この空を飛びたくて(仮)   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第六十二話 夏だ!海だ!臨海学校だ! Ⅲ

「うまい!」

 

日も暮れて夜、俺は海の幸を食べていた。 うーむ、隣が海だけあって取ってきたものをそのまま使っているんだろうか? そこらへん気になるところだが、まぁ、美味いし良しとしよう。 あの海を楽しんだ昼、旅館に帰ってくればすぐに露天風呂に入り、ご飯と言うわけだ。 なんと露天風呂、男の貸し切りだったのだ!例年までなら先生たちだけという話だったのだが、今年は俺と織斑と言う男子がいる。 その辺気を使ってくれた女将によって、俺と織斑は露天風呂になったというわけだ。 俺は先生たちに断って露天風呂に入ったのだが、その時に織斑の姿はなかった。 まぁ、そもそもあんな奴と一緒に入りたいとも思わないが。 そんなわけで、本当の貸切露天風呂になった俺は伸び伸びと風呂に入った。 いつもはシャワーだしね、感動だ。 まぁ、この後先生たちが露天風呂に入ったのを確認したら、掃除をしないといけないんだけどね。 先生たちが借りていた時でも、最後の人は掃除をしていたらしい。 もともと少ない人数だし、先生たちのために沸かしてもらっているため、そう説明を受けた。 なんか、体のいい生贄にされた気分だが、掃除する前に露天風呂につかるつもりなので、いいとしよう。 そんなわけで、もう一口

 

「うまい!」

 

「さっきからそれしか言ってないじゃない」

 

「なにをぅ!なら鈴さんは美味くないっていうんですか!?」

 

「なんで敬語なのよ...... うまいけど」

 

俺の勢いに押され、ちょっと引き気味に答える鈴さん。 おいしければいいじゃないかと、俺はそのまま食事に戻る

 

「新鮮でとてもおいしいですわ、ワサビはちょっとあれですけど」

 

「まぁ、慣れないときついとね。 日本人でも嫌いっていう人多いし」

 

と言いながら、マグロの刺身に少量つけ、一口。 うむ、鼻に抜けて美味い。 それを見てシャルロットさんも真似してつけるが

 

「ちょちょ、多い多い。 食べるのは初めてでしょ?」

 

「う、うん、そうだけど」

 

「ならこれくらいで十分」

 

つけていたのの半分、くらいにする。 いや、びっくりしたよ。 俺より少し多いくらいつけるのだもの。 今は本当の少量なので、安心して食べられると思うが

 

「あーむ。 うっ...... これでも少しからい」

 

「まぁ、しょうがないんじゃないかなぁ......」

 

苦笑いしながら、刺身につけてたべる。 ちょっと量が多かったのか鼻に来るが、まぁこのくらい誤差範囲ないでしょ

 

「ぬぉー!!??」

 

「アンタも馬鹿ねぇ、ラウラ」

 

どうやら俺の忠告を聞かず、一口で盛られていたワサビ全部行ったようだ。 しかもワサビ単品で。 そら辛いわ。 鈴さんもそんなラウラさんに呆れながら、お茶を渡していた。 それを勢いよく飲み干し、肩で息をするラウラさん。 涙目のところを見ると、想像していたよりもからかったようだ。 子供のころ、親が食べてるのみにて自分も挑戦したが、予想以上に辛く、慌てたのを思い出し微笑ましい気持ちになる

 

「むぅー!翼、何だその目は!」

 

「いやー、なんでもないよー」

 

周りを見れば、俺と同じ様な目をしたクラスメイトがちらほら見受けられる。 たぶん俺と同じ気持ちなのだろう、親指を立てればみんな笑顔で返してきた。 そんな俺の様子に頬を膨らませ、不満顔のラウラさん。 あ、鼻血を出して何人か倒れた。 なんてことはない、この頃よく見る光景だった

 

「ワサビもいいけど、やっぱり素材そのままが一番」

 

「私はワサビはいいや~」

 

「いや、本音さんはともかく、簪さんはその発言控えたほうがいいよ? 戦争になる」

 

とんでもないことを言い出したのは、隣に座る簪さん。 素材そのままが一番だなんて、ワサビ至高派に怒られる。 実際、簪さんの発言に何人かが睨んできている。 あぁ、困ります困ります!そこで火花を散らさないでください!織斑先生が睨んでますから!馬鹿なことを考えていると、隣に座っている本音さんから耳打ちが

