やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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シドニー・マンソン「俺がこのバトル・ロワイアルで生き残れたのも…委員会に一矢報いる事が出来たのも…全部月島さんが居たからじゃないか…!」

ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
● 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
● 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
● 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り16人】


15話

91

 ハーメルン学園3年β組45名によるプログラムが行われている島の近海には数多の戦艦が待機している。これらの戦艦が配備されている理由として大きく三つある。

 一つ目は、島から逃げ出した生徒を始末するためだ。だが、生徒たちには管理用の首輪が付けられており、これが付いている状態で島から出ると首輪は自動的に爆発する仕組みとなっている。生徒が島から逃げる為にはまず首輪の解除が不可欠だが、これは生徒にとっては非常に困難である。そして、これまでのプログラムにおいて、首輪を解除した後に島からボートの類を使って逃げ出そうとした生徒は一人もいない。故に、これらの戦艦が、島から逃げた生徒を始末した事は一切ない。

 二つ目は、生徒の保護者や関係者にプログラムに反対する者がいて、そういった者が島へ乗り込んでくるのを防ぐためだ。だが、委員会は唯一神エンテイの直属の組織であり、この国の様々な機関への根回しは既に行われている。したがって、このプログラムに反対する者はほとんどおらず、仮にいたとしてもプログラムに関する事は極秘事項であり、開催地であるこの島を突き止める事すら不可能と言ってよい。

 三つめは、プログラムに参加した生徒たちの暴動を鎮圧するためである。だが、前述の様に生徒たちは首輪によって管理されている。委員会はプログラムに反抗する生徒を面白がって見ているが、それは首輪及び、ストームトルーパーによる警護があるからだ。これによって、委員会はいつでも目障りな生徒を殺すことが出来る。

 それゆえ、戦艦はこれまでのプログラムにおいて無用の長物となっていた。

 これまでは。

 今回は違っていた。

「撃て―!」

 島の周囲に待機していた多くの戦艦の意識は島に向けられている。今も、戦艦から数多の砲弾が放たれた。

 それらの砲弾は標的を捉える前に雷によって破壊された。

 戦艦らの標的、それは超人化の薬を飲んだ結果、凄まじい力を手にして空を舞うデデンネであった。

 デデンネは笑みを浮かべ、海上に漂う戦艦を見た。

「面白いでちゅね。さっきまでは精々20%の力しか出してなかったんでちゅが、面白いものを見せてくれた委員会の皆に私も応えないと――40%!」とデデンネが言い、戦艦へ向けて手を振った。

 その手から電撃が放たれた。電撃が数隻の戦艦を襲った。凄まじい光と轟音と共に、数隻の戦艦が海に沈んでいった。

「ひ――怯むなー!撃てー!」

 残った戦艦から聞こえてくる声をデデンネは耳を澄まして聞いていた。勇んではいるものの、その声は恐怖に震えている。デデンネは口元を両手で押さえながらも激しく嗤った。

「いいでちゅね、さあ委員会の皆はどこまで私の力を引き出せまちゅか?――60%!」

 デデンネが体に力を入れた。その体から電撃がほとばしる。デデンネが叫ぶと、それに応じるように、上空の雷雲から戦艦へと雷が降り注いだ。戦艦は一隻、また一隻と海の藻屑となって消えていく。

 だが全ての戦艦が轟沈した訳ではない。残った戦艦はデデンネへの攻撃を止めない。

「ぷっ、まるで馬鹿の一つ覚え。これが委員会の限界でちゅか。だったら――そろそろ終わりにしまちゅ!80%!」

 デデンネが全身に力を込めた。次の瞬間、デデンネの体から七色の電撃が放たれた。七色の電撃は容赦無く戦艦を破壊していく。

「うっぷっぷ。今のはピカチュウの1000まんボルト。見様見真似でちゅが――かなり上手に再現出来たでちゅ」

 デデンネは高笑いをし、その笑い声が島中に響き渡る。

 ん――?

 デデンネは洋上を見た。そこにはまだ一隻の戦艦が残っていた。その上に、男性のアレに似た奇妙な形の兵器が乗っており、それがデデンネに狙いを定めている。

「あれは――ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないでちゅか。完成度たけーなオイ」

 デデンネの顔に冷や汗が浮かんだ。だが、デデンネは瞬時に頭を振った。

 これでいいんでちゅ。これぐらいでないと、私の真の力をぶつけるには値しないでちゅ!

 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲から高密度のエネルギーがデデンネを目がけて放たれた。

 

                *

 

 ざわ…ざわざわ…ざわ…。

 利根川を始め、BR法委員会の黒服たちは衛星で撮影した映像を見ていた。戦艦の大半はデデンネによって沈められたが、委員会の最終兵器、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲がデデンネを捉えた。

 この映像に委員会は沸き立った。

「やったか!?」

 利根川と黒服たちは固唾を呑んで映像に見入っていた。

「デデンネはどうなった!?」

「今映像を確認中です!」

「急げ!すぐにネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲のエネルギーをチャージしろ!デデンネの死を完全に確認するまで、何度でもネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を撃つ!」

「と、利根川先生!」

「何だ!?」

「デデンネは先ほどの砲撃をジェットパックで回避したようです!」

 あ…?

