やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです   作:MASUDA K-SUKE

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(オタサーの姫を)かこんでいたのに(よそのイケメンと付き合うなんて)ひどいや


ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
○ 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
○ 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り33人】


6話

37

 こっちの方がいいかな?これもいいなぁ。これか?これか?これかぁ?

 ドナルド・マクドナルドは自身の支給武器である全参加者武器シートを眺めながら楽しそうにつぶやいている。

 フランドール・スカーレットはドナルドのそんな姿を横目で不満げに見ていた。

 フランはドナルドが持つ全参加者の支給武器という情報を共有するという目的でドナルドと同盟を結んでいた。 

 永沢の魔の手から逃れた後、フランはドナルドに武器シートを見せるように要求した。 だがドナルドはそれを拒否した。フランが武器シートの内容を全て知った時点でドナルドは用済みとなるからである。そこでドナルドはフランにある提案をした。

 ドナルドはフランちゃんの質問にはちゃんと答えるよ。

 信用できなーい。道化師さんはその名の通り道化を演じてるんだから、演技なんて簡単に出来るじゃん。そもそも道化師さんは存在自体が嘘みたいな人じゃない。

 そう思ったフランはドナルドに質問せず、その場に座り込んだ。その横でドナルドは武器シートを取り出して楽しそうに眺めているのである。勿論、フランの位置からはドナルドの持つ武器シートに書かれている内容は一切見えない。

 コイツほんとにむかつくわ。――やっぱり力ずくで奪えばいいか。

 フランはドナルドに飛びかかり、その手から武器シートを奪い取ろうとする。

 だが、ドナルドもフランの攻撃に素早く反応し、フランの攻撃をかわす。フランは再びドナルドのシートへ手を伸ばすがその手は虚しく空を切る。

「フッ!フッ!」

 ドナルドはまるでダンスでもしているかの様な華麗な動きでフランの攻撃をかわし続ける。

「ドナルドマジック!」

 ドナルドが指を鳴らす。それと同時に、ドナルドの手から武器シートが忽然と消え失せる。

 は?

 フランは攻撃を止め、ドナルドの姿をじっと見る。

 コイツ、武器シートをどこにやった?

「さあ問題だよ。ドナルドは武器シートをどこに隠したでしょうか?ドナルドの体を調べるのは無しでよろしくね」

 そう言ったドナルドの顔面を狙ってフランは飛び膝蹴りを仕掛ける。ドナルドはこの攻撃もかわす。そしてフランのナイトキャップに手を伸ばした。

「正解はここ!フランちゃんのナイトキャップとリボンの隙間だよ。これは手品の初歩的なテクニックさ」

 ドナルドは武器シートを指でつまんで楽しそうに振る。

 ああもう――今ここに鏡があったら自分の顔が見てみたいなー。怒りで、ほおずきみたいに紅い顔になってるね!――そもそも、コイツのペースに乗せられてる時点で私の負けじゃない!

 フランは深呼吸をして気を静めようとする。そしてドナルドに尋ねた。

「道化師さん、この島で一番強い武器を持ってるのはだぁれ?」

「やっとフランちゃんとお話出来るね、嬉しいなぁ。んー、一番強い武器かあ。難しいなあ、武器にも相性があるからね。例えば――ベネット君の支給武器、コピーロボットは自分の記憶と身体能力をコピーした分身が作れるんだ。そのコピーはコピー元の人間に忠実に動く。自分を二人にして共闘が可能になるんだ」

「二人に分身して戦えるって事ね、面白いじゃん。でも普段の私なら四人に分身出来るし、その半分なら恐れるに足らずね」

「こいしちゃんの武器は透明マント。このマントで包めば人でも物でも透明に出来る」

「透明になるだけで存在はしてるんでしょ。楽勝楽勝」

「あとはやる夫君の剣のキーホルダーもなかなか面白いね」

「やる夫って――ああ、やらない夫を小太りにした見た目の転校生ね。ソイツの武器って強いの?キーホルダーでしょ、弱そうじゃん」

「そんな事は無いんだよ。フランちゃんは旅先のお土産屋で売っている、龍が巻き付いた剣のキーホルダーを知ってるかい?」

「知らなーい」

「アラーッ。まあいいや、そういうものがあると思って聞いて欲しいなぁ。やる夫君の武器は一見すると、今言ったような龍が巻き付いた剣のキーホルダーなんだけど、やる夫君が念じる事で本物の剣に変わるんだ」

「ふーん、で?」

「この剣、カッコイイだけでなく、やる夫君の体力を消費して光弾を撃ち出すことが可能なんだ」

「は?その武器の何が面白いの?」

「ええっ、持ち主の意志で自由自在に姿を変える秀逸なデザインの剣、さらに体力と引き換えに出される光弾!これだけじゃないよ、この剣は持ち主に忠実でやる夫君以外には使えないんだ。他の人が使うには、やる夫君から直接キーホルダーを受け取るか、やる夫君を殺して奪い取らなければいけないんだ。なんて持ち主に忠実な武器なんだろう。どうだい、凄いだろう!」

