やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです 作:MASUDA K-SUKE
プロローグ
20XX年、ある国では全国の学校から無作為に選ばれたクラスの生徒らを対象にした『プログラム』と呼ばれるデスゲームを行っていたッ!この『プログラム』とは、一つのクラスに属する生徒全員を一ヶ所に閉じ込め、最後の一人になるまで殺し合わせるというものであった。騙し、騙され、裏切り、裏切られ、利用し、利用され、殺し、殺される。そんな悪魔のゲーム『プログラム』を執り行うことを決めた法案を、人々はBR法と呼ぶッ!これはBR法によって不幸にもプログラムに参加させられたあるクラスの物語であるッ!
1
ある国のどこかにあるハーメルン学園。この学園の3年β組に一人の男子生徒が転校してきた。その生徒の名はやる夫という。白い肌、背は低く小太り。ほがらかで愛嬌のある顔をしている。いや、時々むかつく顔にもなる。
「こんにちはだお。ニュー速学園から来たやる夫だお。みんな、よろしくお願いするお」
彼は今、3年β組の教室でクラスメイトらへの自己紹介を終えたところであった。自己紹介を終えたやる夫はクラスメイト達からまばらながらも拍手で迎えられた。
「これからやる夫君も皆さんと共に勉強します。仲よくしてくださいね」
3年β組の担任である糸色望がそう言った。彼は絶望先生というあだ名で生徒から呼ばれている。
それではやる夫君の席は、と絶望先生がやる夫に席を教えようとした瞬間、教室の戸が叩かれた。
「やる夫君、悪いんですがちょっと待っていてください」
そう言うと絶望先生は教室の外へと出ていった。廊下で誰かと話し込んでいたが、しばらくすると話が終わったのか、教室に戻ってきて教卓の前でこう言った。
「皆さん、このクラスは今から修学旅行に行くことになりました」
は?
やる夫、転校初日から修学旅行の始まりだお。
聞いてないお。
2
走るバスの中、ここにはやる夫を含めたハーメルン高校3年β組の生徒43人と担任の絶望先生が乗っている。
まさか転校初日から修学旅行に行くとは思わなかったお。みんな楽しそうに話したり、遊んだりしてるお。でもこれはチャンスじゃないかお?修学旅行なら新しいクラスメイトらとどこかへ出かけたり、遊んだりしてすぐに仲良くなれそうだお!修学旅行万歳だお!
そう思ったやる夫は早速友人を作ろうと隣の席に座っている男子生徒を見た。彼は窓の外の景色を眺めている。その男子生徒の顔はやる夫にそっくりだが、やる夫の顔が横に長いのに対して彼の顔は縦に長かった。また、やる夫のような小太り体形ではなく、長身かつ痩身であった。
話しかけて友達になるチャンスだお。早速、やる夫の面白いキャラをアピールするお!
やる夫は隣に座っている男子生徒に満面の笑みを浮かべながら話しかけた。
「エライコッチャ、エライコッチャ、ヨイ、ヨイ、ヨイ、ヨイ、あんたのおなまえ何アンてエの?」
やる夫はただ話しかけるだけでは無く、手でそろばんをはじく動作も取り入れた。これはトニー谷という芸人のネタで、以前の学校でやる夫が頻繁にモノマネしていたものであった。
以前の学校ではこれが大受けだったお、彼もすぐに笑い出すお。
期待に胸を膨らませてやる夫は男子生徒の顔を見たが、やる夫の期待と異なり、男子生徒は首をかしげていた。笑うどころか、知らない物を見た時のような顔であった。よく分からないものを見せられ、反応に困っているのであろう。彼の頭上にクエスチョンマークが浮かんでいても不思議ではない。
「あっ…え、えっと…お、俺の名前はやらない夫です」
くっ、そこは『やらない夫と申ちまちゅ』とでも言って欲しかったお。このネタを知らないのかお。
当たり前だ。
渾身のネタが不発で少しショックだったやる夫。でも、やる夫はすぐに立ち直った。この立ち直りの早さはやる夫の長所でもあると言えよう。
「さっきも教室で自己紹介したけど、やる夫はやる夫というお。よろしくだお」
そう言うとやる夫は笑顔でやらない夫に右手を差し出した。やらない夫は困惑したような表情になりながらも、あっ、ああ、握手かと言うとやる夫の手を握った。
「仲良くしてほしいお、やらない夫さん。そうだ、やらない夫って呼んでもいいかお?」
「お、おう。こちらこそよろしくな。クラスメイトなんだし、呼び捨てぐらい構わないぜ。俺もお前の事をやる夫って呼ぶから」
