やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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MAD動画が作られる!BB素材も量産される!ゲーム化する!決闘者になる!異世界転生したと思ったら様々なアニメとコラボする!お次は全ガンダム大投票キャラクター部門1位ときたわ!挙句の果てにはバトル・ロワイアルに参加させられた!一体何があったのか教えて頂戴!

ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り25人】


10話

63

「な、何あれ!?ベネット君が、ベネット君が二人いたよ!も、もしかして、お化け!?それとも幽霊!?」

 走りながら木之本桜は慌てふためく。

 その後ろを走るドラコ・マルフォイがさくらに話しかける。

「い、いや。あれは幽霊やゴーストとかの類とは違うと思うぞ。あれは――なんだ、そう忍者だ。分身の術みたいなものじゃないかと思う」

「そ、そっか。そうだよね、ベネット君はまだ生きてるんだから、化けて出たりしないよね。――そうだ!」

 さくらは走りながらレーダーを取り出し、画面を見た。

 画面の中心には動く二つの丸があり、その二つの後を追うように一つの丸が動いている。

「聞いてマルフォイ君!レーダーにはわたし達二人と動いている一つの丸しか表示されてないの。この一つの丸がベネット君だと思う。やっぱり、わたし達の事を追ってるみたい」

「一つ?つまりさっき見たベネットの内、もう一人はレーダーに映らないのか?まさか、さっきのは見間違いか――いや、二人そろって見間違いなんてする筈が無い。だとしたらやっぱりあれは分身か、もしくは幻覚の類か?」

 マルフォイは後ろをちらと見た。まだ距離はあるものの、ベネットが自分たちに迫ってきているのが見て取れる。

 このままだと追いつかれる…。流石の身体能力の高さといったところだ。木之本だけなら逃げられるかもしれないが、僕はこのままだと…。

 マルフォイは歯を食いしばって足に力を込め、走る速度を上げた。

 マルフォイの前を走るさくらは再びレーダーの画面を見た。

 画面の中心の丸はさくら自身、そのすぐ側にあるのがマルフォイを示している。この二つの丸に後方から猛烈な勢いで迫る一つの丸がある。これがベネットを指し示しているのは明確である。

「ねえマルフォイ君、もしかしてだけど…ベネット君とも話し合いで解決できないかな?」

 振り向いてさくらは尋ねた。それに対し、マルフォイは首を左右に勢いよく振る。

「出来るわけがないね!あのベネットが説得に応じて戦いを止める筈が無い!」

その時、二人の後方からベネットが叫んだ。

「マルフォイに木之本!てめぇら非戦闘員はいたぶりゃしねえ、無駄な抵抗しなけりゃ楽に殺してやるぜ!」

 マルフォイは顔を青ざめ、さくらに話しかける。

「ほら見ろ!ベネットに捕まったら、僕らは一貫の終わりだ!」

「ほええええっ!――マ、マルフォイ君、後ろ!」

 さくらに言われ、マルフォイが後ろに振り向いた。そこには物陰から姿を現したもう一人のベネット、コピーベネットがいた。コピーベネットが手を伸ばし、後ろからマルフォイの首元をつかんだ。急に走るのを妨げられたマルフォイは前のめりに倒れそうになるが、それよりも強い力で後ろから引っ張られた。

「マルフォイ君!」

 さくらが叫ぶ。

「うわあああああああ!!た、助けてくれ木之本――!」

 後ろから口元を押さえられ、マルフォイの発言は妨げられた。

「逃げるなよ木之本。逃げれば――マルフォイは殺すぜ」

 片手でエクスカリバールを振り回しながら、ベネットがさくらにゆっくりと近づいてくる。日頃の訓練の賜物か、先ほどまで走っていたのにも関わらず、ベネットの息はほとんど乱れていない。

「俺が後ろから追いかけて注意を引き、その隙に相棒が物陰からそっと近づいて、相手を捉える。作戦通りだ、流石だな相棒」

 ベネットは笑みを浮かべてコピーベネットに話しかける。コピーベネットもマルフォイの口元を押さえつけながら、ウインクをしてそれに答える。

 喋れないマルフォイは必死にもがいてコピーベネットの拘束から逃れようとするが、コピーベネットの力は凄まじく、振りほどくことが出来ない。

「側でピーチクパーチクやかましいぞマルフォイ。拘束されるのは初めてか?おい相棒、もっと力を入れてやれ」

 ベネットがそう言うと、コピーベネットはマルフォイの首元に片腕を回し、力を込めて締め上げた。

 痛みと苦しさでマルフォイは呻き声をあげた。両腕でコピーベネットの腕を首から外そうとするが、マルフォイの力ではびくともしない。

「もうやめて!マルフォイ君が苦しんでるよ!ベネット君、どうしてこんな酷い事をするの!?」

 涙を浮かべ、さくらがベネットに訴えるが、ベネットはどこ吹く風で、小指で耳の穴をほじくっている。

「まったくお笑いだ。そういうのは他所でやってもらいたいですな。ここは戦場――はじけろ!筋肉!!飛び散れ!汗!!男のリトマス試験紙、バーノン・ウェルズ!おかわり!ベネット丼――の世界だ!俺達には生きるか死ぬかの二択しかない。それが――戦争だ。女が戦場にいるのは気に入らないな。どうだ相棒――先に木之本からやっちまうか?」

