暗殺教室:傭兵生徒   作:星沢山

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第一話行きましょうか。

もしかしたら一話書いてモチベが上がらなくて終了もあるかも…

今回は渚視点です。


傭兵χ

彼は突然現れた。夏休みの暗殺が失敗に終わり、竹林君も戻り、新しい学期の幕開けだと張り切ってるところにだ。

 

烏丸先生から紹介されたこの生徒は、過去の誰よりも殺気を発していた。

 

「えー、戸惑うこともあるだろうが、彼は律と同じく国から派遣された特殊暗殺者だ」

 

そう言うと先生は僕たちに使う優しい目とは違う、獲物を見る目でその生徒を睨めつけた。

 

「かなりの危険人物とも言われてる。君たちもわかると思うが…」

 

茅野が後ろから僕に視線を送ってきた。そう、この新入生は普通じゃない。夏休みの暗殺で分かったように、この生徒はどこからどう見ても

 

『殺る側』の人間だった。

 

「では、軽い自己紹介をしてくれ」

 

そう言うと烏丸先生は一歩下がり、その生徒を教壇に立たせた。

 

「こんにちは、E組のみなさん。俺に名前はまだありません。現地では傭兵Xと呼ばれてました」

 

そう言うとその生徒は机の間を抜け、用意された後ろの席に座った。

 

誰も彼の短い自己紹介には口を出さなかった。むしろ、出せなかった、が正しいかも。その新入生が放っていた殺気に誰も気圧されて、いつもなら真っ先に話しかける杉野君もかなり引いている。

 

そんな経緯で、彼はE組に入ってきた。

 

「彼がここまでの殺気を放っていることには理由がある」

 

烏丸先生はそう言うと説明を始めた。

 

「彼はかなり特殊な経歴を持った人物だ。両親が日本人の医者で、戦争で苦しむ人を救おうと現状最大の戦地であるシリアに向かったんだ」

 

シリアに、人を救いに。最近の医者はみんなお金目当てだと思ってた僕には少しショックだった。そんな心ある医者がいたなんて。

 

「でもそこで戦いの巻き添えにあい両親が死に、その二人の間にいた子供は孤児となった」

 

それを聴きながら、後ろの新入生はニヤニヤ笑っていた。まるでこれが人ごとのように、それとも全く関係ないことかのように。

 

「彼は孤児であることを見込まれて、テロリストに洗脳教育をされかけた。しかし、そこで渡された銃を使ってテロリストを殺し、脱出した」

 

怖かった。

 

僕の後ろには、本物の殺人者がいる。僕らみたいな生半可な暗殺じゃなく、本気で、向こうも殺しにきてる時にだ。人を殺して、それで生きてきた。

 

そんな生徒が、彼なんだ。

 

「その後は彼の自己紹介からも察しがつくだろう。彼は現地で傭兵としてほぼ5年過ごし、今、日本政府からスカウトされてここにいる」

 

そう言うと烏丸先生はなぜかため息をついた。

 

「正直に言うと、踏んだ場数は俺よりもこいつの方が上だ」

 

そう言うと先生はそれを裏付けるように説明した。彼の場合休日も何もなくほぼ毎日戦い続けていたこと、そして自衛官はあくまでも防衛のためで、烏丸先生が本気の戦闘をしたのは数える程しかないということ。

 

「技量と力だけで言えば俺の方が上かもしれない。だがそれはあくまでも訓練と年齢の違いだ」

 

先生がそう言った瞬間、僕にはその生徒が何か悪鬼のように見えた。人を殺すことを楽しんでいるような、それとも本当に気狂いなのか、

 

雲のように掴めない生徒だったが、彼が異質な殺気を放っていたのは確かだ。

 

そんな一日の始まりで、僕たちは今日の暗殺を始めた。

 

一時限目:数学

 

彼は一見普通に授業に集中していた。殺せんせーが書き出す問題とかを、比較的早い速度で答えていった。戦争を続けていた少年とは思えないほど、極々普通な生徒に見えた。

 

が、彼は行動に移った。

 

殺せんせーは10分に一度ぐらいの割合で教室を巡回する。生徒一人一人がしっかりと勉強しているか確かめるためだ。

 

「殺せんせー、こんな感じでいいですか?」

 

その生徒は殺せんせーを自ら呼び寄せた。もちろん殺せんせーに話は通っているし、警戒せずに近づいた。

 

「ええ、できれば字をもう少し大きく書いた方がいいですね」

 

軽いアドバイスをして、殺せんせーはゆっくりと席から立ち去る。ここで殺せんせーは異常な行動を取った。そのまま生徒の方を見ながらゆっくりと立ち去ったんだ。

 

