やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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この小説はまだ続くぞ…。ノーコメもありや。
8年だ、もう休暇は十分に楽しんだだろう、とある三期。
好きな子は佐天さん、フレンダ、アリサです。

ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
● 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
● 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
● 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り16人】


14話

87

 島中に雷が降り注ぐ。雷に打たれた木々はへし折られ、火の手が上がり始める。火は周囲の木を包んで燃え広がっていく。雷に打たれた民家も瞬時に壊れるか、火の手が上がって焼け落ちていく。島中に設置されたスピーカーは雷によって次々と壊されていく。島にそびえた灯台も雷を受け、音を上げながら崩れ落ちていった。

 デデンネは島の上空を覆いつくす雷雲の下で浮かんでいた。

 自分の手による雷の雨が、島中のあらゆる物を破壊していく。その光景はデデンネにとってこの上なく堪らない娯楽であった。

 デデンネを楽しませるのは、こうした破壊の光景だけではない。耳を澄ませば島にいる者たちの悲鳴、怒号、絶叫が聞こえてくる。

 島は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 みんなの声が聞こえてくるでちゅ。もっと私の力を恐れるでちゅ!

 作画の崩壊した顔でデデンネは文字通りに破顔していた。

 ふとデデンネは本部のツインタワービルを見た。その周囲には警備を行っていたストームトルーパー達がいる。ストームトルーパーの中には、上空を見上げている者、悲鳴を上げながら逃げ惑う者、その場に立ちすくんで動かなくなっている者、果敢にも雄叫びを上げながら上空へ銃弾を放つ者等、様々な者がいる。だが、その銃弾が上空にいるデデンネに届く事は無い。

 うぷぷぷぷぷぷぷ――滑稽でちゅね。

 デデンネはストームトルーパー達へ向けて電撃を放った。とっさの判断で逃げた者もいたが、その場で動けなくなっていた者、銃撃を行っていた者等、数人のストームトルーパーが電撃で犠牲になった。

 デデンネはまたも嗤っていた。

 おっと、私の相手はクラスの皆、委員会の奴らはおまけでちゅ。でも、おまけにはおまけなりの楽しみがあるんでちゅ。

 デデンネの雷がストームトルーパー達を蹂躙していく。だが、すぐにデデンネはビルから視線をずらし、島にいる生徒たちへと関心を向けた。

「クラスの皆さん、残念でちゅがさようなら」

 デデンネが右手を振り下ろす。デデンネの右手から巨大な雷が放たれた。

 

【女子12番 デデンネ】

【身体能力】 SSS 【頭脳】 E

【武器】 ジェットパック

【スタンス】 散々遊んでから皆殺し

【思考】 この私が!世界で一番!強いって事なんだよ!

【身体状態】 超人化 【精神状態】 正常

 

 

 

88

「うわああああああああああああっ!」

「ぎゃあああああああああああああああああっ!」

やる夫とやらない夫は悲鳴を上げながら、降り注ぐ雷から逃れるべく走っていた。

 二人の前を阿部高和が走る。阿部は走りながらも周囲に身を守る場所が無いか探していた。

 その直後、走るやる夫とやらない夫の後方に雷が落ちた。

「ひいいいいいいいいいっ!」

 その衝撃でやる夫とやらない夫は前へと吹き飛ばされた。やらない夫は何とか無事に着地できたが、やる夫はそのまま、前へと転がった。

「やる夫!」

「無事かやる夫!?」

 やらない夫と阿部の呼びかけに、やる夫はすぐさま起き上がって応じた。

「やる夫は大丈夫だお!それよりも二人共、足を止めては駄目だお、走り続けるんだお!」

 やらない夫と阿部は頷いた。そして3人は再び走り始めた。

「確かこの辺に、民家があった筈だが――」

 阿部は走りながらそう言った。

「あれじゃねえか!?」

 やらない夫がそう叫んで、指さした。その方向には民家が一軒立っていた。

「助かったお!雷が止まるまで、あそこで待機するお!」

 3人は民家へと駆け寄った。

 その3人の眼前で、民家に雷が落ちた。

 3人は腕を前に構え、その衝撃に耐えようとした。だが、やる夫だけは耐え切れず、今度は後ろに転げた。

 今の雷で民家は半壊となった。

「一体何がどうなってるんだお!?さっきまで晴れてたのに、突然雲が広がって暗くなったと思えば、雷は落ちてくるし、もうプログラムとか本部へ正面突破とか言ってる場合じゃねえお!」

「確かに妙だな。この雷、まるで俺達を弄んでいるかのように落ちてきやがる――」

「それはアレが原因じゃないのかい?」

 阿部が真上を指さした。

 やる夫とやらない夫も同時に空を見る。そこには作画の崩壊したデデンネが飛んでいた。

「――デデンネ?」

「えっ!?」

 呆気に取られたやらない夫とやる夫。その二人目がけて電撃が放たれた。

 その瞬間、阿部が走り、やる夫とやらない夫を掴んで雷をかわした。

「ありがとう阿部!」

「礼ならいらないさ。それより二人共、すぐにここから離れるぞ!」

 阿部が走り出す。その後をすぐにやる夫とやらない夫が追う。走りながら、やる夫は先ほどのやらない夫が言った事について質問する。

「やらない夫、さっき言ったデン助ってのは誰の事だお!?」

「デン助じゃなくて、デデンネ。クラスの女子生徒だよ。鼠の様な外見で、電撃を放つことが出来るんだが、空は飛べない筈だ」

「いや、空を飛んでるのは、支給武器の力によるものかもしれない。今更空を飛ぶ事を可能にする武器の一つや二つ、あっても可笑しくは無いぜ。それよりも俺が疑問に思ったのは、電撃の破壊力だ」