「どこだ…デデンネは!?衛星で奴を探せ!」

「み、見つけました!こ…これは…」

「どうした…!?」

「デ、デデンネがいるのは…上…!ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の…!」

 

                *

 

「さっきのは危なかったでちゅね。あれを喰らえば流石の私も無事では無かったでちゅ。さて――見せてやろう、100%中の100%!これが私の全力だぁぁ!スパーキングギガボルトォォ!」

 デデンネが雷の槍を真下に向けて突き落とした。雷の槍はネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲に当たると同時に炸裂した。

 委員会の切り札はデデンネの渾身の一撃を受け、暗い海の底へと沈んでいった。

 

                *

 

 ざわ…ざわ…。

 利根川と黒服たちは全員顔に冷や汗を浮かべ、口を半開きにした状態で、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が粉砕された映像に見入っていた。

 黒服たちはこの状況でどうすればよいのか分からなかった。数人の黒服が指示を求めるように利根川を見た。

 だが利根川もあまりにも予想外の出来事に、固まっていた。

「う…」と黒服の内の誰かが呻いた。

 その時、デデンネを映し出している映像に変化が起こった。

 映し出されているデデンネは、自分が撮影されている事を知っているかのように、ほくそ笑んだ。作画崩壊したデデンネの顔がモニターに映し出された。デデンネは最初、笑みを浮かべていたが、すぐに真面目な顔つきになった。

 顔の作画は崩壊しているが。

 まるで自分の事を遠くから見ている者たちに向けて話すかのように、デデンネは語り始めた。

「やあ、BR法委員会の皆、人気ナンバーワンポケモンのデデンネでちゅ。元微妙な種族値ポケモンであった私の経験から見て、今のお前達に足りないものがある。――危機感だ。お前ら、もしかしてまだ――自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」

 デデンネはそう言うと、背中のジェットパックを使って加速した。猛烈な速度で海上を飛行するデデンネは委員会本部のツインタワービルを目指す。

 このデデンネの映像で黒服たちは呻き…慌て…動揺…混乱…思考を停止…!中には恐怖でその場に崩れ落ちて泣き出す者も…!

「甘えるな…!」

 利根川が黒服たちを一喝した。この利根川の一声で、先ほどまで喚いていた黒服たちが一転、静まり返った。

「BR法委員会に身を置いた時点で…自分の命も常に危険が付きまとう事など、覚悟の上…!」

 黒服たちは黙って利根川の話に聞き入る。

「ワシは今まで、プログラムに参加させてきた多くの学生共に言ってきた…勝たなければ…ゴミだと…!それは何もプログラムに限った話ではない…!生きとし生けるもの全てに当てはまる…一言で言えば…自然の摂理…!そう、これは我々と生徒共の戦い…故に我々は勝たねばならぬ…!お前たちも世間のクズ同様…求めれば周りが右往左往して世話を焼いてくれる、そんなふうにまだ考えてやがるんだ、臆面もなく・・・!甘えを捨てろ…!」

 黒服たちに電流が走る。

「利根川先生…」と言いながら、一人、また一人と立ち上がる。

 この光景を満足げに見た利根川は笑みを浮かべた。

「それでは…説明するぞ…今後の動きを…!ワシは唯一神様にこの場を治めて頂くよう、要請に向かう!お前たちは前もって決めた班に分かれ、vipの皆様を連れて各自向かえ…格納庫へ…!」

「格納庫…利根川先生…それはつまり…」

「フッ…我々がやるべきことは…脱出…!この島からの…!!もはや我々には不可能…デデンネを倒す事は…!我々だけではなくvipの皆様もここで死なせるわけにはいかん…!そう、これは…戦略的撤退…!それが我々の勝利…!」

「分かりました!すぐに我々もvipの皆様を連れてここから脱出します!しかし…利根川先生は…」

「心配するな…唯一神様に話を通した後、ワシもすぐに向かう。そして蓮実――」

 ぞわ…と。

 突如、利根川を襲った……悪寒……!

 利根川は室内を見渡す。そこに蓮実聖司の姿は無かった。

 くっ…蛇めっ……!

「おいっ…どこだ、蓮見は…!?」

「は、蓮実先生が先ほどこの部屋を出ていくのを見ましたが…」

 ぐがっ……!

 利根川は青ざめた顔で走りながら部屋から出た。

「利根川先生!?」

「ワシの事は気にするな!お前らもすぐに動け…先ほど命じたように…!」

 

                *

 

 デデンネはジェットパックの力を最大限利用して、委員会のツインタワービルを目指していた。いくら超人となったとはいえ、デデンネが体内に蓄えられる電気も無尽蔵とはいかない。大量に使えば、その分を補給しなければならない。

 デデンネはしっぽを民家や発電所のコンセントに刺す事で、電気を吸収することが出来る。

 デデンネは、現在この島で残っているコンセントは委員会のツインタワービルのもの以外に思いつかなかった。

 島中の民家は、私の雷雲による雷の雨で破壊してしまったでちゅからね…。

 雷が降り注ぐ中、本部を目指してデデンネは飛ぶ。

 ――む?