 

「ねぇねぇ、つばっち~」

 

「なんじゃい?」

 

「かんちゃんああいってるけど、実はね~、ワサビあんまり食べられないんだー」

 

「そうなの?」

 

驚いて本音さんを見ると、いつもの笑顔だが、そこにはいたずらっぽい笑みもプラスされていた

 

「うん~。 小さい頃の話なんだけど~お嬢様が進めて食べてみたんだけど~、その時に辛すぎて泣いちゃったんだ~」

 

「どのくらいで?」

 

「でゅっちーが食べたよりも少量で~」

 

「ほほぅ」

 

シャルロットさんが食べた量ということは、相当少ないはずだがそれでも泣いたと。 まぁ、子供のころの話だし普通かと思うけど。 本音さんの薄く開いた眼から、やれとの指令が。 あー、本音さんからの命令なら仕方ないよねー。 免罪符を盾に簪さんに仕掛けることにした。 シャルロットさんが食べたのと同じくらいの量で、ワサビを挟み込み簪さんの肩をたたく

 

「簪さん、簪さん」

 

「なに?」

 

「はい、あーん!」

 

「えぇ!?」

 

なんか周りの空気が一気に冷え込んだ気がするが、気にしない。 妙に慌てる簪さんだが、ちょっと見ていて面白い。 笑顔で、箸をそのままに待つが。 やがて俯き、かなり恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、そして

 

「あ、あーん......」

 

口を小さく開ける。 このまま写真を撮りたいくらいかわいいが、それをしたら簪さんに嫌われるだろうし、何より、楯無さんに殺されてしまいそうだ。 衝動をぐっとこらえ、俺は簪さんにマグロを二枚食べさせる。 ワサビサンドだけどね! と言うより、食べさしてから思ったが、これやったら簪さんに嫌われるのでは? なんて思ったが、後の祭りだ。 最悪本音さんを盾に使えばいい

 

「んむ、んむ、んっ!?」

 

「か、簪? どうしたの?」

 

簪さんが口元を抑え、いきなり俯いたからか、心配そうにシャルロットさんが声をかけるが、手を振って何でもないようなアピールをする簪さん。 誰の目から見ても何かあるのは明らかなのだが、簪さんが大丈夫と言っているので何もできない。 やがて簪さんは顔を上げ、何事もないように

 

「何でもない」

 

というが、瞳の端には涙がたまってるし。 顔も少し赤い。 だが、何でもないとい簪さんに、何もつっこめない。 唯一、鈴さんが俺の顔を見て、皿を見て気が付いたようだが、呆れた表情だった。 違うんだ鈴さん!本音さんがやれって!

 

「いや、本音がやれって言ってもアンタがやったんでしょうが」

 

その声に反応したのが簪さんだ。 俺のことを無言でポカポカ叩いてくる。 力が入ってないため痛くないのだが、申し訳ない気持ちになる

 

「えっと、その、ごめん簪さん」

 

「びっくりした。 とってもびっくりした」

 

涙目で訴えてくる簪さんに、不謹慎にもかわいいと思いつつ。 言ってはいけないことを口にした

 

「いや、本当にごめん。 どうすれば許してくれる、何でもするからさ?」

 

「これ全部、あーんしてくれたら許してあげる」

 

そう言って簪さんが示したのは、自分の料理。 少しずつ食べていたのか、料理は結構残っていた

 

「こ、これ全部?」

 

頷く簪さんに、俺はがっくりと肩を落とす。 なんでもやるといった手前、やらないわけにはいかないし。 むしろいたずらをしたのだ、この程度で許されるのを幸運と思うべきか。 もはや、何時ものどーにでもなーれ、精神で乗り切ることにした

 

「・・・・・・はい、あーん」

 

「あーん」

 

さっきまで恥ずかしがっていたのに、今度はすんなりと食いつく簪さん。 そして、今回は笑顔だ。 その笑顔に浄化される人が続出し、周りはいつも居るメンバーを除いて、倒れている。 まぁ、これに浄化されそうになるのは分かる。 今も、今か今かと瞳を閉じて、どこか楽しみに簪さん待ってるし。 口に入れてあげれば、満面の笑みで食べてるし。 まぁ、いつも居るメンバーは呆れてたり、悔しがったりしてるけど

 

「あ、本音は後でお話ね」

 

「なんで!?」

 

 

 

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