 やらない夫の説明に阿部が補足をする。

「確かに――デデンネの電撃がこれほどまでに強い筈が無いだろ、常識的に考えて。こんなの、伝説のポケモンに匹敵する威力だろ」

「ああ。だが妙なのはそれだけじゃない。やらない夫、さっきデデンネの姿を見た時、違和感を覚えなかったか?」

「あっ――確かに。いや、遠くてよく見えなかったから、確証は持てないが――」

「それでも構わないさ。お前が見て思った事を教えてくれ」

「そうだな――何か、体の形がいつもと違うっていうか、変っていうか――」

「俺もそう思った」

「ま、待って欲しいお。つ、つまり、この雷はクラスメイトの、そのデデンネとかいう人が落としてるのかお!?」

 やる夫の顔に驚きが大きく表れていた。

「そう考えて間違いないぜ、やる夫。ん、人?あれ人か?ネズミだろ。まあいいや、さっきから嫌がらせの様に俺達の周囲を狙った雷も、デデンネの仕業と考えれば納得がいく。デデンネは絶対に勝てる相手には、散々いたぶってから倒す傾向があるからな」

「だが不思議な事が多すぎるぜ、やらない夫。この島では特殊能力は使えない。デデンネの電撃も当てはまる筈だ。でも今ではデデンネは電撃を打ち放題、更にいつもとは比べ物にならない威力となっている。それに飛行能力まで得て、外見は作画崩壊でもしたかの様に変化している。これらは一体どういう事だ?」

「この世には不思議な事など何もないんだよ、阿部君」

 突如呼びかけられ、阿部、やる夫、やらない夫の3人は足を止めて背後を振り向く。

 そこにいたのは、ドナルド・マクドナルドであった。

ドナルドの後ろにはフランドール・スカーレットもいた。フランは笑みを浮かべて、上空を見ている。

 ドナルドは微笑み、自分の胸に手を当てた。

「ドナルドは勿論、デデンネちゃんに何があったか知ってるよ。驚いた?」

 

                *

 

「うわー。凄いなー」

 古明地こいしは降り注ぐ雷と、それによって破壊されていく島の光景を眺めていた。

「これなら私が皆を探して殺す手間も省けるかな。でも、こうなっちゃうと島から逃げ出そうとする子も出てきそう。それは困っちゃうな――」

 こいしは透明マントを被って姿を消した。

 

                *

 

「島にこんな雷が落ちるなんて!ジュラル星人の仕業に違いない!」

 研は上空に浮かぶデデンネを見た。

「あれも間違いなくジュラル星人――!」

 

                *

 

 オルガ・イツカ、ドラコ・マルフォイ、木之本桜の3人も雷から逃げ回っていた。オルガは右手を腰に当て、左手の人差し指を伸ばすという、独特の走り方で逃げていた。

「突然の雷だなんて、どういう事なんだ!?」

 走りながらマルフォイは慌てふためいていた。

「ねえ、見て、あそこ!」

 さくらが空を指さした。マルフォイとオルガもさくらが指さした方角を見た。そこにはデデンネが浮かんでいた。だが、彼らの場所からは遠く離れた位置にデデンネが浮かんでいるため、デデンネだと認識する事は出来なかった。

「ほ、本当だ、何かオレンジ色の物体が浮かんでいるようだな。木之本、あれがこの雷と関係しているとでも言うのかい?」

「ごめんね、そこまでは分からないの。でも、あのオレンジ色の物って何だか見覚えがあって――」

 さくらはレーダーを取り出してみたが、目的の相手はレーダーの範囲外にいるためか、レーダーには映らなかった。

 マルフォイはしばし考え込んだ。

「――デデンネ?」

「あっ!それだよマルフォイ君!あそこにいるのはデデンネちゃんだよ。きっとこの雷もデデンネちゃんが――」

「勘弁してくれ――」

 オルガが呟いた。マルフォイとさくらはオルガを見た。

「その言い方から、デデンネってのも、クラスメイトなんだろ。一体、どうなってやがる。このクラスは奇人、変人、超人たちの万国びっくりショーじゃねえか――」

 オルガはその場に座り込んだ。だがオルガの口角は上がっていた。

「オルガ君!?ここにいたら危ないよ!急いで安全な場所まで逃げないと!」

「安全な場所?この雷が自然なものと違って人為的なものの場合、止めるにはアイツ――デデンネを倒さなきゃならねえ。今は空を飛んでいるアイツが、地上に降りてきたら益々手が付けられなくなる。俺達、いや――誰もデデンネを止められねぇ。あの紫電の威力を見りゃ分かる。この島のどこにも逃げ場なんてねぇぞ」