 ベネットはコピーベネットに話しかけた。

「それでいいんじゃないか、もう一人の俺。木之本とマルフォイみたいな雑魚はさっさと殺って次の獲物を探しに行こうぜ」

 コピーベネットがそう返事をした。コピーベネットは腕の力を抜き、マルフォイの首元から腕を離した。

 マルフォイは息を荒げ、苦しげな表情をしている。

 ベネットはエクスカリバールで左の掌を叩きながらさくらに近づく。この光景を見て、マルフォイは叫んだ。

「何とかしてくれ木之本――!痛い!痛い!折れる!腕がおれちゃうよ――!」

 コピーベネットがマルフォイの腕を力強く握り締めた。

「女の子に助けを乞うとは、なんて情けねえ男だ、このクソッタレエ」

 マルフォイの苦しむ姿を見て、さくらはその場に立ちすくんでしまう。

「逃げるなと言っただろう木之本?鬼ごっこは面倒でなあ――。お前が逃げれば、マルフォイは殺す。この先どうなるかはお前次第だ。マルフォイを無事助けたければ――俺たちに従え、OK?」

 口角を上げたベネットがさくらに話しかけた。

「わ、分かったよ!わたしはどうなってもいいから!でもお願い!マルフォイ君は助けてあげて!」

 さくらの懇願にベネットとコピーベネットは目を丸くした。互いに目を合わせた後、ベネットとコピーベネットは声を上げて笑い出した。

「ハハハハハ!聞いたか相棒。木之本は自分よりも他人の命が大事みたいだぜ?コイツは傑作だ!」

「美談ですな。俺も涙が出そうだぜ。で――どうするんだ、もう一人の俺?」

「俺も非情なターミネーターじゃねえ。女の子の頼み、聞いてやるとするか」

 そうか、とコピーベネットが言い、握っていたマルフォイの腕から手を離した。

「痛い――痛いよ!ああっ――!腕が折れた!首も折れてる!死んじゃう、死んじゃうよ!」

 マルフォイは地面に倒れこんで、わめいている。

「ハッ、魔法に頼ってばかりで体を鍛えないからこうなるんだ。箒に乗ったり、呪文を唱えたりする暇があったら、ジムに通ったり、実戦を経験したりして筋肉を鍛えておくんだったな。軟弱なカカシ――いや、マルフォイ、お前はただのモヤシですな」

 コピーベネットがマルフォイを鼻で笑う。

「さあよく見とけよ、マルフォイ。お前の為に木之本は自分の命を投げ捨てるそうだ。そんな彼女の最期の雄姿、しっかりと見ておけよ。でないと、彼女に失礼だろう?」

 コピーベネットはマルフォイの髪を掴んで持ち上げる。

「痛い痛い!引っ張るな、髪の毛が抜けちゃうよ!」

 騒ぐマルフォイを尻目に、ベネットはさくらの正面に立った。

「約束は守るぜ木之本。痛いのは一瞬で、すぐ楽になれる。そしてマルフォイは見逃してやるぜ」

 ベネットに約束を守る気は毛頭無い。コピーベネットもそれが分かっている。それを知ったマルフォイがどんな顔をするかを想像しては面白がっている。

 ベネットは両手でエクスカリバールを握り、上段に掲げた。

 さくらは両目をつぶった。

 マルフォイも目を閉じようとしたが、コピーベネットが指で瞼を押さえつけた。

 ベネットがエクスカリバールを振り下ろす瞬間である。

「邪魔するぜ――」

 ――あ?

 突如、男の声が聞こえた。ベネットは声がした方を振り向いた。

 その瞬間、ベネットの顔面に蹴りが入った。その蹴りを受け、ベネットの体が横に跳んだ。突然の事であり、ベネットといえども対応が出来ない。蹴られたベネットの体が地を転がる。ベネットの手からエクスカリバールが離れ、宙を舞う。くるくると回転したエクスカリバールはベネットから離れた地面に突き刺さった。

 蹴られたベネットはすぐさま体を起こす。蹴られた顔面を触り、怪我の具合を確かめた。

 こ、これは――血!

 蹴られた衝撃でベネットは鼻血を流していた。それを手でぬぐい、ベネットは立ち上がった。

 この光景を見ていたマルフォイ、コピーベネットも予想外の出来事に茫然としていた。

 一方で、目をつぶっていたさくらも、そっと目を開けた。

「え…?」

 さくらの眼前に立っていたのは、ベネットではなかった。男性、およそ190センチメートル、髪は銀、浅黒い色の肌をしていた。

「誰だてめぇ…まず名乗れよ眼鏡」

 怒りに顔を歪め、ベネットがぼやく。

 それに答えるように、乱入した男が口を開いた。

「俺は…鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ…」

 そう言うと、オルガはトカレフTT-33を左手に持ち、ベネットへと向けた。

 オルガ・イツカ――コイツは転校生…委員会の刺客か面白え…!それに――よく見ると眼鏡かけてねえぞ!

 ベネットはその場に佇み、辺りを見渡す。

 バールがあんなに遠くへ飛んでったか――。銃を向けられている以上、取りにはいけねえ!

 ベネットは眉間に皺を寄せながらも、ゆっくりと両手を上げた。

 それでもオルガが銃口をベネットから外す事は無い。

「おいテメエ!こっちを見ろ!」

 コピーベネットが叫んだ。オルガは視線だけをコピーベネットに向けた。

 コピーベネットは再びマルフォイの首元に腕を回して立っていた。

 いいぜ、相棒!流石は俺だ!こっちには切り札がある。マルフォイを人質にして、ここから形勢を立て直す!

