やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです 作:MASUDA K-SUKE
ハーメルン学園3年β組45名 名簿
○→生存、●→死亡
○ 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
○ 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
○ 男子07番 剛田武
○ 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
○ 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
○ 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
○ 女子18番 見崎鳴
○ 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
○ 女子22番 両儀式
【生存者 残り42人】
13
変身!
リュウセイはそう叫びカイザフォンを腰に付けたカイザドライバーに挿入した。
コンプリートという音が響き、リュウセイの体が黄色い光に包まれる。
モンゴメリはリュウセイから距離をおく。
あらあら、面白いじゃないの。
光が消えた。そこに天野河リュウセイの姿は無く、仮面ライダーカイザが立っていた。リュウセイの変身した姿を見てモンゴメリは楽しそうにはしゃぐ。
「ああ素晴らしいわ!とっても格好いいわね。でも貴方のイメージとはちょっと合ってないかしら。貴方には赤い色でカブトムシがモチーフの仮面ライダーの方がぴったりね、あはははは。さあ、かかってきなさい。どうしたの?お遊戯はこれからが本番よ!貴方の変身は素敵だけど、そのボロボロの体で何分心が保つかしら?」
モンゴメリはネイルハンマーを持ち、リュウセイの攻撃に備える。
こうなっては迂闊に近づくのは危険だわ。
変身したリュウセイはベルトから双眼鏡の形をしたカイザポインターを外す。そしてカイザフォンに付いているミッションメモリーをカイザポインターに装着する。カイザポインターからレディーと音が出る。
そのカイザポインターをリュウセイは右足に装着し、ゆっくりとモンゴメリに近づいていく。
リュウセイはモンゴメリに殴りかかるが、その攻撃をモンゴメリは楽々かわす。
やっぱりさっきまでの攻撃が効いてるんだわ。変身したとしてもそれほど素早くは動けないのね。
モンゴメリはリュウセイの頭を目がけてハンマーを振り下ろす。
さあ、その仮面の下の顔を見せてもらおうかしら。
だがモンゴメリのハンマーが振り下ろされることは無かった。
リュウセイは振り下ろされるモンゴメリの腕をつかんで攻撃を防いだ。さらにリュウセイはすかさずモンゴメリの腹に右足で蹴りを入れる。
がっ…!
モンゴメリの口から息が漏れる。
その姿勢のまま、リュウセイはベルトに装着されたカイザフォンを開き、エンターキーを押す。
エクシードチャージという音声が出る。
カイザドライバーから右足のカイザポインターにエネルギーが注ぎ込まれる。カイザポインターから黄色に輝く光線が出る。それがモンゴメリの体を貫くと同時にリュウセイはモンゴメリの手を離す。光線を腹に受けたモンゴメリは後ろへ吹っ飛ぶ。リュウセイは高く飛び上がりモンゴメリ目がけてドロップキックをしかける。
「くらえ!これが俺の必殺技、ゴルドスマッシュだあ!」
リュウセイの必殺の蹴りがモンゴメリに直撃する。
この一撃でモンゴメリは斃れた。
「よっわー、秒殺しちゃったよー」
リュウセイは地面で動かなくなったモンゴメリを見てそう言った。変身を解除する事なくリュウセイは次の獲物を求めて歩き出した。
ここで呪いのベルト、カイザギアについて一言説明しておかねばならない。カイザギアで変身した者が灰となるのは変身した時ではない。カイザフォンをベルトから自ら外して変身を解除した時、もしくは他人の手でベルトを外されて変身を解除された時である。
【男子03番 天野河リュウセイ】
【身体能力】 C→S 【頭脳】 E
【武器】 カイザギア(仮面ライダーカイザに変身中)
【スタンス】 皆殺し
【思考】 見つけた奴は殺す
【身体状態】 左腕、右足の骨にひび 【精神状態】無一物
【女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ 死亡】
【生存者 残り41人】
14
「イライラするんだよ…」
男子01番、浅倉威は支給武器であるエクスカリバールを振り回して周囲の木を殴ったり、木に蹴りを入れたりしている。
浅倉は対戦相手を求めて島を歩き回っていたが、誰も見つけることが出来ずイライラしていた。最初は本部の入り口付近で待機し、次から次へと出てくるクラスメイトらと戦おうかとも思っていた。だがそれでは戦いがすぐに終わってしまうのでやめた。
一瞬で終わったらつまんねえよなあ、もっと愉しませろよ。
浅倉はバッグから支給されたパンを取り出して貪り食う。
このザマなら待ってたほうが愉しかっただろうなあ、と浅倉が思った時である。
浅倉の顔を目がけて石が飛んできた。
浅倉はそれを悠々とかわし、石が飛んできた方向を見た。
浅倉は白い歯を見せる。
「はっ、会いたかったぜ…ベネットォ!」
浅倉の見た方向には男子17番、ベネットがいた。ベネットの魅力的な口髭の下の口は笑っているが、目は笑っていない。
「イライラしてるなぁ、浅倉。ちゃんと乳酸菌を取りな。まあお前にそんな機会はもう来ないがな」
浅倉はエクスカリバールを振りかざし、ベネットに向かって走り出す。
ベネットも再び浅倉に石を投げる。今度は両手で二つの石を投げた。
浅倉は一つ目の石をかわし、二つ目の石は左腕で防ぐ。投石を意に介することなくベネットに襲い掛かる。
防御ぐらい覚えろ、このクソッタレィ―――。
浅倉はベネット目がけてエクスカリバールを振り下ろす。ベネットはそれをかわす。
凄まじい破壊力だな。だがな、テメェの攻撃は単調だ。特殊な訓練を積んだ俺の敵じゃねえな。
浅倉は再びバールを振り上げようとするが、それよりも早くベネットが浅倉の顔を殴る。
ハハッ、今のは入ったぜ。
ベネットは笑みを浮かべる。
浅倉は今の一撃を受け、口から血を流している。だが浅倉の目は笑っている。
何だぁその目は。そんなに殴られるのが好きならさらにもう一発くれてやるぜ。
ベネットは浅倉に近寄り、顔面を殴る体制に入る。
この瞬間、浅倉はベネットの顔を目がけて口から血を噴いた。その血がベネットの顔にかかる。
突然の目潰しにたじろぐベネット。さらにベネットの腹に衝撃が走る。
浅倉がベネットの腹に蹴りを入れたのだ。
ベネットは後ろに吹っ飛ぶ。顔にかけられた血をぬぐう。その瞬間、浅倉がベネットの頭にバールを振り下ろす。
ベネットはとっさに後ろに飛ぶ。間一髪で浅倉の攻撃をかわすことが出来た。
畜生ぉ!楽に殺してやろうと思ったがやめだ!テメェには散々苦しんで死んでもらうぜぇ!
