やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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当初は登場人物全員を男にして男子校にしようかと思ったのですが華が無いので止めました。


前回までの結果

ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

○ 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
○ 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
○ 男子07番 剛田武
○ 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
○ 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
○ 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
○ 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
○ 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
○ 女子18番 見崎鳴
○ 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
○ 女子22番 両儀式

【生存者 残り44人】


2話

6

 やる夫はひたすら走っていた。少しでも本部から離れた所へ、その一心がやる夫の体を動かし、普段よりも速く、かつ長く走る事を可能にさせた。

 ふう、これぐらい離れればひとまずは一安心だお。ああ、転校初日で話したことも無いとはいえ、クラスメイトと殺し合いなんて勘弁してほしいお。でも、死にたくもないお。

 やる夫は誰かを殺さず、かつ殺される事なく生き延びる方法を考えた。

 あっ、やらない夫がいたお。

 やらない夫。

 やる夫がここに連れてこられる前にバスの中で会話した唯一のクラスメイトである。あの時に話しておいて本当に良かったとやる夫は思った。

 一人でいるよりも、誰かといた方が安心だお。でも、他のみんなはやる夫を信用してくれるかが不安だお。それに、クラスには殺し合いに乗り気の人も沢山いたお。万が一、彼らに会ったらやる夫は殺されるお。その点の見極めもしないといけないお。いや、やらない夫はきっと殺し合いには乗らないお。よし、まずはやらない夫を探して合流するお。おっ、そう言えば、このカバンには武器が入ってるって言ってたお。見てみるお。殺傷力がある武器はいらないお。それよりも、自分の身を守れる武器が欲しいお。防弾チョッキとか入ってないかお。

 やる夫はカバンの中をあさった。その中に入っていたやる夫の支給武器、それを見てやる夫は言葉を失った。

 刀身に龍が巻き付いた意匠の金色に輝く西洋の剣。つばは龍の翼の形をしており、柄は龍のうろこ文様で、柄頭は龍の頭を模した形状となっている。さらに、つばの中心には赤く輝く宝石のようなものが埋め込まれていた。だが不幸にもこの剣はやる夫の手のひらよりわずかに小さいサイズでしかなかった。

 やる夫の支給武器、それは修学旅行先のお土産屋によく売っており、全国の男子を魅了してやまない龍が巻き付いた剣のキーホルダーであった。

 

【男子22番 やる夫】

【身体能力】 E 【頭脳】 E

【武器】 剣のキーホルダー

【スタンス】 生き延びる

【思考】 わけ分かんねえお

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

 

 

7

 女子09番、枢斬暗屯子。

 肩にかかるほどの長さの黒髪。切りそろえた前髪。彫りの深い顔。綺麗に整えられた口髭。鍛え上げられた肉体。ハーメルン学園生徒会の副会長を務め、極道一直線、極道界のキャリアウーマン、そこらへんにいる男どもよりも男らしい学園一のイイ女である。

 彼女はこの現状に激怒していた。以前から政府が全国の学生らを使って怪しげなゲームに興じているといううわさはあった。だがうわさのみで事実確認はできず、今日まで政府を野放しにしてきた結果、自分が政府のゲームに参加させられてしまったのだ。

 同じ赤い血を流す人間同士で殺し合いを行わせる、こんな残虐非道な所業が許されてたまるかーっ!

 枢斬は怒りのあまり叫ぶ。

 だが、彼女の怒りの対象はBR法委員会だけではない。何か行動を起こすこともなく、BR法委員会を今日までのさばらせてきた自分自身が許せなかった。こんなことなら、もっと前から行動すればよかったのだ。そうすれば、自分らが巻き込まれることはなかった。それどころか、奴らに弄ばれ誰かに知られる事なくその若い命を散らしていった少年少女を救う事ができたはずなのだ。しかし、今更悔やんでも過去は変わらない。悔やむ暇があったら、今すぐ行動すべきなのだ。

 枢斬はバッグから支給武器である鱧切り包丁を取り出した。普段からドスを使い、その扱いに長けた枢斬にとってこの武器は当たりであると言える。

 鱧切り包丁を持ち、枢斬はBR法委員会の本部ビルを見据える。

 咲いた花として、散る覚悟はとうの昔に出来ている。

 わしの生き様をよく覚えとけ、クラスメイトども。わしと委員会の犬コロどもの全面戦争じゃ。

 枢斬は本部のビルへ走って向かおうとするが、そんな彼女を後ろから呼び止める者がいた。

「でっでっでっでっで。早速女の子を見つけたっていうwwwおいおい、枢斬じゃねえか、大外れっていうwwwww」

「なんじゃあワレぇ!__ああ、でっていうか」

 枢斬を呼び止めたのは男子12番、でっていうであった。緑色の体に爬虫類のような外見、クラスで最もうざい生徒として評判である。

「何の用じゃでっていう、わしは今から委員会の奴らをブチ犯しにいくんじゃ。貴様も来るか?歓迎するで」

「お前、頭がクリボーじゃねーのかっていうwwww委員会に喧嘩売るなんてわざわざ死にに行くようなものだっていうwwwいやいや、止めたりしないから安心して死ねっていうwwwwww」

 でっていうの発言を聞き、枢斬はでっていうに殴りかかった。とっさの事ででっていうは反応できない。枢斬は左手ででっていうの顔を殴り、でっていうは数メートル程吹っ飛んだ。

「でっていう-っ!貴様はバカか!こんな糞ったれなゲームに乗るってのかい!今の一発でもまだ分からないってなら今度は分かるまでブチ犯したる!」

「ふむふむ。なるほどなるほど。で?っていう?いいか枢斬、ここで生き残れば多額の金を貰って一生遊び放題、さらに唯一神とかいうのに願いを一つ叶えてもらえるんだっていう。やるべき事はクラス全員を殺すだけ!男は殺す!女は犯して殺して犯す!普段は出来ないあんな事やこんな事がやりたい放題!この島はまさにでっていうにとって地上の楽園、ここが俺様のヨッシーアイランドだっていう!ここにお前みたいなブスはいらねえんだっていうwwwww」

 そう言うと、でっていうは懐から注射器を一本取りだした。中には赤褐色の液体が入っている。

 毒か?

