目が覚めれば、不思議なところにいた。 立ってはいるが、感覚はなく浮いているのか立っているのかわからなかった。 下を見れば青い地面。 いや、少し足を動かすと波紋みたいなものが広がった。 ということは水の上に浮いているようだが、俺は何時から波紋使いになったのだろうか。 軽いボケは置いておいて、目的もなく歩き続ける。 上を向いても、蒼が広がっている。 雲があるから、空というところだろうか。 まるで飛んでいるときの景色のようだが、あいにく俺は相棒なしには飛べない。 ひたすら歩き続けるが、何もなく同じ景色のところを延々と歩いている。 何が目的で俺を閉じ込めているのやら...... 少し休みたくなった俺は、切り株に腰を下ろす。 いや、待て。 なぜこんなところに切り株があるんだ? 歩いているときは何もなかったはずなのに、俺が休みたいと思った瞬間にこの切り株はあった。 よくわからない
「こういう形では会いたくなかったですが、ようやく会えましたね」
気配も何も感じなかったのに、気が付けばその少女はそこにいた。 声を聴くと懐かしさを感じるとともに、毎日会っているかのような気やすさを感じるような声だ。 と言うよりも、まえに、どこかで?
「不思議そうにしてますけど、覚えていませんか?」
顔を上げれば、優しそうな雰囲気をした青い髪の少女がこちらを見ていた。 覚えていないかと問われれば、覚えていない。 覚えていないはずなのだが、いろいろな感情がごちゃ混ぜになり、答えが出ない。 でも
「君は...... この前の夢の?」
口が勝手に動いていた。 この前の夢、学園が未確認機体に襲われて、俺が意識を失ったとき朧げだが夢で見たような気がする。 いや、思えばその前の不思議な声も、ラウラさんを救ったときも聞こえていたような気がする。 俺がそう言うと、少女は驚いたようだが、すぐに笑みに変わる
「まさか覚えているなんて、嬉しいです」
本当にうれしそうに笑う少女につられ、俺まで笑顔になる。 だが、その平穏も長くは続かなかった。 どこかからか、泣き叫ぶ声と戦闘音のようなものが聞こえてくる
「これは?」
「福音と、貴方の仲間の戦闘です」
言われて思い出す。 俺は福音にやられて海に落ちたわけだが、その時に意識を手放している。 とすると、ここは死後の世界かなんかだろうか? それにしては、
「戦闘って...... みんなは撤退したはずじゃ」
「はい。 貴方の最後の通信の後、皆さんは作戦を練るために待機を命じられてましたが、いてもたってもいられず、補給完了と同時に無断で出撃を」
「いや、それはまずいでしょ......」
総司令は織斑先生だ、帰ったらまずいことになりそうだが...... 少し帰った時の想像をすると、寒気で体が震える。 だが、少女は意外なことを言い始めた
「貴方のため、なんですよ?」
「どういうことだ?」
「最後の通信、ノイズが混じっていたのは機体のダメージが超過しすぎたため。 その状態で海に入ったんですから、反応はロスト。 でも、福音がいるから海域封鎖のため教師部隊の派遣も出来ない。 時間がたてばたつほど、貴方の状態はまずくなる。 だから命令を無視してまで、貴方を救いに。 福音を倒しに来たんです」
「・・・・・・」
自体は思ったよりも深刻だったようだ。 無断出撃も俺を探すためと言うと、怒ることもできないし。 みんなの気持ちに感謝しつつ、俺は立ち上がる。 そんな俺を不思議そうに見る少女
「どうしたんですか?」
「みんなが俺のために頑張ってくれているなら、俺はこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。 一刻も早く脱出してみんなを安心させないと」
「今の状態で福音の前に出れば、死にますよ?」
確かにそうだ。 左腕は折れ、体の所々傷ついている。 相棒もボロボロ、そんな中戦場に飛び出せば死ぬのは確実だ。 でも