それから二人の激しい戦いが始まった。ベネットは浅倉のバールの間合いに入らずに、投石での攻撃を試みる。だが、そんなものに浅倉は怯むことなくベネットに襲い掛かる。ベネットもバールの攻撃だけは避け続けていた。そして互いの拳が届く間合いとなると、すぐさま暴力の応酬が始まる。しばらく殴り合い、蹴り合ってはベネットが距離を取る。この繰り返しであった。バールを警戒するがゆえにベネットがわずかに押されていた。
チキショー、このままではこっちが殺されちまう―――。
そう思いベネットは浅倉から離れ、膝をつく。
ほーら、隙が出来たぜ。かかって来いよ。
これはベネットの演技である。それを知らずに浅倉は向かってくる。浅倉はバールを振り上げる。その浅倉の眉間を狙ってベネットは石を投げる。
こいつは避けられねえだろ、くたばれ浅倉ぁ!
浅倉の額に石が直撃する。浅倉の額が割れ、血が流れ出る。
それでも浅倉は止まらない。ベネット目がけてバールを振り下ろす。ベネットは咄嗟に飛び上がりその攻撃をよける。
こんのバケモンがぁ!
だが浅倉の攻撃はこれで終わらない。浅倉はバールをベネットに投げつけた。バールは回転しながらベネットに向かって飛んでいく。ベネットはバールを紙一重で避ける。突然の事で、今度は演技ではなく本当に体勢を崩す。ベネットの隙を逃す浅倉ではない。すぐにベネットに殴りかかり、その顔面を何度も殴る。ベネットの鼻は曲がり、口は切れ、顔が血まみれとなる。さらに浅倉はベネットの体を掴み、腹に膝蹴りを何度も入れる。そしてベネットを放り出す。それによって倒れたベネットの体を何度も蹴っては、踏みつける。
「なあ…本当に愉しいよなあ、戦いってのは!」
浅倉は楽しそうに笑う。額から流れ出る血で浅倉の顔は赤く染まっていた。
浅倉はベネットを蹴るのを止め、先ほど投げたバールを拾いに向かう。バールを拾い、倒れているベネットの頭上にバールを振り下ろそうと構える。
その浅倉の肩を誰かが後ろから叩いた。
浅倉は首を回して後ろを見る。
そこにはベネットが立っていた。
その顔には笑みを浮かべている。
浅倉の動きが止まる。
「あ?――ベネット――」
浅倉は足元を見るが、そこにもベネットは先ほどと同じ姿で倒れている。だが、倒れたベネットもまた笑みを浮かべていた。
「残念だったなぁ、トリックだよ」
突如浅倉の背後に現れたベネットは浅倉を殴り飛ばす。それと同時に地面で倒れていたベネットも起き上がり、浅倉の後頭部に肘を入れる。突然の攻撃で浅倉はバールを手放す。それを地面で倒れていたベネットが拾い上げる。
「気分いいぜぇ!浅倉ぁ!てめえはもう終わりだぁ!」
ベネットはバールで浅倉を何度も殴る。突如現れた二人目のベネットも浅倉に蹴りを入れる。二人のベネットによる怒涛の反撃を受け、遂に浅倉は動かなくなった。エクスカリバールを肩にかける。
「こいつは貰うぜ。もうてめえには必要ねえ」
それからベネットは新たに現れたもう一人のベネットの鼻を押した。その瞬間、もう一人のベネットの姿に変化が現れ、瞬く間にクリーム色の人形となった。大きさも先ほどのベネットのものから手で抱えられるほどにまで小さくなった。
しばらくは使う必要もないと思ったが、緒戦で使う事になるとはまったくお笑いだ。
ベネットの支給武器はコピーロボットである。コピーロボットの鼻を押すと、コピーロボットは鼻を押した人間そっくりの姿となる。姿だけでなく、記憶や身体能力も引き継がれる。
切り札は先に見せるな、見せるならさらに奥の手を持て。
そんな事も知らなかったのがテメエの敗因だ、浅倉ぁ。
ベネットは前もってコピーロボットに自分の姿をコピーさせて物陰に隠れさせておいた。そして自分のピンチに助けに来るように命じておいたのだ。
ベネットは血を拭き取り、曲がった鼻を治す。体の状態を確認すると、手や足に異常は無かったが、肋骨が2、3本折れていた。
なぁに、人間には215本も骨があるんだ、2、3本くらいなら問題ない。
ベネットはエクスカリバールとコピーロボットを持って立ち上がる。
クラスで最強の俺が二人になったんだ。もう誰にも負けやしねえ!ハハハハハ!
