やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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ポケモン映画の女の子ではフルーラ、カノン、リサが好きです(隙あらば自分語り)
ピングーinザ・シティ、新エピソード、やったー!

ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り19人】


13話

81

 美樹さやかと佐天涙子の目の前に立っていたのは泉研だった。

 泉か、相手にとって不足は無いね!ステルス作戦が使えないのが残念だけど!

 さやかは新感覚ソース・大草原とパラソルを持って構えた。その目はしっかりと研を捉えている。

 だが、研はさやかと佐天を見てはいなかった。さやかと佐天の後ろ、ボールを詰め込まれて動かなくなっている水銀燈を見ていた。

 研はゆっくりと首を回した。次に研の視線はさやかの持つパラソルへと向けられた。

「アッ!」と言うと研は両目を見開いた。

 しばしの間、研、さやか、佐天の三人の間に沈黙が訪れた。

「ああ――この沈黙に耐えられない!佐天さん、バトルドーム借りるよ!」

 さやかはソースをしまい、佐天の持つアメリカン・バトルドームを手に取った。パラソルとバトルドームをそれぞれの手に持ち、研へと駆け寄る。

「そうか、クラスメイトの中にジュラル星人が!」

 研はイングラムM10をさやかに向けた。

 一瞬の出来事だった。

 イングラムM10から放たれた銃弾がさやかの体を貫いた。さやかは体中から血を流しながら倒れた。

 さやかは既に動かなくなっていた。

「ひっ!?」

 倒れたさやかの姿を見て、佐天は青ざめ、その場に座り込んだ。

 研はへたり込んだ佐天を見た。

「ジュラル星人か!ヨーシヒトマトメニカタヅケテヤル」

 再びイングラムM10から数多の銃弾が放たれた。佐天の体は銃弾に貫かれた後、沙耶かと同様に地に倒れた。その体が再び動く事は無かった。

 研は黙ったまま、変わり果てた姿のさやかと佐天に近づいた。

 さやかと佐天の体は、先ほどまで彼女ら二人が体に付けていた緑色のソースと、銃弾による真っ赤な血で汚れていた。

「緑色の血…。二人はアンデッドだったのか!」

 研は叫んだ。

 沈黙が訪れた。

 研の発言に対する返事は一切なかった。

 ツッコミ不在の中、一人でボケる事は非常に虚しい。

「可哀そうな銀ちゃん…」

 研は水銀燈の支給武器であったパラソルを拾い上げた。

 

【男子04番 泉研】

【身体能力】 A 【頭脳】 E

【武器】 イングラムM10、パラソル

【スタンス】 この島にいるジュラル星人を皆殺し

【思考】 ジュラル星人を殺す

【身体状態】 正常 【精神状態】 発狂

 

【女子17番 美樹さやか 死亡】

【女子06番 佐天涙子 死亡】

【生存者 残り17人】

 

 

 

82

 山村貞子は今も島内を走っていた。

 クラスメイトを見つけて戦いを止める。

 貞子の考えは未だ変わっていなかった。

 普段から特に運動をしていない貞子にとって、不慣れな島を走り回る事は決して楽な事では無かった。走る過程で何度もつまずき、転んだ。それだけでなく、北条沙都子との戦いで傷も負った。

 普段の運動不足がたたり、貞子の両足は悲鳴を上げていた。

 それでも貞子は走り続けていた。

 誰か――誰かいないの!?

 そう思いながらしばらく走り続けた貞子。遂に貞子の歩みが止まる時が来た。

 貞子の目の前に奇妙な物体があった。

 それは地中に頭を埋めて逆立ちとなり、両足をピンと伸ばした男子生徒であった。

 犬神家の一族の有名なワンシーンを想像して戴きたい。

 疑問に思いながら、貞子は地中から生えた足を指でつついてみた。

「デリシャス!」

 地中から声が聞こえた。

「だ、誰なの!?」

「助けてほしければ、20円ください!??」

 貞子の呼びかけに対し、地中からの返事があった。貞子は首を傾げ、地中から生えた右足の薬指をつまんだ。

「ぎゃひ~ん♪」

 またも地中から声が聞こえた。

 貞子は地中から生えた左足の親指の爪を剥がしてみた。

「うひゃひゃひゃひゃぁぁん…♡」

 甘い声が聞こえた。

 この足の正体がいよいよ分からなくなった貞子は、自分の長い前髪を一本掴んだ。そして、その髪を地中から生えた右足の中指の爪の間に差し込もうとした。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 叫び声と共に、足が地中から上空へと飛び上がった。その衝撃で勢いよく砂が舞い上がる。だが、貞子は長い前髪を地面にまで垂らしているため、前髪に砂がかかるも、顔は無事であった。

 地面から飛び出した男子生徒は空中で回転しながら降りてくる。だがその男子生徒は華麗な着地を決める事は出来ず、回転したまま勢いよく地面に体を打ちつけた。

「まさよしーーーーーーーーーーーー!!!」

 誰っ!?

 男子生徒は悲鳴と共に口から勢いよく血を噴きだした。

 ああっ!あなたは!