 枢斬はでっていうから距離を取る。だが、でっていうの行動は枢斬の予想とは異なった。

 でっていうはその注射器の針を自身の腕に突き刺し、その中の液体を注入した。その瞬間、でっていうの体に変化が起こり始めた。でっていうの上半身に血管が浮かび上がり、腕、肩、首、胸、腹といった上半身の筋肉が急速に肥大化を始めた。筋肉の肥大に耐え切れなくなったのか、でっていうの制服が勢いよく破れた。

「うおおおおおおっ!力だ!力がみなぎるっていう!」

 でっていうの急激な変化を見た枢斬は再びでっていうに殴りかかった。枢斬はでっていうの顔面をめがけてこぶしを繰り出す。だが、でっていうも枢斬のこぶしに自分のこぶしをぶつける事で身を防いだ。でっていうのこぶしも先ほどまでとは比べ物にならないほど肥大化し、枢斬のこぶしをも上回る大きさとなっていた。枢斬はこぶしをひき、後ろへ下がる。そして鱧切り包丁を右手に持ち構える。その枢斬を見てでっていうは叫んだ。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!驚いたか枢斬、これが俺様の支給武器、至高にして究極の料理、ドーピングコンソメスープだっていうwwwwアミバ流北斗神拳とは似て非なるものだっていう」

 でっていうは勝ち誇った笑みを浮かべ、口からは唾液が飛び散る。でっていうの姿は先ほどのものとは大きく異なっている。異常なまでに活性化した筋肉により、でっていうの上半身は普段の数倍ほどの大きさとなっている。

 ドーピングコンソメスープとは数えきれない食材・薬物を精密なバランスで配合し、特殊な味付けを施して七日七晩煮込むことで完成する料理である。これを血管から摂取すると、摂取した人間の筋肉は急速に発達、活性化する。さらに、このスープは血液や尿からは決して検出されることは無い。

 だが肥大化したのはでっていうの上半身のみであり、下半身には変化は無かった。

 枢斬は鱧切り包丁ででっていうに切りかかる。でっていうは上半身を素早く動かして包丁をかわす。一方、でっていうも枢斬に殴りかかる。今のでっていうのこぶしの威力は枢斬のこぶしをも上回りかねない。それら全てを枢斬は回避する。枢斬がこれまでに培った戦闘経験が大きく関与しているのだろう。

 この様な攻防がしばらく続くが、突如枢斬はでっていうに背を向けて走り出した。

「でっていうのパーフェクトボディに怖気づいたのかっていうwwww情けないっていう、枢斬暗屯子!」

 でっていうも枢斬を追いかける。だが、ここででっていうに誤算が生じた。活性化したのはでっていうの上半身のみであり、下半身は以前のままである。その下半身が肥大化した上半身を支えきれなかったのだろう。でっていうは足がもつれてバランスを崩した。その隙を逃さず、枢斬は立ち止まると左足を軸とし、でっていうの顔面に回し蹴りをくらわせた。

「ハーメルン学園生徒会副会長、枢斬暗屯子!犯したるーっ!」

 枢斬の蹴りはでっていうの顔面を的確に捉えた。でっていうの歯が五、六本折れ、血と共に口から噴き出した。でっていうはその場に倒れる。倒れたでっていうの首元に枢斬は鱧切り包丁を向ける。

「貴様の負けじゃーっ!自分がどれ程のバカか分かったか。さあ立て、わしと共に委員会を皆殺しじゃ。そうすりゃ命までは取らん。心配するな、わしがお前を守ってやるねん。」

 松任谷由実よろしくクラスメイトを苦しめる全てのものから守ってあげたいのだろう。

 枢斬はでっていうに左手を差し伸べる。

「倉橋ヨエコよろしく俺様の楯になるってか。いや、お前は仮面ライダーガイみたいにガードベントになってもらうっていう。まあいい、でっていうも協力するっていう。一緒に奴らを倒すっていう」

 でっていうは笑って枢斬の手を握る。

 その瞬間、でっていうは握った左手を強く自分の方に引き寄せた。

 これには枢斬も予想できず、でっていうの方に前のめりに倒れこみそうになる。

 油断した。

「いーひっひっひっひwwwwこんな嘘に騙されるほどに馬鹿だとは思わなかったっていう、枢斬暗屯子ォ!俺様のこぶしでお前の顔面を無限増殖だっていうーっ!」

 でっていうは右手で枢斬の顔面を狙って渾身のパンチを打ち込んだ。

 枢斬は鱧切り包丁を持った右腕で顔を防ぐ。辛うじて顔を防ぐことは出来たが、でっていうのパンチは枢斬の右腕に直撃した。ゴシカァンと枢斬の腕の骨が折れた音がした。その衝撃で枢斬は鱧切り包丁を落とす。でっていうは枢斬が逃げないよう左手を強く握りしめ、二度目のパンチを撃とうとする。

 だが、突如でっていうの股間に痛みが走った。枢斬がでっていうの股間を蹴り上げたのだ。あまりの痛みにでっていうはつい左手を離してしまう。枢斬は落とした鱧切り包丁を左手で拾い、でっていうから距離を取った。枢斬は怒りで震えていた。