【男子17番 ベネット】
【身体能力】 S 【頭脳】 D
【武器】 コピーロボット、エクスカリバール
【スタンス】 皆殺し
【思考】 殺しってのは楽しいよなあ
【身体状態】 肋骨が数本折れている 【精神状態】正常
【男子01番 浅倉威 死亡】
【生存者 残り40人】
15
トゥットゥルー♪まっちょしぃです☆
女子16番、まっちょしぃ。無造作にはねた黒いショートヘア。ひらひらしたつばの付いた水色の帽子がチャームポイントだろうか。つぶらな黒丸の目とωの形によく似た口が彼女の顔の特徴だろうか。だが彼女の外観にはこれらの要素よりも遥かに人々の注目を集めるものがある。
制服の上からでも分かる極限まで鍛え上げられた筋肉だ。その筋肉たるや、元コマンドー部隊に勝るとも劣らない。彼女は鍛え上げられた肉体を武器にこれまでも数多くの猛者と激戦を繰り広げていた。まっちょしぃの友達に手を出そうとした悪漢や、まっちょしぃの先のメイド喫茶で自分を含めた従業員の子に過剰に言い寄って来るマナーを知らない客を病院送りにしたことは数知れない。腕に自信のある者がまっちょしぃに挑んできたことも何度もあるが、それら全てを退けてきた。さらには“機関”のエージェント、タイムマシンを作っているとの噂もあるSERN、その下部組織のラウンダーとの戦いにも勝利している。最近ではまっちょしぃは300人委員会、フリーメイソン、イルミナティといった世界を裏から支配する組織と戦っているといった噂が独り歩きする始末である。陰謀論者が大喜びだ。
彼女もこのプログラムが始まってから島を巡って対戦相手を探していたが、これまでに誰とも会わなかった。その事を気にすることなく、まっちょしぃはこの島の空気を楽しんでいた。
殺気に満ち溢れた戦場。この島は実に快適なのです☆
しばしの散歩を楽しんでいたまっちょしぃ。だが突如彼女の動きが止まる。
七時の方角、何かが飛んでくる。
まっちょしぃは飛んできた物体に左手で裏拳をくらわせる。
その瞬間、まっちょしぃの体は爆炎に包まれた。
爆発を少し離れた木の陰から見ている女子生徒がいた。
女子18番、見崎鳴である。白蝋の様な白い肌。黒いショートヘアでアホ毛が垂れ下がっている。瞳は赤いが左目に眼帯をしている。彼女の手にはジャスタウェイが握られている。
まっちょしぃが先ほど裏拳をくらわせた物体は鳴が投げつけたジャスタウェイであった。鳴は『いないもの』と呼ばれるほどに気配を消すことに長けていた。
鳴は木の幹の横から顔を少し出してまっちょしぃの死を確認しようとした。そんな鳴は眼帯をしていない方の目を白黒させた。
爆発による煙が晴れるとそこにはまっちょしぃが立っていた。着ていた制服の上着は無残にも焼け落ち、彼女の研ぎ澄まされた肉体が露わになっていた。
一度は動転した鳴だが、すぐに落ち着きを取り戻し、まっちょしぃの体を観察する。
まっちょしぃの体には至る所にやけどの跡が見られるが、いずれもまっちょしぃにとっては軽傷だろう。最も怪我がひどいのは左手だろうが、まっちょしぃの指は全てそろっていた。
鳴は再びジャスタウェイを投げようとする。それよりも早くまっちょしぃは鳴の姿を捉え、呼びかける。
「誰かと思えば鳴ちゃんでしたか、トゥットゥルー♪まっちょしぃです☆」
まっちょしぃは鳴に向かって手を振る。
鳴は木の裏に再び姿を隠し、返事をする。
「ジャスタウェイの爆風を受けても元気だなんて流石だね。Anotherなら死んでたよ。――いや、Anotherじゃなくても普通なら死ぬって」
「これは普段の鍛錬の賜物です。でも鳴ちゃんも凄いのです。まっちょしぃに気配を悟られる事なくジャスタウェイを投げてくるとは―――まっちょしぃが気づいたのはジャスタウェイが飛んできてからだったのです。おかげで制服が炭になってしまったのです。ジュージューです。ジューシーじゃないのです」
「支給された武器がジャスタウェイじゃなくて破片手榴弾とかだったらよかったのに」
鳴はジャスタウェイをまっちょしぃに投げつける。それをまっちょしぃは華麗な側転で回避する。
「鳴ちゃん♪鳴ちゃん♪ここに拳銃があるでしょ~?」
まっちょしぃがバッグから支給武器であるワルサーP38を取り出し、銃身を掴んで天高く掲げた。
「
まっちょしぃは拳銃を握る腕に力を込める。銃身は折れ曲がり、細かなパーツが飛び散る。まっちょしぃが手を開く。拳銃はひしゃげた鉄の塊となっていた。それを地面に投げ捨て、まっちょしぃは腕を組む。
「数秒後の貴様の姿だ」
「銃がいらないのなら私にくれてもよかったのに」
「まっちょしぃの武器はこの鍛え上げられた肉体なのです☆拳銃など不要です。いくぞ、
鳴の目の前からまっちょしぃの姿が一瞬で消える。鳴は逃げようと後ろを振り向く。
そこにまっちょしぃが立っていた。とっさの事で鳴は身動きが取れない。そんな鳴にまっちょしぃは渾身のパンチをお見舞いする。
鳴の体が数メートル吹っ飛ぶ。
まっちょしぃは鳴のもとに走り寄り、死亡を確認した。