「じーさん!」

 貞子は地面で震えているじーさんに声をかけた。

 じーさんは口から血を流しながらも瞬時に立ち上がり、貞子の顔を見た。

「何すんだテメエエエエエエエエエエ!!!!爪の間に髪の毛を刺すとか、完全に極悪人の発想じゃねえか!ボルメテウス・サファイア・ドラゴンに勝るとも劣らない極悪っぷりだな!キレるぞ!他のパワー6000のクリーチャーをすべて破壊した後、このターンの後にもう一度自分のターンを行うぞ!!」

「落ち着いてじーさん!ボルバルザークは既にプレミアム殿堂入りよ!」

 貞子はじーさんを落ち着かせるべく、最近のデュエル・マスターズについてゆっくりと語った。まず貞子はじーさんがカード化した事について話した。だがじーさんは自分の事ゆえに既に知っていたのか、さほど驚きはしなかった。だが、覇王ブラックモナークがカード化したと聞かされた時のじーさんの驚きは大きかった。さらに、解体人形ジェニーのイラストが可愛らしくなったと聞かされた時、じーさんは両目と舌が前に勢いよく飛び出すほどに驚いた。

 驚き疲れたじーさんは肩で息をしながらも、落ち着きを取り戻した。

「迷惑をかけてメンゴメンゴ貞子。で、ワシに何か用か?」

「じーさん、クラスメイト同士で殺し合うなんて間違ってるわ。だから私は皆が戦うのを止めないといけないの。じーさんも協力してくれる?」

「なーんだ、そんな事か!それならクラスで最強のこのワシが、貞子が嫌になるまで協力してやるぜー!」

 じーさんは貞子の願いを二つ返事で聞き入れた。

「本当に!?ありがとうじーさん!あなたは最高のクラスメイトよ!」

 貞子は喜びを露わにじーさんの両手を掴んだ。それから貞子とじーさんは全身で喜びを表すかのように、手を取り合ってダンスを始めた。

 殺し合いが行われている島では不釣り合いな光景だった。だが、今の貞子はそんな事を考えてはいなかった。

 殺し合いに反対する仲間にようやく出会えた喜びで貞子は満たされていた。

 ダンスをしている貞子の顔には笑みがこぼれていた。長い前髪によって、外から見ることは出来ないが。

 じーさんも汚い笑顔で踊っていた。

 しばらく踊り続けて満足した後、多少息を乱しながら貞子はじーさんに問いかけた。

「ねえ、じーさん。あなたが私の味方をしてくれるのはとっても嬉しいわ。でもね、争い事は避けて欲しいの。ほら、じーさんがクラス最強だとしても、戦っている皆を止める時には暴力ではなく、話し合いで止めるようにして欲しいのよ」

「なんじゃ、そんな事か。貞子、お前はワシが言う最強の意味を勘違いしているようじゃな」

「へ?」

「いいか貞子。ワシはな、相手の強さを正確に推し量る事に関しては、近所の杉本さんに次いで自信がある。そして相手がワシより強いと分かれば戦わない!ワシより強い奴と戦わなければ負ける事は無い!ゆえにワシは負けることが無いから最強なのじゃ!」

「なるほど!つまりじーさんは戦わずして勝つという事ね!」

「たぶんそう!!!!????」

「素晴らしいわじーさん!あなたこそ私が求めていた理想の人よ!さあ、一緒にこの戦いを止めましょう!」

「当然じゃ!この島で安全に生き抜く方法を熟知したワシに任せろ!わははははははははは!」

「うふふふふふ!」

「でべべべべべべべ!あ、待って、笑い過ぎてケツからチクワ出そう」

 

【女子21番 山村貞子】

【身体能力】 E 【頭脳】 D

【武器】 スーパースコープ、ハイドラパーツX、伸縮サスペンダー

【スタンス】 戦いを止める

【思考】 この調子で皆の戦いを止めましょう!

【身体状態】 中ダメージ 【精神状態】 正常

 

【男子09番 じーさん】

【身体能力】 D 【頭脳】 E

【武器】 リボルケイン

【スタンス】 プログラムを安全に生き抜く

【思考】 29話!

【身体状態】 小ダメージ 【精神状態】 正常

 

 

 

83

 フランドール・スカーレットは煙が上がった場所目指して走っていた。そこにいけば誰か遊び相手がいると思ったからである。

 だがその期待は裏切られた。

 フランは足を止め、周囲を見回した。近くに遊び相手の気配は一切なかった。

「はぁー、つまんなーい。結局ここも外れかー」

 フランはため息をついた。その後を追うようにしてドナルド・マクドナルドが走ってやって来た。

「はあ――待ってよフランちゃん。急に走り出したりして、誰かに襲われたらどうするんだい?」

「それなら楽しくていいんだけどね」

「ドナルドとしてはそうなる事は出来るだけ避けたいんだけどね。――あれ?」

 ドナルドは遠くを見つめた後、ゆっくりと歩き出した。そして、地面を見た。

「ん?何かあった?」とフランが言ってドナルドの側に駆け寄った。

 そこには地面に倒れたうさみちゃんの変わり果てた姿があった。うさみちゃんの体には一枚のトランプのカードが突き刺さっている。

「うさみちゃんか。頭の良いうさみちゃんなら面白い遊び相手になってくれると思ったのに――残念。ねえ道化師さん、このうさみちゃんの体に刺さってるのって――」

「ゾリンゲン・カード、ムスカ君の武器だよ」

「やっぱりね。ムスカはまだ生きていて、存分に遊んでいるって事か。羨ましいなー。ま、いっか。ムスカとのリベンジマッチに期待って事で」

 それからフランは目を閉じて、周囲の音を聞くことに専念した。だが、すぐに目を開いた。

「あーあ、ダメ。こいしの気配はないや。さっきの煙はきっとムスカとうさみちゃんのどちらかが戦いの中で上げたものか」

「いや、そうとは限らないよ」

 ドナルドが地面を指さして言った。

 ドナルドは地面に複数人の足跡が残されている事に気づいた。

「これらの足跡は新しいものだ。数からして、ムスカ君とうさみちゃん、恐らくこっちへ逃げたこいしちゃんの物もあるだろうね。でもそれでもまだ足跡が多すぎる。あと一人か二人ぐらいここにいたかもしれない――」