「ぜーんぜん。そんな武器いらないわ。何よ伸縮自在の剣って。普通の剣で十分じゃん。それに体力を消費して光弾撃つよりも、引き金引くだけで銃弾撃つ方が効率的じゃない」

「待ってよ、この剣はこのプログラムの主催者である唯一神自らが創り出した、唯一神の半身とも言える剣なんだ。いや、むしろもう一柱の神と言っても過言じゃない。フランちゃんもこの武器の凄さが分かったかい?」

「分かりたくもないわ。さっきから聞いてれば無駄な機能のをカッコイイだの、凄いだの、それが何だっていうのよ。馬鹿じゃないの。道化師さんの趣味なんかどうでもいいのよ」

「んー。こういう物のカッコよさが女の子のフランちゃんには分からないか」

「私知ってるよ。そういうのって中二病っていうんでしょ」

 ドナルドはアラーッと言って後ろに倒れる。そんなドナルドに構う事なくフランは質問を続ける。

「道化師さん、それじゃあ今度はハズレの武器を教えてよ」

「んー、やらない夫君の高性能拡声器、ドラコ君のデオドラントスプレー、高和君のヤマジュン・パーフェクト、さやかちゃんの新感覚ソース・大草原とかかな。あと、ケニー君の超人化の薬も酷いものだね」

 ドナルドは寝転がったままフランの質問に答える。

「道化師さん、ケニーの武器って強そうな名前してるけどハズレなの?」

「超人化の薬かい?その名の通り、飲むと体とプライドが巨大化して凄まじい力を発揮できるんだ。筋力や体力は異常なまでに上昇し、口から火を噴くことも可能となるんだよ」

「飲むと巨大化、怪獣大戦争ってとこね。確かにその武器もいらないわね。巨大化なんて私の趣味じゃないし」

「それよりも問題なのはドナルド達に付けられた首輪さ。巨大化の際に首輪を圧迫するから、首輪が自身を破壊しようとしていると認識、爆発してしまうんだ。飲めば巨大化の途中でボカンって訳さ」

「酷い武器ね。まあケニーには似合ってるかも。――ってケニーはプログラム開始前に殺されたじゃん!終わった奴なんてどうでもいいや。次は銃火器類を支給された人を教えてよ」

「んー、先行者君がS&W M29、まっちょしぃちゃんがワルサーP38を支給されてるね」

「天才の先行者に、筋肉モリモリのまっちょしぃが拳銃持ちかぁ…」

この瞬間、ドナルドとフランの後方から大きなクラクションが響き渡る。

 咄嗟にフランは音のした方を振り向く。耳を澄ますとエンジン音の様なものも聞こえて来た。ドナルドも瞬時に立ち上がる。その顔には冷や汗が浮かんでいる。

「道化師さん、この音は何よ。道化師さんなら分かるでしょ?」

「フランちゃん、今すぐ走って逃げるんだ」

 そう言い終わるとドナルドは走り出す。

 説明不足よ!

 フランもドナルドの後を追う。

 その瞬間、二人の後方から黒い車が勢いよく飛び出してきた。

「何よあれ!何で車が出てくるのよ!」

「あれはBMW735i E38だよ。正真正銘の高級車さ!支給されたのは沙耶ちゃんだね」

「巫山戯ないでよ!そんな支給武器がある筈がないでしょ!」

「あるんだよ。だってほら――すぐ後ろにあるじゃないか」

 走るドナルドとフランにBMW735i E38は距離を詰めていく。

 このままじゃ轢き殺される!

 車と衝突する直前でフランは素早く横に飛ぶ。ドナルドも同様にして車をかわした。二人を当て損ねた車はしばらく進んだのちに動きを止めた。パワーウィンドウが下がり、女子07番、沙耶が顔を出す。

 腰まで届く暗い緑色の髪をしており、犬耳の様に髪が左右にはねている。あどけない少女の姿をしている。

 この世界では沙耶をただの少女と思って戴きたい。そのように認識している登場人物達は皆正常である。決してグロ肉ではない。

 沙耶はウィンドウから体を乗り出し、フランとドナルドの方を向いて笑顔で手を振る。

「見て見てー、これが私の支給武器。素敵でしょ?まだ上手く運転できないけど二人共、私の練習に付き合ってよー」

 そう言うと沙耶の姿が車内へ消える。その直後、車は猛烈な速度でフラン目がけて後退してきた。車内から沙耶が楽しそうにバックします、バックしますと口ずさむのが聞こえてくる。フランは再び横に飛んで車をかわす。

「車の練習って――人を轢く練習の事じゃない!そんなのに付き合ってられないわ。上等よ沙耶、貴方を車諸共粉々のグロ肉にしてあげるわ」

「駄目だフランちゃん!スマートボムを使ってはいけない!高速で動く車にスマートボムが引火して爆発が大きくなって巻き込まれる可能性が有る!」

 ドナルドがフランの側へと走り寄ってフランの腕をつかむ。

「じゃあどうするっていうのよ!このまま黙って沙耶の車の染みになるなんて――言わないわよね?」

「もちろんさぁ。フランちゃん、沙耶ちゃんの運転は、今のところはたいして上手じゃない。いくら速くても動きも単調だから回避しやすいし、動きも予測しやすい。車のナンバープレートを見てごらん」