「貴様-っ!今の一発、わしの顔を狙ったなー!女の顔を傷つけようとするなど、男の風上にも置けん奴じゃぁーーっ!」

「まだ動けたのかっていう、化け物め。だがな、俺様のさっきのパンチはお前の右腕を確実に砕いたっていう!」

 それは事実であった。枢斬は右手に力が入らず、左手で鱧切り包丁を持っている。

「お前はもうその包丁は使えないっていうwwwwwさあ枢斬、お前の最後だっていう!死んだらお前の死体に旗でも立てといてやるっていうwwwwww」

 でっていうは腕を振り上げ枢斬に向かってくる。一方の枢斬はその場から動こうとしない。でっていうと枢斬の距離が狭まっていく。でっていうのこぶしが届く範囲に枢斬が入る直前、枢斬は包丁を持った左手を口元に近づけ、包丁の柄を口に咥えた。でっていうのこぶしが振り下ろされる。それをかわし、枢斬はでっていうの胸元へ飛び込む。そして口に咥えた包丁ででっていうの胸を斬り裂いた。

 でっていうの胸から勢いよく血が噴き出る。でっていうは呻きながら倒れこんだ。その時でっていうの体に再び変化が訪れた。肥大化した上半身が縮まりだし、瞬く間に以前のでっていうの姿となった。

「な…ぜ…」

 枢斬は咥えた包丁を外して伝えた。

「筋肉とは長期間に渡って身につけるもので、一朝一夕で身につくものじゃねえ。そこに気づけなかったのが貴様の敗因じゃーっ!」

 そうだったのか…っていう、とつぶやくとでっていうは動かなくなった。

 

 

【女子09番 枢斬暗屯子】

【身体能力】 S 【頭脳】 E

【武器】 鱧切り包丁

【スタンス】 BR法委員会犯したる

【思考】 まずは右腕の治療

【身体状態】 右腕の骨折 【精神状態】正常

 

【男子12番 でっていう 死亡】

【生存者 残り43人】

 

 

 

8

 自分は他のクラスメイト達よりも非常に優れた頭脳を持っている。

 男子10番、先行者は以前からそう思っているし、今もそれは変わらない。

 八角形で平たい頭。綺麗な円形の目と高い鼻が特徴的だ。細長い手足に空洞のある体。力強さは感じられず、強く押したら倒れてしまうように思える。

 今、自分はクラスメイトと殺し合うという、非生産的で無意味なゲームに参加させられている。

 面倒だ。さっさと帰りたい。自分はこんなところにいるべきではない。

 だが、帰るためには自分以外のクラスメイト全員を殺さなければならない。それ以外の方法は無い。生きて帰ることが出来るのは一人だけ。ならば誰が生き残ればいいか。

 わざわざ言うまでもない。

 自分である。

 このクラス45人の中から一人だけが生き残れる、それなら人類にとって有益な人間が生き残った方がいい。無益な凡人クラスメイトの代わりは世の中にごまんといる。あんな有象無象がいくら死んだところで世界は何ら変化せず、何事も無かったかのように進んでいく。一方、自分の偉大な頭脳の代わりはない。自分がここで死ぬという事は全人類にとっての大きな損失だ。それは防がなければならない。ならどうするか。簡単だ。

 このゲームで優勝すればいい。

 有能な自分には無能な奴らを殺す権利がある。

 先行者がそこまで考えていた時、彼の背後で物音がした。

 先行者は後ろに振り向き、自分の股間に備え付けられている武器、中華キャノンを使おうとした。

 中華キャノンとは先行者が有する秘密兵器の名で、ここからミサイルを発射することが可能である。

 誰だか知らんがミサイルで吹き飛ばしてしまおう。

 だが、ミサイルは発射されることは無かった。

 何故だ?

 自分の体に特に異常はないと思う。非常時に備えミサイルはいつでも発射できるようにメンテナンスをしてある。

 予想外の事態に慌てふためく先行者の前に男が姿を現す。長身で浅黒い肌。銀髪を立てながらも、前髪は下におろしている。BR法委員会の利根川に転校生として紹介された男、男子05番、オルガ・イツカであった。

 オルガは先行者の数メートル前で立ち止まり、口を開く。

「どうした?備え付けの武器の調子が悪いのか。気にするな、お前に問題はない。お前が眠っている間に委員会の奴らがミサイルを取り除いたんだろう。公平なゲームの為に武器は没収したと言ってただろ。忘れたのか?」

 忘れていた。確かにそんな事を言ってた気がする。でも、自分が寝てる間に体をいじくりまわしてミサイルを回収するだろうか。普通しないだろう。それよりもこいつは何なんだ。委員会に金で雇われたプロか、何らかの理由で無理やり参加させられた哀れな奴のどちらかだと思うが。それよりも初対面のくせになんて偉そうな奴だ。誰に口をきいてるのか分かっているのか。人類の宝となる頭脳を持つこの自分に向かって。身をもって分からせてやらないと駄目みたいだな。そもそもこいつの名前は何だったか。キット・イツカだったか、イツカ・ドコカだったか。いや、どうせすぐに死ぬのだから、名前などどうでもいい。

 でも気になる。

 もやもやして落ち着かない。

 先行者はオルガに名を尋ね、オルガは答える。

「俺は…鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ…」

「ご丁寧にどうも。でもねえ、私には中華キャノンが無くとも、これがあるんですよ!」

 先行者は拳銃を取り出し、オルガに向ける。オルガは両手をポケットの中に入れたままだ。

「これが私の武器、S&WのM29です。ダーティハリーをご存知ですか?そう、この銃こそダーティハリーも使っていた世界一強力な44マグナムです。あなたの頭なんか一発で吹き飛ばせるんですよ」