 ドナルドは腕を組んで考え込んだ。

 先ほどの煙が煙玉によるものだと考えているドナルド。煙玉を支給されたのは井之頭五郎だが、残された足跡はどれも決して大きくはなく、五郎がここに来たとは思えない。

「誰かがゴローちゃんから煙玉を奪ったのかな――?」

 ドナルドはつい、自分の考えを口に出した。

 だがフランは聞いていなかった。

 少し前には、ここに大勢の生徒がいた。その楽しそうな輪の中にまたも自分が混ざれなかった事がフランにとって不満であった。

 ドナルドはしゃがみ込み、うさみちゃんの手に握られている半分になったひらりマントを抜き取った。

「んー。これは結構良いかな」

「何その布切れ?使えるの?使えるなら私に頂戴」

「説明するより見せた方がいいね。フランちゃん、このマントを殴ってみてくれるかい?」

 フランはドナルドの手に握られた布を目がけて蹴りを入れた。それと同時にドナルドが布を振るう。フランの足が布に触れると同時に、フランの蹴りが跳ね返される。そのままフランの体は宙を舞うが、フランは華麗に着地した。

「ちょっとフランちゃん!殴れとは言ったけど、蹴れとは言ってないよ!」

「その布に攻撃すれば良かったんでしょ。で、何その布。私の蹴りが簡単に止められるなんて信じられないんだけど」

「これはひらりマントって言ってね――」

 ドナルドはフランにひらりマントの効果について説明した。半分にされたひらりマントが未だその効果を失っていない事は確認できた。だが、布が小さくなった事による使い勝手の悪さ等の問題点もあった。

 だがフランはドナルドの説明を聞いているうちに飽きてきて、説明が終わるころには欠伸をしていた。

「つまりそのマントは相手の攻撃を跳ね返せるマントなんでしょ。防御用じゃん、興味ないわ」

「それじゃあ遠慮なくドナルドが頂こうか、嬉しいなあ」

「――ねえ、道化師さん」

「何だい?」

「退屈」

「じゃあお喋りしよう。ドナルドはお喋りが大好きなんだ」

「嫌」と言うとフランはドナルドを指さした。

「道化師さん、その丸太、私に頂戴。それで遊べば少しは暇潰しになるでしょ」

「お断りさぁ☆」

「何でよ!そのマントが有れば、攻撃から身を守れるんでしょ?だから私が我慢してその丸太で道化師さんを攻撃するから、道化師さんがいつまでマントで身を守り続けられるか、ね、やってみようよ」

「このマント、本来の半分だから小さくてね。そんなモノでフランちゃんの攻撃をいつまでもいなし続けられるか、ドナルドにはそんな自信がないね」

「私だって丸太を持ってたら普段の力は出ないから大丈夫よ。だからさ――ねぇ遊ぼう?」

 フランが両手をドナルドへ伸ばしてゆっくりと歩み寄る。

 ドナルドは笑顔で後ずさる。

 その時であった。

 島の至る所に設置されたスピーカーから音声が流れだした。

 

 

 

84

 やる夫、やらない夫、阿部高和の3人は今後の動きについて話し合っていた。

「やる夫から二人へ問題だお。皆でこの島から脱出するために必要な事は何だお?」

「まず首輪の解除が最優先だろ、常識的に考えて」

「ああ。この首輪がある限り、俺達は島から出られない。委員会の奴らと戦うとしても、首輪を何とかしない事には始まらねえな」

「その通りだお!」と言うと、やる夫は力強く地面を叩いた。

「では次!どうやって首輪を解除するお?」

「そうだな――衝撃を加えると爆破するから、力づくでは外せないな。俺達はこういった機械は詳しくないから、解析も出来ないし――」

 顎に手を当ててやらない夫は考え込んでいる。

「いや――そんな事をしなくてもいい方法が一つあるんじゃないか?」

 阿部がそうつぶやいた。

 流石阿部さんだお!やる夫の考えに気づいたお、間違いない!

 やる夫は内心で喜んだ。

「それなら阿部さん、言ってみるお」

「いや、俺の考えは恐らくやる夫の考えと同じだろう。やる夫、お前の口から言ってくれ」

 ほう――やる夫と同じ考えか、流石は阿部さんだお。

「くっそう、阿部はともかく、やる夫でさえも気づいた首輪の解除方法か――。既に亡くなったクラスメイトを探し、その首輪で実験するか――!?」

「おいこら、やらない夫。それはちょっと非人道的な考えだお。ドン引きだお」

「う、うるせー!俺だってそれぐらい分かってるぜ。これはあくまで仮の話だ!」

 そう言うとやらない夫は両手で自分の頭を抱えて考え込む。だが、名案は思い付かないようだ。それを見かねたやる夫は、ゆっくりとやらない夫に近づき、肩を叩いた。

「無理して考え込まないでいいんだお、やらない夫。やる夫が教えてやるお」

 ドヤ顔で言った。

 やらない夫は歯を噛み締めながら、体を小刻みに震わせていた。

 もう少し煽っていたいけど、これ以上煽るとキレやすいやらない夫は本気でキレるお。

 やる夫はキメ顔でやらない夫を指さした。

「首輪を解除する為にやる夫が考えた作戦、それはBR法委員会のビルへの突入だお!」

「――――は?」

 やらない夫は前のめりになって口を開いた。

 やらない夫――やる夫が考案した作戦のあまりの素晴らしさに感極まって、放心してるお!ならばもう一度!