「おおっ、早速友達が出来たお!嬉しいお。ありがとうだお、やらない夫」
その後も二人の会話は続いた。やる夫が話を切り出し、それにやらない夫が反応するかたちとなっていた。
「ネタと言えば、自己紹介でやろうと温めてたネタを披露するのを忘れてたお!」
「自己紹介は普通だったな。どんな事やろうと思ってたんだ?」
「ニュー速学園出身、やる夫。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらやる夫の所に来なさい。以上。面白いだお、やらない夫?」
「普通の自己紹介をしといて正解だろ、常識的に考えて。そんな自己紹介やってみろ、教室は沈黙し、事あるごとにお前はその事でからかわれる。地獄のような学校生活を送る事になるぞ」
「なんでだお?以前の学校ではみんな自己紹介ではこう言ってたお。人によっては改変もして、それがまた大受けだったお」
「それは前の学校がおかしかったんだろ。いいか、自己紹介で受け狙いなんて滑るだけじゃ済まないんだぞ。周りからは珍妙な奴と思われ、お前も自分の心に傷を付け、その傷を抱えて一生涯生きる事になるんだ。公の場では普通にするのが一番なんだ。今後の為に覚えておけよ」
「そうなのかお。みんなもやる夫の事を愉快な人だと好意的に見てくれると思ってたお。話は変わるけど、このクラスには変わった人が沢山いるんじゃないかお?」
「まあな。でも俺からしたらお前も十分に変わってるけどな」
是非やる夫に紹介してほしいお、とやる夫は言おうとしたがその発言はやる夫自身の欠伸によって妨げられた。
「むにゃ、なんだか眠いお。転校初日で緊張し、疲れが出たのかもしれないお」
「そうかもな。少し寝てもいいんじゃないか。着いてから眠くなるよりもいいだろ」
「そうするお。やらない夫、到着直前には起こしてくれお。それじゃあ、おやすみだお」
そう言うとやる夫は眠りについた。
「もう寝てやがる。こんなにすぐに眠れるなんて羨ましい奴だな」
やる夫が寝たのを見てからやらない夫は再び窓の外に目をやった。
そういや、到着直前に起こせって言ってたが、俺たちはどこへ向かってるんだ?だいたい、いきなり修学旅行なんておかしいだろ、常識的に考えて。あれっ、なんだか俺も眠いな。まあいいか、着いたら誰かが起こしてくれるだろ。俺も少し寝るか。
こうして、やらない夫も眠りについた。二人は知る由もないが、彼らが寝た後も一人また一人と眠りにつき、バスの中は静まりかえった。最後には運転手以外の全員が眠りについた。
3
「なんなんだお、この映画。ギャングものだと思って見てたら突然吸血鬼との戦いが始まったお。わけわかんないお」
「こいつは一体どんな夢を見てるんだ…おい、起きろやる夫!」
やらない夫は寝てるやる夫の体を揺さぶる。しばらくしてやる夫は目を覚ます。
「おはようだお、やらない夫。もうすぐ到着かお?」
そうだ、以前見た映画に面白いものが、というやる夫の発言をやらない夫は遮る。
「そんな話はどうでもいいだろ!周りを見てみろ」
やる夫は周囲を見ると、自分が学校の教室のような部屋の中にいる事に気づいた。また、やる夫は自分が椅子に座っており、目の前に机が置いてあることにも気づいた。机と椅子は共にどこの学校でもよく見かけるものであった。そして、やる夫だけでなく、やらない夫を含めクラスメイト全員に机と椅子が用意されていた。これではまるでどこにでもある学校の教室の風景である。だが、その学校にはいる筈のない人間が教室内にいる事に気づいた。それは全身を白い装甲で覆い、銃で武装したこの国の兵士、ストームトルーパーである。教室の四方にストームトルーパーは立っており、その中には生徒らに銃を向けている者もいる。
「どうなってるんだお、やらない夫!やる夫たちは修学旅行に出発したはずだお。何で学校に戻ってきてるんだお?それに、ストームトルーパーが何で教室にいるんだお?そして、何故やる夫たちに銃を突き付けてるんだお?」
「そんな一度に聞かれても俺だって分からないだろ!分かってるのは、ここは教室に似ているが俺たちの教室とは違っている、すなわちよく似た別のどこかという事だけだ」
そう言ったやらない夫を見て、やる夫はやらない夫の首に銀色の首輪がつけられている事に気づいた。いや、やらない夫だけではない。他の生徒の首にも同様の首輪がつけられている。そして、やる夫は自分にも首輪がつけられていることに気づいた。