 デデンネは一旦、空中で動きを止めた。異常なまでに発達したデデンネの五感がある感情を捉えた。

 これは――殺気!

 デデンネは振り返り、目と耳に神経を集中した。

 ――来た!

 殺気の塊がデデンネに迫り来る。デデンネは笑顔でそれを迎える準備に入った。

 

 

 

92

「ほら、あったよ。無事に残ってて良かったわ」

「うおおおっ!格好いいお!」

「何で――こんなものがこの島にあるんだ?」

「ウホッ!いい車…」

「そうか――BMW735i E38、沙耶ちゃんの支給武器か――!」

 フランドール・スカーレットが指さした先に黒塗りの高級車があった。

 やる夫と阿部高和は目を輝かせてこの車に見入っている。やらない夫だけは不思議そうに、顎に手をやって車をじっと見ている。

 そんなやらない夫の疑問に答えるようにドナルドがやらない夫に話しかけた。

 この車、BMW735i E38は女子07番、沙耶の支給武器であった事、ドナルドとフランは沙耶の運転するこの車に狙われたが、この場で森に逃げ込んだ事で難を逃れた事、その直後に沙耶は殺されたが車は無事だと推測した事を説明した。

「それにしても、良く思いついたねフランちゃん」

「道化師さんとは頭の出来が違うから。それに私、この車も以前からちょっとだけ欲しかったし」

 やる夫は車に見とれていたが、顔を上げ、フランに近寄る。

「フランちゃん、この車でビルへ突撃するのかお?」

「その通りよ。やる夫、アンタ気持ち悪いけど道化師さんより物分かりが良いじゃん」

「そ――そんなに褒められると照れるお」

「褒めて無いから」

 それでもやる夫の白い顔はわずかに赤くなった。照れくさそうな笑みを浮かべ、やる夫は自分の頭を掻く。

 ドナルドがやる夫に耳打ちした。それを聞いたやる夫は目を大きく見開くと、鼻息を荒げてフランに話しかけた。

「フランちゃん――き、君は妹キャラなのかお!?」

「だったら何だよ、ホントに気持ち悪いなぁ白豚」

「ぶひいいいぃぃぃぃ!」

 やる夫は身悶えた。それをフランはゴミ虫を見るような眼で見つめる。

「男として生まれたからには、一度は妹に言われたい事、『兄貴、キモッ!』、『お兄ちゃん、気持ち悪―い!』『お兄さん、気持ち悪い…』。やる夫」

「ねえ、道化師さん。さっさとこの畜生を轢き殺しちゃってよ」

「いやいや、ドナルドは車の運転をやった事がないんだ」

「――は?私だって運転なんかやった事無いし、出来ないわよ!道化師さん、その長い手足は何の為にあるの!?運転するためじゃないの!?」

「ダンスをした時に見栄えを良くするためさ」

 フランとドナルドはやらない夫を見た。

「お、俺!?俺だって運転なんてやった事ねえよ!」

 やらない夫は手を振って必死に否定する。

「そもそも俺達って学園の3年だけど、高校生なのか?中学生なのか?」

「知らないよ」

「小学生かもしれないよ…」

 やらない夫の問い掛けに、フランとドナルドは居心地悪そうに返事した。

「やる夫はレーシングゲームの経験があるから、アクセルとブレーキぐらいなら分かるお。阿部さんはどうだお?」

 そう言って起き上がったやる夫は阿部の姿を探した。

 阿部は一人、黙々とBMW735i E38を点検していた。

「いいぞ。この車がいい車だってのが分かるよ。状態にもなんら問題は無いし、走った距離も1キロに満たない――ほとんど新車だな」

「阿部さん!?車の状態が分かるのかお!?」

 やる夫が驚いて阿部を見た。やらない夫、フラン、ドナルドも同様に興味ありげな目で阿部を見る。

「ああ。俺の実家は自動車修理工場でね、物心つく前から車に囲まれて生活してきた。成長してからは、仕事の手伝いとして数多くの車に触れて来た。今では自動車修理に関してはプロ並みの腕前だと自負しているし、学校が休みの日は時々俺が自動車修理を担当する事もあるのさ」

「知らなかったお…」

「やる夫が知らないのも当然さ。話す機会も無かったからな」

「阿部、そういう事って前もって言っておかなければならないじゃねえか?」

「いや、突然ドナルドが自動車修理工だったとしたら多少問題はあるだろうが、俺が自動車修理工でも何ら問題は無いはずだ」

 阿部は軽く微笑んでやらない夫にそう言った。

「それじゃあ阿部さん、運転できる?」

 フランが期待に胸を膨らませて阿部に話しかけた。

「もちろんだ。車の運転なら何年もやってるぜ。こんな高級車を運転するのは俺も初めてだけどな。興奮するじゃないか…」

「ん?仮に私たちが高校3年だとしたら、阿部さんが普通免許を持っていて運転できるのも、何ら問題ないけどさ、何年ってどういう事よ。まるで何年も前から運転してたかのような言い方ね。それに私たちが高校生じゃなかったら――この話はもういいわ。とにかく、阿部さん、貴方、無免許運転したでしょ」