戦いの後は仲直りがいいのですが、殺さなければならないのは残念なのです。
まっちょしぃは倒れている鳴を見た。その体は血や砂で汚れ、普段つけている眼帯も外れて義眼が露わになっている。
最後はやっぱり綺麗にしてあげたいのです。
まっちょしぃは倒れて動かなくなった鳴の体の血や砂を拭き取って綺麗にし、両方の瞼を閉じてやった。
【女子16番 まっちょしぃ】
【身体能力】 S 【頭脳】 D
【武器】 無し
【スタンス】 全員と戦い勝利する
【思考】 次の強敵を探すのです
【身体状態】 左手を負傷、上半身に軽いやけど 【精神状態】正常
【女子18番 見崎鳴 死亡】
【生存者 残り39人】
16
はあ、殺し合いとかマジ勘弁してほしいだろ、常識的に考えて。
男子21番やらない夫は頭を抱えていた。
あーあ、マジで面倒臭え。別にあいつらがどれだけ死のうが俺の知った事じゃねえ。クラスメイトなんて話した事が無い奴だって何人もいるし、特にこれといって親しい奴もいないからな。どうせ卒業したら二度と会う事もないような奴らだ。そんな奴らが何人死のうが俺には何の関係もないし、心も痛まないだろ。それに俺がわざわざ手を下さなくても、あいつらの事だ、勝手に殺し合って全滅するだろ。
いや、相打ちならまだしも、誰かが勝ち残った場合はどうなる?そりゃ俺を殺しに来るだろうな。果たして俺はそいつに勝てるのか?勝ち目のなさそうな奴が多すぎるだろ。
それに途中で誰かに見つかるのもまずい。数が減るまで隠れてた方が安心だな。そして戦いで弱った奴らを確実に狩るのがこのプログラムの最適解だろ。いや、手負いの獣ってのも恐ろしいしなあ。
そもそも俺に殺しが出来るのか?法で禁じられてるとかは考えなくていいだろ。この島では殺しを許可されてるんだから、後ろめたい事なんか何もないだろ。でも、やっぱりちょっと気が引けるな。
いやいや、大丈夫だろ、男を見せろ、やらない夫。別にあいつらが何人死のうと問題無いってさっき結論出しただろ。クラスには俺より弱そうな奴もいるんだ。そういう奴を狙うのなら俺なら出来るだろ!でもなあ、殺した後で罪の念に押し潰されそうで嫌だな。一生十字架を背負って生きるってか、重みに耐えられるだろうか。
ひ、一人ぐらいなら大丈夫だろ。それ以上は厳しそうだな。
よし、行動方針は決まったろ。俺は積極的に殺しには参加せず最後まで隠れるのに徹する。そして残って弱った奴を倒して優勝だろ。そして賞金は俺の物だろ。
待てよ、賞金が本当にもらえるのかも怪しいぞ。俺が委員会の立場だとしたら優勝者に賞金をあげるか?あげねえよなあ。
嘘臭いだろ。それに唯一神とかいう奴が非常に胡散臭いだろ。
何だよ唯一神って。
自分で神を名乗る奴なんて、ノートに名前を書いて人を殺しまくったり、仮面ライダークロニクルとかいう危険なゲームを作ろうとしたりと信用できない奴ばかりだろ。
やらない夫の考え事は続き終わる気配がない。そのやらない夫の頭に何かが落ちてくる。
うわっ!
な、なななな何かが頭に落ちてきただろ!
ナイフ、銃撃?そ、そそそそれとも爆弾?
ごごごゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい!
殺すとか思ってすすすすいません!
俺はこここ、このプログラムにのののの乗らないからららら、だから命までは取らないで欲しいだろ!
やらない夫は動転して頭を抱えてその場にうずくまる。
だが、その後何も起こらなかった。
――あれ?
やらない夫は恐る恐る顔をあげる。周囲に人の気配はない。
誰もいないだろ。何だったんだ?
やらない夫はそう思い頭を触る。指に何か湿ったものが付く。
何だこりゃ?
やらない夫は指に付着したものを見てみる。
それは鳥の糞であった。
固まるやらない夫。
やらない夫は悲鳴を上げ、指を地面にこすりつける。その辺に生えている草を見つけ、頭を拭き取る。さらにバッグから水を出し、指と頭にかける。
ふっ、ふふふふざけんじゃねえぞ!俺たちは殺し合いという極限の状態にいるのに、なんで鳥の糞が落ちてくるんだよおおおおお!馬鹿にしやがって!
そこでやらない夫は今バッグの中で何か固いものに触れたのに気づいた。
いけねえ、まだ支給武器を確認してなかっただろ。身を守るのにも、誰かを倒すのにも必要だろ。
やらない夫はバッグの中を探る。
ナイフや剣より、銃の方がいいだろ。銃は人が死に行く感触が手に残らないだろ!そもそも銃と近接武器では銃の方がはるかに有利だろ。よし、銃来てくれ!頼む!さらに欲を言えばスナイパーライフル!
だが、バッグの中の武器を見てやらない夫は絶句する。
やらない夫の武器はメガホン型の拡声器だった。
あ、あ、ああ。
ああああああああああああああああああああああ。
ハズレだ。
ハズレの中のハズレだ。
これでみんなに戦いを止めるように呼びかけるのか?誰かを呼び寄せてそいつに殺されるのがオチってところだろ。
ん?