 ドナルドに言われた通り、フランは沙耶の車のナンバープレートを見た。ナンバープレートがくるくると回転し、次々と別のナンバープレートへと変わっている。

 再び車が突っ込んでくるがドナルドとフランは別々の方向へ逃げる。そのため、沙耶の車の動きが鈍る。

「あれはナンバープレートを自由に変えられる機能だ。その機能を入れっぱなしにしている事に沙耶ちゃんは気づいていない。沙耶ちゃんはあの車に関して素人同然って事さ。」

 ドナルドはフランの元へと駆け寄りながら小声で話す。

 そんな機能は普通の車に付いていないし裏社会の運び屋でもない限り必要ないでしょ。そもそもナンバープレートを自分で変えるのって犯罪でしょ?

「でも恐ろしいのは沙耶ちゃんの驚異的な学習能力だ。今は下手くそな運転だけれど、沙耶ちゃんならすぐに上手くなるだろうね。そしたら逃げるのは難しくなる。」

「ちょっと道化師さん、逃げるつもりなの?」

「うん。今の僕らではあの車には勝てない。あちらをご覧。森が見えるだろう。あそこまで行けば車では追って来れないよ」

 ドナルドが指さした方向には木々が生い茂る森が広がっている。あそこを車で通るのは不可能だろう。

「はあ…仕方ないわ。気に入らないけど逃げるしかなさそうね。それじゃあ二手に別れて森へ向かいましょう。いくら何でも同時に二人は追えないでしょう」

 ドナルドも頷く。二人は別れて森へ向かって走り出した。

 これで沙耶が道化師さんを追いかければ二人まとめてスマートボムで吹き飛ばせるわね。いや、それだと武器シートが無くなっちゃうし、私も手ぶらになっちゃうか。ああ、ほんと面倒な武器を支給されたものだわ。

 だがフランの思いと裏腹に、沙耶の車はフランを狙って走り出した。

 なんで私を狙うのよ!

 フランはまたも沙耶の車を直前まで引き付けて回避する。だがフランの横を通り抜けた車はその場で瞬時にドリフト回転をし、方向転換して再びフランへと襲い掛かる。

 嘘でしょ!?この短期間でもうドリフト出来るようになったって訳!?

 焦りながらもフランも自身の高い身体能力を生かして車をよけ続ける。

 確かにこの距離だとスマートボムに巻き込まれかねないわ。

 ふと、森の方を見たフラン。森の入り口で木に手をかけるようにしてドナルドが立っている。

 ドナルドと目が合う。

 アイツ、ちゃっかり安全圏に避難してやがる。

 笑うなよ。

 手を振るなよ。

 ああもう、ムカつくなぁ!

 フランは森を背にして立つ。沙耶の車もフランを狙ってスピードを上げる。

 今よ!

 フランは高く飛び上がり、沙耶の車の屋根に飛び乗る。車のスピードは落ちることなく森へと向かっていく。森の直前で沙耶がハンドルを切る。そのタイミングでフランは屋根から森へと飛び込む。フランの体は木々の中へと突っ込んでいく。枝葉が引っかかりフランの体にかすり傷を創る。

「待ってたよ☆フランちゃん!」

 枝葉を潜り抜けたフランの下にはドナルドが手を広げて待機していた。ドナルドは落ちて来たフランをお姫様抱っこの要領で抱え、すぐさま森の奥へと走り出す。

「Go, active!」

「ちょ、ちょっと降ろしてよ!」

 フランは腕を振ってドナルドの体を叩くが、ドナルドはそれに動じず笑い続けている。その間にもドナルドはフランを抱えたまま走り続け、瞬く間に森の奥へと消えていった。

 一人残された沙耶は車を停めて降り、両腕を上げて背筋を伸ばす。

「あーあ、逃げられちゃった。でも運転のやり方もよく分かってきたし、楽しくなってきたなあ。次はもっと難しい技にも挑戦してみようかな」

「戦闘中に車から降りちゃっていいんですかぁ?」

 沙耶の背後から声がした。沙耶は咄嗟に振り向く。

 そこにはベータが笑顔で立っていた。その手にはEM銃が握られ、銃口は沙耶の体へ向けられている。EM銃から放たれた青い閃光が沙耶の体を貫く。沙耶の体は森の方へと飛ばされた。沙耶の体を貫いた弾丸が、沙耶の背後の木々をなぎ倒した。

「さぁて、森にもまだ誰か隠れているんでしょう?早く出てきてくださいね」

 ベータもEM銃を片手に森の奥へと歩みを進めた。

 

【女子13番 ベータ】

【身体能力】 A 【頭脳】 B

【武器】 EM銃

【スタンス】 優勝を目指す

【思考】 すぐに楽にしてあげますね

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【女子07番 沙耶 死亡】

【生存者 残り32人】

 