「BR法委員会のビルに突入して首輪を解除するお!」

「はあああああああああああああ!?」

 やらない夫は大きく叫んだ。

「お前――お前は何を考えているんだあ!?」

 やらない夫はやる夫の両肩を掴んで揺さぶる。

「ハハハッ、やっぱりやる夫は俺と同じ考えだったか」

 阿部はこの光景を見て笑った。

「落ち着けお、やらない夫!」

 やる夫はやらない夫の手を振り解く。

「何も、やる夫はただ考えなしに言ってるんじゃねえお。委員会の奴らがあの建物でやる夫達の首輪を管理してるのは確実だお。だからそこに入りこみ、首輪の管理権を奪えば、やる夫達、いやクラス全員の首輪を解除できるんだお!」

「――そ、そうだな。確かに、それなら首輪を解除できるかもしれないだろ――。非常に危険だが、俺達で首輪をいじくるよりは望みがあるな――」

 やらない夫は納得したかのように頷くが、未だやる夫の案に賛成とは言い難いようだ。

「だがやる夫、どうやって侵入するんだ?入り口はストームトルーパーが大勢警備しているし、仮に進入できてもビル内には恐らく監視カメラがある。侵入がバレる、いや、侵入の為にストームトルーパーと戦うだけで、俺達の行動が委員会にバレて首輪を爆破されかねない。これらの問題はどう思う?」

 阿部がやる夫に尋ねた。

「心配無用だお!」

 やる夫が力強く胸を叩いた。そして、やる夫が口を開こうとした時である。

『あーテステス、生徒諸君。BR法委員会の利根川だ。これから放送を行うので、しっかりと聞くように…』

 スピーカーから利根川の声が聞こえて来た。

 折角やる夫が妙案を言おうと思ったのに!少しだけ待って欲しいお!

 やる夫はやらない夫と阿部の顔を見た。放送が始まると分かると、二人共顔つきが先ほどとは変わって真面目なものになっている。

『それでは、前回の放送からこれまでに死んだ生徒の名を死亡順に読み上げる。一度しか言わないから聞き逃さないように…。女子14番、北条沙都子。男子06番、井之頭五郎。女子16番、まっちょしぃ。女子20番、山田葵。男子14番、獏良了。男子17番、ベネット。男子13番、永沢君男。女子11番、ちゅるやさん。女子04番、日下部みさお。女子01番、うさみちゃん。女子08番、水銀燈。女子17番、美樹さやか。女子06番、佐天涙子。以上。死者の追加は13人だ。これまでの死者は28人。生き残っている生徒は17人だ。少し落ちているぞ…ペースが!もう少し頑張って殺し合うように。出来る事なら、次の放送を行うまでには決着が付く事を祈っている。今後も仲良く殺し合うように…』

 そして利根川の放送が終わった。

「さらに13人も死んでしまったのか――」

 やらない夫が呟いた。

 えーと、名前を呼ばれた女子は――9人。ううっ、これで残っている女子は7人。酷過ぎるお…。

 やる夫は地面に両手をついた。

「そうか――。バクラも山田さんも亡くなったか――」

 阿部は悲しげな表情でそう言った。

 そして、阿部は再び口を半開きにして目を閉じた。阿部なりの黙祷だった。

 やる夫も同様に目を閉じた。

 二人を見て、やらない夫も目を閉じた。以前の放送の時は黙祷しようとは思わなかったやらない夫だが、今回は違った。

 これまでに、何かしら小さな心境の変化がやらない夫には生じていた。

 

                *

 

「ポプ子ォ――ポプ子ォォォォォオオオ!」

 デデンネは怒りの雄叫びを上げていた。

 先のポプ子との戦いで、デデンネは支給武器であるジェットパックをポプ子の釘バットによって殴られた。それ以降、ジェットパックは動かなくなっている。

 ジェットパックを支給されたことで、デデンネは空を飛ぶ事の快感、及びじめんタイプの攻撃を一切受けなくなった悦びに満たされていた。だが、デデンネの自由の翼は突如、引きちぎられた。それも、自分の可愛さを理解しようとしないポプ子の手によってである。

「畜生――電気さえ、いつもの様に電気さえ出せればジェットパックの一つ、簡単に直せるのに――。ポプ子ォォォォォ!」

 デデンネはチャームポイントである前歯で歯ぎしりをしていた。

 その時、利根川による放送が始まった。一人一人読み上げられる生徒の名を、デデンネは嬉々として聞いていた。そして放送は終わった。

 やったでちゅ!私を食べようとしたゴローちゃん、強敵のまっちょしぃ、名前が呼ばれた順からして、相打ちになったでちゅ!私が直接手を下す手間が省けたでちゅ!しかし!ポプ子ォ!お前の名前が呼ばれてないでちゅ!やはりお前は私自ら始末するしかないようでちゅね!

 

                *

 

「え~、うさみちゃん殺されちゃったんですかぁ~」

 放送を聞いたベータはつまらなそうに言った。

 うさみちゃんとの戦いで負わされた左腕の傷には、既に最低限度の治療を施していた。

 ベータはその辺に落ちていた石ころを拾って投げ上げた。

「あーあ、私が見つける前に殺されちゃうなんて、つまんなぁい――この傷の借りを返してやろうと思ってたのによ!」

 ベータの目の色が青紫色になり、荒々しい口調でそう言った。

 ベータは落ちて来た石ころを空中で力強く蹴る。石ころは勢いよく海へと跳んでいった。

 

                *

 

 放送を聞き終えて、泉研はイングラムM10を握る手に力を込めた。

「こんなに多くのクラスメイトが殺されるなんて、これはひどい。皆の命を弄ぶ、残虐非道なジュラル星人め、必ず僕がこの手で滅ぼしてやる!待っててね銀ちゃん、君の墓前にジュラル星人の首を供えるからね!」

 

                *

 

ベネットが死んだか。これで俺の優勝への障害がまた一つ消えた。実に喜ばしい事だ。それにちゅるやさんもか。俺の口車に乗り、戦いを止めて無残に殺されたか。それとも、戦いの中で殺されたか。まあ、既に終わった事だ、どうでもいい。