「マルフォイ君!」

 さくらが叫ぶ。

 だがオルガはすぐさま視線をベネットに戻した。

 このオルガの対応にコピーベネットも慌てた。

「お、おい!お前、コイツがどうなってもいいのか!?」

「さあな。そいつがどうなろうと俺が知った事じゃねえ」

 確かにオルガ・イツカの言うとおりだ。転校生のコイツには人質作戦は通じねえ。そんな事も分からねえのか、相棒!

 コピーベネットも怒りに歯を噛み締めている。コピーベネットはマルフォイの首を絞めながらも、マルフォイに話しかける。

「そうか…マルフォイ、お前はもう用済みだ。今から死んでもらうぜ。どうした――怖いか?」

「怖い?この僕が?フン――怖がっているのは僕ではなく――君じゃないのかベネット? いや――醜いデカブツの野獣君?」

 マルフォイの口調にはいつもの様に自信とプライドが現れていた。この事がコピーベネットの怒りの火に油を注ぐことになった。

「ブッ殺してやる!イッヒッヒッヒ!アハハハハハ!――誰がテメェなんか!テメェなんかこわかネェェェ!野郎ブッ殺してやるぁああああ!!」

 コピーベネットは力強くマルフォイの体を地に叩きつけた。雄叫びを上げながらコピーベネットは拳を振り上げ、マルフォイの顔面を殴り潰そうとする。

 それよりも速く、マルフォイが懐からデオドラントスプレーを取り出し、コピーベネットの顔へと吹き付けた。

「うおっ!?」

 予想外のマルフォイの反撃に、コピーベネットは攻撃を止めて顔を押さえた。その隙を逃さず、マルフォイは瞬時に立ち上がり、さくら、オルガの元へと駆け出した。

 この時、コピーベネットの姿に変化が訪れた。輪郭、姿が歪みはじめ、ベネットの体程の大きさから手で抱えられるほどの小ささへと変わっていく。瞬く間にコピーベネットの姿は消え、そこにはクリーム色の人形が転がっていた。

 コピーベネットは自らの手で、コピーを解除する鼻を押したのだ。

 あのマヌケェ!あんな挑発に乗りやがってぇ!

 オルガに銃を突き付けられていたことも忘れ、ベネットはコピーロボットを回収するべく走り出した。

 オルガはベネットを逃さない。オルガの拳銃から銃弾が放たれ、ベネットの足を貫いた。

 だが、ベネットは根性で痛みに耐え、悲鳴を上げることも無かった。

 片足を引きずってでもコピーロボットに近づこうとするベネット。だが、ベネットの手がコピーロボットに触れる前に、ベネットの眼前をさくらが横切った。それと同時に、さくらがコピーロボットを拾い上げた。

「くっそおおおおおおおお!!」

 恨みのこもった声を上げ、ベネットはさくらに飛びかかる。だが、片足を怪我した今のベネットでは思うように遠くまで跳べない。

 さくらもベネットの動きを持ち前の反射神経でかわし、身軽に後ろへと跳んだ。

 その結果、ベネットの手は空を切り、上半身を地面に打ち付ける結果となった。

「どうなってるんだあああああ!!マルフォオオオオオオイ!!お前の腕は折れた筈だあ――!」

「残念だったなベネット。折れたフリだよ。こう見えても僕は痛がる演技には自信があるのさ」

 マルフォイは勝ち誇った笑みを浮かべた。手にデオドラントスプレーを持ち、腕が折れていない事をベネットに見せびらかすように左右に振って見せた。

 この俺が――トリックに引っかかっただとおおお!?

 ベネットは額に青筋を浮かべ、マルフォイらを睨んだ。

 その視線の先で、オルガが銃口を自分の顔に向けている事に気づいた。

「双子漫才御苦労さん。珍しい物を見せてもらったぜ。まあ、これっぽっちも面白くなかったがな」

「畜生おおおおおおおおお!!」

 目と口を大きく開き、最後の力を振り絞ってオルガを殺すべく、ベネットはオルガに襲い掛かった。

 オルガの拳銃から1発の銃弾が放たれた。それはベネットの眉間を貫いた。

 ベネットの断末魔の叫びはオルガの銃声によってかき消された。

 

【男子17番 ベネット 死亡】

【生存者 残り24人】

 

 

 

64

「さあ、早くそのマシンガンを見せてくれる?」

「でも、いくら銀ちゃんでも、それだけは――」

「だから人目につかないここまで来たんじゃないの。1回きり見せてくれればそれで私は満足するの。お願いだから、ネネ――いいでしょう?」

 水銀燈は両手を合わせ、しなを作って泉研に笑顔で頼んだ。

「僕はイヤですね!」

 研の返事は拒否だった。

 水銀燈は舌打ちをして研を睨んだ。

 マシンガンさえ手にできれば、すぐにでもこの子を殺せるんだけど――やっぱりそう簡単にはいかないわねぇ…。いつまでもまとわりつかれるのも鬱陶しいし、この子を殺すか、マシンガンを奪う何かいい方法は無いかしらぁ…?