 沈黙が訪れた。

 阿部は両目を閉じ、口を半開きにしていた。その眉は普段と異なって垂れさがっている。その後、阿部の口から小さい声が漏れた。

「――ここだけの話という事にしといてくれないか…」

「やっぱりか!悪っ! ちょっとワルっぽいイイ男どころか、極悪じゃん!」

「すまなかった!ただ、運転したのは人っ子一人通らない深夜の山奥だ。それに法定速度も道路交通法も完璧に順守したぜ。その点、許してはもらえないだろうか」

「いや、ちょっとからかっただけだし。そうやって真面目に謝られても、私が困る。それに今重要なのは阿部さんの無免許運転疑惑よりも、阿部さんが車の運転ができるって事よ」

「そうだお!本部へ車でGOするには、阿部さんの運転技術が欠かせないんだお!

「嬉しい事言ってくれるじゃないの。それじゃ、俺の運転でとことん喜ばせてやるからな」と阿部は言うと、無言でBMW735i E38の運転席に座り込み、エンジンをかけた。エンジンが正常にかかった事を確認した阿部はパワーウィンドウを下げて顔を出した。

 阿部は凛々しい顔つきでやる夫、やらない夫、フラン、ドナルドの四人を見た。

「乗らないか」

 

 

 

93

「ふはははー!スゴイぞー!カッコいいぞー!」

 ポプ子は完成したハイドラを見て叫んでいた。その様子をじーさんと山村貞子は眺めていた。

 嬉々とした表情でポプ子はハイドラに飛び乗った。

「ぽちっとな」

 そう言ってボタンを押すことで、ポプ子はハイドラを動かそうとした。だがハイドラは動かなかった。ポプ子は首をかしげながらも、再びハイドラを動かそうとボタンを押した。だがハイドラは動かない。ポプ子は繰り返しボタンを押す。次第にポプ子がボタンを押す力が強まっていく。

「動け!このポンコツが!動けってんだよ!!」

 終にポプ子はハイドラを両手で殴り始めた。

「ボタンを押しっぱなしにしてエネルギーを溜める必要があるんじゃないか?」

 ポプ子の背後でじーさんがそう言った。

 じーさんに言われた通りに、ポプ子は渋々ボタンを押しっぱなしにした。するとハイドラにエネルギーがチャージされていく。

 ポプ子は振り返ってじーさんの顔を見た。

「おお~。じーさん、お前も少しは役立つじゃん」

「ワシも色々な経験をしてきたからのう」

 そう言ってじーさんは照れくさそうに鼻をほじった。そして、鼻くそをハイドラに擦り付けた。

 あ?

 ポプ子は違和感を覚えた。

 何でジジイもこのマシンに勝手に乗ってるわけ?

 ポプ子は勢いよくじーさんの胸倉をつかんだ。

「乗ってるんじゃねぇぇぇっー!!」

「駄目よポプ子ちゃん、チャージ中にボタンを離したら、また最初からチャージしないといけなくなるわ」

 キレたポプ子を貞子が諫める。ポプ子も我に返ると、じーさんの胸倉から手を離し、再びハイドラのチャージを始めた。

 は?

 ポプ子は再び後ろを見た。

 ハイドラには先ほどと同様にじーさん、そして貞子が乗っていた。

「お前お前お前お前お前お前お前ー!」

 いつの間にか我が物顔でハイドラに乗っているじーさんと貞子を見てポプ子は叫んだ。釘バットで殴り殺そうとも思ったが、今ここで自分がチャージを止めたら再びチャージを行わなければならなくなる。

 それならば――今はグッと耐え、チャージが終わると同時にこの二人を振り落として轢き殺す。

 ポプ子はそう考えると、怒りをこらえて、チャージを続けた。

 そもそも、このマシンのチャージに時間がかかりすぎだろー。

 ポプ子は苛立ちながらもチャージを続けた。

 その時である。

「見つけたぞ!ジュラル星人、覚悟しろ!」

 突如、誰かが声を上げた。ポプ子、じーさん、貞子の三人は声のした方を見た。

 そこにいたのは泉研だった。研は右手にイングラムM10マシンガン、左手にパラソルを持っている。イングラムの銃口は、ハイドラ上の三人に向けられている。

「うわーキチガイだ」

 ポプ子がぼやく。だが、ポプ子は内心焦っていた。

 何てタイミングの悪さだ!もう少しでチャージが終わるのに!あと数秒遅く来たならば、このマシンで殺せたのに!

「ジュラル星人、これでもくらえ!」

 研のイングラムから銃弾が放たれた。ポプ子は瞬時に身を屈めて目を閉じた。だが銃弾の雨がポプ子に当たる事は無かった。

 銃弾がポプ子らに届く直前、ポプ子らの体はすさまじい速度で前方へ移動した。

「何だと!?」

 研は驚いて目を見開く。

 一方、ポプ子も体に当たる風を感じて目を開いた。

 これは――!