 

 

38

「降ろせって言ってるの!」

 フランはドナルドの顔面を殴った。プログラムが開始してから初めてフランがドナルドに有効打を与えた瞬間である。

 ドナルドの動きが一瞬止まり、すぐさまフランはドナルドの手から降りた。ドナルドは殴られた鼻をさすっている。

「痛いじゃないか、フランちゃん」

「いつまでも降ろさない道化師さんが悪いのよ」

「でも抱えられた時は気持ち良くなかったかい?」

「全然。乗り心地最悪」

 その時、ドナルドとフランが走って来た森の入り口の方から青い光が一瞬走り、木々が倒れる音がした。

「今度は何?まさか沙耶が車で突っ込んできたとでもいうの?」

フランがつぶやいた。だがドナルドの行動は違った。青い光を見た途端、更に奥へと走り出した。

「今度は何なのよ!あの光もなんかの武器なんでしょ。自分だけ分かって満足してないで、私にもちゃんと教えてよ!」

 フランもドナルドの後を追う。

「フランちゃん、さっきの光は恐らくEM銃だ」

「EM?」

「エレクトロマグネティック。電磁場さ。火薬も従来の弾もいらない。アルミ弾を光くらいの速さで飛ばせるんだ」

「レールガンってヤツね…ちょっと、そんな凄い武器まで支給されてるの!?そういう事はさっさと私に教えてよ!」

「教えようと思ったら沙耶ちゃんがやって来たからね」

「人のせいにするな!あんなどうでもいい剣の話する暇があったら、レールガンだの、車だの、もっと先に言っとく事あるでしょ!」

 怒鳴るフランの側を青い閃光が走る。それはフランの側に生えていた木の幹に直撃し、木が倒れる。

「凄い威力ね…ちょっと待って、沙耶はどうなったのよ!?」

「最初の閃光が見えた時、人の影みたいなものも見えたし――EM銃の餌食になったんじゃないかな…」

「何よそれ、車に乗ってたんじゃないの?」

「恐らく――あの後に車から降りたんじゃないかな。そこを撃たれたとか。車ごと撃たれたらもっと大きな爆発もしている筈だ。車は無事なんじゃないかな」

 走る二人の周囲を度々閃光が走る。それが周囲の木や地面を抉る。

「忠告しとくけど、相手を殺してEM銃を奪い取ろうなんて考えない方が良いからね。足を止めればその時にはあの世行きさ。ただのカカシ兵でもEM銃があればアーノルド・シュワルツェネッガーを手こずらせる事は出来るんだから」

 手こずらせても最後はシュワに殺されるんでしょ。

 今度は走るドナルドの側を閃光が掠める。ドナルドは一瞬、姿勢を崩すが、倒れることなく走り続ける。

「それにねフランちゃん、EM銃を支給されたのはベータちゃんだから、ただのカカシよりははるかに厄介だよ」

「マジかよ、生身でも戦える奴に強い武器を支給して何が面白いのよ」

「フランちゃん、このまま一緒にいたらEM銃の餌食になっちゃうね。いったん二手に別れれよう。そして、森を抜けた先で合流しよう。ドナルドは右、フランちゃんは左でどうかな?」

「どっちでもいいわよ」

 いっそ、このままコイツと別れた方が楽しくなるんじゃない?

「よし、それじゃあフランちゃん、つかの間のお別れだね。逃げる時は木々を盾にしつつ、決して真っすぐ走って逃げないようにね」

「分かったわ!ああ、ホントにうんざり。私は武器を手に皆と遊びたいのに、プログラムが始まってから逃げてばっかりじゃん!こんなの全然面白くなーい!」

「鬼ごっこだと思うと楽しいよ」

「私は追いかける方が好きなの!」

 フランとドナルドは左右に別れて走り出した。二人の側を閃光が掠めるが、直撃する事は無い。そのまま二人は森の奥へと消えていった。

 フランとドナルドの後を追ってきたベータは、二人の姿を見失った時点で走るのを止めた。周囲にはEM銃の弾丸でなぎ倒された木々が連なっている。

 ベータは不満げな顔をして頬を膨らませた。

 あーあ、見失っちゃいました。それにしても――ドナルドさんとフランさんに狙いを定めるのが難しかったですねぇ。走っていたから?――いいえ、あの二人の動きが非常に狙いにくかったんですよぉ。まるで私の攻撃が分かってるみたい――。まあ考えても仕方ないですね。それよりもこの騒ぎで誰かが来る方が面倒です。私の武器よりも強い武器を持ってる人がいないなんて言いきれませんから。

 そう思い、ベータもこの場を後にした。

 だが、フラン、ドナルド、ベータ、この三名共がこの森の中に一人の女子生徒が潜んでいる事には気づかなかった。

 その女子生徒は非常に鋭くでかい目で、この一連の戦いを観察していた――。

 

【女子10番 フランドール・スカーレット】

【身体能力】 A 【頭脳】 C

【武器】 スマートボム

【スタンス】 楽しく遊ぶ

【思考】 退屈よ!