 水銀燈はちらと研を見やった。

 研はバッグからヤクルトを取り出して飲み干した。

「うんまぁい☆」

 ヤクルトを飲み干した研は口元をぬぐった。

 水銀燈は研の顔面目掛けてパラソルを振るった。

 この水銀燈の攻撃を研はしゃがんで避けた。

 すぐさま水銀燈は足を伸ばし、研のすねに蹴りを入れた。

「痛いなあ!なんて酷い事をするんだよ!」

 研がイングラムM10を片手に、水銀燈への怒りを露わにした。

「貴方ねぇ…ヤクルトは全部飲みほしたんじゃなかったの…?」

「ああ、これかい?バッグの底の方に転がってたんだ。運が良かったなあ」

「そうよね!おかしいと思ったのよ!ヤクルトは基本10本入りよ!なのに貴方は9本目で最期の1本って言ったじゃない!もしかしたら私と会う前に1本飲んでたのかもしれないとか思ったけど――やっぱり飲んでないじゃない!それは私のヤクルトよ!返しなさいよ!私のヤクルト!このジャンク!」

 物凄い剣幕で水銀燈は研へと怒りをぶつける。

「え~。銀ちゃん、僕が飲んだ本数をいちいち数えてたのかい?細かいなあ。そんな事いちいち覚えてないよ」

「4話参照!数えてみれば分かるわよ!ああもう限界――今すぐ貴方を殺すわ。食べ物の恨みは恐ろしいという事を思い知りなさい!」

 水銀燈は研の胸倉をつかむ。もう一方の手で研のイングラムM10を奪い取ろうとするが、研も必死に抵抗する。

「ゴメンゴメン!あぁっ――ん、ちょ、ちょっと銀ちゃん、どこ触ってるんだい!?」

「マシンガンよ!少しでも自責の念があるなら、このマシンガンを私によこしなさいよぉ!」

「謝ってるじゃないか!許してくれよ」

「はあ?自分から許してくれだなんて、全く反省してないじゃない!私に許してもらいたければ、十字路に立ち、跪いて貴方が穢した大地に接吻してみなさいよぉ!それから世界中の人々に対して四方に向かってお辞儀をし、大声で『僕がヤクルトを飲みました!』とでも言いなさい!そしたらこの件については許してあげるわ!」

「あ――いや、別に、そこまでしなきゃならないのなら、許されなくてもいいや…」

「ならば今すぐ死になさい!」

 水銀燈は研からマシンガンを奪い取るべく、研に組みかかった。それから水銀燈と研の取っ組み合いがしばし続いた。水銀燈は必死でマシンガンに手を伸ばすが、研の方が身体能力の点で優れており、水銀燈がマシンガンを奪う事は叶わない。だが研も水銀燈をあしらうだけで、水銀燈を撃ったり蹴りを入れたりするような危害を加える事はしない。

 研は水銀燈がジュラル星人でないと思っているからだろう。鬼畜ヒーロー、チャージマン研として名高い泉研でもジュラル星人でもない女の子を相手に乱暴は出来ない。

 取っ組み合いの最中、水銀燈がその手を止めた。水銀燈の視線は研のはるか後方に向けられていた。

 水銀燈の視線の先に一人の男子生徒の後ろ姿があった。その男子生徒は長身、茶髪、清潔そうな印象を与える男だった。

 あれって――ムスカじゃなぁい?

 水銀燈は手を止め、じっと遠くにいる男の観察を始めた。

「あれ?どうしたんだい銀ちゃん?」

「うるさいジャンクねえ…とりあえず呼吸するのを止めてくれるかしらぁ?」

 水銀燈は自分の口元に人差し指を立て、小声で研にそう言った。

 水銀燈はじっと男を見ていたが、その男も後ろを振り返った。

 気づかれたら面倒ね…。

 水銀燈はその場で身を屈めた。だが男からは目を離さなかった。

 その男は水銀燈の予想通り、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタだった。ムスカは周囲に気を配りながらゆっくりと歩いている。特にムスカの後方、水銀燈と研が争っていた方角が気になるのか、そちらを用心深く見ている。

 水銀燈は身動きをせず、ムスカがいなくなるのを待っていた。

 ムスカも安心したのか、次第に水銀燈らから離れていった。

「ふぅ…やっと行ったわね」

「ん?誰かいたのかい?」

「なぁんで生きてんのよぉ、呼吸するなって言ったでしょう?」

「それよりも誰がいたんだい?ジュラル星人と戦ってくれる強力な味方になってくれるかもしれないじゃないか!」

「はあ…。ムスカよ」

「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ君かい!?いいじゃないか! ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ君なら強いし、頭もいい。ジュラル星人との戦いにも間違いなく協力してくれるよ!」

「何でムスカを本名で呼ぶのよ、長いじゃないのぉ…」

「本名で呼ぶならいいじゃないか」

「そうやって尺を稼ぐつもりでしょ、このお馬鹿さぁん…。そんな事やってると、ますます読者が減るじゃなぁい、どうしてくれるのよぉ」

 水銀燈の嫌味に耳を傾けず、研は支度を始めた。

「さあ銀ちゃん、ムスカ君を追いかけよう!どっちへ行ったんだい?」

 最初からムスカって呼びなさいよ。

 水銀燈は非常に苛立っていた。

「そうねぇ…」と口を開いた水銀燈。

 ――あらぁ?ちょっと名案思い浮かんじゃったわ。

 水銀燈は口元に手をやり、妖艶に微笑んで研に話しかけた。

「ねえ貴方…、今気づいたのだけど、さっきのムスカに妙な事があったのよぉ…」

「妙な事?髪の分け目が逆だったのかい?それとも――西部警察で渡哲也がかけていた物と同じサングラスをかけていたのかい?ハッ、まさか――赤と青の3Dメガネ…!」

 もうこのお馬鹿さんにはツッコまないわ。私までお馬鹿さんになっちゃう。

「ムスカの近くに水たまりがあったのよ。でもね――その水たまりにムスカの姿が映ってなかったの。ねぇ――これってジュラル星人なんじゃなぁい?ジュラル星人って鏡に映らないんでしょう?」