 ポプ子は今、高速で動くハイドラの上にいた。遂にエネルギーのチャージを終えたハイドラが動き出した。

「シャッ、オラァ!やっと動いたかー!」

 ポプ子は握りこぶしを作る。

「よーし、おいキチガイ。お前もこいつのシミにしてやるよ」

 ポプ子は研に向けてそう言うと、中指を立てた。

「うーむ。素晴らしい速度じゃな。でも酔いそうじゃ」

「素晴らしいマシンね、ポプ子ちゃん!みんなでこれに乗れば、この島から帰れるわよ!」

 ポプ子の後ろに無理やり乗っているじーさんと貞子が言った。

「乗ってるんじゃ――ねええええええええええ!!」

 後ろを見てポプ子は怒鳴った。そのポプ子の事よりも気になる事があるのか、貞子は「ポプ子ちゃん、前!前見て!」と叫んでいる。

「あぁーん?」と言いながら、ポプ子は血走らせた目で前を見た。高速で直進するハイドラの前方に一本の巨木がそびえている。

「よけるんじゃああああああ!」

「駄目よ、もう間に合わないわ、ぶつかる!」

「くお~!!ぶつかる~!!ここでアクセル全開、インド人を右に!」

 ポプ子はハイドラを右に曲げようとしたが、それよりも先にハイドラと巨木が衝突した。だが、ポプ子らの想定していた事は起きなかった。

 ハイドラは巨木をなぎ倒した。そしてハイドラが動きを止める事はない。

 この直後、ポプ子らにとって想定外の出来事が起こった。急に右に曲げようとしたからか、ハイドラが高速回転を始めた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 ハイドラ上の三人の口から悲鳴が漏れる。

 ハイドラは回転しながら研へと向かっていく。研もハイドラへ向けて銃弾を放った。それでも迫り来るハイドラの回転は止まらない。

「くっ!」

 当たる直前で、研は横に跳んでハイドラの攻撃を避けた。勢いあまって研は地面を転がる。

 一方でハイドラの高速回転も収まっていた。だがハイドラは未だ進み続けている。

 研は立ち上がると、遠ざかっていくハイドラに向けて銃弾を放った。

「やられっぱなしでいられねえ!今度はこっちの番だ!」

 ポプ子はそう言うと、ハイドラで研を轢き殺すため、ハイドラの方向転換をしようとした。だが、ポプ子はまたも過ちを犯した。先ほどの高速回転で目が回っていて操作を間違えたのだ。

 ハイドラは方向転換して研を轢き殺すどころか、ますます研から離れていく。

「あれれ~おかしいぞ」

 そう言ったポプ子は自分の体が次第に地面から離れていく事に気づいた。

 もしかして――私――I can fly―――!

 ハイドラは勢いそのままに上昇を続けていく。今やハイドラは空中を高速で飛んでいた。

 私――飛んでる――!

 喜びに包まれていたポプ子だが、背後から聞こえた呻き声に現実に戻される。煩わしそうな顔でポプ子は後ろを見た。

 ポプ子の後ろには未だじーさんと貞子がしがみついていた。じーさんは無傷だが、貞子の体はわずかに血で汚れている。

「貞子ちゃん――それって」

「さっきの銃撃でやられたみたい。でも大丈夫よ。このマシンがあれば戦いを止めて、みんなで帰ることが出来るわ」

「おお、そうじゃな」

「うん――って、させるかよ、そんな事!二人共、落ちろぉ!」

 ポプ子は貞子とじーさんを振り落とそうと、空中でハイドラを左右に傾ける。だがじーさん、貞子も必死でしがみついている。

 その時、ポプ子らの乗ったハイドラの側を雷が駆け抜けた。この瞬間、ポプ子は島を覆った雷雲にデデンネが関わっていたことを思いだした。

 デデンネェ――!

 ポプ子は周囲を見渡した。そして、この雷の中、高速で空を飛んでいる者を見つけた。

「見つけた――。お前らを振り落とすのは後だ。つっこむぞつかまれッ!」

 殺意を漲らせ、ポプ子らを乗せたハイドラがデデンネへと向かっていく。

 

                *

 

「くっそ~、逃がしたかジュラル星人め――」

 研はポプ子らを逃したことで、舌打ちした。だが、空を飛んで逃げていった三人の方角は分かっている。

「奴らが逃げた方向にジュラル星人の基地があるに違いない!」

 研はハイドラの跳んでいった方向へ走り出した。

 

 

 

94

 空中で動きを止めたデデンネは視力の上がった眼を使って、殺気を感じた方向を見た。そして、ポプ子、じーさん、貞子が妙なマシンに乗って自分の元へと飛んでくることを見つけた。貞子は手負い、そしてポプ子の顔はデデンネへの殺意で満ちていた。

 やっぱりこの殺気はポプ子ちゃんでちゅか。流石、ポプ子ちゃんといったところでちゅね。でも――今の私の敵ではない!