 先行者は右手に拳銃を持ち、オルガの眉間を撃ち抜こうと狙いを定める。

「あんた正気か?このゲームに乗るってのか」

 オルガは先行者に尋ねる。未だに一歩も動こうとしない。

「もちろん私は正気です。論理的に物事を考えることが出来ます。論理的結論からして、全人類の為に私は生きなければならない。イツカさんにはここで__」

 死んでもらいます、と先行者が言い終わらないうちにオルガは突如身を低くして先行者の左側に向かって走り出した。とっさの事で先行者は対応に遅れる。自分の腕を左側に向け、引き金を引いた。銃弾が発射される。だがそれがオルガを傷つける事は無かった。むしろ怪我をしたのは先行者の方であった。M29は威力が高いが反動も大きい。腕が細い先行者では片手で銃の反動に耐えきることが出来なかった。銃は跳ね上がり、銃弾は明後日の方向に飛んでいった。さらに跳ね上がった銃を先行者は自分の顔にぶつけてしまった。

 痛みで拳銃を落とし、とっさに顔を押さえる先行者、その体にオルガは蹴りを入れる。その衝撃で先行者は仰向けに倒れる。オルガの攻撃はこれで終わらない。倒れた先行者の腹を踏みつけ、身動きが取れないようにした。

「お前、あれだけ偉そうな事言っておきながら、その銃の反動が大きい事は知らなかったのか?思ってたよりもバカなんだな」

 先行者を踏みつけながらオルガは挑発をする。先行者は怒りをあらわにして叫ぶ。

「この私に向かってバカとはなんだ!くっ、本当なら今すぐにでも殺してやりたいが、今回は許してやる。とりあえず足をどけろ、そうしたら命だけは助けてやる」

「あ?お前状況分かってんのか?そのセリフを言えるのはお前か俺か、どっちだ?」

 オルガも懐から拳銃を取り出し、倒れている先行者の眉間に狙いを定める。

「ま、待ってくれオルガ・イツカ!偉大なる私の頭脳をこの世から消してはならない!イツカ!落ち着け!やめろ!イツカ!うわああああ…あああああああああああああああああああ!」

 オルガの拳銃から一発の銃弾が発射された。銃弾は先行者の眉間を正確に撃ち抜き、先行者はもの言わぬ物体となった。

 オルガは足をおろし、先行者の武器であったM29を拾った。さらに先行者のバッグをあさり、その中から、水、食料、M29の弾丸を自分のものとし、ここから立ち去った。

 後に残るのは人類の宝となりうる偉大な頭脳の成れの果てだ。

 

【男子05番 オルガ・イツカ】

【身体能力】 A 【頭脳】 B

【武器】 トカレフTT-33、S&W M29

【スタンス】 邪魔者は殺す

【思考】 ここから離れる

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

【男子10番 先行者 死亡】

【生存者 残り42人】

 

 

 

9

「道化師さん見ぃつけた」

 女子10番、フランドール・スカーレットは数メートル前を歩く男子18番、ドナルド・マクドナルドに後ろから声をかけた。

「アラー!この声はフランちゃんか。どうしたんだい?」

 ドナルドは気さくに返事をする。

 まるでメイクを施したかのような白い顔。鼻と口まわりは赤く染まり、赤いアフロヘア-が印象的だ。

「退屈なの。遊ぼうよ」

 そう言うと間を置かずフランはドナルドに殴りかかった。だがドナルドもフランのこの行動を読んでおり、フランのパンチを軽々とかわす。

「道化師さん流石ね」

「ドナルドは今、君と一緒に遊びたくないなあ…」

「なーにそれ。つまんなーい」

 その後もフランは殴る、蹴る、ひっかく等の攻撃を繰り出すがいずれの攻撃もドナルドにかわされるか止められるかで、決定打が得られない。一方でドナルドはフランの攻撃に対して回避、防御はするものの、自分から攻撃を仕掛けてくることは無い。

 なによ道化師さん。自分からは一切攻撃しないなんてこのゲームのルールが分かってないのかしら。それとも私が疲れるのを待ってる?もしかして、女性には手を出さない紳士だったりして。

 はーあ。

 飽きちゃったな。

 フランは攻撃を止め、ドナルドから距離を置く。

 これぐらい離れればいいでしょ。

「おや、もう終わりかい?ドナルドもようやく体が温まってきたんだけどね」

 ならもっと熱くしてあげるわ。

 フランはカバンの中に手を入れ、支給された武器、スマートボムを取り出そうとする。

「ヘッハッハッハッハッハ。スマートボムを投げるのかな?それじゃあもっと離れないと危ないなあ」

 え?コイツ今なんて言った?

 フランはカバンの中に手を入れた状態で固まる。それとはお構いなしにドナルドは話を続ける。

「スマートボム、投げつけると広大な爆風を発生させる。強力な武器だけど、フランちゃんは一個しか持ってないんだよね。それを今使っちゃうのはもったいないと思うな。ドナルドは君の武器を知ってたよ。驚いた?」

 驚いた。十分驚いたわよ。だからさっさとこの事の種明かしをしなさいよ。むかつくわ。

 フランはバッグからスマートボムを取り出し、ドナルドに見えるように掲げる。

 投げつける気は失せた。

「正解だ!嬉しいなあ」

「道化師さんおめでとう。正解のご褒美にこの爆弾をプレゼントしようかしら。で、何で私の武器が分かったの?」

 もしかして、私がバッグの中身を確認したのを見てたんじゃない?手品の種だって一見複雑だけど実は単純だったりするじゃない。

「その質問に答える前に一つ提案があるんだ」

「何?」

「ドナルドと手を組まないかい?」

 嫌だ。

「おや、嫌だって顔してるねえ」

 だって嫌だもん。

「やっぱりフランちゃんは自分一人の力でクラスメイトと戦いたいのかい?」

「もちろんよ」

 武器を手にしてクラスメイト達と死闘を繰り広げる。私はそういうことがしたいの。

「でも、支給武器はスマートボム。これはフランちゃんの望みのものとは言い難いね。強力だけど使い勝手が悪い」

 その通り。ちょっと、私何も言ってないわよ。コイツは相手の考えが読めるっていうの?嫌だなあ。

「ここで、先ほどの質問に答えようか。ドナルドの支給武器はね、このプログラムの全参加者武器シートなんだ。これには誰がどんな武器を支給されたか、そしてその性能について詳しく書かれている。これがフランちゃんの武器を言い当てた手品の種だよ」