「そんな…」

「オルガ――勘弁してほしいね。そんな事言われても困るフォイ!このまま僕らは無残に電撃で殺されるのを待てって言うのかい?」

「待ってくれ。まだ話は終わっちゃいねえ。確かにこの島には逃げ場なんてねぇ、一ヶ所を除いてな――」

 オルガは腕を上げ、ある一点を指さした。

 マルフォイとさくらはオルガの指の先を見た。

「「あっ!!」」

 二人は同時に驚きを露わにする。

 オルガは右目を閉じ、白い歯を見せるようにして笑った。

 オルガの指の先にはBR法委員会のツインタワービルの西棟入り口があった。

 

                *

 

 ベータは降り注ぐ雷の中を走っていた。ベータの瞳の色は青紫色になり、攻撃的な性格が前面に現れている。

「チッ!どうなってやがる、冗談じゃねえぞ!」

 ベータは雷の間をかいくぐりながら上空を見た。

 何だよあれ――。

 ベータは宙に浮かぶデデンネの姿を捉えた。雷が止んだ瞬間を見計らって、ベータはEM銃から数発の弾丸を上空のデデンネへ向けて撃った。だが光速の弾丸も、上空のデデンネを正確に捉える事は不可能だった。

 EM銃から放たれた弾丸はデデンネの側を飛んでいく。デデンネはそれを面白がって見ていた。弾丸が止まると、デデンネは返礼としてベータへと電撃を放った。

 持ち前の反射神経でベータは電撃をかわした。

「ふざけんじゃねえぞ!」

 ベータは悪態をついた。そのベータを煽るように、ベータの周辺で雷が落ち続ける。

 ベータはこの場から離れる為に走り出した。

「どこへ行こうというのかね?」

 あ?

 ベータはその足を止め、声のした方を向いた。

 ベータの視線の先に、一人の男子生徒が背を向けて立っていた。その男子生徒が振り向いてベータを見た。

 その男はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタであった。ムスカはドヤ顔でベータを見ると鼻で笑った。

 そしてムスカは再びベータに背を向け、数多の落雷で破壊されていく島の光景に見入っていた。

「素晴らしい!最高のショーだとは思わんかね?ハッハッハッ、見ろ人がゴミのようだ!ハッハッハッ――」

 ムスカかよ、面倒臭えなこんな非常事態に――。

 ベータは自分に背を向けているムスカを背後から撃ち抜こうと、EM銃を構えた。

「ハッハッハッ、私と戦うつもりか?――今となってはそれが無意味だという事ぐらい、君なら分かるだろう?」

 ムスカはベータに向き合った。サングラスの奥にあるムスカの目は笑っていた。

 

                *

 

 回転宙返りを行いながら、ポプ子は雷をかわし続ける。

「カスカスカスカスカスカスカス!」

 ポプ子は口から不満をぶちまける。

 この雷はポプ子を煽るかの様に、ポプ子の近くに落ち続けているが、ポプ子本人を狙ってはいない。雷から逃げ惑うポプ子の姿をあざ笑っているようだ。

目を血走らせ、ポプ子は空を見上げる。

 この憎らしい雷が、仇敵であるデデンネの仕業という事実がポプ子の怒りの炎に油を注いだ。

「カスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスゥーー!!」

 ポプ子は両手で空に中指を突き立てた。

 ふと視線を感じたポプ子は振り返った。

 背後に未だ倒れずに残っていた木の後ろから、山村貞子が体をのぞかせていた。

「ザァダコザァン!ナズェミテルンディス!!」

 その貞子の下からじーさんも姿を現した。

「なんだ…?テメェ…」

 ポプ子、キレた!!

 

 

 

89

 BR法委員会のツインタワービル内は、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。

 突如超人へと覚醒したデデンネが島中に雷を落として島を破壊していくというこの事態に、黒服たちもパニックに陥っていた。ざわ…ざわ…と不穏な空気が委員会の管理部屋を包んでいく。

 だが利根川はまだ冷静であった。否、利根川もこの非常事態に動揺していた。だが、ここで自分の醜態を晒せば、部下たちへの混乱は広がり、手が付けられなくなる。利根川は冷静であろうと努めていた。

 利根川が大きく手を叩いた。

「うろたえるな、お前ら――!このワシが付いている!」

「と、利根川先生――!」と、黒服たちがどよめく。

 黒服たちは一斉に利根川を見た。

「いいかお前ら…。慌てていては何も解決せん。落ち着いて…まずは深呼吸…!」

 ざわ…ざわ…。

 顔に冷や汗を浮かべた黒服たちだが、利根川の指示通りに深呼吸を行った。ざわついていた空気が次第に落ち着いていく。

「落ち着いたか…。さて、まずは…被害報告!この島で今、一体何が起こっているかを報告しろ!」

「はっ!」と、黒服たちは威勢よく利根川に返事した。

「利根川先生!島の東側の森林では雷による火災が発生しています。火は激しさを増して、燃え広がっているようです!」

「西側の森林でも同様に火災が発生しています!」

 黒服たちが報告を始めた。利根川はそれ等の報告を、落ち着くよう努めながら聞いていた。

「なるほど――。火災は放っておいて良し!」

「ええっ!?」と、黒服たちは驚きを露わにする。だが、利根川はそれを意に介さなかった。

「考えてみろ――。森林が燃えれば、そこに隠れている生徒たちの逃げ場がなくなるという事だ。さらに、この火災に巻き込まれる生徒もいるだろう。生徒の数が減り、逃げ場、隠れ場もなくなるという事は、プログラムの終結が近づくという事で、我々にはむしろ好都合…!それに、このビルは外部からの火災に負けるほど弱くない…!我々は安心…!」