「会いたかったでちゅよ――ポプ子ォ!」

 デデンネはハイドラへ向けて電撃を放った。だがその電撃を、ポプ子はハイドラを操作してかわした。

「フフフフフ――そうでちゅよ。あっさり死なれちゃ詰まらないでちゅ――招雷弾!」

 デデンネは再び電撃を放つ。だがそれらをポプ子はハイドラでかわし続ける。

 次第にハイドラがデデンネへと近づいてくる。

「ならば――超電導波・サンダーフォース!!」

 デデンネが口を大きく開いた。

「遅え!」

 だが、デデンネが口から電撃を放つよりも先に、ポプ子らを乗せたハイドラがデデンネの眼前に迫って来た。

 デデンネがサンダーフォースを口から放つと同時に、ポプ子らを乗せたハイドラもさらに速度を上げた。ハイドラはサンダーフォースをかわしつつ、デデンネへ狙いを定める。

 だが、デデンネもハイドラと直撃する寸前で、ハイドラとの衝突を避けるべく、ジェットパックを利用して横に動いた。

「チィッ――外したか!」

 ハイドラに乗ったポプ子は叫んだ。さらにポプ子にとって不幸な事に、勢いの付いたハイドラはデデンネから遠ざかるように飛んで行ってしまった。

 その光景を見てデデンネは嗤った。

 追いかけて仕留めればいい、と思った直後、デデンネは右の頬に痛みを感じた。

 デデンネの内心で不安感が募った。デデンネは恐る恐る右の頬に触れた。デデンネの手に液体が付いた。

 デデンネは瞬時に手を見た。そこには血が付着していた。

 血――!

 さらにデデンネは今頬を触った時に違和感を覚えた為、再び頬に触れてみた。そこには本来あるべきはずの物、デデンネのチャームポイントである髭が無くなっていた。

 先ほどのポプ子らのハイドラがデデンネの頬をかすめたのだ。

 デデンネは怒りに震えた。

「私の可愛い顔に傷を――そして――チャームポイントである髭を――!絶対に許さんぞ虫ケラ共!じわじわと嬲り殺しにしてくれる!」

 デデンネは怒りに身を任せ、ジェットパックを使いポプ子らのハイドラを追った。

 一方で、デデンネをしとめ損ねたポプ子らのハイドラは今も空を高速で飛んでいた。

「これ、どうやれば遅くなるんだ?もう一回デデンネを襲撃したいんだけど」

「お前ばっかりズルいぞ。ワシにも運転させろ!」

「嫌だね!って、ジジイまだ落ちてねーのかよ!落ちろおおお!」

「嫌じゃああああああああ!!」

 ポプ子とじーさんはハイドラ上でもめ始めた。その二人と違って前を見ていた貞子が口を開いた。先ほどの研の銃撃によるダメージのせいか、その声は小さく、かすれている。

「二人共――ま、前を――見て――」

 ポプ子とじーさんは貞子に言われた通りに前を見た。そして二人共目と口を大きく開いて、言葉を失った。

 眼前にBR法委員会本部ツインタワービル東棟が迫っていた。

 

                *

 