【身体状態】 かすり傷あり 【精神状態】 正常

 

【男子18番 ドナルド・マクドナルド】

【身体能力】 A 【頭脳】 A

【武器】 全参加者武器シート

【スタンス】 生き残る

【思考】 早くフランちゃんと合流したいなあ

【身体状態】 鼻が痛い 【精神状態】 正常

 

 

 

39

 ハーメルン学園3年β組のうさみちゃんは、みんなに頼られる名探偵だよ。その名は留まることを知らず近所でも有名な名探偵だよ。まだ学生だけどその推理力は大人顔負け。将来の夢はもちろん畳の上で死ぬことだよ。だからうさみちゃんはこの島で死ぬわけにはいかないんだ。

 女子01番、うさみちゃんは森の中で息を潜めてベータの銃撃から逃げるドナルドとフランを観察していた。

 ピンク色の肌に長く反り立った耳。つぶらな瞳や左右の頬から三本ずつ生えた髭、赤くて丸い鼻が印象的だよ。兎みたいだね。

 見つかってたら私も危なかったわ。それにしても妙ね――ドナルド君はベータちゃんの銃に関してやたらと詳しかったわ。まるで前もってどんな武器なのか分かってたみたい。これはどういうことかしら。――そういえばドナルド君は一見して武器らしい物を持ってなかったわね。ドナルド君の支給武器には何か秘密があるのかしら――。

 うさみちゃんのインスピレーションが働き、目が鋭くなる。この特徴からうさみちゃんは別名、うさみちゃん目つき悪っ!!等の異名で知られている。この鋭い目でうさみちゃんは犯罪を即座に見破り、決して犯人を容赦することなく警察に突き出してきた。

 森の中を歩きながら、顎に手をやって考え込むうさみちゃん。その背後から物音が聞こえてくる。

 うさみちゃんは振り向いた。

 後ろから男子11番、多治見要蔵が木々の間を走り抜けてこちらへ向かって来る。

 まるで白粉を塗ったかのような白い顔、対照的にその唇は赤く染まっている。彼の目は狂気に満ち、杉本一文が描いたかのようなおどろおどろしい表情をしている。頭には白い鉢巻きをしており、その鉢巻きには点けっぱなしの棒型の懐中電灯が左右に一本ずつ、まるで角の様に結び付けられている。

 要蔵にも夢がある。うさみちゃんの夢が畳の上で死ぬことならば、要蔵の夢は落ち武者の格好をして死ぬことである。勿論、死後に死蝋となる事が理想である。

 決して真っ白なゴム製のマスクを被り、湖に頭から突っ込んで両足のみを逆さまに晒して死ぬ事は望んでいない。この点については絶対に間違えないでいただきたい。間違えると八つ墓明神に祟られるぞ。

 なんで要蔵君はいつも巻き付けている鉢巻きと懐中電灯を委員会に没収されなかったのかしら。――ああ、彼の体の一部みたいなものだし、別に武器にもならないからね。

 納得するうさみちゃん。直後、うさみちゃんは要蔵の手にあるものが握られているのを見た。

 要蔵の手には妙な形の刀があった。一見すると日本刀の様であるが、その刀身は途中で直角に曲がり、その先で再び下を向くように直角に曲がっている。

 この刀は侘助と言い、斬った物の重さを倍にするという能力がある。二度斬れば更に倍、三度斬れば更に倍となり、斬られた相手は最終的に重さに耐えきれず、詫びるかの如く頭を差し出す。故に侘助。

 勿論この能力をうさみちゃんは知らない。要蔵が奇妙な刀を持っているという認識しかない。だがうさみちゃんは瞬時に要蔵を観察し、その表情から要蔵が自分を殺そうとしている事を理解した。

 まずいわ、あの武器は――刀!ちょっと厄介かしら、戦うのは危険ね。

 うさみちゃんは脱兎の如く走り出した。逃げる過程でうさみちゃんは地に咲く花を何本も踏みつけた。

 

【女子01番 うさみちゃん】

【身体能力】 B 【頭脳】 S

【武器】 ???

【スタンス】 頭脳を駆使して優勝する

【思考】 天寿を全うしたいわ

【身体状態】正常 【精神状態】 正常

 

【男子11番 多治見要蔵】

【身体能力】 C 【頭脳】 E

【武器】 侘助

【スタンス】 皆殺し

【思考】 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

【身体状態】 正常 【精神状態】 発狂

 

 

 

40

「バトルロワイアルには危険がいっぱいじゃーっ!!!今日はワシがバトルロワイアルで身を守る方法を教えてやるぜー!!」

 男子09番、じーさんは一人叫んでいた。丸い顔に大きな目と立派な髭、頭頂部の毛は数本しか残っていないが側頭部にはまだ髪の毛が残っている。世の中を安全に生き抜く方法を教えるのが趣味である。好きな言葉は酒池肉林、好きな食べ物はソース、好きな動物はイリオモテヤマネコ、好きな駅は西日暮里駅、将来の夢は課長、F1カーのタイヤで、好きでも嫌いでもないものは電柱である。