 利根川の返事に黒服たちは安堵の表情を浮かべた。

「で、では利根川先生!島の民家も雷で同様に焼け崩れていますが、これも問題ないと…!?」

「ああ。生徒の隠れ家が焼失するなら我々には問題ない」

 利根川が頷き、黒服たちから歓声が上がった。

 火事…!まさに委員会にとって、デデンネの雷は対岸の火事…!

「利根川先生、島中に設置したスピーカーも雷で全て壊されてしまいました…!」

 この報告に、他の黒服たちは慌てた。だが、利根川は違っていた。

「それも構わん…一向に!どう考えても今回のプログラムの優勝者は、この雷騒ぎの張本人で間違いない。だから不要…!これ以上の放送も…!放送の為のスピーカーも…!ところで…まだ分からんのか…この怪現象の原因は…!」

「は、はい!で、ですが、島に設置したカメラも雷によって大半が機能を停止し――」

「だが、過去の映像は記録として残っているだろう。それに衛星もあるんだ、それを使え!」

「分かりました!」

 黒服たちは一斉に作業に取り掛かった。それを見て利根川は、一旦落ち着くべく、煙草を取り出した。

 流石に今回のプログラムは特殊過ぎたか…。まさか、唯一神様の能力封じを打ち破る生徒が出てくるとは…。優勝はこの生徒で間違いない。だが、この生徒が我々に牙をむく事も考えられる。島中の兵力を結集、かつ唯一神様にも後でこの場を治めるのを協力してもらわねば…。

「た、大変です利根川先生…」

「今度は何だ?」

「こ、壊されました…灯台が…!」

 は…?壊された…灯台が…!?

「利根川先生!今入ったのですが、本部周辺で警戒に当たっていたストームトルーパー達に落雷が直撃したようです!死者、怪我人多数!現在、確認にあたらせていますが、この雷の中では困難で――」

 利根川は動揺し、火を付けようとした煙草を床に落とした。

 駄目だ――ここでワシまで取り乱すわけにはいかん…!

 利根川は灯台に関しては無視、ストームトルーパーには引き続き警備、及び今後の戦闘に備えるように命じた。

 この島にいるストームトルーパーは、委員会が集めた多重債務者、及び人を銃で撃ちたいと自ら志願してきた者たちからなる。故にストームトルーパーがどれだけ失われようと、委員会にとって痛手とはならない。

「利根川先生、解析が終わりました。モニターに映像を映します!」

 黒服が機械を操作すると、部屋に設置されたモニターに映像が映り出す。利根川を始め、部屋中の黒服がモニターに見入った。

 モニターに映し出されたのは、デデンネがヒューマンガスから緑色の液体を受け取って飲み干した場面だった。この直後、デデンネの体に変化が起こり始め、デデンネが電撃を放った。この電撃で、ヒューマンガスは民家諸共に倒れた。

 間違いない…あれは、超人化の薬…!飲めば巨大化して死ぬという、毒薬としての扱いだった筈…。

 ケニー・マコーミックの支給武器としたが、そのケニーが開始前に死んだため、最後の出発となった日下部みさおに支給した。それがヒューマンガスの手に渡り、最終的にデデンネの物となったのか――。

 そうか…!この女子生徒、デデンネは体も小さく、体の作りも他の生徒とは大きく異なる…!だから、正常に超人化の薬が作用しなかった!巨大化はせず、ただ強力な力のみを得たという事か…!

 利根川は歯を食いしばる。

 次に、スクリーンに映し出されたのは、現在上空を飛び回っているデデンネの姿だった。

 何だこの珍妙な姿は…。まるで作画崩壊…!そうか、これが影響…超人化の薬の体への…!

 いやっ…!これは…まずいっ…!

 突如…利根川を襲った違和感…!そう、注意してみなければ気づかない。しかし利根川は気づいてしまった…!いや、必然気づいてしまう…!なぜなら…利根川は今まで数々の死闘を…気づきによって乗り越えて来た勝者だから…!

 利根川の視線はスクリーンに映し出されているデデンネの首元に釘付けになっていた。本来、参加した生徒の首には管理用の首輪が装着されている。男女、身長、体格、能力を問わず全員に。その首輪がデデンネの首からなくなっていた…!

 ぐ…が…!