 放送を聞き終えたヒューマンガスは仮面の下で嗤っていた。

 さて、今生き残っている中で、プログラムに積極的と思われるのは、ムスカ、スカーレット、デデンネ、ベータ、ポプ子――割と減ったな、素晴らしい。この5人とは会えば戦闘はほぼ避けられないだろう。遭遇するのは出来る限り避けたいものだ。

 泉、じーさん、マクドナルド、古明地、そして転校生のやる夫と委員会の差し金と思しきオルガ・イツカ、この6人については判断が難しい。クラスメイトでもある4人は何を考えているのかが判断しにくく、プログラムにもどのような姿勢で臨んでいるのか推測するのは困難だ。だが、用心しておくに越したことは無い。そして不幸な転校生、やる夫。体力、頭脳、人柄、全てにおいて未知数だが、ここまで生き残っている事からして、並みの奴ではあるまい。さらにオルガ・イツカ、何故奴はこのプログラムに参加させられたのか、それが分からない。この6人については発見次第、様子を窺い、隙をついて俺のタケコプターで殺すのがいい。

 そして、残りの阿部、マルフォイ、やらない夫、木之本、山村の5人、彼らこそが俺が出会いたい奴らだ。この5人はプログラムには消極的だ。阿部の奴は委員会への対抗手段を考えていてもおかしくは無い。残りの4人は、戦闘に関して優れている訳でもない。ここまで生き残っているのはどこかに隠れているからか。――いや、木之本と山村は行動力がある。この二人ならプログラムに反抗する仲間を集めて動く事も考えられる。いい男の阿部なら仲間を守ろうとするだろう。――もしや、この5人、いや別々かもしれないが、何人かで徒党を組んで委員会に対抗しようとしているのではないか。それならマルフォイとやらない夫が生き残っているのも納得がいく。

 この5人、それに未知の6人の内の誰かが組んで委員会に反抗するべく動いていたら、それは俺にとって非常に都合が良い。そいつらに協力する振りをし、隙をついて殺す。

 ヒューマンガスは今後の行動について考えていた。

 

                *

 

 放送を聞き終えた古明地こいしは伸びをした。

「私だって早く帰りたくて頑張ってるのに、さらに頑張れって言うなんて、利根川のおじさんったら、酷いなあ」

 無意識の内に、こいしはある一点を見ていた。

「まあいいや。この島で最後の一人になれば帰れるんでしょ?私以外、全員殺せばいいんだよね?」

 

                *

 

 木之本桜、ドラコ・マルフォイ、オルガ・イツカの3人は隠れたまま放送を静かに聞いていた。

「みさおちゃんも、さやかちゃんも、佐天さんも――うう…」

「そうだ――ベネットは確かに死んだんだ――」

 さくらとマルフォイはそれぞれ放送を聞いて打ちひしがれていた。さくらの目には涙が浮かび、マルフォイは唇を噛んでいる。

 だがオルガだけは違っていた。

 オルガは冷静に放送を聞いていた。

「クラスメイトの死は辛い事だ。だがいつまでも悲しんでたって、どうもこうもねぇ。俺達鉄華団は生きて帰るって決めただろ」

 オルガは両目を閉じ、腕を組んでそう言った。

 やっぱり――僕らはいつの間にか鉄華団の団員にされているみたいだ。

「うん――そうだよね。いつまでも泣いてたって何も変わらないよね。みんなで一緒に生きて帰る、その為にわたし達はわたし達が出来る事を頑張ろうって決めたもの」

 さくらは涙をぬぐう。

 木之本は鉄華団に関して、何にも疑問を持たないのか?

 オルガが目を開く。

「その意気だぜ。まだ計画の実行には必要な事がある。やるべき事をやるぞ」

「ああ、オルガの言う通りだね。やってやろうじゃないか。テンション高まるフォイ!」

 マルフォイは渾身のギャグを放った。場を明るくするためだ。

 だが、オルガとさくらの反応は乏しかった。

「――は?何だ、今のマルフォイの妙な語尾は」

「ああ、それはね、マルフォイ君の名前とかけた――」

「黙るフォイ!」

 滑ったギャグの解説をされるのは、聞いていて非常に恥ずかしい。

 

                *

 

 ポプ子はデデンネとの戦いで負った傷の治療をしていた。

 デデンネによるかまいたちでポプ子の体は傷つき、制服はボロボロになった。傷を水で洗ったポプ子は制服の一部を破って包帯代わりに巻き付けた。

 傷の治療を終えたポプ子は自分の制服を見た。かまいたちで切り裂かれた挙句、包帯代わりに破いたため、ポプ子の制服は見るも無残なボロボロなものとなっていた。

 これ――T.M.Revolutionみたいだ!

 ポプ子の制服は今や、魔弾~Der Freischutz~のPVの後半で西川兄貴が着ていた衣装の様である。

 エモ~い!!!これで強風が吹けば最高なんだけどなー。

 ポプ子は海に近づいた。塩を含んだ海風がポプ子の体を襲う。ポプ子の傷口に塩が染みる。

 いってぇー!だが風も吹いて来てイイ感じだな。よーし、気分良いから、私の好きなT.M.Revolutionの楽曲ベスト10でも紹介しちゃうか~。

 その時、利根川の放送が始まった。放送を聞いている間、ポプ子は終始笑っていた。だが、放送が終わるとポプ子の顔から笑みは消えていった。

 アァン!?デデンネにじーさん、まだ死んでねーのかよ!?往生際の悪い奴らだ。災害老爺や珍獣なんかは早く処刑されて世の中にその愚かさを詫びろ。

 

                *

 