そこまで警戒しているのかと僕は思ったけど、結果殺せんせーの警戒は完全に裏目に出た。

 

『ジュワ』

 

「!」

 

殺せんせーの床についていた触手が溶け、その瞬間、轟音が教室を襲った。

 

『ズガガガガガガガ』

 

明らかにエアガンとは違う音で連射される銃撃は、殺せんせーをパニックさせるのに十分だった。

 

そこで僕は一つのことに気づいた。なぜ殺せんせーが飛んで逃げられないのか。スピードを作るためには床を踏み台にして飛ぶ必要がある。床か壁か、天井か、何かに触らなければ飛ぶことはできない。

 

この生徒はそこまで見越して床についていた触手を溶かし、さらに溶けたあとに床に落ちる触手の部分を全部撃って弾いているんだ。

 

「わわわわ」

 

もしかしたらマッハ20の速度を活かして手足を無理やり回転させてプロペラのように飛ぶこともできるかもしれないが、触手がすでに数本溶けて、さらにパニックしてる状態はそれが無理だ。

 

「先生!」

 

思わず誰かが叫んだ。ここまだ簡単に、しかも完全警戒していた先生がやられるのは始めて見たからだ。

 

ついに殺せんせーは奥の手を切った。ビリっと皮を破く。その隙に殺せんせーは着地し、飛び立つかと思われたが、別の轟音が響いた。

 

『ガウン!』

 

明らかにそれまでの銃音とは違う一撃は、誰にも見えない速度で飛んだ。そして銃声がやむと、例の生徒の後ろから声が聞こえた。

 

「ヌルフフフ。日本政府もとんでもない暗殺者を送りんできたものですねぇ」

 

生徒は後ろを向き殺せんせーと向かい合うと、諦めたかのようにため息をついた。

 

「だめか…もう少しだと思ったんだけどな」

 

「確かに。今の暗殺はかなりの成果を見せました」

 

そんなこと、聞かなくてもわかることだ。殺せんせーのメインの11本の触手の内足の5本そして腕の2本。ここまで殺せんせーにダメージを与えた生徒はいない。

 

「殺せんせー、一つ聞いていいか?」

 

「はい。いいですよ」

 

「最後の一撃。あれは当たったか?」

 

「…」

 

殺せんせーは少し深刻そうな顔をし、服の一部を剥ぎ取った。

 

「当たったようですね」

 

「うわあ…」

 

僕も正直驚いた。脱皮した皮で防がれていたのに、それでも弾は一気に殺せんせーの肩(?)近くの場所まで行った。

 

「服で弾いたんですが、勢いが強すぎてね」

 

そう言うと殺せんせーは貫通された体、そして触手を再生した。

 

「現状最強級の狙撃銃、 AS50を使いこなしている。やはり実戦で使ったことが?」

 

そう聞かれると例の生徒は頷いた。

 

「瞬時にしてAS50を取り出して精密な射撃をするとは見事です。服で弾かなかったら脳天を穿たれたでしょうね。しかしそれでも殺せなかった。暗殺というのは殺せなければ意味はないのです」

 

それが今日で最初で最後の暗殺になった。その日は新入生はただただ大人しくし、殺せんせーの身辺を探り続けた。

 

6時限目、体育での出来事である。烏丸先生が意外な提案をした。

 

「生徒に実戦的な組手を見せる。悪いが相手になってくれ」

 

相手になったのはもちろん例の生徒だ。

 

「へいへい。了解でーす」

 

午前の暗殺が失敗したことで意気消沈している…わけでもなさそうな新入生。彼は堂々と烏丸先生の前に出た。

 

「あ、誰か長めのエアガンとナイフを持ってきてください。対先生用のやつでいいです」

 

僕はたまたまロッカーが近かったから、エアガンとナイフをその新入生に手渡した。その生徒は受け取ると、それを握って、感触を確かめていた。

 

「ん〜、こんなもんか」

 

「エアガンを使っては組手にならないぞ」

 

「大丈夫です」

 

「…ではこっちもナイフを使わせてもらおうか」

 

烏丸先生もナイフを抜き、場に真剣な空気が流れた。

 

「ほほう。これは面白そうですね?」

 

突然後ろからやってきた先生に、驚きはしたが、いつも神出鬼没な先生だ。そのぐらいは許容範囲。

 

「先生。小テストの採点は終わったんですか?」

 

「あのぐらい先生のマッハ20の速度を持ってすれば5分でちょちょいのちょいです!」

 