 利根川は倒れそうになったが、意地でこの場をしのいだ。すぐさま内線で首輪管理室にいる黒服へ繋いだ。

 利根川は首輪管理室の黒服にデデンネの首輪を確認するように命じた。

 黒服からの返事は次のようなものであった。

「利根川先生…!デデンネの首輪は既に外されています…デデンネ本人による電撃で…!こうなってはもう不可能…デデンネの命の管理も…プログラムの進行も…!」

 利根川は内線を切った。デデンネが自分で首輪を解除したという事実に、室内の黒服たちは騒めき立つ。

 だが利根川だけはデデンネへの対抗策と、このプログラムを最後まで行う事を考えていた。利根川は勢いよくマイクを取ると、ビル周辺、ビル内部、及び、海上で警備にあたっていたストームトルーパー全員に向けて放送した。

「これより、我々は女子12番デデンネを全力で始末する!ビル周辺のストームトルーパーと海上警備のストームトルーパーは上空のデデンネへ攻撃!ビル内部の者で半分はそのまま警備、残りの半分は外での戦闘に参加!以上だ!」

 利根川はマイクを切った。そして椅子に座った利根川はため息の後、口を開いた。

「使うぞ…ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を…!」

「ええっ!?使うんですか、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を…!」

 利根川のこの命令に、黒服たちの間で衝撃が走った。

 蓮見聖司はこの様子を黙って見ていた。そして蓮実は誰にも気づかれる事無く、静かにこの部屋から立ち去った。

 

 

 

90

 やる夫たちの前に突如現れたドナルド・マクドナルドとフランドール・スカーレット。緊張が走る中、やる夫が口を開いた。

「アンタ――ペニーワイズかお!?今度はやる夫に何をオススメしに来たお?そう何度も騙されないお!」

「へいジョージ、今日オススメのハンバーガーは――って違うよ。ドナルドです。ドナルド・マクドナルドです、やる夫君」

「やる夫の名前を知っている――まさかやる夫のファン…!」

「違う違う。今朝君はドナルド達の前で自己紹介したじゃないか」

「ああ、そうだったお。覚えていてくれて嬉しいお、ドナルドさん。――で、そこにいる、金髪ロリは一体――!?」

「うるさい、キモいな白饅頭」

 やる夫が悲鳴を上げ、エビぞりをしながら倒れた。

「白饅頭――俺は違う。俺はキモくない。今のは俺の事じゃない――」とやらない夫はぼやいていた。

「彼女はフランドール・スカーレット。フランちゃんとでも呼んでね」

「何で私の呼ばれ方を道化師さんに決められなきゃならないのよ」

「じゃあフランたんでいいかお?」

「黙れ白豚」

「ぶひぃぃぃぃぃいいいいい!」

 顔を赤らめてやる夫は悶えている。一方でやらない夫は顔を抱えている。ドナルドはやれやれだとでも言うように肩をすくめた。

 再び、彼ら5人を目がけて雷が落ちてくる。悶えていたやる夫とやらない夫も瞬時に反応し、全員が雷をかわした。

「楽しいねデデンネ!貴方がこんなに凄い雷を放てるなんて知らなかったわ!でも、いくら速くても動きが単調ね。もっと弾幕を張るぐらいやってみなさいよ」

「挑発は止めて、フランちゃん!ドナルド達は弾幕ごっこをしたくない!」

「なあ、ドナルド、聞かせてくれないか。デデンネさんに何があったのか。この異常事態は何なのか」

 阿部がドナルドに尋ねた。ドナルドは頷き、右手の人差し指を立てながら説明した。

 デデンネの飛行能力は支給武器のジェットパックによるもの。この怪現象は恐らく、ケニー・マコーミックの支給武器である超人化の薬によるもの。本来、ケニーは開始前に首輪を爆発させられたため、この薬が出回る筈はない。だが、残った薬を委員会が誰かに与え、それが巡り巡ってデデンネの手に渡り、デデンネが飲んだと考えられる。

「ってとこかな」

「なあマクドナルド、何でお前はそんな事を知ってんだ?」

「ドナルドです、やらない夫君。ドナルドは何でも知ってるんだ。勿論、君たちの武器も知ってるよ」

 やる夫、やらない夫、阿部は驚いて身構えた。

「ハイハイ、そんな大したことじゃないって。道化師さんの武器は私達全員の支給武器とその効果について書かれたシートなだけだから」

 呆れたようにフランが言った。

「そうかい。で、ドナルドにスカーレットさん、あんたらは俺達にご親切にそれを教えに来てくれたのかい?それとも何か目的があるのか?」

 阿部が尋ねる。

「んー、私は阿部さん達とも遊びたいけどね、今はもっと面白そうな子がいるから」

「なら、フランちゃん。やる夫と禁じざるを得ない遊戯を――」

「やる夫、少し自重すべきだろ、常識的に考えて」

 騒ぐフラン、やる夫、やらない夫を横目で見たドナルドは阿部に向き合う。

「デデンネちゃんを止める。それに君たち3人の力も貸して欲しいんだ」

 阿部とやらない夫が驚きを露わにする。やる夫だけは目を輝かせた。

「阿部――こいつらを信じるか?」

 やらない夫が阿部に耳打ちする。阿部はやらない夫の顔を真っすぐ見た。

「やらない夫、疑いたくなるお前の気持ちも分かる。でもな、この二人が俺達を倒そうとしてるなら、こんな話をする必要は無いはずだ。俺達にデデンネさんの説明なんかせず、雷に俺達が追われていた時に不意打ちで仕留めてただろうよ。俺は二人――ドナルドとスカーレットさんを信じたい」