「こ、この首輪はなんだお?いつの間につけられたんだお?」
「きっと俺たちが寝てる間につけられたんだ。バスの中で眠くなったのは俺たちだけじゃなく全員みたいだ。何らかの方法で眠らされ、その間に首輪をつけられてここへ運び込まれたらしい」
次第に他の生徒も目を覚まし、教室が騒がしくなり始めた。すると、教室の扉が開き、数人の男が入って来た。大柄で銀髪、顔には皺の刻まれた中年の男を先頭にし、その後ろには黒いサングラス、黒いネクタイ、黒いスーツといった全身を黒で統一した黒服の男らが数名続いた。黒服の男らは教室の扉を閉め、黒板の前に並び、やる夫ら生徒の方を向いて立っている。最初に入って来た中年の男は教卓に手を置き、やる夫らを眺めている。
超展開でわけが分からないお。あの黒服はなんなんだお。ハンターみたいだお、逃走中でも始めるのかお?
中年の男が口を開く。
「おはよう諸君。よく眠れたかな。私は今回のプログラムの進行を務めるBR法委員会の利根川幸雄という。突然だが今から君たちには殺し合いをしてもらう」
は?
このおっさん、突然出てきて何を言ってるんだお。殺し合い?いい年になって馬鹿じゃねーのかお。
利根川の発言で教室内はざわめきだす。それを見て利根川は自分の手を叩き生徒らを再び自分に注目させる。教室内が静まり、利根川は話を続けた。
「突然の事で戸惑っているかもしれないが、すぐに現状が把握できるようにしてやろう。連れて来い!」
利根川の指示に従い、教室に黒服が台車を押して入って来た。台車には人の身長程あるものが乗せられ、それに布がかぶせられている。利根川から外せと命令され、黒服は台車の荷物の布を外した。
そこにはロープで首を吊った3年β組の担任、糸色望の姿があった。生徒の中から悲鳴が上がる。やる夫は腰を抜かし、床に座り込んでしまった。
「絶望先生はこのクラスでプログラムを行う事に反対されてな、その為に首を吊ってもらった。絶望した、喜んで首を吊ってやる、自殺してやるなどとおっしゃってたな。潔い男だと思ったよ。だがな、首を吊る直前でこちらをチラチラと見てきたと思えば、死んだらどうするなどとぬかしおった。結局、いつまでも首を吊らないから、こちらで彼の自殺の手伝いをさせてもらった。そういう訳で、急きょこの私が3年β組の担任を務める事となった。それでは今からプログラムのルールを説明するが、一度しか言わないのでよく聞くように。質問は一切受け付けない」
教室が静まり返った。やる夫もとりあえず話を聞こうとする。
「これから私がくじを引き、そこに書かれた名前を読み上げる。名を呼ばれた生徒は前に来てもらう。生徒一人につき、一つのカバンを提供する。カバンの中には水、食料、地図、コンパス、時計、懐中電灯、そして武器が入っている。武器はそれぞれ異なったものとなっている。また、この島に来る時に君たちの荷物はすべて回収させてもらった。これは事前に武器を持ちこんでプログラムを有利に進めるのを防ぐためだ。君たちは与えられた武器を使って、この島で最後の一人となるまで殺し合いをしてもらうというわけだ。カバンを受け取り、この建物から出た時点でプログラム開始となる。ある生徒がカバンを受け取ってから一定時間経過後に私が再びくじを引き、そこで呼ばれた生徒はカバンを受け取りプログラムの開始、これの繰り返しだ。プログラムにおいてルール違反というものは存在しない。ありとあらゆる手を使って存分に殺し合って欲しい。さらに、この島には特殊な設備が施してある。これにより、この島では魔法、異能、超能力といったものは使えない。己の肉体と頭脳、そして支給された武器を駆使して戦ってもらう。もっとも、支給された武器次第ではそういった力が使えるようになるかもしれないがな。そして、既に気づいていると思うが、君たちには特殊な首輪を付けさせてもらった。その首輪は我々委員会がいつでも爆破させる事ができる。島から逃げたり、我々に抵抗したりするといった、我々の意に反した行動をした時はその首輪を爆破する。無理やり外そうとしても爆発することを覚えていてほしい。生きて帰りたければ自分以外のクラスメイトを全員殺せばいいというわけだ。そして、最後まで生き残った生徒一人には末代まで遊んで暮らせるほどの大金と、BR法委員会の長である唯一神様との面会が許され、願いを一つかなえてもらえる。そして、君たちに転校生を紹介しよう」
転校生?や、やる夫の事かお?