「…じゃあ社会のノート採点は?」

 

「…」

 

「先生?」

 

「さ、渚君。烏丸先生の構えを見てください。あれはですね…」

 

現実逃避する先生を少し叱った後、戦闘の解説をしてくれるという条件で観戦させることにした。

 

最初に動いてのは新入生だった。

 

ナイフをポケット、両手で銃を持ち、先生に突進する。

 

「む」

 

彼の戦い方は尋常でなかった。

 

手に持ったエアガンを強引に烏丸先生に叩きつけ、そこから弾いて今度は突く。それを烏丸先生は上手く受け流す。

 

「烏丸先生、このままだと危ういですね」

 

「え、なんで〜?」

 

クラス随一の烏丸ファン、倉橋が思わず疑問に言った。

 

「銃は腕やナイフと違います。ゴツゴツとした表面があるせいで、いくら受け流しても皮膚がボロボロになります。ですがそれ以上にー」

 

殺せんせーは一瞬止め、戦う新入生をじっと見つめた。

 

「あの生徒には勢いがある。彼はかなり戦い慣れしてますよ。殴り倒すような戦い方ではなく、相手を威圧するような、まるで『虎』。渚君知ってましたか?虎は獲物を襲うときに聞こえすらしない超低音を送り相手の戦意をなくすんですよ」

 

確かに、烏丸先生は防戦一方だった。

 

「見事な銃剣術です。彼は傭兵時代、そうとう経験を積んでんでしょう」

 

ついに烏丸先生の腕の皮膚が破れ、血が出た。

 

「殺せんせー!そろそろ二人を止めて!」

 

「いや」

 

じっと見つめる殺せんせーの言うことには妙な説得力があった。

 

「反撃です」

 

先生がついにナイフを取り出し、それで巧みにその生徒を襲った。

 

「上手いですね。流石訓練を積んでいるだけある。ここまで早い速度でナイフを繰り出されると、一撃一撃を繰り出すのが遅れる銃剣術だとどうしようもない」

 

烏丸先生の一撃が生徒の胴に入りかけたが、ギリギリで銃で弾かれた。

 

「どうした!勢いがないぞ」

 

「これはもはや組手ではないですね」

 

殺せんせーはそうコメントした。

 

「もはや完全な実戦向きの1対1です」

 

『バスッ』

 

烏丸先生がついに一撃を肩に入れ、そこで生徒は倒れると思われたが…

 

『グッ』

 

その生徒は遠くからわかるほど歯を食いしばり、ギリギリで踏みとどまった。

 

『ズガッ』

 

一手遅れて攻撃した分十分な威力が溜まった。逆にそれまで連撃を続けてきた烏丸先生は力が入ってない。

 

強烈な一撃が烏丸先生のナイフに叩きつけられ、あまりの衝撃でナイフを落とした先生に投げつけられたのはポケットに入ったナイフ。

 

烏丸先生がそれを空中でキャッチできたのは本当に奇跡だと思う。

 

渾身の一撃を防がれるとその生徒は疲れ果てたように倒れた。

 

「ちょ、先生、俺まだ15ですよ。15の生徒に自衛隊鬼教官が本気出さないでくださいよ」

 

「お前が普通の15だとでも?」

 

そんなこんなでその生徒は当分の間E組の話の種になるんだが、学校が終わる時、不破が面白いことを考えた。

 

「はい!新入生の名前考えました!」

 

そう言いながら教壇に立った不破はいつもよりハイテンションで、意気揚々と話し始めた。

 

「先生、黒板使ってもいいですか?」

 

「ええ、いいですよ」

 

そう言うと不破は描き始めた。

 

Xー>χー>カイ。

 

「?」

 

「不破、どう言うことだ?」

 

聞いたのは学級委員の磯貝君。こう言う時にまともな質問を聞いてくれる磯貝は本当に頼もしい。

 

「彼、傭兵Xって呼ばれてたそうじゃん。Xに似てるギリシャ文字はχ。それはカイって読み方するんだって!」

 

「なかなかいいネームセンスですね」

 

殺せんせーもそれを気に入り、反論する人はいなかった。当の本人は別に名前なんかどうでもいいといったように漫画を読んでいた。

 

「それでは、今日は終わりにしましょう」

 

昼休み中に意気投合したのか、カイは磯貝君や前原君と一緒に下校していた。

 

どこに住んでいるかも知らない、新しい生徒。

 

 

 

 

 

 

今は誰も気づいていなかった。彼が本来のエンディングを変更させるほどの重要人物になっていくとは。




第一話終了です。
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