「やる夫は力を貸すお!よく分からないけど、やる夫の手助けが必要なのは分かったお!そんな事言われちゃ、断るなんて出来ないお」

 やる夫は意気揚々と言った。

 やらない夫はそれを聞いて脱力した。

「分かっただろ。お前ら二人がそう言うのなら、俺も信じてみるよ」

 やらない夫の発言を聞いて、ドナルドはランランルーをした。

「話を遮って悪かった、ドナルド。さあ――話を続けてくれ」

「超人と化したデデンネちゃんを止めるのに、今のドナルドとフランちゃんでは不可能だ。でも、このままデデンネちゃんを放っておけば、ドナルド達全員が死ぬ。だから、デデンネちゃんを止めるのを協力してほしいんだ」

「デデンネさんを殺すのか?」

「出来れば殺さずに済ませたいけど――難しいと思う」

「そうか――何か考えはあるのか?」

 ドナルドは抱えていた丸太を地面に置いた。そして懐から半分になったひらりマントを取り出した。そして簡単にこれらの武器の説明をした。

「ドナルドはこれらの武器を持っている。入手経緯については聞かないでくれると嬉しいなぁ。それにフランちゃんがスマートボムという凄い威力の爆弾を持ってるんだ」

「その爆弾をデデンネにぶつけるのか?」

「今のところはね。ただ、一つ大きな障害がある。阿部さん、君たちの武器も教えてくれないかい?」

「おいおいマクド――いや、ドナルド、お前なら武器シートとやらで知ってるんだろう?」

 やらない夫が言った。ドナルドは首を横に振る。

「支給武器しか分からないさ。君たちがどういう経緯で誰の武器を手に入れたのかは分からないんだ。ドナルドだって支給武器以外の物を持っているしね。」

「――確かに俺達はある奴との戦いを経て、そいつの武器を手に入れた。言い訳がましいが、俺達は故意に襲ったわけじゃない」

「ドナルドも似たようなものさ。残念だけど、ここでは仕方がない事さ。やらない夫君、そこまで後ろめたく思わなくてもいいんじゃないかい?」

「そうか…」と言うと、やらない夫は両目を閉じてため息をついた。そして口を開く。

「俺の武器は支給された拡声器。それと――カイザギア」

「リュウセイ君の武器か――」

 ドナルドは静かに言った。

「やる夫の武器は剣のキーホルダーだお!」

 そばで聞いていたやる夫が答えた。

「あーあれかー」と、フランが詰まらなそうに言った。

「俺はバクラが投げつけて来たレコードを持っている。支給武器は使っちまったよ」

 阿部は漫画のページで作った紙製のスカートを指さした。

「レコード!?」

 ドナルドが驚いた。ドナルドは阿部にレコードを見せてくれるように頼んだ。阿部も受諾し、レコードを手渡した。ドナルドはそれを両手でそっと受け取ると、じっくりと観察した。