「このプラグラムで睡眠不足は大敵じゃっ!そういう訳で――寝る!」

 そう言うや、じーさんは地面に仰向けに寝転がった。両手両足を大の字に伸ばす。

 どうじゃ?耳をすませば聞こえてくるじゃろう。小鳥の囀り、木々のざわめき、大地を駆ける風の音が。暖かな日差しに包まれて――気持ちいいのう。おっと、ここは島じゃったな、遠くから波の打ち寄せる音が聞こえてくる。潮の匂いも感じられるぞ。ああ――人間もこの大自然と共存している。共に生きる仲間として、ワシら人間もこの美しい自然を守ってゆかねばらんのう――。

 じーさんは穏やかな笑みを浮かべている。

 しばらくの後、じーさんの瞼が重くなってきた時である。何やら賑やかな音が聞こえて来た。じーさんは横になったまま、笑みを浮かべた顔を動かして音のした方を見る。

 じーさんの視線の先にはうさみちゃんが走っている。その後ろを妙な形の剣を持った多治見要蔵が追う。

 その光景をじーさんは笑顔で見ていた。

「うるせぇーーーっ!!!」

 突如じーさんが叫ぶ。両目は血走り、残った髪の毛が逆立つ。

「折角人が気持ちよく寝てたのに許さんぞー!アホかーっ!肛門をひきちぎるぞ、この野郎!!」

 怒り狂ったじーさんを見てうさみちゃん、要蔵の動きが止まる。

「寝る子は育つって言うだろうがぁー!ワシの成長を邪魔しおって!禿げろ!突き指しろ!」

 じーさんは支給武器であるRPG-7を取り出し、うさみちゃんと多治見要蔵に向かって発射した。

 RPG-7は対戦車擲弾発射器である。対戦車用である。相手がアーノルド・シュワルツェネッガーでもない限り人間に向かって撃つものではない。

 砲弾がうさみちゃんと要蔵を襲う。要蔵は咄嗟に逃げ出した。だがうさみちゃんは動じる様子を一切見せず、その場から動こうとしない。

「ひらりマントー」

 そう言って、うさみちゃんが支給武器であるひらりマントを取り出した。ひらりマントとは、飛んでくる物体に向かって振りかざすことで、その物体の軌道を変える事を可能とするマントである。

 うさみちゃんはひらりマントを構え、飛んでくる砲弾に備える。うさみちゃんがひらりマントを振る。うさみちゃんを狙っていた砲弾は軌道を変えられ、走って逃げる要蔵へと飛んでいく。必死で走る要蔵、だが逃げ切れるはずもなく、砲弾の爆発に巻き込まれた。

 要蔵の夢、叶わず。

 うさみちゃんはひらりマントで爆風からも身を防ぐ。じーさんは爆風の影響で転げた。

 転げたじーさんと要蔵の爆死を確認してから、うさみちゃんは走ってこの場から姿を消した。

 一人残されたじーさんは立ち上がり、爆心地へと歩く。黒焦げになった要蔵に近寄ると、じーさんは制服を脱いだ。そして要蔵の遺体の上で脱糞した。急な便意に襲われたのである。

 その後、制服を着たじーさんは地面から緑色の物体が飛び出している事に気づいた。じーさんはその物体に近づいて掘り出した。地中から出てきたのはハイドラパーツZであった。

「掘り出し物じゃーっ♨」

 歓喜のあまり、じーさんは両目から涙を、両鼻から鼻水を凄まじい勢いで噴き出した。脱水症状にならないか心配である。

「さーて来週の絶体絶命でんぢゃらすじーさんは!絶世の美男児、真珠郎が伊豆沖の小島、月琴島から瀬戸内海の獄門島にある八つ墓村の犬神家の一族のもとに引き取られた!犬神家で仮面舞踏会が開かれていた頃、八つ墓村に伝わる悪魔の手毬歌にのせて、三つ首塔に悪魔が来たりて笛を吹く!次回、夜歩く?鵺の鳴く夜は気を付けろ!金田一耕助、最後の事件!」

 そう言うとじーさんは勢いよく親指を立てた。

 そんな話があってたまるか。

 

【男子09番 じーさん】

【身体能力】 D 【頭脳】 E

【武器】 ハイドラパーツZ

【スタンス】 プログラムを安全に生き抜く

【思考】 決勝で待ってるぜ!!