やる夫の予想と異なり、教室の扉が開き、二人の黒服が二人の男女を挟むようにして入って来た。男は長身で浅黒い肌、銀色の髪を立て、前髪を一部垂らしている。女は紫がかった黒髪を伸ばし、前髪を一直線に切りそろえている。
「転校生のオルガ・イツカ君と山田葵さんだ。この二人も今回のプログラムに参加する事になった。仲よく殺し合うように。以上で私の説明を全て終わらせていただく。君たちの健闘を心からお祈りさせていただく」
利根川は一礼し、黒服らにくじとカバンを用意するよう命じる。やる夫はこれまでの利根川の説明を聞いて恐怖に震えていた。
クラスメイトと最後の一人になるまで殺し合い?そ、そんなの出来ないお!やる夫はなんてクラスに転校してきてしまったんだお。そうだ、これは夢だお、夢に決まってるお。目が覚めたらやる夫はバスの中でやらない夫たちと修学旅行の行先について盛り上がるんだお。
やる夫は自分の頬をつねった。
痛い。痛みを感じる。夢ではない。
ところがどっこい、夢じゃありません。現実です。これが現実。
これは何の漫画のセリフだったかお。
頭がボーっとして働かない。思い出せない。
つらい。
それにあんなおっさん共に首輪を付けられて管理されるなんてやる夫の趣味ではない。
でも、仮に美人でボインのお姉さんに管理されるのだったらちょっといいかもしれないお。
しばらくしてやる夫は自己嫌悪に陥った。
そんな中、生徒の中から声が上がった。
「BR法?殺し合い?めんどくせー。やーだよ。バーーーカ!!!」
金色の髪をツインテールにした女子生徒、ポプ子がそう叫んだ。ポプ子に続くように他の生徒も声を上げだした。
「ポプ子の言うとおりだね。殺し合いなんて馬鹿馬鹿しいもの、僕は降りさせてもらう。僕の代わりにα組の藤木君でも参加させればいいじゃないか」
玉ねぎの様な形の頭をした男子生徒、永沢君男がつぶやく。
「困るフォイ!何で僕がこんなものをやらされなきゃいけないんだ!僕の父上は学園の理事で、政界、金融界といった様々なところに友人がいるんだぞ。今すぐ僕を解放しろ、さもないと父上が黙ってないぞ」
プラチナブロンドの髪、青白い顔の男子生徒、ドラコ・マルフォイはそう訴える。
「待ってくだちゃい!私この夏の映画の主演で、これから撮影に行かないといけないんでちゅ!その代わりにパチリスやエモンガ、トゲデマルをプログラムに参加させまちゅから。駄目?ならほっぺすりすりしてあげますから見逃してくだちゃい」
女子生徒、デデンネは委員会に取り入ろうとする。彼女の体は他の生徒と比べても小さい。オレンジ色の体。黒いしっぽ。綺麗な白い前歯。つぶらな瞳。大きな耳。赤く染まった頬。そこからアンテナ状の黒いひげが生えている。まるで鼠だ。
こうした反感の声に 教室がざわめきだすが、利根川は顔色を変えることなく教卓に手をつき、生徒らに向かい口を開いた。
「Fuck you…ブチ殺すぞゴミめら…」
ざわ…ざわざわ…
利根川の一言で教室は静まり返る。
「いいか、お前らはBR法委員会によって運悪く選ばれ、今ここにいる。それを理解しろ。面倒、帰らせろ、代理人をたてる?そんな泣き言で状況は何も変わらない。お前らがするべき事は勝ってここから抜け出すこと。勝ちもせず生きようとすることがそもそも論外なのだ!『勝ったらいいな』じゃない、人生は『勝たなきゃダメ』なんだ。心に刻め、勝つこと、勝つことだけが全てなのだ。勝たなければゴミ…勝たなければ…勝たなければ…!」
利根川の演説を聞いて、生徒らも反応を示す。
「殺し合いか。面白え、それならイライラしなくてすみそうだな」
茶色に染めた髪をボサボサにした男子生徒、浅倉威は笑みを浮かべる。
「クラスのみんなで遊ぶんでしょ、すっごく楽しそうだね」
