがったのね」
「まぁ、体洗って、シャワー浴びるだけですし。 あぁ、風呂が恋しい......」
本当はベッドで寝ながら作業しようと思ていたのだが、仕方ない。 俺は机へと向かい、パソコンを起動する。 いつもの通り武器の設計や、機体の設計図だ。 流石にジェイルさんに渡しはしないがね。 なんというか、俺の妄想設定だし。 こんなもの渡したら黒歴史決定だし、考えているだけでも楽しい。 ・・・・・・たぶん、ジェイルさんなら普通に作る。 しかも、性能を凶悪なものに変えて。 パソコンをいじり始めると、そろそろと近づいてくる気配がする。 いやまぁ、楯無さんなんだけど
「どーん!」
「なーにやってるんですか、貴女は......」
「あら? 本音ちゃんだってやってるんだから、私がやってもいいじゃない」
楯無さんは後ろから抱き着いてきた。 後ろから画面を覗き込むように見ているのか、声が耳のすぐそばに聞こえる。 正直言って、やめてほしいのだが。 部屋って完全なプライベート空間じゃん? 学校なら人の目があるから、こらえられるじゃん? 人の目ないじゃん? じゃんじゃん? ともかく、関係ないことを思っていないと、理性が振り切れそうでヤバイ。 この人、しっかりしてるのに微妙に無防備なところがある。 しかも、からかいのためにやっているならかわいいものだが、無意識の時にやってるのは本当にわからないらしく、首をかしげたりする。 破壊力、やばいだろそれ!と、何度戦慄したことか。 これが、女子高のノリかぁ...... 男子には、絶望しかない
「手が止まってるわよ?」
「こういうことして、簪さんに怒られますよ?」
「今はいないもーん」
「俺が言うことを考えないんですね......」
ため息をつくも、どこ吹く風。 よっぽどご機嫌なのか、鼻歌まで歌い出す始末だ。 ともかく、平常心、平常心。 背中に当たる柔らかい感覚とか、首元に回されてる腕や密着している体からいい匂いがするだとか、気にしない気にしない。 って、めっちゃ気にしてるじゃないですかー!ヤダー!! 一人でセルフツッコミをいれながら、設計図と睨めっこ
「これって、簪ちゃんが見ていたアニメと似ているけど、それをもとにしたの?」
「えぇ、そうですよ? ちなみに、これを凶悪にしたのが、こちらになります」
「どれどれ...... うわ......」
違うデータを呼び出し、楯無さんに見せると、心底うんざりしたような声を出される。 まぁ、太陽炉搭載型でツインサテライトキャノンが付いて、ツインバスターライフル装備とか、火力過多もいいところだ。 ちなみに、フルバーストしたら、余裕で国どころか世界が滅びる試算が出た。 まぁ、ツインサテライトやツインバスターライフルなんかは開発できたとしても、太陽炉は無理だが。 ちなみにコイツ、ファングも付いてるため身を守ることも、攻撃もできる。 まぁ、装備の数やビッド操作など、やることが多すぎて人が操る機体じゃないのは確かだ。 考えるのって、楽しいよねということで設計図は引いたが、作るつもりはない。 ちなみにこの機体、簪さんに見せた時めっちゃ瞳がキラキラしていた
「まぁ、ISにする気はないですからいいですが。 他には、こんな武器とか」
「これも、ガンダムっていうのの武器なのかしら?」
「それ、簪さんに言ったら駄目ですよ? これはアーマードコアっていうゲーム、それに登場する武器です」
俺が見せたのはグラインドブレード。 そう、あのチェーンソー六機が付いた、素敵武器だ。 左腕をパージし、そこからジェネレータに直接接続、エネルギーをチャージし敵に六機のチェーンソーを回転しながら突撃する素敵ロマン武器。 設計図は引いたものの、これって殺意高すぎじゃね? と言うのと、やったらトラウマ確実と言うので断念した。 こうやってロマンは否定されていくのだ、私は悲しい...... ポロロン。 たぶん、ジェイルさんに渡せば完徹してでも一日で仕上げてくれると思う。 とっつき作ったし、あの人もロマン分かる人だから。 ただ、注意しておかないと原作リスペクト癖があるから、リアル左腕パージになりかねないことだ。 注文すればとっつきみたく改善してくれるだろうが、そうし忘れた時がやばい。 たぶんとっつきも一つくらいは弾数二の奴が作ってあると思う。 話はそれたが、これにも楯無さんは顔が引きつっていた
「とりあえず、簪ちゃんと話すときは調べてから話すようにするわ」
「それか、あえて会話を広げるために簪さん自体に聞くとか」
「そうする!」
あれ? いつの間にか、簪さんの相談会になってるぞ? 恐ろしい、これがシスコンの力か!? おふざけはさておき、俺はパソコンをいじりながら会話を続ける
「そうそう、今日はお疲れ様」
「? 何がですか?」
「ラウラ・ボーデヴィッヒちゃんの件よ」
俺は思わず手を止める。 何で知ってるのかと思ったが、楯無さんは生徒会長で対暗部組織の長だ、知ってて当然か。 そう納得し、再び手を動かし始める
「それはどうも」
「あら? あんまり驚かないのね」
「まぁ、
「なーんだ、残念」
本当に残念そうにしていた。 オ、ノーレー!本当にからかい癖が抜けないな、この人。 とりあえず、俺の言いたいことは伝わったらしい
「にしても、楯無さんがいればもっと早く、安全にラウラさんを救出できたのに」
「しょ、しょうがないじゃない!生徒会の仕事が溜まって...... ラウラさん?」
ヤバイ、地雷踏んだっぽい。 楯無さんがラウラさんと言った瞬間、刺すような、それでいてどこか楽しそうな視線が飛んでくる。 まぁ、俺は冷や汗かいてますけどね!急いで話題変更せねば!
「生徒会の仕事が溜まってって...... 無理そうなら、指導は良いって言ったじゃないですか......」
「う、そ、それは...... だ、だって簪ちゃんといられるしぃ!それに私が本気を出せば、すぐに終わる仕事だもの、大丈夫よ!」
「・・・・・・それって暗に、簪さんを理由に逃げてるだけでは? それと、本気出せばすぐに終わる仕事って、普段はさぼってやってるということですよね?」
「うっ......」
図星らしく、言葉に詰まる楯無さん。 うむ、役員の人が可哀想だ。 これはアレか? お菓子とか持って行ったほうがいいのだろうか? 迷惑かけてるし。 割と本気で悩んでいると
「そうよ!翼君が生徒会に入ってくれれば、万事解決よ!」
「いや、何がどうしてそうなったんですか? それと、俺が入るなら、簪さんとか本音さんを」
「本音ちゃん、生徒会役員よ?」
「え?」
「え?」
わずかな沈黙。 楯無さんは、だんだんとジト目になっていく
「さーて、ご飯でも作るかな!楯無さんはどうします!?」
「誤魔化したわね。 私も食べる」