 これは水銀燈の作り話である。だが水銀燈の話を聞いて研は目を見開いた。

「どうやら僕の勘は当たっていた!やはりこのプログラムはジュラル星人の仕業だ!ジュラル星人め、ムスカ君に化けてクラスの皆を殺したな――!銀ちゃん!ムスカ君に化けたジュラル星人はどっちへ逃げたんだい!?」

「あっちよぉ…」

 水銀燈はムスカが歩いて行った方向を指さした。

 研は水銀燈が示した方向へと瞬時に走り出した。

 水銀燈は笑いたいのを必死に抑えていた。

 アハハハハハ!上手くいったわ!今の私には泉研は殺せない。だったら別の誰かに殺してもらえばいいのよねぇ。泉研とムスカを戦わせて互いに死ねば、武器は全部私の物。どちらか片方だけが死んでも、生存者が減ってくれればそれだけ私の優勝が近づくわ。ジャンクとハサミは使いようよ!

 野望を胸に秘め、水銀燈も研の後を追った。

 

【女子08番 水銀燈】

【身体能力】 D 【頭脳】 A

【武器】 パラソル

【スタンス】 優勝を目指す

【思考】 漁夫の利を狙う

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【男子04番 泉研】

【身体能力】 A 【頭脳】 E

【武器】 イングラムM10

【スタンス】 ジュラル星人は皆殺し

【思考】 ムスカ君に化けたジュラル星人を殺す

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

 

 

65

 阿部高和は支給武器である漫画、ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクトを取り出し、丁寧な手つきでページを外し始めた。

「阿部さん、傷は大丈夫かお?」

 不安げな表情でやる夫が尋ねた。

「大丈夫だぜ、やる夫。お前がこの事について気を止む必要は無い。お前は俺との約束を果たしてくれただけさ」

 やる夫、やらない夫、阿部の三人は獏良了、及び操られた山田葵との戦いの後、戦いで負った怪我に処置を施していた。殴られたり、蹴られたりしたやる夫とやらない夫の怪我は、冷やしてしばらく安静にした。その事で痛みは和らいでいた。だが阿部の怪我、やる夫の剣で貫かれた股間は決して良い状態ではなかった。

 そういや、やる夫の肛門も――いや、考えないようにしよう。

 突如、思いついた疑問をやらない夫は頭を左右に振ってかき消す。

 傷の洗浄をするために阿部は自身に支給された水を使った。本来なら水道の使える民家を探し、そこで水道水を使って傷口を洗浄するつもりだった。だが支給された地図で確認したところ、彼ら3人がいる場所の近くには民家が無かった。また、この島には川もないため、今使える清浄な水は支給された飲み水しかなかった。

 だが阿部はすぐさま飲み水を使い、傷を洗った。そして、漫画から外したページで血を拭き取った。

「やる夫もこの水と漫画を使ってくれ」

 阿部はそう言って、水とページの束をやる夫に渡した。やる夫はそれを受け取り、阿部と同様に先ほどの戦いで負った肛門の怪我を洗った。

 この光景をやらない夫はなるべく見ないようにしていた。阿部、やる夫が怪我した部位はやらない夫にとって目をそむけたくなるようなものだったからだ。

「よーし、これでばっちりだお!」

 やる夫の声が聞こえたため、やらない夫は振り返った。

 だがやらない夫は瞬時に首を横に振った。

「おい阿部!全裸じゃねえか!そういうの、ホント止めろって!」

 やらない夫が声を荒げて叫んだ。

「おいおい、そうは言ったって仕方ないだろう。衣服は全部なくなっちまったんだ」

 阿部が言うように、阿部の制服、下着はこれまでの戦いで焼失してしまった。筋骨隆々の阿部の体を露わにしている。損傷した股間にはページを包帯代わりとして巻き付けている。。

「それなら阿部さん、やる夫に良い考えがあるお。このページの束を使うお!」

 やる夫が阿部にページの束を渡した。

「やる夫の言うとおりにやるんだお」

「ほう、何か考えがあるみたいだな。やる夫、よろしく頼むぜ」

 そう言うと阿部はページの束をまとめ、やる夫に言われるがままに何かしらの作業を始めた。

 その作業の音を、やらない夫は目を閉じて聞いていた。数分後、阿部がやらない夫に向かって、もう大丈夫だぜ、と言った。

 その声に従い、やらない夫は阿部の方を向いた。

 阿部は紙製のスカートを履いていた。このスカートはウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクトのページをまとめて作られたスカートである。

「おおっ!いいじゃん、阿部。それなら見苦しくもないし、結構お前に似合ってるぞ」

「なんて素晴らしいアイディアでしょう――考案したのは、この天才デザイナー、やる夫だお」

 やらない夫からも意外にも好評で、やる夫は誇らしげに言った。

「オレの支給武器にこういう使い方があったとは驚きだぜ。やる夫の発想には驚かされるな」

「そうだお?やる夫は凄いお、天才だお、もっと褒めるお!」

 感極まったやる夫はその場でとんだり回ったりした。

「ほらここを見てくれやらない夫。こいつをどう思う?」

 阿部は嬉しそうに、自身のスカートを指さした。

 やらない夫は阿部が指さした箇所を見た。ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクトの各ページのコマがスカートの柄となっている。