 BR法委員会の黒服である慈英と計は東棟最上階で島の様子を監視していた。だが、彼らの元にも先ほど、利根川からの命令が入った。

 超人と化したデデンネに委員会は歯が立たず、この島から逃げるという内容であった。

 オレ達は出しゃばるより、すぐに利根川先生に従った方が賢明だ。

 それが慈英と計、そして最上階で島の監視をしていた黒服たちの総意であった。

 そんな時、慈英はふと窓の外を見た。何かが高速でこのビルへと近づいてくる。

「あれは!」

「何です?」と計が応じる。

「前方に何か光ってるぞ!」

「灯台でしょう」

「ばか!灯台は女子12番、デデンネに破壊され――」

 そして慈英は言葉を失った。それは計を含めた黒服たちも同様であった。

 ざわ…ざわざわ…。

 黒服たちは顔に冷や汗を浮かべながらも向かって来るものから目を離せなかった。

「ハイドラ…あれは支給武器である伝説のエアライドマシン…!こっちへ向かって来るぞ…ハイドラに乗った生徒が…!」

 黒服の内の誰かが叫んだ。その直後、黒服たちは悲鳴を上げ、我先にと窓から離れようと走り出した。

 だが既に遅かった。

 ポプ子、じーさん、貞子を乗せたハイドラが窓ガラスを突き破ってビルへと侵入した。

 窓ガラスが勢いよく割られた音と共に、室内にガラスの破片が散乱する。

 ポプ子、じーさん、貞子の三人も衝突の衝撃で、ハイドラから振り落とされた。乗り手を失ったハイドラは床に転がっている。

 黒服たちは突然の侵入者に腰を抜かしていた。

「いてててて…」と、ポプ子が体を擦りながら立ち上がる。黒服たちの視線を感じて、ポプ子が言った。

「お?何見てんだコラ。見せもんじゃねーぞ、散れ散れ!!」

「ポプ子ちゃん…」

 床に倒れたままの貞子がポプ子に話しかけた。ポプ子は黙って貞子に近づく。

「ポプ子ちゃん――私はもうダメ。痛みで体が動かないの。こんな私がいても貴方達の足手まといよね――」

 そう言うと、貞子は持っていた武器であるスーパースコープと伸縮サスペンダーをポプ子に手渡した。

「これが私の武器、ポプ子ちゃんにあげるわ。この武器がみんなを止めるのに役立つのなら、ポプ子ちゃんが使って――」

「ありがとう貞子ちゃん――しかとムネに響いたぜ…かしこ」

「ポプ子ォ!!!」

 ポプ子の「かしこま!」はデデンネの声で妨げられた。

 ポプ子は目を血走らせてデデンネを見た。だが、今ではデデンネも怒りで目が血走っていた。

「プァミリカミ ムリフォミニムリニ ファリン マッマーッ!!」

「や――やべえええええええっ!!」

 デデンネの言った事を聞いた途端、ポプ子は顔色を変えた。貞子の武器を両手に抱えたポプ子は貞子から離れるべく走り出した。ポプ子は下へと降りる階段を見つけるや否や、すぐにその階段を下った。

 一方、慈英と計を含めた黒服たちと貞子は、今デデンネが言った事が理解できなかった。

「何…今の?」

「なにか言ってたぞ」

「ピングー語だ…」

「ピングー語?」

「ピングー語でなんて言ったの?」

 ざわ…。

 黒服たちは騒めきだす。その黒服たちを見て、デデンネは笑みを浮かべて口を開いた。

「天光満つる処に我は在り 黄泉の門開く処に汝在り…出でよ神の雷」

「何!?それは…ッ!?」

「これで最後だッ!!?インディグネイション」

「そんなバカなッ!ア゛ア゛―――ッ!!!」

 室内が光に包まれる。黒服たちの悲鳴が室内でこだまする。貞子が最後に見たのは光だった。

 神の雷がツインタワービル東棟最上階を吹き飛ばした。

 

【女子21番 山村貞子 死亡】

【生存者 残り15人】

 

 

 

95

「危ない所だった…」

 階段の下でポプ子はうずくまっていた。デデンネのピングー語からインディグネイションをデデンネが放とうとしていたことを察したポプ子は階下へ逃げた事で難を逃れた。

 ポプ子が顔を上げた。最上階はデデンネによって吹き飛ばされていた。

 ここにいつまでもいると、見つかるかもしれないなー。さっさと逃げよう。

 ポプ子はさらにビルを下って行った。

 あの有様なら、最上階にいた委員会の黒服共に貞子ちゃん、そしてジジイも死んだだろ…。ヤッター!

 廊下の先で黒服たちの話声が聞こえた。ポプ子は足を止めて耳を傾けた。

「見つけたぞ!」

「なんだ…こいつ…」

「生徒だぞ…なんか老けているが…」

 ポプ子は忍び足で声のした方へと歩いた。

 そこではじーさんが数人の黒服たちに囲まれていた。

 チッ、あのジジイ、まだ死んでねーのかよ。ほんと悪運だけは大したもんだ。

 ポプ子がのぞいている事を黒服及びじーさんは気づかなかったようだ。

 じーさんはその場に膝をつくと、黒服たちに土下座をした。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 涙を流しながら土下座をするじーさんに黒服たちが怯んだ。じーさんはその隙を逃さなかった。

 じーさんはリボルケインを手に取ると、黒服の一人に突き刺した。じーさんはすぐさまリボルケインを黒服から引き抜いて距離を取った。

 その黒服は体から火花を噴き出しながらゆっくりとその場に崩れ落ちる。その瞬間、この黒服は爆発した。

 じーさんはその光景を見るや、笑いながら近くの階段を下りて行った。

「こっちにもいるぞ…生徒が…!あいつの仲間だ!」

 黒服たちはポプ子に気づいた。

「仲間じゃ――ねえええっ!!」

 怒り狂ったポプ子はスーパースコープを黒服たちに向けて連射した。光弾が黒服たちに当たって爆発する。光弾で撃たれた黒服はその場に倒れ、痛みに呻いている。

「ありがとう貞子ちゃん――この武器のエネルギーを満タンのままにしといてくれて!」

 ポプ子もじーさんが下りたのは別の階段を使って、笑いながら下へと降りて行った。

 

 

 

96

 ハイドラで生徒がビルに侵入した。その生徒たちはビル内で黒服を相手に暴れている。さらに別の生徒がビルの最上階を吹き飛ばした。

 こんな事はBR法委員会に長年属していた利根川幸雄にとっても初めての事であった。

 中止だ…このプログラムは…。こうなった以上、唯一神様の力を借りるしかない…。

「失礼します!利根川です」

 利根川は唯一神エンテイの部屋へ入った。こんな時でも、入る際に扉をノックする事を忘れなかった。

「唯一神様…」

 だが、この部屋は既にもぬけの殻となっていた。

「何…!?」

 ざわ…。

 ふと、利根川は唯一神の机の上に紙が一枚置かれている事に気づいた。それを利根川は取り上げ、文面を見た。

『帰る』。

 それが紙に書かれていた唯一神エンテイのメッセージの全てであった。

 ぐ…が…。

 ぐにゃり…。

 利根川は自分の体が突然柔らかくなり、音を上げて歪んでいく錯覚を覚えた。

 確かに…唯一神様なら可能…!この島から一人でこっそり逃げ出す事も…!それは十分に考えられる…唯一神様を超える力を生徒が手にして暴れ出した時点で…あの唯一神様なら…!くそっ…!一人で逃げた…あの方は…!我々を見捨てて…!恐らく…唯一神様に用があるといった蓮実も同様…逃げる準備か…いや、既に逃げたか…!