深紅の瞳。黄色い髪をサイドテールにし、赤いリボンのついた白いナイトキャップをかぶった幼児体形の女子生徒、フランドール・スカーレットは笑い、万歳の姿勢を取る。彼女の背中には一対の枝に七色の結晶が吊り下がった独特の造形をした翼がある。
「面白そうなゲームじゃねえか。オレ様も乗るぜ」
独特の形に尖らせた長い銀髪の男子生徒、獏良了も参加の意思を示す。
「をーほっほっほ、トラップマスターのこの私にかかれば、プログラムなんて楽勝ですわ」
黄色のショートヘアで黒いカチューシャをした女子生徒、北条沙都子は高笑いをする。
「ルール無用の殺し合いって事は、何をやってもいいんだろっていう?でっていうにとってはまさに夢のようなこのゲーム!いいかお前ら、死の恐怖に震えて眠れっていうwwww」
緑色の爬虫類のような外見の男子生徒、でっていうは他の生徒を挑発する。
「支給武器、首輪、特殊能力の使用不可、脱出不可能な島、なるほど。これらの面倒なルールは口だけは達者なトーシローのためってわけですな。そうでもしないと、こんなカカシども、俺なら瞬きする間に(パチン)皆殺しにできる。それじゃあつまらないですからな」
浅黒い肌に短く刈り上げた髪。ダンディな髭が魅力的な男子生徒、ベネットはクラスメイトらに挑発をする。
「ちょっとみんな、こんなゲームに乗る気ですか?クラスメイト同士で殺し合うなんて間違ってます!私たちは深い絆で結ばれた仲間なんですよ!」
黒い髪を前に長く垂らした女子生徒、山村貞子は皆に訴えるが、別の女子生徒、水銀燈に鼻で笑われる。
「くぅだらない。相手を殺して生き残らないと生きて帰れないのよ。そう説明されたでしょ、おバカさぁん…それとも他人のために自殺でもするのかしらぁ?私は一向に構わないけど」
腰まで届く長い銀髪。赤い瞳。黒いリボンに黒いフリル、薄紫色の薔薇の意匠のヘッドドレスを付けており、気品のある姿だが、貞子を小バカにするような態度も感じられる。
やる夫はこの一連の発言を聞いて頭を抱えてしまった。
こいつら、殺し合いにノリノリだお。このクラス、どうかしてるお。
変わってる奴が多いって言っただろとやらない夫がそばでつぶやいた。
これらの様子を見て利根川は満足そうにうなずいた。
突如一人の男子生徒、ケニー・マコーミックが声を上げた。
「むーむーむむむーむむー!」
ケニーはオレンジ色のフードをかぶっており、口元が覆われてしまっている。そのために彼の発言はくぐもってしまっている。
「お前は何を言ってるのか聞き取りにくいんだよ。やれ!」
利根川は携帯電話を取り出して命令を下した。
その瞬間、ケニーの首輪が爆発した。ケニーの頭が吹き飛んだ。
【男子19番 ケニー・マコーミック 死亡】
【生存者 残り44人】
4
やる夫の目の前でクラスメイトが一人死んだ。一度も話したこともない、名前も知らない生徒とはいえ、その事はやる夫に大きなショックを与えた。周囲から「なんてこった!ケニーが殺されちゃった!」、「この人でなし!」という声も聞こえてきた。そんなケニーの遺体を見て利根川は黒服に掃除しておくように命じた。
「まだ現状を把握していない者はいるか」
利根川の質問に答えるものはいなかった。
「よろしい。開始前に参加者が一人減ってしまったが、これで男女の数が同じとなったのだから良しとしよう。それに首輪の爆発がどれ程のものかもわかっていただけただろう。それでは始めさせてもらおう」
利根川はそう言うと、黒服に用意させたくじを引いた。
「最初の出発者は、男子22番やる夫」
「い、いきなりやる夫かお」
やる夫は慌てふためきながらも床から立ち上がり、教室の前へ行く。そこで黒服からカバンを受け取った。そんなやる夫に利根川が話しかけてきた。
「教室を出て廊下の案内板に従えば外に出れる。そしたらゲームスタートだ。健闘を祈る」