「やっぱり手品の種なんか聞くもんじゃないわ。面白さが半減しちゃうもん。で、手を組むって話は?」

「今言ったようにドナルドの武器は情報さ。その代わりに攻撃や防御のための武器をドナルドは持っていないんだ。ドナルドは武器が欲しい。フランちゃんもスマートボム以外の武器が欲しいだろう?そこで提案なんだけど、ドナルドは他の参加者の武器に関する情報をフランちゃんに教えよう。その情報をもとに二人で協力して強力な武器を手に入れようという事さ。それまで勝負はおあずけ、どうかな?」

「最後のダジャレ?」

「もちろんさぁ」

 確かに良い提案かも。武器が欲しいのは事実だし、他の子の武器が分かればそれだけでも有利だわ。でもコイツが嘘をつく可能性だってあるし、今ここでコイツを殺してそのシートを奪っちゃえばいいんじゃない?

「ちなみにシートは紙だからスマートボムを使えばドナルドと一緒に灰になっちゃうよ。殺して奪おうと思うのも自由だけど、先ほどの戦闘でフランちゃんではドナルドに勝てない事も分かるよね?」

 やっぱりコイツ私の考え読んでない?読んでるでしょ。そういう特殊能力はこの島では使えないんじゃなかったの?だとしたら不公平でしょ。ちゃんと仕事しろ委員会。

「いいわ。私にも利点があるし、武器が欲しいというお互いの目的は一致してるもの。協力しましょう、道化師さん」

「ありがとう、フランちゃん。嬉しいなあ、ランランルー」

 ランランルーって何なんだ?ドナルドが嬉しくなるとついやっちゃうものだ。

 

【男子18番 ドナルド・マクドナルド】

【身体能力】 A 【頭脳】 A

【武器】 全参加者武器シート

【スタンス】 生き残る

【思考】 フランちゃんと同盟が組めて嬉しいなあ

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

【女子10番 フランドール・スカーレット】

【身体能力】 A 【頭脳】 C

【武器】 スマートボム

【スタンス】 楽しく遊ぶ

【思考】 隙をついてシートを奪おう

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

 

 

10

 火は嫌いだ。

 火は全てを包んで燃やして黒焦げに、炭に、灰にしてしまう。

 おもちゃも。

 家具も。

 人も。

 家も。

 思い出も。

 全ては燃えたら炭か灰。

 みんな一緒だ良くはない。

 僕の過去は灰かぶりさ。

 みんな黒こげ灰かぶり。

 へへへへへ。

 そんな僕に支給された武器が火炎放射器だなんて笑っちゃうよなあ。

 へへへへへへへへ。

 男子13番、永沢君男は笑っていた。

 家が火事になってから僕の人生も真っ黒焦げだ。

 永沢は最近の自分を振り返る。

 永沢はスマホのパズルゲームで六人いる最高レアリティを誇るキャラの一人として登場している。

 そのゲーム内で最大火力が叩き出せるキャラなんて言われている。

 だがそれは間違いだ。

 永沢は最高のレアリティであるために素の火力は他のキャラクター達よりも高い。だが、永沢の有するスキルは獲得する経験値の上昇だ。スコアアップや火力の上昇ではない。永沢は最高レアリティのキャラの中で最も火力が低い可能性だってある。スキルを考慮すれば最大の火力を叩き出せるのは全体強化を持つ最高レアリティの野口だし、同じく全体強化を持ちレアリティで劣る藤木君にすら負ける始末である。

 自分は最初の頃はパーティーに組み込まれるも、他のメンバーが育てば必然的に外される。僕は藤木君らの踏み台ってわけさ。

 ああ、出来る事なら某聖杯の有名スマホゲームとコラボしたいな。清水のアヴェンジャーなんて僕にお似合いじゃないか。格好いいだろう。フランスで火刑となったあの聖女と炎、火力つながりでコラボさせてくれないかな。お似合いだろう?藤木君みたいな卑怯者の出る幕は無いね。彼がいたら原作の雰囲気が壊れるからね。そうだなあ、緑茶生産都市清水なんてどうだい。

 へへへへへへへへへへへ。

 何故僕だけがこうなった。

 永沢は火炎放射器を手に取る。

 燃やしてしまおう。

 全て燃やせば灰になる。

 灰になればみんな一緒だ。

 クラスメイトも。

 BR法委員会も。

 この島も。

 灰かぶりの過去も。

 狂った現在も。

 この僕も______。

 へへへへへへへへへへへへへへへへへ。

 誰かいないのか。

 永沢は周囲を見渡す。

 

 いた。

 

