一難去ってまた一難、今度は部屋割りの問題だ。 流石にこればっかりは生徒会長権限でも長期の部屋替えは望めないということなので、織斑先生に連絡することにした。 ただ、デュノアさんの部屋割り変更の理由を話さなければいけないのがネックだ。 え? デュノアさんが女なのは良いのかって? あの織斑先生だよ、気が付いてないはずがない。 たぶん下手につつけば国際問題になりかねないのが分かっていたから、動きが分かるまでまたは調べが付くまで何もしなかったんだと思う。 まぁ、一応織斑先生を部屋に呼んだわけだ
「ふむ、これはまた厄介な状況になっているな」
「いや、まぁ、迷惑かけます」
「気にするな。 それで用件を聞こう」
そこから、どうしてこうなったかの説明をし始める。 と言っても、デュノアさんの身の上は知っているそうなので、簡単に話何故この部屋に連れてきたのかを話した。 まぁ、話したのはいいのだが、ヤバイオーラが立ち込めてる。 流石にこのオーラには楯無さんも青い顔をしているし、デュノアさんなんか震えている。 俺なんか目の前で、もろに受けてるからね? そうか、これが覇気か!
「蒼海、あまりつまらんことを考えるなよ?」
「サー、イエスサー!!」
いつもの笑顔も、何故かオーラのせいで五割り増しくらいに感じる。 おっと、これ以上考えるのはよそう、消される。 織斑先生は立ち上がると、どこかに行こうとする。 流石に声をかけたくないが、織斑のところに行かれるとまずいので、声をかける
「織斑先生、どこに行くつもりですか?」
「決まっているだろう、愚弟のところだ」
やはりと言うか、家族だからそんなことをしているのが許せないのだろうが、少し待ってほしい
「すみません。 今行かれても困ります」
「何故だ!」
「冷静じゃないからです。 それに、デュノアさんの件もまだ決着はついてません。 今の状況で織斑のことを織斑先生が問い詰めれば、織斑が向こう側に情報を漏らす可能性がある。 そうなればデュノアさんは向こうに強制送還されます」
「私がすべて何とかする!だから部外者は黙っていろ!!」
「貴女が!!貴女がすべて何とか出来るんですか!!一歩間違えば、人一人の人生が一生塀の中なんですよ!!何のために俺が楯無さんに頼んで慎重に事を進めていると思っているんですか!!少しはデュノアさんの事だって考えたあげてください!!貴女は教師でしょう!」
冷静じゃない織斑先生につい怒鳴ってしまったが、俺は怒鳴ったことを後悔しない。 だって、俺が言った通り人一人のこれからがかかっているのだ
「・・・・・・すまない。 少し冷静じゃなかったようだ。 だがどうするつもりだ? 楯無がいくら有能でも、できることは限られるぞ?」
「まぁ、楯無さんが有能で人脈が広くても、できることは限られます。 部屋割りのことを相談したかったのもそうですが、織斑先生、いや、
「ふっ、教師と言ったりブリュンヒルデを頼ったり、都合がいいなお前は」
「え? 知らないんですか織斑先生。 権力とは往々にして振りかざすためにあるんですよ?」
「えぇー...... 貴方がそれを言うの?」
楯無さんから突っ込みを貰うが、全力スルーした。 いまだに関係各所に大きな影響力を持つ織斑先生だ、その人の発信ということになれば、嫌でも世界は重い腰を上げるだろう。 つまりは、そう言うことだ
「まぁ、何と言うか」
「やり方がいやらしいわねぇ......」
それを説明すると二人は苦い顔をしていたが、納得していた。 ぶっちゃけ、俺ではこれ以上思いつかなかったので二人に任せたいところだったのだが、これで行こうということになった。 さっきあんな顔しておいて、案を出したら乗っかるって酷いと思うの
「まぁ、デュノアの件は私と楯無に任せておけ。 それと部屋割りの件だが、適当な理由をつけて誤魔化しておこう。 どちらにしろ怪しまれると思うがな」
「まぁ、デュノアさんの件が終わるまでですから。 その後は、いろんな意味でご自由にどうぞ」
「ふん」
部屋から出ていく織斑先生に、俺はようやく一息をつけた。 あー、本当にあの人のプレッシャーすごいわ。 普通に話しているように見えて、俺は気絶しないように必死でした
「はぁ、これから忙しくなりそうね」
「お手数をおかけします」
楯無さんの肩をもみつつ、呆けているデュノアさんに声をかける
「と言うわけで終わったから、男装してどこかの部屋に泊まるといいよデュノアさん。 織斑先生も許可だしたし」
「え、あ、えっと......」
いきなりのこと過ぎて理解が追い付かないようで、デュノアさんは戸惑っていた。 俺はそれを見つつ、楯無さんの肩をもむ。 あのー楯無さん、色っぽい声を出すのはやめてほしいんですけど。 それにしても、なんで俺は肩をもんでいるのか。 自分の行動ながら謎だ
「その、助けてくれて、ありがとう......」
「いや、まだ助けてないし。 そもそも、俺の目的は君を助けることじゃなくて、クラスのみんなに謝らせることだから」
泣きそうな顔でお礼を言うデュノアさんに、俺ははっきりと告げておく。 なんだろう、本心からの言葉なのに言い訳みたく聞こえる。 事実、楯無さんはニヤニヤしながらこちらを見ているし、デュノアさんもまだ泣きそうだが、少し笑っていた
「うん、そうだね。 楯無さん、あの、よろしくお願いします」
「まぁ、蒼海君からのお願いだしね。 それに私としても、優秀な人材が生徒会に入ってくれるわけだし、いいんじゃないかしら?」
俺のお願いというところを強調して、心なしかどや顔しているように見える楯無さん。 うーむ、俺に頼られるのがそんなにうれしいのだろうか? 割と、普段から頼っているような気がするが。 まぁ、楯無さん上機嫌だし、わざわざツッコミを入れることもないか
「それにしても、空き部屋なんてあるのかな?」
「ここも一応空き部屋扱いにはなってるけど......」
そう言って楯無さんを見るが、楯無さんは気にせず肩もみを気持ちよさそうに受けていた。 その様子から察したのか、苦笑するデュノアさん。 だが、空き部屋ねぇ
「空き部屋空き部屋...... あー、ラウラさんのところでいいだろう」
「ボーデヴィッヒさん? でも......」
「昨日の一件なら気にしてないし、そもそもラウラさんもデュノアさんが女だって気が付いてたし」
「え”っ」
さらっと爆弾発言した俺に固まるデュノアさんだが、当たり前だろう。 俺で違和感が出るレベルだ、軍人で観察眼を持っているラウラさんなら見破っていてもおかしくない。 今日の昼食時、シャルル・デュノアに注意しておけって言われたし。 俺が知ってると言うと、流石だななんて言ってたしな。 よくよく考えたら、これは好条件なんじゃないだろうか? ラウラさんは軍人だ。 その軍人に手を出せば、ドイツが黙ってないわけだし。 セキュリティー的にも、安心だろう
「事情を説明すればわかってもらえるだろうし、織斑先生に許可をもらってるっていえば一発だと思う」
「あ、あはは、僕の努力っていったい......」
「それは仕方ないわよ、プロの軍人だし。 そもそも、私も一発で見破ったし、蒼海君も違和感持ってたみたいだから」
「・・・・・・」
もはや力なく笑うこともしなくなったデュノアさんにちょっぴり同情しながら、衣服を整えさせラウラさんの部屋に向かわせた。 いやほんと、面倒なことに首を突っ込んでしまったものだ