「間違いない――。これはキチガイレコードだ。これならデデンネちゃんを殺さずに済むかもしれない――」

「本当か!?」

「うん。でもやっぱり一つ大きな障害があるなぁ――」

「ドナルド、さっきから言ってる、その障害ってのは何だ?」

「――委員会のビルに侵入する必要があるんだ」

「なーんだ、それならやる夫達と目的は一緒だお!」

 やる夫が大声でドナルドに話しかけた。

「何々、貴方達、委員会のビルに突撃するつもりなの?」

 フランが楽しそうにやる夫に話しかける。

「そうだお!この雷騒動が無ければ、今頃やる夫たちは委員会のビルの中だお!」

「ほら、聞いた道化師さん?私と同じ考えの奴が他にもいるって言ったでしょ。ビビってるのは道化師さんだけじゃん」

 ドナルドが気まずそうに頬を描いた。やらない夫はフランと目を合わせないようにしていた。

「で、やる夫、どうやってビルに入ろうとしてたの?」

「それは――正面突破だお!」

 やる夫が嬉々として叫んだ。ドナルドは「あら~っ」と言って後ろに倒れた。やらない夫は放心したように膝をついた。

「やる夫君の頭はハッピーセットかよ…」

 ドナルドがぼやいた。その肩をやらない夫が静かに叩いた。ドナルドは振り返る。

「やらない夫君――そんな顔して、大丈夫かい?」

「大丈夫だ。放心したような顔を瞬時に作れるのは俺の――特技?特技なのか?なんか嫌だろ――」

「ええ…」

 この二人と異なり、阿部は先ほどと同様に笑みを浮かべている。フランは目を大きく見開くと、瞬時にやる夫に近寄り、やる夫の両手を握った。

「やるじゃん、やる夫!アンタも私と同じ考えを持ってたなんて、見直したわ!」

「やる夫はやる時はやるお。やりまくるお!」

「ハハッ、俺もやる夫の考えに賛成だ。男は度胸!何でも試してみるのさ」

「私は女だけど。でもさあ、そこに度胸の無い男が二人ほどいるんじゃない?」

 やらない夫がムキになって立ち上がった。

「待て、俺は何もビルに正面突破で侵入するのは反対じゃないんだ。ただ正面突破よりも安全な策を提示しただけだろ」

「ドナルドも反対じゃない。ただ、もっと簡単で安全な方法がないか考えていたのさ」

「そうやってすぐに言い訳ばっかり。どうせ二人共怖いんでしょ?」

 フランが煽った。やらない夫とドナルドはムキになった。

「しょ、正面突破なんてなあ!――そ、そんなの全然怖くねえだろ、常識的に考えて!あんな委員会の奴らよりも、このクラスの奴らの方がはるかに怖いね!」

「怖いのは――仮に突撃した場合、この力を止められなくなってしまうだろうドナルド自身さ――」

「なら全会一致で決まりだお!」

 やる夫が握りこぶしを突き上げて言った。フランは笑顔で万歳をした。

 やらない夫とドナルドは互いに無言で顔を見合わせた。お互いを恨みがましい目でじっと見ている。

「で、どうやって正面突破するんだい?ドナルド達は飛び道具を持ってないよ」

「俺にカイザギアで変身しろとかいうのは無しだからな」

「スカーレットさんの爆弾でも投げるか?」

「あっ!」とフランが大声を上げて手を叩いた。

「私、思い出したの。こういう時に、うってつけの物がこの島にはあるのよ。ただし、この雷じゃあ、無事かどうかも分からないけどね」

 

                *

 

「はぁ~。で、ムスカ君。一体私に何の用ですかぁ~」

 素に戻ってため息をついたベータはムスカに話しかけた。

「あのデデンネを倒すため、ここは一時休戦としないか?」

「へぇ~。あのムスカ君が私と手を組むなんて、どういう風の吹き回しですかぁ?」

 ムスカは「見ろ!」と言って辺りを指さした。

「これは素晴らしい最高のショーだ。だが、このショーでは私が主催者ではない。それどころか、演者になっている。このラピュタ王である私を差し置いて、ショーの主催者になるとは――デデンネ、許しておけない」

「頭大丈夫ですかぁ?でも――あのデデンネが鬱陶しいのは私も同感です」

「そこで、我々も手を組もうではないか。デデンネを倒すまで、君の命は見逃してやる」

 ムスカの発言を聞き、ベータは笑い出した。

「見逃してやるって――それは私のセリフですよぉ?その手に隠し持ったトランプで私の銃と勝負しますか?結果は見えちゃってますけどね」

「私の勝ちという結果がな。しかし、今ここで君を殺してその銃を奪い取るのは容易いが、その後のデデンネとの戦いを考えると、余計な体力は使いたくない。それに、デデンネを相手にするなら、味方が一人でもいた方がありがたい」

「それって~、私にデデンネを倒す手伝いをして欲しいってことですよね~☆それなら、最初から私に協力してくださいって頼めばよかったのに。素直じゃないんですね」

「だから、さっきからラピュタ王であるこの私が、わざわざ君に協力を求めているではないか」

 ベータの目の色が青紫色になった。

「何様だよ」

「王様だよ」

 ベータは舌打ちをした。

「君にとっても答えにくい事だろう――。3分間待ってやる!」

 45秒くらいしか待ってくれねえじゃねえか。

「時間だ!答えを聞こう!」

 はえーよ、速過ぎる。

「チッ、テメェとこれ以上話していても、埒が明かねえ。優しいこの俺が協力してやるよ、感謝しな」

 苛立ちながらも、ベータはムスカと協力する事を選んだ。

「私に助けてもらえる君が感謝すべきだが」

 ムスカの言動を無視してベータは話を続ける。

「で、どうやってデデンネを倒すんだ?ここからじゃ、俺の銃もテメェのトランプも届かねえだろ?」

「奴を地上に引きずりおろすか、奴と同等の高みへ上る必要がある」

「高みねぇ――要するに、デデンネを攻撃できる高い場所に登れば良いって事だろ?さっきからの雷で灯台は壊れちまったしな。他に高い場所――」

 ベータとムスカはある一点を見た。

「どうやら――俺もテメェも考える事は一緒らしいな」

「ラピュタ王であるこの私と同じ考えが出来た事を少しは誇りに思いたまえ」

 

                *

 

「俺達、鉄華団の作戦は、東棟で騒ぎを起こし、その隙に西棟から侵入する。そうだったよな?」

 オルガの問い掛けに、さくらとマルフォイは頷いた。

「今はこの雷騒ぎで委員会の奴らも大騒ぎだ。警備の奴らも、ビル内の奴らも、大方正常じゃいられねぇ」

「あっ!二人共、見て!」

 さくらがそう言って西棟の入り口を指さした。オルガとマルフォイは西棟を見る。

 入り口周辺で警備を行っていたストームトルーパー達は無線で放送を聞いた後、見るからに動揺した。それだけでなく、入り口からぞろぞろと武装したストームトルーパーが出て来た。