やらない夫はバッグの中に説明書が入っているのに気づいた。すがる思いで説明書を見てみると次のように書かれていた。
この高性能拡声器はスピーカーとしても使えます。
馬鹿じゃねえの。
音楽再生機等は勿論の事、パソコンといったものはバッグの中に入ってない。
無駄な機能だな、オイ!
こんなものより銃をくれ、銃を!これじゃあ、弱そうな奴にも銃で返り討ちにされちまう。ああ、終わった―――。
―――いや、待てよ。使い方ではこれも使えるんじゃないか。
まずはこいつで誰かを呼び寄せる。それでやって来た奴が俺より弱そうで倒せそうなら倒して武器を奪う。強い奴なら隠れてる。そして複数人やって来たらその瞬間に戦いの始まりさ。勝ち残り弱った奴にとどめを刺す。
意外といけるんじゃないか、この作戦。やってみる価値はあるだろ。
やらない夫は隠れる場所を探す。
少し離れたところに大きな岩があるのを見つけた。その中心には一人ぐらいが隠れられるような隙間がある。
よし、隠れ家は見つけたろ。後は何と叫ぶかだな。
皆さん、戦いはやめて出てきてください。
これだと罠だと思われるだろ。少なくとも俺は思う。そもそも戦いを止めるのを呼びかけるなんてこの島じゃ愚の骨頂だ。こんなことするのは戦いを止めるように言ってた山村ぐらいだろ。
いーや、そういう思い込みも危険だ。人の良さそうな顔をしておいて後ろからザクッなんて事もあり得るだろ。
誰かの名を呼ぶのはどうだ?
強い奴を呼ぶのは論外だろ。みんな警戒して寄ってこない。いや、まっちょしぃとかは喜んでやって来そうだろ。だけどそれじゃあ俺では勝てないだろ!無し!強い奴呼ぶのは無し!
ならば弱そうでこういうのに騙されそうな奴、誰かいるか?
そんな時、やらない夫の頭にある男子生徒の顔が浮かんだ。
やる夫。
今日転校してきてこのプログラムに参加させられた不幸な奴。バスの中でのあれだけの会話で俺を友達だと思うなんて馬鹿な奴だろ。そもそも友達の定義ってなんだろな。まあいい、あいつを利用させてもらうだろ。見たところ俺よりも弱っちそうだし頭もそんなに良くなさそうだ。ころっと騙されるだろ。
やらない夫は拡声器の音量を最大にし、「やる夫―!」と叫ぶ。やらない夫の声が何倍にも大きくなって島内に響き渡る。
これでいい。
やらない夫は先ほどの岩の隙間へ走った。
クックックッ、さあ来い。この俺の罠にかかるのだ。
かかるかなあ。
やらない夫は再び思考の迷宮に陥った。こうなるともう一人では止まらない。
【男子21番 やらない夫】
【身体能力】 B 【頭脳】 B
【武器】 高性能拡声器
【スタンス】 生き延びる
【思考】 本当に大丈夫かなあ…
【身体状態】 正常 【精神状態】不安
17
やる夫は剣のキーホルダーを手に取って眺めている。
確かにやる夫は攻撃用の武器はいらないと思ったけど、せめて身を守れるぐらいの武器は欲しかったお。これじゃあ身は守れないお。
やる夫はキーホルダーの柄をもって振り回す。
よく見ると、このキーホルダー、かなり格好いいお。お土産屋で見つけたらついつい手を伸ばしかねないお。ああ、そういやこのプログラムも最初は修学旅行だったんだお。修学旅行ならこのキーホルダーもお似合いだお。
やる夫の口から乾いた笑いがもれる。
本当の修学旅行なら、みんなでこうしたキーホルダーを買ってチャンバラしてるはずだったんだお。今頃、真剣でチャンバラしてる人もいるのかもしれないお…。
やる夫は本日何度目かのため息をつく。
ん?
遠くから自分の名を呼ばれているのに気づいた。
なんだお?今、確かに『やる夫』って呼ばれたお。誰かがやる夫を呼んでいるのかお?
あっ。きっとやらない夫だお。
本日転校したばかりのやる夫を呼ぶのはやらない夫しかいないお。やらない夫がやる夫の事を待ってるお。やらない夫も一人でいるのは心細いんだお!待ってろやらない夫、すぐに行くお!
