ふと、目が覚めた。 周りを見渡せば、誰もおらず。 だが、見覚えがある部屋だった。 周りが暗いところを見れば、夜、なのだろうか? まさか福音戦は夢だった? なんて、淡い幻想を思い浮かべてみたが、痛む左腕に、全身の痛み、そんなものたちが嫌でも現実だと教えてくれた。 痛む体にムチ打ちながら、体を起こす。 やっぱり無理は禁物だな。 音が鳴った左腕を見れば、鐘に天使の羽のようなものが付いたブレスレットが。 あぁ、青たちの待機状態か
『そうですよ。 こんな時間ですが、おはようございます翼』
『おはよう』
『あぁ、おはよう』
青たちと話していると、少し外の空気が吸いたくなった。 ばれないように抜き足差し足で、窓からの脱出をはかる。 まぁ、寝込んでいたのに監視はついていないようで抜け出すのは安易だった。 俺は砂浜を歩きつつ、青たちに話を聞く
「それで? 俺は何時間くらい寝てたんだ?」
『翼が意識を失ったのは大体明け方、そこから旅館に帰還して、処置やもろもろを受けたわけで。 気絶した時間を考えれば、半日以上は寝ていた計算になります』
「そんなに、か......」
『簪たちも、ISのみんなも心配してた』
「うげ......」
ベルからの言葉に、思わず苦い顔になる。 本音さんと待っててくれとか言いつつ、最後の通信で簪さんに謝ってくれとかやばすぎちゃう? てかそもそも、死にそうになったのすら知ってるわけで。 これは、簪さんと本音さんが一緒にお話コースですわ。 あ、胃が痛くなってきた。 思わず腹を抑えるが、症状が一向に良くなることはない。 病人ということを甘く見ていたのか、意識がもうろうとしてきた。 失うというほどではないが、少し休まないと本格的にまずそうだ。 なので休める所を探していると、話声が聞こえてきた
「とある天才が、大事な妹を晴れ舞台でデビューさせたいと考える。 そこで用意するのは、専用機とどこかのISの暴走事故だ。 暴走事故に際して、妹の乗る高性能機を作戦に組み込む。 妹は華々しくデビュー」
「すごい天才がいたものだね」
大きな声でもないのに、それは聞こえてきた。 話声から織斑先生と篠ノ之束博士のようだが、今のが本当なら......
『『翼......』』
その声にハッとし、手を見てみれば、いつの間にかこぶしを握っていた。 それを苦笑しながら、力を抜いていると、衝撃の話が聞こえてきた
「あぁ、とんだ天才もいたものだな。 かつて12か国の軍事コンピューターをハッキングした、とんだ天才がな」
それを聞き、俺は衝撃が走った。 12年前? 軍事コンピューターをハッキング? そんなもの、思い当たるのは一つしかない。 白騎士事件、ISが初めて世に出た事件だ
『なぁ、青、ベル。 今の話は本当なのか? お前たちの生みの親が、篠ノ之束があの事件を引き起こしたのか?』
『・・・・・・』
ベルは答えなかったが、青は答えてくれた
『詳細は分からりません。 白騎士はいるけど、
『そうか......』
その事実にいったんは頭が冷えた。 織斑先生と篠ノ之束博士の会話を聞くことにした
「ねぇちーちゃん、今の世界は楽しい?」
「そこそこな」
「そうなんだ」
そこで嫌な予感がした俺は、声をかけることにした
「篠ノ之束博士はどうなんですか?」
「蒼海、お前......」
織斑先生がこちらを見るが、気にしない。 俺は篠ノ之束博士の目を見ていた。 真実を見逃さないために
「イレギュラー君」
「再度質問します。 篠ノ之束博士は今の世界が楽しいですか?」
「・・・・・・」
沈黙する篠ノ之束博士。 だが、視線はこちらを外さない。 その目は昼間のように冷たくはなく、答えを言っているようなものだった。 楽しくない、楽しいはずがない。 そう、言っていた
「おい、蒼海、体は大丈夫なのか?」
「いや、ぶっちゃけ立ってるだけでもきついですが、今はそんなこと気にしてられないです。 篠ノ之束博士、さっきの織斑先生との会話を聞いてました。 そのうえで、質問します。 白騎士事件もそうですが、福音の暴走事故、それを起こしたのも貴女ですか?」
これは真面目な質問だ。 もし、起こしたのがこの人なら、それは俺は許せない
「・・・・・・」
否定も肯定もない。 俺も篠ノ之束博士も視線をそらさないが。 篠ノ之束博士は耐えきれないのか、視線をそらした。 その瞬間、俺は何かが切れそうになったが、必死にこらえる
「だったら」
「あん?」
「だったら何だっていうのさ」
次に視線を合わせた時、昼間のような無表情をしていた。 その瞬間、俺の中で何かが決定的に切れた。 気が付けば、俺は篠ノ之束博士に詰め寄り、肩をどついていた
「蒼海!!」
「だったら? だったらって言ったか!?アンタは