 その為か、阿部のスカートには数多のいい男の顔や、『あおおーっ!!』なシーンや、『ウホッ』なシーンが多く載っている。

 やらない夫は死んだ目でそれらを見た。

 いやあ――これはねーわ。確かに漫画の名シーンがプリントされたTシャツとかはあるけど、こんないい男だらけのスカートはマズいだろ…。

「すごく…ゲイ術的だろ?」

 やらない夫の考えなど知らず、阿部は嬉しそうに言った。

 やらない夫は適当に「おー」とだけ返事した。

「さて、応急処置も済んだし――二人共、やらないか」

「やらねーよ!」

 スカートに手をかけようとした阿部をやらない夫が瞬時に制した。

「阿部さん、そもそも出来るのかお!?その――やる夫が阿部さんのモノは使い物にならなくしてしまったし――」

「だからその心配はしなくていいといっただろう、やる夫。幸いにも俺を操ってたバクラは掘るという事に関して無知だったらしい。ただやる夫のケツにオレのイチモツを近づけただけで、その後どうすればいいかは分からずじまい――そこで一瞬俺を操るのを止めた。その瞬間にやる夫の剣が伸びたもんだから、幸いにも急所は外れた。痛みはあるが機能としては問題ないぜ」

「そいつは良かったお!いやあ、バクラとかいう奴はピュアだったお…」

 しみじみとやる夫が言った。

 うーん…喜ばしい事なんだが、素直に喜べないだろ。

「それにもう一つ嬉しいニュースがある。俺の体がボロボロ――生命の危機に瀕した今だからこそ、俺の生存本能が子孫を残せと――俺のイチモツを活性化させている!いつも以上にビンビンだぜ!」

「凄いお阿部さん!これぞ生命の神秘!でも阿部さんには種の存続なんて一切関係ねーお!」

「そうだな――やる夫の言うとおりだ!でも実際にビンビンなんだぜ。生命って不思議だな!」

 やる夫と阿部は互いに大声で笑った。やらない夫だけが一人眉間を押さえていた。

「なあやる夫、瀕死の俺のイチモツ――試してみたくないか?あの剣で貫かれたのはノーカンだろ。俺がお前の初めてを貰ってやるよ」

「嫌だお!怪我してるだろ阿部さん!血まみれのイチモツとか、なんか怖えーお!」

「ハハハ――そうだな。じゃあ帰って怪我を治してからの楽しみにとっておこうか。代わりにだが――やる夫、俺で童貞を捨ててみないか?」

「阿部さん――」

「もうそういう話はやめろ!はい、お終い!これでこの話は終わり!これ以上続けたら俺は怒るぞ!治療が終わったならさっさと動くぞ!」

 やらない夫が声を荒げた。このやらない夫の介入に対し、やる夫が残念そうな表情でやらない夫に話しかけた。

「うわーやらない夫がキレてるんですけどー。自分の思い通りにならないとすぐにキレる最近の若者ってこわー」

「そうだな。俺がやらない夫を立派な大人にしてやるか」

「おい阿部!そういうのは帰ってからの楽しみにするんじゃなかったのか!?」

「俺もそのつもりさ。だがな――血まみれでやりまくるのもいいかもしれないしな!禁忌を犯した果てに得られる禁断の果実――!試してみたくはないか!?やる夫!やらない夫!」

「ねーお!!」

「ねーよ!!」

 やる夫とやらない夫が同時に叫んだ。つかの間の沈黙の後、やる夫とやらない夫が顔を見合わせた。そして、二人は同時に笑い出した。

「やる夫とのやらない夫の返事がかぶったお。やる夫達、やっぱり息ピッタリじゃないかお?」

「いやいやいや、あんな事言われて拒否しない奴の方が珍しいだろ、常識的に考えて」

「なるほど!つまりやる夫は常識人!」

「どの口が言うんだ!」

「やらない夫には言われたくねえお!」

 やる夫と会話をしているやらない夫は奇妙な感覚を覚えた。

 人付き合いって面倒な事だと思ってたが――偶には悪くないだろ。

 これまで極力、人との交流を避けてきたやらない夫に芽生えた新しい感情だった。

「参ったな――。こうも二人に拒否されちゃあ、この島での発散は無理そうだな。無理矢理ヤるのも俺の趣味じゃないし、ここはやらない夫の言うとおりに次の行動に出るか」

 頭を掻きながら阿部が言った。やる夫も賛成の意を示し、阿部の後を追って動き始める。

 あっそうだ。

「なあ、やる夫。お前の剣のキーホルダー、ちゃんと水で洗って拭き取ったか?」

「へ?してねーお」

「せめて洗っとけよ…。阿部を刺したり、お前の肛門に突っ込まれたりと、このままじゃキーホルダーが可哀そうだろ。多分キーホルダーは泣いているぞ」

 

【男子22番 やる夫】

【身体能力】 E 【頭脳】 E

【武器】 剣のキーホルダー

【スタンス】 委員会を倒して島からの脱出

【思考】 泣いてるお…

【身体状態】小ダメージ 【精神状態】 正常

 

【男子21番 やらない夫】

【身体能力】 B 【頭脳】 B

【武器】 高性能拡声器、カイザギア

【スタンス】 やる夫、阿部と共に島からの脱出

【思考】 泣いてるだろ…

【身体状態】 小ダメージ 【精神状態】 正常

 

【男子02番 阿部高和】

【身体能力】 S 【頭脳】 A

【武器】 キチガイレコード

【スタンス】 いい男を掘りつつ委員会を倒して島からの脱出

【思考】 感極まって泣いてるな…

【身体状態】全身、股間に中ダメージ 【精神状態】 正常

 

 

 