やる夫は荷物を持ち、声のした方向へ向かって走り出した。
【男子22番 やる夫】
【身体能力】 E 【頭脳】 E
【武器】 剣のキーホルダー
【スタンス】 生き延びる
【思考】 やらない夫と合流するお
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
18
まいったな。いい男を掘るのは構わないんだが、無理やりってのは性に合わねえ。それに殺し合いってのも気が引けるな――。
男子02番、阿部高和は今後の動きについて考えていた。
縦長の顔。短い黒髪、前髪の一部がわずがに垂れ下がっている。形が良い黒い眉。光のある目。割れた顎。
誰もが認めるいい男である。
こうなった以上は指をくわえて見てはいられないな。こんな状況じゃあ恐怖からプログラムに乗っちまう奴も沢山いそうだがしょうがねえよな。俺がやるべき事は生き残っているいい男を見つけては掘り、残りのクラスメイトをつれて島からの脱出ってところか。きっと委員会との戦いも避けられねえな。負ける気はしないが、皆を守るとなるとちょっと心配だな。しっかりケツの穴を閉めとかないとな。
阿部はバッグを開け、支給武器を確認した。中に入っていたのは漫画、ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクトだった。
おおっ!委員会の奴ら、なかなかいいものを支給してくれたじゃないの。こいつはありがたくいただくとするか。
笑みを浮かべた阿部は早速ページを開く。
その直後、遠くから「やる夫ー!」と呼ぶ声が聞こえた。
やる夫。
今日転校してきた奴の名前だったな。さっきの声は拡声器の類を使ったんだろう。転校初日のあいつの名を呼ぶなんてどういう事だ?何かの罠か?いーや、ここで考えてたって仕方ねえか。仮に罠だとしても、声がした方に誰かがいるのは確実だ。まずは皆と合流するのが最優先だ。男は度胸!何でも試してみるのさ。それにあのやる夫という転校生、なかなかいい男だったしな―――。
阿部は漫画をバッグにしまい、声のした方向へと向かった。
【男子02番 阿部高和】
【身体能力】 S 【頭脳】 A
【武器】 ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクト
【スタンス】 いい男を掘りつつ島からの脱出
【思考】 声のした方へ向かう
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
19
でっていうとの戦いで右腕を負傷した枢斬暗屯子は近くに人の姿が見えないことを確認し、座り込んで自分のスカートの一部を引きちぎった。
包帯代わりや、何もしないよりもマシや。
枢斬は左腕と口を使って器用に右腕を固定する。
民家や診療所に行ってちゃんと治療するほうがええかのう。いいや、委員会の犬コロどもめ、もう一刻の猶予もやらん!
がん。
突如枢斬の後頭部に衝撃が走った。
攻撃ぃ!?後ろからだとーっ!?
意識が飛びそうになる。
枢斬はとっさに左手で鱧切り包丁を掴もうとするが、今度は左手に殴られたような痛みが走る。
周囲に人がいないのは確認済みや。それにわしがここまで接近されて気づけないとは。
不覚…!
枢斬の後頭部に繰り返し殴られたような衝撃が走る。遂には枢斬の頭は割れ、血が流れ始める。
皆すまねえ、わしはここまでじゃ。必ずや委員会を…!
倒れる枢斬。急激に遠ざかっていく意識の中、血の付着した石を持った腕が宙に浮かんでいるのを枢斬は見た。これが彼女のこの世で最後に見る光景となった。
枢斬が倒れるやいなや、宙に浮かぶ手は持っていた石を枢斬の頭に投げつける。そしてもう一方の手が現れ、何かを掴んで外すようなしぐさをする。
突如、女子05番、古明地こいしの姿が現れた。
黄緑色で癖のあるショートヘア。瞳孔が無く、白く発光した緑色の瞳。黄色のリボンが付いた黒い帽子をかぶっている。
彼女の武器は透明マント。包んだものの姿を透明にするマントである。
こいしは枢斬の首元に両手を伸ばし、首を絞める。
「ごめんね暗屯子ちゃん。ごめんね」
そう言いながらこいしは枢斬の首を絞める手に力を込める。こいしの目には涙が浮かんでいた。
しばらくして腕が疲れたのか、こいしは落ちていた枢斬の鱧切り包丁を手に取り、枢斬の首に突き刺した。首から血が流れる。
こいしは枢斬の首に突き刺した包丁を抜き取り、枢斬の服で血を拭き取った。
「スカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコ…」
楽しそうにキチガイ地獄外道祭文を歌いながらこいしは歩き出し、再び透明マントをかぶって姿を消した。涙は既に乾いていた。
【女子05番 古明地こいし】
【身体能力】 B 【頭脳】 B
【武器】 透明マント、鱧切り包丁
【スタンス】 皆殺し
【思考】 ガスの元栓閉めたっけ
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
【女子09番 枢斬暗屯子 死亡】
【生存者 残り38人】
20
ま、参ったなー。このクラスで殺し合いなんて勝てる気しないんだけど。
あっはっはっはっは。
女子06番、佐天涙子は笑っていた。
長い黒髪で、鼻の形の髪飾りを付けている。
いやー、特殊能力持ちの皆と無能力者のあたしじゃ勝ち目無いでしょ。ん、そう言えば委員会の利根川とかいうおじ様がこの島では能力が使えないって言ってたっけ。つまり今はみんなもあたしと同じ無能力者?
もしかして、あたしにも勝ち目がある?
無い無い無い。能力無くとも筋力が凄まじい人もいっぱいいるし。頭がいい人は策を練ってきそうで怖いし。あーあ、ほんとにやめて欲しいな。
あっ、まだ支給武器の確認してないや。身を守るのには役立つでしょ。見てみよっと。やっぱりあたしに向いてるのは金属バットかな―――。
―――もしかしてレールガンとか入ってたりしちゃいます?そしたらあたしもこのプログラムに――冗談ですって。
佐天はバッグの中からアメリカンバトルドームを取り出した。
ほーう、これがあたしの武器ですか。二人から四人で遊べる超エキサイティンな3Dアクションゲームじゃないですか。
あっはっはっはっはっはっは。
おいおいおいおいおいおいおいおいおい。
これでどうやって戦えと。戦いなんてやめてみんなで遊べばいいか。って、あたし一人じゃん。これから島を歩いて遊び相手を探そうってか。んなアホな。
困惑する佐天。そんな彼女の後ろから呼びかける者がいた。
「ふっふっふ。見つけたわよ佐天さん。あたしの最初の相手があなたとはね。ま、相手にとって不足無しってとこかな」
「だ、誰?」
突然後ろからふっふっふとかいう笑い方で登場し、折角相手の背後を取ったのにその利点をみすみす捨てちゃうなんて、絶対残念な子だ!