恐怖で漏らしそうになるやる夫だが、勇気を振り絞って耐え抜いた。ここで醜態をさらせば、教室にいるストームトルーパーに撃ち殺されたり、先ほどの生徒のように遠隔操作で首輪を爆破されたりしかねない。涙を流しながらもやる夫はカバンを手に教室を後にした。やる夫が教室から出るのを見届けた利根川は側にいた黒服に話しかけた。
「聞くところによると、彼は今日このクラスに転校してきたそうだな。よかったじゃないか、ほとんどの生徒は赤の他人だ。他の生徒よりも躊躇なく殺し合いに参加できるだろうな」
5
廊下の指示に従ってやる夫は走る。そうしてるうちに建物から外に出た。ふと見上げると出てきた建物は非常に高いビルである事が分かった。やる夫が出てきた所の両脇にも武装したストームトルーパーが立っていた。恐らく、再び本部に入ろうとする者を撃ち殺すためだろう。
そうか、やる夫たちはビルの一室に設けられた、教室を模した部屋にいたみたいだお。はっ、入り口付近にいたら次に出てくるクラスメイトと遭遇しかねないお。先ほどのやり取りを見ると殺し合いに積極的な人もいるみたいだし、まずは入り口からできるだけ遠くへ逃げて、安全なところに隠れるお。くっそ、転校初日でクラスメイトと殺し合う事になるとは思いもよらなかったお!
本部のビルから出来るだけ離れる、その一心でやる夫は走り出した。
【男子22番 やる夫】
【身体能力】 E 【頭脳】 E
【武器】 ???
【スタンス】 生き延びる
【思考】 遠くへ逃げる
【身体状態】 正常 【精神状態】 動揺
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ*
全ての生徒が出発した後、利根川と黒服も教室を後にし、ビル内のvipルームに向かった。そこには金融界、政界、芸能界、そして裏社会の大物といった世界中のvipが顔をそろえていた。この島にあるBR法運営委員会のビルでは参加生徒の管理だけではなく、このようなvipをもてなす為の部屋も多く用意されている。vipらはこのプログラムを娯楽として楽しむためにこの島を訪れた。vipルームから生徒たちの戦いの様子を観戦しているのである。ただ観戦するだけではなく、どの生徒が生き残るかの賭けも行われており、一回のプログラムで国家予算並みの金が動くとのうわさもある。そんなvipらの前で利根川は挨拶をした。
「ハーメルン学園3年β組45名を対象としたプログラム、無事に開始いたしました。それでは皆様にこのクラスの名簿をお渡ししましょう。○が生存、●が死亡を表します。果たして誰が生き残るのか、ぜひ予想してみてください。全滅という可能性もあります。あまり大声で言えないのですが、複数人生存というのも否定できませんがね」
ハーメルン学園3年β組45名 名簿
○→生存、●→死亡
○ 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
○ 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
○ 男子07番 剛田武
○ 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
○ 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
○ 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
○ 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
○ 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
○ 女子18番 見崎鳴
○ 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
○ 女子22番 両儀式
【生存者 残り44人】