66

 ここは島にある物置小屋の中。

 もしもし、この近所にガソリンはありませんか。

 永沢はつぶやきながら、島中を歩き回っていた。そして遂に、永沢は古い小さな物置小屋を見つけた。永沢は期待に胸を膨らませ、物置小屋へと入っていった。

 「火火火火火(ヒヒヒヒヒ)()ャーハッハッハッハ―!!」

 やれやれ、ようやくガソリンを見つけることが出来た。

 永沢君男はそこに置かれたガソリンの入ったタンクを見つけて笑っていた。タンクに近づいて持ち上げようとする永沢。だが、非力な永沢では持ち上げるのは困難であった。

 タンクには20リットルと表記されている。満タンではないが、まだ中身は半分以上残っている。

 永沢はタンクを持ち運ぶ事は諦めた。代わりとして、複数個の小さな容器にガソリンを入れて持ち運ぶことを考えた。

 永沢は物置小屋の中を漁って、ガソリンを分けて入れられるような容器を探した。

 その途端、永沢は手を止めて物置小屋の入り口を見た。細い目をさらに細めて外の様子を窺う永沢。

 物音が――した。小さな音だったが僕の耳はごまかせない。誰かいるな。焼き払うべき誰かが。待っていてくれよ、僕の大事なガソリン君。ここで火を放つわけにはいかないんだ。僕も灰になってしまう。

 それでいいのではないですか。あなたも灰になる事を望んでいるのでしょう。

 違います。僕が灰になるのは全てを灰にしてからです。それまで僕は灰になってはいけないのです。

 だから火炎放射の扱いに気を付けてください。

 その通りです。僕は世界を燃やす男だとしても、火も油もガソリンも持たない男なのです。その証拠にほら、ポキン、ポキン、ハム太郎。

 なるほど、ポキン、ポキン、ハム太郎。

 永沢はしゃがみこんで、満面の笑みを浮かべてタンクに頬を擦り付けた。それから永沢は物置小屋の外に目を向けた。

 永沢は手に火炎放射器を持ち、走って物置小屋の外へ出た。

「もっと燃えるがいいやああああああああああああああああああ!!」

 永沢は鬼の形相で火炎放射器から火を放つ。

 今の永沢にとっては不幸かもしれないが、永沢が火を放った周辺には木々や草花、民家等は無く、火が燃え広がる事は無かった。

 ()ったな…。

 永沢は額の汗を腕でぬぐった。一仕事を終えたかのような充足感が永沢を満たしていた。

 誰だか知らないが、今ので燃え尽きただろう。そうでなくとも火を恐れて近寄っては来ないさ。

 勝ち誇った笑みを浮かべ、再び物置小屋へと足を進める永沢。

 ん――?

 唐突な違和感が永沢を襲った。永沢は物置小屋の入り口手前で足を止めた。そして物置小屋の屋根を見た。

 屋根の上には誰もいない。

 気のせいか――。

 永沢がそう思った矢先、屋根の上から姿の見えない何かが飛び降りて来た。

 驚きに永沢が目を見開く。

 それとほぼ同時に、何もなかった空間に古明地こいしが姿を現した。

 こいしの左手には透明マント、右手には鱧切り包丁が握られている。

 永沢は火炎放射器を構え、こいしへ向けて火を放とうとする。

 だが、永沢よりも速く、こいしが鱧切り包丁を振るった。遅れて永沢の火炎放射器から火が放たれるが、こいしは既に永沢の後方へ移動していた。

「古明地か――。透明になって不意打ちだなんて――君は本当に卑怯だな」

 永沢は振り向き、恨みがましくそう言った。

 ん――?

 永沢は、こいしが持つ鱧切り包丁の刃の上に奇妙な形をした物体が乗っている事に気づいた。

 あれは何だ?底は平らだが、先端に向かって尖がっている。まるで玉葱の先端みたいだな。毛のようなものも付着している。あれ――?あれってまさか――。

 不安に駆られ、永沢は自分の頭頂部へと手を伸ばした。本来なら頭がある位置、だがその位置で永沢の手が空を切った。

 ――無い!

 こいしは鱧切り包丁を振り、乗っていた物体を落とした。先ほどの一閃で、こいしは永沢の頭頂部を切り落としたのだ。

 それとほぼ同時に、永沢の頭から噴水の如く血が噴きだす。

「うわああああああああああああああああああああああああああ!!痛い痛い痛い痛い痛いいいいいい!!」

 悲鳴を上げ、永沢は流れ出る血を止めるべく、左手で頭を押さえた。

 その永沢へ、こいしが再び走り寄る。

 永沢は悲鳴を上げながらも、火炎放射器をこいしへと向けて火を放つ。だが、永沢の右手は震え、狙いが定まらない。こいしは噴き出される火をかわしつつ、永沢に近づき、永沢の右手に鱧切り包丁を突き刺した。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