「か弱い女の子かと思った?残念!さやかちゃんでした!」
佐天の背後に立っていたのは女子17番、美樹さやかであった。
青髪のショートヘア。小さな金色の髪留めを付けている女の子だ。
さやかは屈託のない笑顔を浮かべていた。
なんでこんな環境で笑顔なんだろうかこの人は…。
「さあ勝負よ佐天さん。この島にいる以上、殺し合いは避けて通れない。あたしはみんなをぶっ飛ばして優勝するよ」
さやかはバッグを地面に置いて開き中身を確認している。
「銃なんて使った事ないからさ、使い慣れたサーベルやバットがいいなあ」
なんだこの子…。
さやかがバッグをあさっている中、佐天はそっと忍び歩きで逃げようとする。
「ちょっと、逃げないでよ!逃げるなんて卑怯よ。正々堂々戦いなさいよ!逃げたらもっと痛い目に合わせるからね」
ばれちゃった。
「あれ~、おっかしいなあ。パン、水、ソース、コンパスに地図、時計、懐中電灯。―――ちょっと、武器なんて入ってないじゃない!騙したなあのジジイ!」
「待ってください美樹さん。ちゃんと武器なら入ってるじゃないですか」
佐天はさやかに寄り添い肩を叩く。
「何言ってんの?パンに水にソースにコンパスに地図に時計に懐中電灯、ぜーんぶただの支給品じゃん!それとも何、この中に武器が入ってるっているの!?この懐中電灯で相手を殴れとでも言うの!?こんなの武器じゃないじゃん!あたしだけ武器無しで戦えって?ひどすぎるよぉ…」
「武器なら入ってるじゃないですか。美樹さんの武器はそのソースですよ」
「え?」
さやかはそれを聞いて硬直する。
佐天はさやかのバッグの中のソースを見る。
なんだこれ。
確かにソースって書いてあるけどさ、なんで緑色なの?
さやかの支給武器はソースであった。縦長の容器で白いキャップが付いた、どこにでもあるようなものだ。だが、中身だけが普通のソースとは異なっていた。緑色なのである。
佐天はさやかの支給武器である緑色のソースを手に取った。説明書が容器に張り付けられている事に気づき、書かれている内容を読み上げる。
「皆さんはお刺身を食べる時に醤油と間違ってソースを付けてしまった事はありませんか?醤油とソース、色が似ていて紛らわしいんですよね。そんなうっかりやのあなたのために開発されたのがこの新感覚ソース・大草原です!最新技術で緑色になったソース、これで醤油と間違える心配はありません!味は中濃、ウスター、とんかつの三種類」
ですって、と言って佐天はさやかに新感覚ソース・大草原を手渡す。ちなみにこのソースは中濃だった。
「ははは…確かにソースと醤油って色が似ていて紛らわしいよね。あたしも間違えたことあったなあ…」
「あるんですか」
「でもこれなら間違える心配ないね。緑色のソースか。良いところに目を付けたもんだね。新しいアイデアってのは、現状の不満を解消したい、もっと便利にしたいという意志から生まれるのかもしれないなー」
だとしても緑色のソースは駄目でしょう。そもそもこの緑色、野菜以来の緑色とかじゃなくて、絵の具とかの色ですよ。体に悪そうなオーラが出まくりですって。いいえ、あたしだって着色料が悪だとは言いませんよ。
毒も喰らう、栄養も喰らう。
両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量が食には肝要だって分かってますよ。でもね、これをかけた料理なんて食べたくありません。そもそもこのソースは食材への冒涜ですよ。
食事というのは舌で味わうだけじゃない、料理を見て、匂いを嗅ぎ、歯ごたえや触感も楽しむものなんです。料理によっては油のはねる音みたいに耳で聞いたりもするんです。食事とは五感全てを使って楽しむものなんです!
それなのになんですか、この緑色のソースは!食欲減退もいいところですよ!あたしはこんなソース認めません。仮にソース味だとしても絶対に認めません。
新感覚ソースを手に取って眺めているさやかの肩を佐天は掴む。
「美樹さん、あたしと手を組みませんか?美樹さんもそんなソースもどきではあたしと戦えないでしょう。お互いがソースまみれになるのが関の山です」
「はっ。あたしたちは殺し合いの真っ最中だったね、忘れてたよ」
「忘れないでください。いいですか美樹さん、美樹さんの武器はその緑色のソース、あたしの武器もアメリカンバトルドームという3Dアクションゲームで武器とは言えません。こんな状態で戦うよりも今は一時休戦して、ちゃんとした武器を手に入れるのに協力しませんか?殺し合いはそれからという事で、どうでしょうか?」
「なるほどねー。佐天さんの武器も外れだったんだね、それで良い武器が欲しいと―――。よし分かった。このさやかちゃんが力を貸してあげよう!ふっふっふ、このあたしがいれば百人力よ、武器もどんどん手に入っちゃうから心配しないでね。佐天さんとの決着はそれまでお預けよ」
「ありがとう美樹さん。が、頑張りましょう!」
「よろしくね。ところでさあ、佐天さんの武器ってアメリカンバトルドームなんでしょ。どうせなら遊んだことのないドラえもんバトルドームが良かったなあ」
「美樹さんはバトルドームで遊んだことあるんですか?あたしは聞いたことがあるだけで実物は初めて見ましたよ」
「そうなんだー。それならさあ今からちょっとやってみようよ。なーに、あたしがちゃんと教えてあげるから」
【女子06番 佐天涙子】
【身体能力】 C 【頭脳】 C
【武器】 アメリカンバトルドーム
【スタンス】 生き延びる
【思考】 この先大丈夫かな…
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
【女子17番 美樹さやか】
【身体能力】 B 【頭脳】 D
【武器】新感覚ソース・大草原
【スタンス】 優勝を目指す
【思考】 強い武器が欲しいなあ
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
21
さーて、俺の武器は何だ?斬馬刀、炸裂弾だな。ゴブリンバットでもいいぜ!