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【男子11番 多治見要蔵 死亡】

【生存者 残り31人】

 

 

 

41

 フランドール・スカーレットは森を抜け、一息ついた。

 周囲に人の気配はない。EM銃の弾丸も、森の木々がなぎ倒される音も――道化師の笑い声も聞こえない。

 静寂がフランの周囲を支配していた。

 これで鬼ごっこはお終い、次はかくれんぼってことね。私が鬼なら――皆を見つけないとね。見つけた子は隠しちゃおう。さあ、どっちへ行こうかな。今来た森を引き返そうかな。沙耶の車も欲しいけど、私に運転は無理。やった事ないもん。それにまだベータがいるかもしれないし。ふう、やっと道化師さんから解放されたのね。遊び相手としては悪くないけど、ずっと遊んでいると厭になるなあ。

 フランは落ちていた木の枝を拾い、地面に立てる。手を離すと木の枝が倒れる。フランは気の向くままに木の枝が倒れた方角へと歩き出した。

 

 

 

42

「組まないか」

 何言ってんだこいつは――。

 やらない夫は阿部の提案を聞いて呆れた。

 島からの脱出なんて出来るわけがないだろ。

「組むお!」

 やらない夫の考えとは裏腹にやる夫は即答した。

「よかったのかホイホイ話に乗っかって。俺はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ」

「既に阿部さんとやらない夫とやる夫は仲間だお!いやー殺し合いは嫌だけど、それなら島から逃げればいいんだお。思いつかなかったお!」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないの。それじゃとことん手助けしてやるからな」

 俺も仲間に組み込まれてる?

「待て待て。おい阿部、島から脱出すると言ったって、何か方法があるのか?俺達はこの首輪で管理されてるんだぞ、そんな事をしたら首輪を爆破されちまうぞ」

「それは分かってるさ。島から出る前に首輪は外すぜ。プレイでもないのに首輪なんて付けてらんねえよ」

「外すったってどうするんだ?首をいじればその時点で爆破するんだぞ」

「その辺も含めて考えるさ。やらない夫、クラスメイトを思い浮かべて見な。首輪を外せそうな奴が何人かいるだろう?」

「――先行者に沙耶とかか?ムスカも出来そうだな」

「ちょっと待つお、その――沙耶という子は名前からして女の子かお?」

 やる夫が問う。それに対してやらない夫は、そうだと答える。それを聞いたやる夫は鼻息を荒くしてさらに質問をする。

「その子、可愛い?」

 やる夫――お前、どうしてこんな状況で女の子の容姿について興味が湧くんだよ。

「可愛いかどうかは俺からは判断しかねるな。いい男の判断なら大得意なんだが。やらない夫、どう思う?」

「えー、可愛いなんて個人の価値観によるものだから俺が何か言っても意味ないだろ。そうだな――確か、一部の奴からグロ肉とかっていう不名誉なあだ名を付けられてたな」

「阿部さん、先行者とか、ムスカって人はどんな人なんだお?」

「先行者は男のロボットだ。ムスカは茶髪で七三分け、常にサングラスをかけているいい男だ」

 おいおいおいおい。

「ゴルァ!やる夫、お前――何事も無かったかの様にしれっと俺の話をスルーしてんじゃねえよ!」

 やらない夫はやる夫の胸倉をつかんで揺さぶる。やる夫は必死でそれを振りほどこうとしつつ、口を開く。

「いやいや、そんな話を聞けばスルーしたくもなるお!何だお、グロ肉って人に付けるあだ名じゃねえお!そんなあだ名を付けられてる時点で悪いけど沙耶って人には期待できねえお。天才だけど、可愛くないってことだお?」

「やる夫――お前、割と性格悪いな」

「ハッ!素が出てしまったお!転校初日ぐらいは猫をかぶっておこうと決めたのに!」

 顔を青ざめて口を押えるやる夫。その光景を横で見ていた阿部は笑いながらもやる夫とやらない夫に話しかける。

「いいじゃないか、やる夫。猫なんてかぶらず、思いっきり素を出していこうぜ。出せるもんは出せる時に出しといた方が良いと俺は思うぜ」

 いや、人間の素なんて誰しも皆醜いから出さない方が良いだろ。

 内心でそう思うやらない夫。そんなやらない夫に阿部は声をかける。

「やらない夫、お前もここに来て俺と会ってから普段とは全然違う姿を見せてくれてるじゃないの。それがお前の素ってヤツか。いいねえ、やらない夫のいい男度がグングン上昇しているぜ」

「そ、そんな数値は上がらなくて結構だろ!」

 ――はあ、俺も醜い素を無意識の内に晒していたのか。駄目だ、こいつらといると妙にペースが狂う。そもそも突っ込み要素が多すぎるんだよ。ああ、喋りすぎて喉が痛いな。普段、こんなに喋らねえし。

「やる夫、俺には沙耶が可愛いかどうかは分からない。でもな、沙耶は暗い緑色のロングヘアのロリっ子だぞ」

「先ほど迄の数々の暴言、やる夫が悪うございましたお。どうかこの白豚を許していただきとうございますお」

 やる夫が土下座をした。

「態度変わるの速過ぎだろ!」

「だって――そんなロリっ子、可愛いに決まってるお!誰だお、沙耶ちゃんをグロ肉って呼ぶ奴は!やる夫がひき肉にしてやるお!」

 やる夫は握りこぶしを作って勢いよく立ち上がる。その目は決意に燃えている。

「会ったことも無いのにちゃん付けかよ…」

「ハハッ。だとしたら何としても沙耶に会って、首輪を外してもらわないとな」

 やらない夫が眉間を押さえる一方で、阿部は満足そうに笑ってほほ笑む。

「やらない夫―!他にもこのクラスにはどんな女の子がいるか、やる夫に教えて欲しいお!」

「え、えーと、そうだな――やる夫が好きな黒髪ロングは何人かいるな。気品のある銀髪の女子や金髪ツインテの女子、ロリもいるな。いや、本当に小さいのもいるか。あと、茶髪に赤髪、青髪とバリエーションは豊かだな。うさ耳に鼠耳もいるし」