 見つけた。男女の二人だ。マクドナルドとスカーレットだ。

 永沢は奇声をあげながら二人のもとへ駆け寄る。当然二人も永沢に気づいたようだ。

「燃え尽きろおおおおおおお!」

 永沢は叫びながら火炎放射器から火を放つ。

 ドナルドとフランはそれをかわす。

「あれ永沢、貴方もこのゲームに乗るんだね。いいよ、遊び相手は多い方が楽しいもん。遊ぼうよ」

「やめるんだフランちゃん。永沢君の顔が変だ。丸尾末広の漫画の登場人物みたいな顔をしている。今の彼は普通じゃない、迂闊に近づかない方がいいよ」

「道化師さんは怖気づいたの?永沢の武器は火炎放射器でしょ。なかなか魅力的じゃない。今すぐ奪って殺しちゃおう」

 フランは素早い動きで永沢を惑わし隙をつこうとするが、噴き出す炎に遮られて近づけない。

「フランちゃん、バッグに燃え移ったらどうするんだい!」

 バッグ?燃え移ったらまずいのか。

 燃やすか。

 永沢はフラン目がけて火を放つが当たらない。

「そうだったわ。忘れてたわ、道化師さんありがとう。だったらさあ、ここは逃げた方がいいんじゃない?」

「もちろんさ」

 そう言うと、ドナルドとフランは走り出した。

 逃がすか。

 永沢も追いかけるが二人には追い付けない。みるみる二人の姿は小さくなっていき、ついには見えなくなった。

 逃したか。

 永沢はため息をつく。

 汚物は消毒だという有名なセリフがあるが、この世界そのものが汚物だ。こんな火炎放射器だけでは世界を消毒するのに全然足りない。それでもまずはこの島を燃やそう。

 一人一人を燃やしていては燃料が無くなってしまう。もっと効率的にこの島を燃やす必要がある。

 熱い決意を胸に永沢は歩き出した。

 

【男子13番 永沢君男】

【身体能力】 D 【頭脳】 D

【武器】 火炎放射器

【スタンス】 世界を燃やす

【思考】 全部燃やそう

【身体状態】 正常 【精神状態】発狂

 

 

 

11

 男子03番、天野河リュウセイは一流のボーガーである。カブトボーグを愛しカブトボーグに愛された男である。だがその愛はリュウセイによって都合よく利用される。以前彼はボーグバトルで負けた時に、負けた理由をボーグのせいにした挙句、川に投げ捨てたこともある。

 ボサボサの髪の毛は全体的に茶色いが、前髪の一部が黄色である。、

 俺の相棒、トムキャット・レッド・ビートルは委員会に奪われた。

 リュウセイはビルの出口に立っていたストームトルーパーに「返してくれよ、俺のトムキャット・レッド・ビートル!返してくれよ!」と涙を流して訴えたが、銃を突き付けられたので急いで逃げた。

 そりゃ命の方が大事だぜ。さらば俺の相棒、トムキャット・レッド・ビートル。お前の事は忘れない。後で委員会から絶対に取り返してやる。

 あーあ、ボーグさえあれば、こんなビルはお得意のボーグ魔法で爆発させてるんだけどな。

 それからリュウセイは本部のビルから離れるべく走った。

 ここならしばらくは安心だぜ。

 本部ビルから離れたところでリュウセイは今後の動きについて考えた。

 やる事なんて決まってる。本部に殴り込みだ!そして、相棒を取り戻す!

___いや、違うな。そんなことしたら首輪を爆破させられてしまう。それよりもこのプログラムで優勝して返してもらえばいいのか。

 そうだよな、優勝すれば一生遊べるほどの大金が貰えるんだから、そっちの方がいいよな。それでもっと強いボーグを買えばいいんだよな。

 よし。

 クラスメイト諸君、お前たちは今日まで共に過ごしてきた大事な仲間だが、この島で死んでもらおう!

 リュウセイは自分のバッグを開けて中身を確認した。利根川が言ってたように、バッグの中には水や食料といったものが入っており、それらと一緒に銀色のアタッシュケースが入っていた。アタッシュケースには何かブランド名のようなものが書かれている。

 SM…RT、BR…IN…?

 なんだこれ、読めねえ。まあいっか!

 リュウセイはアタッシュケースを開ける。中には銀色のベルト、携帯電話、デジタルカメラ、銃剣、双眼鏡が入っていた。ところどころに黄色が入った非常におしゃれなものであることが分かった。

 カッけえええーーー!

 でも俺は黄色より赤色の方が好きなんだよな。

 文句を言いながらもリュウセイは付属の説明書に従ってベルトにデジタルカメラ、銃剣、双眼鏡を装着する。そしてベルトを装着した。携帯電話を片手に持ちながら、説明書を読む。説明書の最後には次のように書かれていた。

 カイザギア。携帯電話、カイザフォンのボタンを9、1、3、エンターの順に押し、携帯電話を閉じ、ベルトに挿入すると仮面ライダーカイザに変身できる。変身すると灰になる呪いのベルトと呼ばれたが、草加雅人なら大丈夫。

 うわあああああああああああっ!

 これ変身したら灰になるって、死ぬじゃねえか!嫌だ嫌だ死にたくねえ、死にたくねえ!誰だよ草加雅人って!俺は天野河リュウセイ、大丈夫じゃねえ!

 怯えるリュウセイ。彼はその場にしゃがみこんでしまった。全身の震えが止まらない。

 恐怖で周囲が見えなかったのか、リュウセイは背後から近づいてくる者がいる事に気が付かなかった。

 ぐわっ!

 リュウセイの背中を突如激痛が襲った。その痛みで声が漏れる。だが、幸いにもどこかの骨が折れたりはしてないようだ。痛みに耐えて立ち上がりリュウセイは後ろを見た。

 そこに立っていたのは女子19番、ルーシー・モード・モンゴメリだった。

 長い暗めの赤髪。前髪は切りそろえられている。腰まで届く後ろ髪を三つ編みにして二つに分けている。歯には矯正器具を付けている。彼女の青い目は笑っている。

 モンゴメリの手にはネイルハンマーを持っている。あれでリュウセイを殴ったのだろう。楽しそうな声でモンゴメリはリュウセイに話しかけてきた。

「ようやくひとりめ見つけたと思ったら常識知らずのボーグ馬鹿じゃないの。あらご免なさい、痛かったでしょう。なにしろこんなもの使うの初めてなの。これがあたしの支給武器、ネイルハンマーっていうの。でもこんな名前じゃ美しくないわ。そうね、癒しの金槌なんてどうかしら。素敵でしょう?」