「アイツ等が俺のために頑張ってくれてるんだ、ここで無理しなきゃ男じゃない。 ・・・・・・それに、福音が泣いていたような気がしたから。 泣いてる奴がいるなら、泣き止ましてやらなきゃダメだろ?」
そう笑いかければ、びっくりしたような顔をしたが、すぐに笑顔になる
「・・・・・・貴方は、変わってますね」
「そうか?」
「はい!質問です。 貴方は、何のために力を欲しますか?」
「何のために、か......」
いきなりの質問。 だが聞いてきた少女は真剣そのもので、茶化す雰囲気ではない。 何のために力を欲するか...... そんなもの決まっている
「大切な人を、いや...... 大切な人たちを守るために。 最初はさ、相棒でただ飛べるだけでよかった。 それが夢だったし。 でも、その過程で戦って、勝って、負けて。 競い合って、互いに高め合って。 そして、大切なものも出来た。 いろんな人に手伝ってもらって、強くはなれた。 だからそれを、大切な人たちを守るために俺は力を欲する。 ある人が言ってたけど、どんな理不尽も跳ね返すほどの力を。 それに、飛んでるうちにさ、宇宙にも興味が出てきたんだ。 だから、相棒をISを本当の意味で使えるように、俺はしたい」
「ふふっ、やっぱりあなたは思っていた通りの人なんですね」
本当に楽しそうに笑う少女。 そして、俺の意識が混濁し始める
「これ、は?」
「目覚めの時です」
どこか寂しそうに言う少女。 あぁ、そう言えば。 前もこんな感じになって、目覚めたような気がする。 そう言えば、まだこの少女の名前を聞いていない
「君の、名前は?」
「名前ですか? 名前はないですね。 コアに付けられたナンバーならありますけど」
そう言って苦笑する少女。 そこまで聞いて、俺はようやく少女の正体を知った。 いや、思えば俺と俺のISである相棒しか知らないようなことを言っていた。 ヒントは出されてたのに気が付かないとは、不覚だ。 だが、ならばだ。 なら、こんな寂しい空間に相棒を残しておくわけにはいかない。 混濁する意識の中、俺は必死に
「手を、だせ!!」
「手を、ですか?」
不思議そうに手を出す青い少女の手を握り、こちらに引き寄せる
「お前を、追いて行ったりはしない。
「っ!? はい!!」
弾けんばかりの笑顔、俺はそれをまぶしく感じながら。
「お前は今日から青だ。 安直かもしれないが、今日からそう名乗れ」
「はい...... はい!!」
青は嬉しそうに笑う。 瞳に涙をためながら。 そろそろ意識が限界だ
行くぞ、青
はい、翼!
俺の意識は真っ白になった
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『翼、翼!起きてください!』
頭の中に少女の声が響く。 その声に起こされるように、体を起こす。 状態を確認しようと顔に手をやるが、固い感触がする。 そこで気が付いたが、どうも装甲の形状が違う。 それは腕だけでなく、全身だった。 濃紺だったカラーリングは青を基調としたトリコロールカラーになり、かなり見覚えのある機体だった
「この機体......」
『翼が自分用に設計図を引いていた、翼のための
やはりそうのようだ。 武装欄を確認すれば、そのままの名前が載ってるし。 まぁ、ぶっつけ本番になるが
『私と翼なら大丈夫です!』
「あぁ」
体のいたるところにガタが来ているようだが、それでも無理やり立ち上がる。 ウイングスラスターを点火すれば、周囲に泡が立ち込める
「ウイングゼロK、蒼海翼」
『青』
「『行く!』」
そのまま勢いよくスラスターを吹かせば、一瞬で海上に出る。 どうやら所々に損傷はあるようだが、みんなは無事のようだ。 俺はそれをわき見しつつ、意識を福音に向ける
「さて」
『泣いてる子を泣き止ませに行きましょう!』
俺はウイングスラスターからビームサーベルを抜き去り、福音に突撃する