「やっぱりムスカもこいしも生き残ってるわけね。あっ、レールガン持ちのベータもまだ生きてるじゃん。そう来なくっちゃ、私以外の誰かに殺されたら面白くないもん」

 放送を聞き終えてフランドール・スカーレットは笑みを浮かべた。

「ねえ、道化師さん。まだ生き残っているのって誰?」

「今、フランちゃんが言った3人を除けば、阿部君、研君、じーさん、ヒューマンガス君、マルフォイ君、やらない夫君、さくらちゃん、デデンネちゃん、ポプ子ちゃん、貞子ちゃん、それに転校生のやる夫君とオルガ・イツカ君の12人だね」

 ドナルド・マクドナルドは指を曲げながら答えた。

「ふーん、まだ面白そうな子が何人か残ってるじゃん。やらない夫とかは逃げ隠れてそうで面白くなさそうだけど。転校生のやる夫君とオルガ君もやるじゃん。だっさいキーホルダーが支給武器なのにさ」

「だから、ダサくないって、カッコイイよ!それに説明したように、そのキーホルダーはただのキーホルダーじゃなくて――」

 

                *

 

 水銀燈は死んだのに、研は死んでいない。これはどういう事か。研が水銀燈をジュラル星人と見なして撃ち殺したか。それともあの後、二人が襲われ、水銀燈のみが殺されたか――。

 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタは考え事をしていた。

 研の武器は非常に欲しい物であったが、あの状況では奪えなかっただろう。このプログラムのそろそろ終盤戦といったところだ。私もトランプと煙玉だけでなく、銃火器といった強力で手に合った武器が欲しいものだ――。

 

                *

 

「まだ、みんな戦っているのね!早く私達で戦いを止めないといけないわ!沙都子ちゃんみたいな犠牲者はもうこれ以上出させないわ!」

 山村貞子はそう叫んで決心した。爪が割れて黒くなった指を折り曲げて、こぶしを握り締めている。

「永沢ーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!」

 じーさんもブリッジをしながら、永沢の名を叫んだ。

「じーさん――あなたも永沢君という大切な友人を失ったのね。その悲しみは痛いほど分かるわ――」

「いや、ただ大声を出したくなっただけじゃ。普段から声を出すよう習慣づけてないと、声が出なくなるからのう」

「なるほど――普段は誰かを驚かす時には声を出さないのだけど、私もたまにはやってみようかしら」

 この世のものとは思えないような声が、貞子の口から聞こえて来た。

「まだまだじゃな、それはただの声であって、芸術性が皆無じゃ」

そう言いながらも、貞子の声のあまりの恐ろしさに、じーさんは体を震わせ、涙を流しながら失禁していた。

「じーさん、そろそろ私たちも動きましょう。せめて今まで生き残った皆だけでも助けなくちゃ」

「おおっ、そうじゃな」

 じーさんは勢いよく走りだした。その後を貞子が必死に追う。

「ててててーてて、てっててててー」

「幽霊楽団?」

「お願いだから歌わないで」

 

                *

 

「気を取り直して、やる夫考案、ビルへの突入法を説明するお!」

 やる夫がそう言った。やらない夫は固唾を呑んで、耳を傾けていた。

「突入方法、それは――」

 やる夫、やらない夫、阿部の中で緊張が走る。

「正面突破だお!」

 やる夫は右手の人差し指をやらない夫に突き付けた。

 やらない夫は黙り込んだまま、やる夫の指を掴み、上へと曲げる。

「痛たたたた!上には曲がらねえお!やめろお、やらない夫!」

 やらない夫は指から手を離した。

「おいこら、やる夫!正面突破だなんて、不可能に決まってるだろ、常識的に考えて!もっとマシな作戦を言うかと思ってたのに――期待した俺がバカだっただろ」

「やらない夫がバカなのは周知の事だお。でも――男なら一度はやりたい正面突破。なあ、阿部さんもそう思うお?」

「いや――確かに正面突破の響きは魅力的だが、俺も今回はやらない夫に同意見だ。俺達三人だけ、加えて武器も使えそうなのはやる夫の剣のキーホルダーだけだ。これだけの戦力で、銃で武装したストームトルーパーらと戦うのはちと大変だぜ」

「そんな――やる夫の夢の正面突破が――」と言ったやる夫は落ち込んで、その場で体育座りをした。

 見かねたやらない夫が口を開く。

「ストームトルーパーに変装してビルへ入るのはどうだ?」

 やる夫が顔を上げる。阿部も興味を持ったような眼でやらない夫を見つめる。やらない夫が説明を続ける。

「ほら、ストームトルーパーだって、ビルの入り口付近に固まってるだけじゃなくて、その周辺の警備もやってるだろ。その中で、少数、2、3人で動いている奴らを見つけたら、不意打ちでそいつらを倒す。それから、奴らの武装を奪って俺達が身につける。外観だけじゃ、俺達を認識する術はないと思うだろ」

「なるほどな――。それなら、怪しまれずにビルへ入れるし、ビル内でも動きやすいな」

 阿部が続けた。

 でもやる夫は正面突破を捨てきれないお!

 内心でやる夫は思ったが口に出すのは止めておいた。

 

 

 

85

 ヒューマンガスは歩いていた。プログラムに乗らない生徒を探す為である。

 誰かの気配を感じるぞ――!