俺は待機状態になった青とベルを見せる。 それでも、篠ノ之束博士の表情は動かない
「なのに、それをそんなくだらないことに使って、何迷惑かけてるんだよ!!こいつらに意志をつけたのはアンタだろ!?こいつらだって、何かを想い、大事にしてるんだよ!!福音のコアは、ベルは空を飛ぶのが大好きだった!だがアンタは、その空を奪ったんだぞ!!」
「だったら...... だったらどうすればよかったのさ!!世界のゴミどもはISを認めなかった!だから私は白騎士事件を起こした!ISを、子供たちを認めさせるために!!でも結果はこうだよ!毎日毎日、コアネットワークに接続しては、悲しいことばっかり!どうすればよかったのさ!教えてよ!!」
今度は逆に押し倒され、馬乗りになられる。 左腕が痛みを訴えるが、それを無視する。 ここで引いてはいけないから。 ここで引けば、同じことが繰り返される、そんな気がするから
「甘えんな!!一回認められなかったからって、そこでアンタは諦めた!アンタは俺ら凡人より頭がいいんだろ!!ならその頭で考えろよ!あんなことすれば、軍事利用されるに決まってるだろ!!一回で諦めずに、小さなことからコツコツやればよかっただろ!そうして認められれば、少なくとも今よりはましだったはずだ!!アンタは逃げたんだよ、ISから、子供と言ってる存在から!アンタの発言なら、多少はもうちょっとましな現実になったはずだ!!アラスカ条約だって、ちゃんとしたものになったはずだ!!」
「・・・・・・」
その言葉に、篠ノ之束博士泣くだけだった。 声も上げずに、うつむいたまま。 そして俺は、それを見て頭が冷えた。 まぁ馬乗りになられてるわけで、上を向けば当然見えるわけで...... 罪悪感がパないんですけど...... とりあえず
「過ちを気に病むことはない。 ただ認めて、次の糧にすればいい。 それが、大人の特権だ。 アニメの中のセリフですが」
「え?」
「篠ノ之束博士は自分がしでかしたことの大きさを、理解してると思います。 なら、そのしでかしたことを認めて次に生かせばいい。 一回駄目なら二回でも、二回で駄目なら何回でも。 頭のいいやり方は言えませんけど、辛抱強く宇宙への道を示せばいい。 貴女になら、それが出来るはずだ。 なんせ、ISっていう素晴らしい翼を開発したんですから」
「っ!?」
その俺の言葉を受けて、篠ノ之束博士は決壊したのか、俺に抱きついて泣き始めた。 いやあの、腕が...... 織斑先生に助けを求めるように見るが、何もしてくれない。 鬼、悪魔、千冬!! ヒィッ!? 睨まれた。 それから仕方ないとばかりにため息をつき、ようやく篠ノ之束博士を引きはがしてくれた
「いい加減にしろ束」
「うぅ、グスッ...... ごめんちーちゃん」
「ちーちゃんやめろ」
なんか漫才してるけど、何なんだろうか? 俺は帰ってもいいかな? そんなことを考えながら、服に着いた砂を払う。 それと、腕どころか全身が痛い。 早く帰って休みたい
「おい蒼海。 今回、ここで聞いたことは他言無用だ」
「いや、喋っても何を荒唐無稽なことをなんて言われるのがオチですよ? 喋るつもりはないですけど」
「ならいい」
それだけ言うと、話は終わったといわんばかりに腕を組む織斑先生。 俺は帰ってもよろしいのだろうか? そう思っているのだが、何故か頬を赤らめながら、こちらをチラチラ見る篠ノ之束博士。 いやー、なんかすごく嫌な予感がしたので帰りたい。 織斑先生に視線を向ければ、何故か睨まれた
「おい束、言いたいことがあるなら言え。 私としても、このバカ者を早く休ませねばならないからな」
「えぇ!? そんないきなり......」
馬鹿者と言われたでござる...... 俺がショックを受けていると、何やら織斑先生と篠ノ之束博士が話している
「乙女か貴様は」
「ま、まだまだ乙女で通じるもん!」
「はぁ...... もういいから、早くしてくれ。 実際、こいつは福音戦のせいで体がボロボロなんだ、早く休ませたいのは本当だ」
「わ、分かったよ。 えーっと、イレギュラー君...... ううん、なまえ、教えて?」
「え? あぁ、はい。 蒼海翼です」
「ならつっくんだね!」
俺の名前が知れただけで、嬉しそうに笑顔を浮かべる篠ノ之束博士。 ほんと、どういうこっちゃ? 織斑先生はヤレヤレと頭を振ってるし
「束」
「はいはい。 その、もし私がまた宇宙を目指したいっていったら、手を貸してくれる?」
「はぁ、まぁ、全然手を貸しますけど。 こいつらだって、宇宙に行きたいって言ってますし」
「うん、うんうん!ありがとつっくん!」
「ぎゃー!?」
思いっきり飛びつかれ、俺の腕が悪化したことは言うまでもない