 リュウセイにとってはモンゴメリの一撃よりも、彼女がさりげなく言った常識知らずのボーグ馬鹿という言葉の方が痛かった。心が痛い。

 いててててて。

 リュウセイは胸を貫かれるような痛みに耐え、モンゴメリに精神攻撃を仕掛けようとする。精神攻撃はリュウセイの十八番であり、ボーグバトルでは何よりもまずボーガーの精神の強さが試される。

「お前…こ、こんなゲームに乗るっていうのか!クラスメイト同士での殺し合いなんて心が醜い奴だけがするもんだ!お前の性格がこんなにも不細工だとは思わなかったぜ!」

 恐怖心のせいか、いつものキレがリュウセイにない。

「物事が醜いとしか思えないのは貴方の心が醜いからよ。綺麗な心を持って世界を見てごらんなさい。世界は美しくて素敵なものであふれてるわ。このプログラムだって楽しもうと思えば楽しめるのよ。いいえ、どんな時でも楽しもうと思うだけで、人生は素晴らしく輝くのよ。こんなに面白い世の中に生きてるのだから、もっと楽しまないともったいないわ」

 モンゴメリはリュウセイの頭を狙ってネイルハンマーを振り下ろす。リュウセイはそれを左腕で防ぐ。

 リュウセイの左腕に激痛が走る。

 リュウセイは痛みをこらえてモンゴメリから遠ざかり、カイザフォンで変身しようとした。

 変身すると灰になる。

 あ…あ…。

 説明書の最後の文がリュウセイを恐怖で動けなくする。

 そんなリュウセイには構う事なくモンゴメリは再びリュウセイを殴ろうとネイルハンマーを振り下ろす。

 リュウセイはとっさに後ろ向きに倒れる事でモンゴメリの攻撃をかわすことが出来た。だがリュウセイも背中を地面に強くぶつける事となった。

 倒れたリュウセイめがけてモンゴメリは再びネイルハンマーを振り下ろす。その攻撃をリュウセイは転がる事で回避する。

繰り返し降ろされるモンゴメリの攻撃を転がる事で回避し続けるリュウセイ。いつしかリュウセイの体は砂まみれになっていた。

「これが汚れっちまった悲しみにってやつか…」

 リュウセイがつぶやく。

「それ知ってるわ。一世風靡セピアによる魁!男塾のオープニング曲のタイトルでしょ?」

「お前さあ、せめて中原中也の詩、百歩譲って異能とか言えよ!」

「はい隙あり」

 リュウセイの右足をモンゴメリはネイルハンマーで殴る。

 リュウセイは痛みで悲鳴を上げる。

 仮にモンゴメリにもう少し力があるか、鈍器の扱いに長けていたとしたら、リュウセイの右足は折れていただろう。

「さあ、この世とお別れよ。でも安心なさって。天国では貴方は沢山の人に囲まれて盛大に祝福されるの。怖いことなど何もないわ」

 モンゴメリは横になったリュウセイの顔を目がけてハンマーを振り下ろす。

 うわああああああああ。

 プツン。

 これまでに経験した事のないほどの恐怖心、それにより極限まで追い込まれたリュウセイの中で何かが切れた。

 リュウセイの茶色い瞳から光が消え、波紋のような模様が現れる。

 先ほどまでの生への執着がリュウセイの中から消えた。今や彼の心にあるのは目の前の敵を殺す、その一念のみである。

「残念だが俺が行くのは天国じゃない、地獄だあああ!」

 リュウセイは横になった状態で素早く転がり、モンゴメリの必殺の一撃をかわす。

 これにはモンゴメリも驚きを隠せない。

「俺はこんなところで負けるわけにはいかない。なぜなら、俺には絶対負けられない理由があるからだああああ!」

 リュウセイはカイザフォンを開き、ボタンを9、1、3、エンターの順に押した。カイザフォンからスタンディングバイと音声が出る。

「闇討ちするような卑怯な奴が優勝したら、世も末だからよおおお!変身!」

 

【男子03番 天野河リュウセイ】

【身体能力】 C 【頭脳】 E

【武器】 カイザギア

【スタンス】 皆殺し

【思考】 全員殺す

【身体状態】 左腕、右足の骨にひび 【精神状態】無一物

 

【女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ】

【身体能力】 D 【頭脳】 C

【武器】 ネイルハンマー

【スタンス】 優勝を目指す

【思考】 生きてるって素晴らしい事でしょう?

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

 

 

12

 クラスのみんなと殺し合いなんて出来ないよ。

 女子02番、木之本桜は泣いていた。

 茶髪のショートヘアに明るい緑色の瞳。その瞳も今は涙で濡れている。

 突然の修学旅行に驚くのもつかの間、クラスメイトとの殺し合いに巻き込まれたのだから当然の反応と言える。

 誰かを殺すなんていやだよ。でも、死にたくもないよ___。

 ___ううん、泣いてちゃダメ。泣いてたって何にもならないもん。この島から出る方法を考えないと。なんとかなるよ、絶対大丈夫だよ。

 そう思って涙を拭い、さくらはバッグの中を見てみた。中に入っていた武器はレーダーであった。画面には今自分がいる周辺の地図が映り、その中央に丸がある。

 この丸がわたしを表しているんだ。

 あれ?