「うわああああっ!まだ中にもあんなに多くの兵士がいたのか!?」

「まるで――入り口からの侵入に備えて待機してましたってくらいの早さだな」

 オルガは居住まいを正す。

「さて――俺はこの機を逃す手は無いと思う。爆弾は見つかっていないが、最初の目的である騒ぎを起こして委員会の奴らを混乱させる事は出来た。今なら十分ビルへの侵入は容易いだろう。ずっと委員会にバカにされて、足蹴にされていいように扱われてばかりだった俺達がこのプログラムの支配権を手に入れる。こいつはこれ以上ない俺達の上りじゃねぇのか?」

「あっ――」とさくらとマルフォイは息を呑む。

 さくらはオルガの顔を真っすぐ見つめると、笑って頷いた。

「やろうよオルガ君、マルフォイ君。オルガ君の言う通り、今なら絶対大丈夫だよ」

「すまねえ、恩に着る!」

 オルガはさくらに頭を下げた。

 だが、まだマルフォイは踏み切れずにいた。

「大丈夫なのか、オルガ。まだ入り口周辺には多くの兵士がいる。さっきよりも減ってるし、足並みもそろってないようだが、あれを突破できるのかい?」

「鉄華団団長として、お前ら団員は俺が必ず無事にビルへと送り届ける。例え俺が犠牲になったとしてもな。一度手を組むって約束したんだ。筋は通す」

 マルフォイの質問にオルガは答える。

 オルガの顔は真剣で、言葉に嘘は感じ取れなかった。

「分かった。僕も君の作戦に乗ろう。どのみち、いつかは侵入しなきゃならないんだ。それがちょっと早まっただけさ」

 マルフォイは笑みを浮かべてオルガを見た。オルガはマルフォイにも頭を下げた。

 そして、オルガはビルの方を向く。歩き出そうとするが、さくらがオルガの服を掴んだ。

 オルガは振り向いた。

「でも――オルガ君が犠牲になるなんて、絶対だめだよ。みんなで生きて帰ろう?」

 さくらが言った。

「――放してくれ」と言い、オルガは自分の服を掴んでいるさくらの手をそっと外した。

「俺も無事に――。全員で生きて帰る――か。ああ分かったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りは出来ねぇんだ、連れてきゃいいんだろ!途中にどんな地獄が待っていようとお前を――お前らを俺が無事に連れてってやるよ!」

「なるほど――なら僕ら団員も団長を無事にビルへと連れていく必要があるという事かな?」

 マルフォイが言った。マルフォイも覚悟を決めた。

 

                *

 

「その服――西川兄貴を意識しておるのか?」

 じーさんがポプ子に尋ねた。

「あーそうだよ、文句あんのかジジイ」とポプ子が悪態をついた。

「どうせやるのなら、Albireo-アルビレオ-のジャケットぐらいやって欲しいものじゃ」とじーさんが鼻をほじりながら言った。

「アァン!?スワロフスキーも無いのに、出来るわけねーだろ、ボケェェェェェ!!ちゃんとスワロフスキーを持ってきてから言えよ。そうやって脈絡なく適当な事言っても全く面白くないんですわ」

 ポプ子は顔面中に静脈が浮き出るほどに怒った。その姿、まさに狂経脈の如し。別にポプ子の感覚は変化していない。

 そのポプ子に、貞子が話しかける。

「ポプ子ちゃん、戦いなんて無意味よ。私とじーさんと一緒に皆を止めましょう!」

「は?お前は、戦いは止めてーとか言っちゃう空気の読めない子か?誰だってなあ――生涯の中で避けられない戦いってのがあるんだよ!部活動、受験、就活、出世争い――そして、私の避けられない戦いってのが、今なんだよ!戦いを止める?寝言言ってんじゃねーよ、チェストオオオオオオ!」

 ポプ子が釘バットを振り上げ、貞子に駆け寄る。

 貞子は両手で顔を覆った。

 その時、ポプ子と貞子のバッグが緑色の光を放った。ポプ子は動きを止めた。

「その光――貞子ちゃんもレアアイテム持ってるじゃん、やったぁーっ!」

 ポプ子が釘バットを掲げてジャンプした。

「さあ貞子ちゃん、それを渡してから死ぬか、死んでから私に奪われるかを選――ゲブファァアアッッッ!!」

 ポプ子は喋っている途中で顔に衝撃を受けて倒れた。

 じーさんが素早い動きで貞子のバッグからハイドラパーツXを取り出し、ポプ子の顔面を狙って投げつけたのだ。

「欲しけりゃくれてやるわ、そんな物」

「あ~、ありがとうじーさん。アレが入ってるとバッグが重たくて大変だったのよ」

 じーさんと貞子は談笑を始めた。

 一方でポプ子は投げつけられたハイドラパーツXと釘バットを手にして立ち上がった。そして、文字では表現できない怒声を上げた。そのポプ子の怒声に応じるように、手に持ったハイドラパーツXとバッグの中にある二つのパーツが緑色の光を放った。

 ポプ子はバッグを開けた。それと同時に二つのパーツが勢いよく飛び出した。ポプ子が持っていたハイドラパーツXもポプ子の手から離れた。

 光を放ちながら、三つのハイドラパーツX、Y、Zが空中で合体し、一つとなる。

 今ここに、伝説のエアライドマシン、ハイドラは復活した。




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
● 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
● 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
● 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り16人】
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