 利根川は持っていた無線でビル内の黒服たちに呼びかけた。

「逃げるぞ…!vipの皆様と、お前達と、ワシの全員で…!」

 

                *

 

 ツインタワービル東棟入り口のストームトルーパー達は大騒ぎであった。未だ雷は止む様子が無く、着々とストームトルーパーの数を減らしていく。さらに先ほど、ビルの最上階が雷によって吹き飛ばされた。それによる瓦礫に巻き込まれた形で、さらに多くのストームトルーパーの命が失われた。

 ジュラル星人G4号はストームトルーパーに変装して東棟の警備にあたっていた。

 地球侵略を目論む悪の宇宙人ジュラル星人はこのプログラムに目を付けた。未来ある若者たちを殺して少子化を進行させる。さらに若者たちに大人への不信感を抱かせる。これによって、この国は内側から崩壊していく。

 ジュラル星人たちがプログラムに目をつけない筈が無かった。ジュラル星人はいずれBR法委員会全てを乗っ取り、ジュラル星人の意のままにプログラムを行うという完璧な計画を立てた。そのために、ジュラル星人G4号はストームトルーパーとして委員会に潜入した。

 最初は自分が大事な作戦の根幹を担っている事に喜びを覚えた。さらに、今回の参加者に憎きチャージマン研がいる事も分かった。ここでチャージマン研が死ねば、ジュラル星人を邪魔する者はいなくなり、地球侵略を成し遂げたと言っても過言ではない。ゆえにG4号は浮かれていた。

 だが今ではG4号は恐怖で震えていた。幸い、雷と瓦礫を避け続けてはいるものの、いつまでも無事とは言い切れない。

 その時、G4号の前にいたストームトルーパーがよろめいた。

「大丈夫か!?」とG4号は近づいた。

「ああ。ちょっと誰かにぶつかってよろけただけだ。心配をかけた」

「ん?ぶつかったって、お前の近くには誰もいなかったぞ」

「そうか――。それなら、石にでもつまずいたのか。いや、でも今のはまるで――」

 

「やっと見つけたぞ!ここがジュラル星人の基地だな!」

 

 こ、この声は――!

 G4号は振り向いた。視線の先に、仇敵チャージマン研こと泉研が立っていた。

「ヤバい、チャージマン研だ!チャージマン研が来るぞ!」

「ジュラル星人、今度という今度は許さないぞ!」

 研がストームトルーパーらに銃弾を放った。一人また一人と研の凶弾に倒れていく。G4号も研の銃弾を受けた。体を熱いもので貫かれたような激痛が走る。G4号の眼前でさきほどよろめいたストームトルーパーが倒れた。

「よくも俺達の計画の邪魔をする気だな!」

 痛みをこらえG4号は持っていたブラスターで研を撃った。だが放たれた光弾は研が持っていたパラソルによって防がれた。

「くそ、なかなかやるな!」

 その直後に研はイングラムでG4号を撃った。

「びゃぁぁぁぁぁぁ!」

 ジュラル星人G4号はそう言って倒れた。

 研は勢いそのまま、警備の兵士たちをなぎ倒しながら、東棟の入り口から堂々とビルへ入っていった。

 

 

 

97

 ポプ子達が乗ったハイドラが東棟最上階に突っ込んだ直後、西棟入り口でも大騒ぎとなっていた。この様子をオルガ・イツカ、ドラコ・マルフォイ、木之本桜の三人は遠くから見ていた。

 ある者は雷に打たれ、またある者は東棟の様子を見に行った。今やストームトルーパーらの統率は乱れていた。

 その様子を見てオルガは笑った。

「勝ち取りたいものもない無欲なバカにはなれないんでね…」

「どういう事?」とさくらがオルガに尋ねた。

「いや、ちょっと脳内で曲を再生していたのさ。これからが俺達は勝負に出る。だからテンションを上げようと思ってな」

 それはマルフォイも同様だった。マルフォイは脳内でヘドウィグのテーマを再生していた。マルフォイは一通り脳内再生を終えると、オルガの顔を見た。

 さくら、オルガも互いの顔を見合った。オルガは二人を鼓舞するように話しかけた。

「二人共、これから俺達はビルへ突入する。まずは俺が一人で先に動き、奴らを引き付ける。その間に二人はビルへ入ってくれ。俺だってここで止まる気はねえ。必ず生きてビルへ入り、首輪を解除して、この島からおさらばだ。決して簡単じゃねえが、俺達鉄華団にやれねえわけがねえ」

 三人は西棟入り口を見た。この瞬間にも一人のストームトルーパーが落雷に倒れた。

 それを見るや、オルガはビルへと全力で走り出した。

「さあ、反撃開始と行こうか!」




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
● 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
● 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
● 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
● 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
● 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
● 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
● 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
● 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
● 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
● 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り15人】
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