 さくらは手に持ったレーダーの画面の上の方から丸が現れたことに気づいた。この丸は画面の中央の丸に次第に近づいてくる。

 誰かが近くにいるんだ。どうしよう。そうだ、まずは隠れて誰が来たのかを見てみよう。

 さくらは物陰に隠れた。レーダーに現れた丸は徐々に自分に近づいてくる。

 そろそろ誰か分かるかな。

 さくらはそっと物陰から顔を出した。

 そこにいたのは男子20番のドラコ・マルフォイだった。

 さくらはほっと胸をなでおろした。彼がこのプログラムに乗るような生徒ではないことをさくらは知っている。それにプログラムの始まる時、彼は委員会に反対した生徒の一人だった。彼は周囲を神経質そうにきょろきょろと見まわして歩いている。

 マルフォイの青白い顔は普段よりも一層青白く見える。

 さくらは物陰から姿を現し、マルフォイを小声で呼んだ。

「マルフォイ君。わたし、木之本桜だよ」

「うわっ!く、来るなあ!」

 マルフォイはスプレー缶のようなものを取り出し、さくらに吹きかけようとする。

 ほえええっ。

 さくらはとっさにそれを避ける。

 マルフォイは声をあげながら再びスプレーをさくらに吹きかけようとするが、さくらはそれをかわし続ける。

 どうしよう、マルフォイ君は動転してるんだ。そりゃ怖いよね、仕方ないよ。でも話を聞いてもらいたいの。

 マルフォイのスプレー攻撃を避けてるうちに、さくらはある事に気が付いた。

 あれ、このスプレーって。

 さくらはその場で立ち止まった。マルフォイは桜にスプレーを吹きかける。さくらはそれを避けようとはしなかった。避ける必要は無いからだ。マルフォイの吹きかけたスプレーがさくらの顔にかかる。

「こ、これでもくらえ、あ、アバダケダブラ!」

 マルフォイは叫びながらスプレーを吹き付けるが、さくらは微動だにしない。この事をマルフォイも奇妙に思い、スプレーを吹きかけるのを止めた。

「な、なぜだ。なぜ死なない?」

「だってマルフォイ君が持ってるのデオドラントスプレーだよ!」

「えええっ」

 マルフォイは驚いて手に持っているスプレー缶を見る。制汗スプレーだ。松岡修造が腋に吹きかけるので有名なあのスプレーだ。これでは人は殺すどころか傷つける事も出来ない。

 さくらは制汗スプレーを噴きかけられた顔を擦った。

 マルフォイは悲鳴をあげながらその場に座り込んだ。その眼には涙が浮かんでいる。

「ぼ、僕は家に帰らなきゃいけないんだ。たとえみんなを殺さないと帰れないとしても!そ、それにみんなを殺さなきゃ、僕が殺される!」

「大丈夫だよ。落ち着いて、マルフォイ君」

 そう言いながらさくらはマルフォイにレーダーを差し出す。マルフォイは震える手でそれを受け取り、「なんだこれは?」と尋ねる。

「これがわたしの武器。近くに誰かいるのかを教えてくれるの。画面を見て。今は中央に二つの丸があるでしょ。これがわたしとマルフォイ君を示してるの。画面に映ってる丸は二つだけ。つまり今は近くに誰もいないって事」

「なんだ…お、お前も攻撃できる武器を支給されなかったってことか。だ、だったらすぐに言って欲しかったね」

「ごめんね。でもそんな武器よりこっちの方がいいの。近くに誰かがいるのを教えてくれるから前もって隠れられるし、人を探すのにも便利だよ」

「人を探すって…そんな事をしてどうするんだ?」

「みんなで力を合わせてこの島から出るんだよ。きっとみんなもこの島から出られるのならすぐに出たいと思うし、本当は殺し合いなんてしたくないって思ってるはずだよ」

「なるほど、このレーダーを使えばいち早く他人を見つけられるな。そうやって協力してくれる奴を探すってとこか…でもな、クラスの大半はこのプログラムに乗ると思うぞ。協力してくれる確証がある奴なんかいるのか?」

「暗屯子ちゃんや貞子ちゃん、阿部君にドナルド君はきっと力を貸してくれるよ。それにうさみちゃんや先行者君なら頭がいいからこの首輪を外せるかもしれないよ。そしたら、この島から出られるんだよ!このクラスのみんなで協力すれば、こんなプログラムすぐにでも中止になるよ。わたしにはこれぐらいしか出来ないけど、わたしの出来る事を頑張るよ。ねえ、マルフォイ君も手伝ってくれる?」

 って、マルフォイ君にもマルフォイ君の考えがあるんだろうし、強制は出来ないんだけどね。だけど殺し合いに参加するのだけはやめて欲しいな。

 しばしの沈黙の後、マルフォイが口を開いた。

「分かった。木之本の考えに乗ってやる」

「本当に!マルフォイ君も手伝ってくれるの?」

「ああ。委員会の穢れた血どもには僕も激おこぷんぷんマルフォイって感じでね。こんなゲームはうんざりだ。なに、僕が本気を出したら、プログラムを終わらせるなんて、ふぉふぉいのふぉいさ。僕が力を貸してあげよう」

 そう言うとマルフォイは桜に右手を出し、握手を求める。さくらも笑ってマルフォイの手を両手で握る。

「ありがとうマルフォイ君!」

「礼には及ばないさ。そうだ、このレーダーは木之本のものだし、今は返しておこう」

 マルフォイはさくらにレーダーを返すがその手は激しく震えていた。さくらはレーダーを受け取る。

「おっと。木之本、この震えは武者震いってやつさ。決して怖いなんて思ってないぞ。本当さ。この僕がいつまでも怖がってるわけないだろう。勘違いはよしてくれよ」

 

【女子02番 木之本桜】

【身体能力】 A 【頭脳】 C

【武器】 レーダー

【スタンス】 島からの脱出

【思考】 いっぱい仲間を集めよう

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

【男子20番 ドラコ・マルフォイ】

【身体能力】 C 【頭脳】 B

【武器】 デオドラントスプレー

【スタンス】 島からの脱出

【思考】 仲間が出来て嬉しいフォイ

【身体状態】 正常 【精神状態】正常

 

 

 

 




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

○ 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
○ 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
○ 男子07番 剛田武
○ 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
○ 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
○ 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
○ 女子18番 見崎鳴
○ 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
○ 女子22番 両儀式

【生存者 残り42人】
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