 こいしは鱧切り包丁を永沢の手から抜くと、すばやく、永沢から距離を取った。

 永沢は火炎放射器を落とした。そして左手で刺された右手を押さえようとする。だがその途端、押さえられていた頭から再び、血が噴きだした。

 あ…あああ…。

 永沢の体から急速に力が抜け、意識が遠ざかっていく。

 でも考えてみればそれほど火を恐れる事もなかったんだな。火なんて真夜中に背中のほうからだんだんと…巨人になっていく恐怖と比べたらどうって事ないんだから――。

 消えゆく意識の中、永沢の目には緑色に淡く輝く、こいしの無機質な瞳が見えた。

 ああ――ただ一つ残念なのは僕の死後も僕の体が残る事だな――。古明地でも――誰でもいい――どうか――僕の体も燃やして――灰に――。

 こうして、永沢は事切れた。

 こいしは永沢の体に近づき、火炎放射器を拾い上げた。

「これから毎日恋を焼こうぜ♪これから毎日恋を焼こう♪」

 こいしは火炎放射器を片手に持ち、無意識の内にステップを踏みながら歌っていた。

 一通り歌った後、動かなくなった永沢を見た。こいしは自分の顎に手をやり、首を傾げた後、永沢の片足を掴み上げた。

 こいしは辺りを見回し、永沢の体を引きずって歩き出した。

 少し歩くと、こいしは崖に到達した。こいしの眼前には海が広がっていた。こいしは引きずって来た永沢の体を海へと投げ入れた。永沢の体が次第に小さくなっていき、終には海の中へと消えていった。次にこいしは、ここへ来る途中で見つけて抜いて来た花々を海へと投げ入れた。そしてこいしは両目を閉じ、両掌を合わせて祈るような姿勢をとった。

 

【女子05番 古明地こいし】

【身体能力】 B 【頭脳】 B

【武器】 透明マント、鱧切り包丁、火炎放射器

【スタンス】 皆殺し

【思考】 海って広いな大きいな

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【男子13番 永沢君男 死亡】

【生存者 残り23人】

 

 

 

67

 ベネットが倒れた。

 それによる安堵からか、ドラコ・マルフォイはその場に座り込んだ。顔には主にコピーベネットに痛めつけられた事と、精神的なダメージによる疲労が濃く表れていた。

 マルフォイは木之本桜を見た。同様の事がさくらにも当てはまっているとマルフォイは思った。だが、さくらの場合、いくら自分らを殺そうとしていたとはいえ、クラスメイトが目の前で死んだという事が大きなショックであったようにも思える。

「動くな」

 そんなマルフォイの思考を遮るかのように、オルガ・イツカが声をかけて来た。オルガの手にはトカレフTT-33が握られており、その銃口はマルフォイへと向けられている。

「おいおい、嘘だろう?僕ら、共にベネットと戦った仲間じゃないか?銃を僕に向けるなんて――これは何の冗談だ?」

「黙れ。両手を頭の後ろで組め。アンタもだ」

 オルガはマルフォイだけでなく、さくらにもそう命じた。

 さくらはマルフォイの目を見た。それに応じるように、マルフォイは黙って頷いた。そして、オルガの指示通りに両手を組んだ。さくらもマルフォイと同様にオルガの指示に従った。

 くそっ、一難去ってまた一難とはまさにこの事だな…。だが、転校生の目的はなんだ?僕らを殺すのなら、ベネットに殺されそうな僕らを助けたりはしない。また、ベネットに蹴りを入れた実力や、ベネットを容赦なく殺した事から、コイツが僕らを殺す事など、実にたやすいだろう。なのに何故こんな事を命じる?

「お前たちの支給武器はなんだ?」

 オルガが銃を向けたまま尋ねてくる。

 ここは正直に答えるべきか――。

「デオドラントスプレー」

「わたしの武器はレーダー」

 さくらもマルフォイに続いて答えた。

「レーダー?ちょっと見せてくれ。腕は降ろして構わねえ。マクギリス――じゃねえな、金髪、お前は駄目だ」

 オルガはレーダーに興味を持ったようで、さくらにレーダーを見せるよう求めた。

 誰だよ、マクギリスって。

 マルフォイは疑問に思いながらも、頭の後ろで手を組み続けた。

 オルガはさくらからレーダーを受け取ると、その画面を見た。オルガは画面を見ては、何かをつぶやいた。レーダーをひとしきり見たオルガはレーダーを地面に置き、さくらに話しかけた。

「アンタら、一体この辺りで何をしていた?」

「この島から脱出するのを手伝ってくれる人を探してたの」

「何?その事について詳しく聞かせろ」

 オルガにそう言われたさくらは、マルフォイを再び見た。

 正直に答えた方が良いだろうね。

 マルフォイは無言で頷いた。

 それからさくらはオルガに対して、このプログラムに乗り気でない事、レーダーを使って人を探していた事、本部に乗り込んで首輪を解除しようと考えた事、そこでベネットに見つかった事を丁寧に話した。

 オルガはさくらが話す間黙って聞いていた。話が終わったオルガはため息をつき、口を開いた。

「なんだよ、このクラスにも結構まともな奴がいるんじゃねえか…」

 そう言うとオルガはトカレフTT-33を懐にしまった。

「もうその手はほどいていいぜ。安心しな、俺はアンタらを殺しはしない。むしろ俺はアンタらの様なまともな奴をずっと探してた」

「突然何を言ってるんだ君は?全く話が見えないな」

 マルフォイは手を下ろし、疑惑の念を抱きながらオルガに話しかける。

「そうだよな。アンタらはこれまでの事を全て話した。なら次は俺の番だ――腹割っていこうじゃねえか!」

 オルガは居住まいを正し、マルフォイとさくらに正面から向き合った。

「俺は鉄華団団長、オルガ・イツカ。BR法委員会に落とし前をつけるために、このプログラムに参加した」

「ええっ!?」

 さくらが驚きの声を上げた。

 驚いたのはマルフォイも同じであった。

「委員会に落とし前を付けるって――まさか――」

「ああ。俺もかつてプログラムに参加させられた。そのプログラムの唯一の生き残り――優勝者だ」




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り23人】
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