 ヒューマンガスは木の裏に姿を隠し、様子を窺っていた。すると、一人の女子生徒がやって来た。

 やって来たのはデデンネだった。背中にジェットパックを背負いながらも、素早く走っている。

 デデンネ――ライバルポケモン達を貶めるために、デマをネットに頻繁に書き込んでいるらしい。そういう奴ならこのプログラムにも積極的だ。大方、優勝してポケモン人気ナンバーワンの座を狙っているのだろう。プログラムに積極的な奴と会うとは不幸だな。

 ヒューマンガスはデデンネを観察する。

 支給武器はあのジェットパックか。他に銃火器類を持っている様子は無い。

 ――殺るか。

 プログラムに積極的な奴を残しておくと、後々不利にもなりかねん。それにデデンネ一匹、俺の戦闘技術とタケコプターの合わせ技でいつでも始末できる。

 ヒューマンガスは木の裏から姿を見せる。

「おい、デデンネ!」

 ヒューマンガスの呼びかけに、デデンネは走るのを止める。

「あっ!ヒューマンガス君!」

 デデンネはヒューマンガスに駆け寄る。ヒューマンガスも両手を広げてデデンネを待つ。デデンネがヒューマンガスの胸元に飛び込んだ。ヒューマンガスはデデンネを力いっぱい抱きしめた。

「痛い、痛いでちゅ、ヒューマンガス君!」

「ああ、済まない。つい、腕に力が入ってしまった」

 ヒューマンガスが腕を緩めるた。デデンネは地面に着地する。

「まあ私は可愛いでちゅからね。抱きしめる手に力が入るのも分かりまちゅ。それよりもヒューマンガス君、会えて嬉しいでちゅ。私、プログラムが始まってからずっと一人で――途中、ポプ子ちゃんに襲われてジェットパックも壊されたんでちゅ――。怖かったでちゅ――」

 ふむ――デデンネが言っているのは嘘か真実か。デデンネが積極的にプログラムに乗るなら、先ほど胸元に飛び込んで来た時に、何かしらの攻撃をしようとするだろう。だが、そんな事は無かった。まさかプログラムに乗っていない?いや、他人を油断させて利用しようとしている事も考えられる。ここは話を合わせるか――。

「それは災難だったな、デデンネ。だがもう安心だ。この俺がお前を守ってやろう。そして恐怖に終止符を打ち、この島から逃げ出すのだ!」

「わーい!ヒューマンガス君、カッコイイでちゅ!私もこんなプログラムには反対だったんでちゅ!ありがとう、今なら特別に、ほっぺすりすりしてあげまちゅよ」

「気持ちはありがたいが、今はやらねばならない事がある。こっちに来い」

 ヒューマンガスはデデンネを手招いて歩き出した。その後ろをデデンネが続く。

 ヒューマンガスは歩きながら、こっそりとデデンネの顔を窺った。

 デデンネは嗤っていた。

 やはり、腹に一物ありげな顔だな、デデンネ。

 ヒューマンガスはデデンネを警戒しながら歩き続けた。

「ここだ、デデンネ。ここを拠点として、俺は島からの脱出計画を練っている」

 ヒューマンガスは目の前の民家を指さした。

「本当でちゅか!やっぱりヒューマンガスは凄いでちゅね!惚れちゃいまちゅ!」

「冗談はいい。まずは入ってくれ」

 ヒューマンガスとデデンネは民家に入った。そして向き合うようにして座った。

「あーあ。歩き続けて疲れたでちゅ」

「喉が渇いてないか?俺が水を入れてやろう」

「お願いするでちゅ」

 ヒューマンガスは立ち上がって水道へ向かった。

 日下部が俺にやろうとした事と全く同じ事を俺がやるとはな――。

 ヒューマンガスはコップを二つ用意し、それぞれに水を入れた。

 この毒の効果、試してみるか。

 ヒューマンガスは懐から緑色の液体の入った三角フラスコを取り出した。

「何でちゅか、その液体」

 ヒューマンガスは驚いて振り向いた。

 デデンネがいつの間にかヒューマンガスの後ろにいた。

 ヒューマンガスといえど、デデンネのこの行動には驚いた。鉄仮面の下では呼吸が荒くなっている。

「これは――メロンジュースだ。冷蔵庫に入っていたのを見つけた。これを水で薄めて飲もうかと思ってたんだ」

 ――無理があるな。

 無茶苦茶な出まかせを吐いたヒューマンガス、鉄仮面の下は冷や汗で濡れている。

「そうだったんでちゅかー!私に隠れて自分だけ甘い汁を飲もうとするなんて、ズルいでちゅ!」

 ――は、ははは――。馬鹿だ。救いようの無い馬鹿だ、コイツは――!

「済まない。ちゃんとお前の分にも入れてやるから」

「駄目でちゅ!そもそもメロンジュースを水で薄めたら、マズくなるでちゅ!そんな貧乏くさい事はやめて、ジュースを渡すでちゅ!」

 ヒューマンガスは笑いをこらえるのに必死だった。この時ほど、鉄仮面をありがたいと思った事は無い。

 ヒューマンガスは三角フラスコをデデンネに手渡した。笑いをこらえているヒューマンガスの腕は震えていたが、デデンネがそれに気づくことは無かった。

 デデンネはヒューマンガスから三角フラスコを受け取ると、栓を外して飲み始めた。

 まさか、これほど簡単に毒殺出来るとはな――。デデンネを甘く見ていた。

「ぷは~っ」と言うと、デデンネは三角フラスコをヒューマンガスに投げた。それをヒューマンガスは片手で受け取る。

 ――軽いな。

 ヒューマンガスは三角フラスコを見た。中の液体は一滴も残っていなかった。

 飲み干した――!デデンネ、この液体を全部――!これでデデンネの死は確実!だが大誤算!この毒の遅効性、そしてデデンネの行動!これでは今後、誰かに毒を盛る事は不可能!