男子08番、相楽左之助は赤報隊、喧嘩屋、キワミ、KYM、ノーパンスタイリストといった数々の異名を持つ。激しく跳ね上がった茶髪に赤いハチマキがトレードマークだ。
左之助はバッグの中を漁っていたが、望む武器は出てこなかった。
伸縮サスペンダー!?こんなものが使えるかぁ!
左之助は伸縮サスペンダーを投げ捨てる。
ぶつぶつと文句を言いながら歩く左之助。
あ?なんだありゃあ。
左之助は離れたところにバッグが落ちているのを見つけた。
よっしゃあ、いいもん見つけたぜ!
左之助はバッグを拾いに走り出す。
いーや、ありゃあ見え見えの罠じゃねえか。
左之助は立ち止まって周囲を見渡す。
おっ。
バッグの後ろには低木が並んで植えられていた。低木は生い茂っており、しゃがめば人が一人くらいは身を隠せるだろう。
そこだあっ!
左之助はバッグにはもう目もくれず、低木へ向かって砲弾のごとく殴りかかる。
低木へもう少しで手が届く距離に近づいた時、左之助はある事に気づく。
低木の前の地面に隠されるように亀裂が生じている。
この亀裂、恐らく――落とし穴!二重の―――罠ってとこかあ!
「うおおおおおおおっ!」
左之助は叫びながら亀裂の直前で飛び上がり、そのまま低木をも飛び越え後ろ側に着地する。着地した途端に後ろを振り向き、左之助の必殺技である二重の極みを使う。
「フタエノキワミ、アッー!」
左之助は一歩踏み出す。
その瞬間、左之助の足元の地面が無くなった。
「あああああああああ!!!」
悲鳴を上げながら左之助は落ちていった。
落とし…穴ッ!
突然の事だったが、左之助は着地を華麗に決める。
左之助は上を見る。飛び上がって穴のふちを掴もうとするが届かない。
この穴…深いっ!
ちと骨が折れるが、登るしかねえ。
左之助が穴の壁面に手を掛けようとした途端、上から声が聞こえた。
「をーほっほっほっほ!誰が引っかかったのかと思えば、左之助さんでしたか。私の落とし穴は見事でしょう?あなたには地面を這いつくばる姿がお似合いですわー」
「テメエ、沙都子か!」
上から左之助を見下ろしているのは女子14番、北条沙都子であった。トラップマスターの異名を持ち、数々のトラップを仕掛けるのが趣味である。以前から左之助を含めた多くのクラスメイトが沙都子のトラップの餌食となって来た。
「おい沙都子!こんな姑息な真似しやがって、正々堂々と真っ向からかかって来やがれ!」
「何を言ってらっしゃるの、左之助さん。私が腕力で左之助さんに敵う訳がないでしょう。そもそも戦いというのは頭を使うものですのよ。相手の先の先を読んでトラップを仕掛ける、まさに芸術ですわー」
沙都子は後ろに下がり、穴の中の左之助から姿が見えない位置に移動した。
「それではごきげんよう、左之助さん。あなたの武器は私が頂いておきますわ。をーほっほっほっほ!」
沙都子が言い終わると同時に、左之助の頭上から大量の石が降って来た。
左之助はとっさに両手で頭を防ぐ。石は止まる事なく降り続け、遂には左之助の体は石に埋まってしまった。
沙都子は石が止まると用意しておいた砂を降らせて穴を塞いでしまった。
「はい終わり。これで一丁上がりですわー」
沙都子は左之助が捨てた伸縮サスペンダーを拾う。
スキップでここから去ろうとするが立ち止まり、塞いだ落とし穴の跡を見た。
土の中から手が出ている。その手が動き、土をかき分ける。すぐさまもう一方の手も出てきて、土をかき分ける。
「終わっちゃいねえってんだよ!」
土の中から左之助が飛び出してきた。体は土や血で汚れている。左之助は沙都子の姿を見つけると走り出す。
その瞬間、左之助の首に凄まじい速度で石が飛んできた。石が左之助の首輪に当たる。
「あぁん…」
左之助は声を漏らす。沙都子は伸縮サスペンダーを木に縛り付け、パチンコの要領で石を飛ばしたのだ。
そして左之助は自分の首輪が妙な電子音を立てるのを聞いた。
首輪は無理やり外そうとすると爆発する。
強い衝撃を与えるのも禁止ってことか――。
「あぁぁぁぁぁぁ…!(´゚д゚`)」
左之助の首輪が爆発した。
【女子14番 北条沙都子】
【身体能力】 B 【頭脳】 B
【武器】ズルい落とし穴のタネ、伸縮サスペンダー
【スタンス】 トラップを駆使して優勝する
【思考】 次のトラップを仕掛けますわ
【身体状態】 正常 【精神状態】正常
【男子08番 相楽左之助 死亡】
【生存者 残り37人】
22
足音が聞こえただろ。
やらない夫は石の隙間からそっと顔を出し、誰が来たのかを確認する。
やる夫か?それとも別の誰かか?
―――え?
だ、誰?
あんな奴、クラスにいたかっ!?
ハーメルン学園3年β組45名 名簿
○→生存、●→死亡
● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
○ 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
○ 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
○ 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
○ 女子22番 両儀式
【生存者 残り37人】