 内心で苛立つヒューマンガスをよそに、デデンネはげっぷをした。

「何でちゅか、このジュース、全然甘くなくて、不味かった――」

 デデンネの言葉が途切れた。ヒューマンガスはデデンネを見やる。

 デデンネの体は小刻みに震えている。

 始まったか。デデンネの死を見届けてやる。

 だが突如、デデンネの体に変化が訪れた。

 初めはデデンネの耳だった。デデンネの耳が大きくなったと思えば、次の瞬間には縮まっていた。再びヒューマンガスがデデンネを見た時には、デデンネの耳が縦長に伸びていた。

 変化が表れ始めたのは耳だけでない。デデンネの顔が平らに潰れ始めた。

 ヒューマンガスは自分の目を疑い、目を擦ろうとしたが、鉄仮面が邪魔して出来なかった。仕方がなく、自分の両目を力強く閉じたヒューマンガス。目を開けて、再びデデンネを見た時、デデンネの顔は上に細く伸びていた。

 鉄仮面の下でヒューマンガスの顔は冷や汗で一杯になる。

 これは――俺の見間違いや、幻覚の類ではない――!

 デデンネの作画が――崩壊している――!

 この事態に、ヒューマンガスは息を呑む。

 これがあの毒の作用なのか!?

 ヒューマンガスはデデンネの脈を確かめる為、デデンネの体に触れようと右手を伸ばす。

 バチッ!と大きな音がし、肉が焼けた臭いが生じた。

 ヒューマンガスは瞬時にデデンネから離れ、自分の右手の指を見た。ヒューマンガスの指先は黒く焼け焦げていた。わずかに煙も上がっている。

 感電――!

 指先の痛みよりも、デデンネに触れようとして感電した事実の方がヒューマンガスにとって重要だった。

 デデンネに触れようとして感電した。デデンネは体から電気を発生させる事が可能なのは、このクラスの者ならだれでも知っている。だからデデンネに触れて軽度の感電をしたとしても大した問題ではない。

 ――この特殊な島を除いては。

 この島で、特殊能力の類が封じられているのはヒューマンガスも知っている。故に、ヒューマンガスはこのプログラムで優勝を狙えると考えた。

 デデンネもこの島では電撃を放てない。いや、電撃を放つなどあり得ない。

 そのあり得ないことが俺の眼前で起こっている。変化はデデンネの作画が崩壊を始めてからだ。電撃などあり得ない、いや、あってはならない――!

 あってはならない事を無くすため、ヒューマンガスは瞬時にタケコプターを右掌に取り付け、プロペラを回転させる。

「タ――タケコプター!」

 雄叫びを上げた。ヒューマンガスはタケコプターを使った掌底で、デデンネの体を引き裂こうと試みる。風を切りながら、タケコプターがデデンネの体に触れる直前である。

 デデンネの両目が赤く光った。

 デデンネの体から電撃が放たれた。

 デデンネの電撃による光こそが、今際の際にヒューマンガスが見た光景だった。

 民家の中が電撃で光り輝く。その直後、民家に火が上がる。瞬く間に火は燃え広がり、数分後には民家は焼け崩れた。

 デデンネだけが焼け跡に立っていた。

 

【男子15番 ヒューマンガス 死亡】

【生存者 残り16人】

 

 

 

86

 焼け跡に立ちすくんでいたデデンネは物思いに耽っていた。

 力が――戻って来た、いや、この力はいつも以上でちゅ!

 デデンネは自分の体内に意識を向ける。

 うぷぷ、私の体内に電気が溜まってるでちゅ。今朝以来の懐かしい感覚でちゅ。やっぱり、大切な物の価値は失ってから分かるんでちゅね。

 自分の体に力が満ちている事を実感したデデンネは、眼前にある一本の木へ向けて電撃を放った。デデンネの体から放たれた電撃は一瞬で木を消し炭にした。

 デデンネの口角が上がる。デデンネは大声で笑い出した。

 ついに手に入れたでちゅ!史上最強の破壊の力を!今の私はハピナスのHP!デオキシスアタックフォルムの攻撃と特攻!ツボツボの防御と特防!デオキシススピードフォルムの素早さ!これが私のメガシンカした姿、メガデデンネでちゅ!唯一神エンテイも、創造神アルセウスも今の私の足元にも及ばないでちゅ!今となっては私の敵は青版のけつばんとィ゙ゃゾ┛Aぐらいでちゅ!これで私は最かわで最強のポケモンでちゅ!

 デデンネはその場で笑い転げた。だがデデンネは自分の外観に起こった変化には気づいていない。

 デデンネは立ち上がって自分の背負ったジェットパックに電気を流した。ジェットパックが音を上げて息を吹き返した。

 フフフ――電気さえ使えれば、ジェットパックの故障なんて、簡単に直せるんでちゅよ。残念でした、ポプ子ちゃあ~ん。

 ふとデデンネの頭の中にポプ子の顔が思い浮かんだ。

 おっと、私は今、クラスメイトと殺し合うプログラムの最中でした。忘れて帰る所だったでちゅ。

 デデンネが首輪に手で触れた。そこから首輪に電気を流し込む。

 首輪がデデンネの首から外れ、地面に落っこちた。

 うふふふふ――やっと煩わしい首輪が外れたでちゅ。私はペットじゃねーでちゅ。さて――。

 ジェットパックを使い、デデンネは上空へ飛び上がった。そして、空中で待機し、眼下に広がる島を見下ろした。目と耳に意識を集中する。

 ふふふふふ――、見えるでちゅ、皆の慌てる姿が!聞こえるでちゅ、皆の戸惑う声が!

 デデンネは右手を高く上げた。

 さて、もうこの島に用は無いから、ジェットパックで飛んで帰ってもいいんでちゅが、折角参加したプログラムを途中で投げ出して帰るのは私の性に合わないでちゅ。それに、私も手に入れた自分の力を試してみたいし、散々私を痛めつけたポプ子ちゃんへの逆襲もしたいでちゅ。

 右手を上げたデデンネを中心として、島の上空に雷雲が広がっていく。瞬く間に島の上空全てが雷雲に覆われた。

「裁きの時は来た!ダァーーーーーーーーーーーッ!!」

 デデンネの叫び声と共に、島中に雷が降り注いだ。




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
● 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
● 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
● 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り16人】
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