「決めたお!やる夫はその子たちと一緒に生きてこの島から脱出するお!やらない夫に阿部さん、是非協力してほしいお!」

 力強く叫ぶやる夫。やる夫の目には一点の曇りも無い。

「その意気だぜ、やる夫!お前のその決意、決して無駄にはさせないぜ。やる夫、一緒にクラスのいい男も紹介するから――衆道にも目覚めようじゃないの」

 そう言って阿部さんはやる夫の尻に手を回す。

「待て待て待て待て待て待て。やる夫、全員で島から脱出なんて不可能だろ。そいつらの中にはプログラムに乗ってる奴が絶対いるぞ。そんな奴らと協力なんて出来ないだろ」

「でも乗ってない子もいると思うお。乗るか乗らないか、確率は半々だお」

 ――こいつは馬鹿だ。自分以外の全員が敵とも言えるこの状況、疑心暗鬼に陥る奴がいくらでも出るに決まっている。そんな時に手元に強力な武器、拳銃とかがあれば、自分の身を守るためだと言って武器に手を伸ばすだろ。そして生きるために殺し合いに乗る。結局、誰も信用できないだろ。このプログラムは信じる奴から足元をすくわれて死ぬだろ、常識的に考えて。

 ――まさに俺の事だな。

 黙り込んだやらない夫に阿部が声をかける。

「やらない夫が言いたいのは――むやみやたらと他人を信じるのは危険で、本当に信用できる限られた人間とだけ手を組めって事か?」

「――そんなところだな」

 阿部、お前の事だって完全に信用してるわけじゃねえからな。やる夫も――いや、やる夫は何だか違うような――よく分からない。

「やらない夫にやる夫。よく聞いてくれ、俺はこんなプログラムは糞くらえだ。委員会の奴らと戦ってでも俺はクラスメイトと共にこの島から出る。俺のキンタマに誓って言うぜ。もし俺が二人を裏切る事があれば、俺のキンタマを潰して構わない」

 そんなものに誓うなよ。あと潰したくねえ。

「阿部さん…」

 やる夫は阿部の事をじっと見つめている。阿部の発言に心を打たれたようだ。

 やらない夫は歩いて窓の方へと向かう。何だか無性に外の景色が見たくなった。

 しっかりと今後について考えておくべきだろ。

 やらない夫の後ろではやる夫と阿部が話し込んでいる。

「ヒューマンガスという鉄仮面をしたいい男がクラスにいるんだ。クラスは違うがヒューマンガスにはベネットによく似た顔をした赤いモヒカンの男と金髪の美青年の友がいる。モヒカンと金髪は付き合っていて――」

 阿部とやる夫はクラスの男子に関する話に夢中である。振り返ることなくやらない夫は窓を開けて外を見た。

 ん?変な臭いがする。

 奇妙な感覚が突如やらない夫を襲った。

「おい、何か臭わないか?」

 やらない夫は振り向いて尋ねる。

「えっ!?やる夫、昨日はちゃんと風呂に入ったお!」

 昨日はってなんだよ、毎日入れよ。

「臭い?俺もまだナニしていないが」

 するなよ。ああ、他人の発言の細かい所にいちいち反応して――本当に嫌な癖が付いちまってるよ。

 阿部も立ち上がって窓の方へと向かう。その時、阿部の動きが止まる。そして阿部はかっと目を見開き、民家の入口へ向かって走り出した。

「やる夫、やらない夫!すぐにここから出るぞ!この臭いは――ガソリンだ!」

 ―――は!?

 やる夫も青ざめた顔ですぐさま立ち上がり阿部の元へと駆け寄る。阿部は扉を開けようとする。だが、扉が開く気配はない。

「阿部さん!なんでドアが開かないんだお!?」

「まずいな、外から重いもので塞がれている!」

 やる夫と阿部の顔に冷や汗が浮かぶ。

「こっちだ二人とも!ドアが開かないのならこの窓から逃げるぞ!」

 やらない夫は叫んで窓から外へと飛び出る。その後を追うようにやる夫と阿部は窓へと走る。いち早く民家から飛び出たやらない夫は、やる夫と阿部が出てくるのを待っていた。

 この瞬間、やらない夫の眼前で民家は炎に包まれた。

 ―――え?

 やらない夫の思考が一瞬停止する。だが、すぐさま現状を把握するやらない夫。

 二人はどうなった?間に合ったのか?無事なのか?

「やる夫―!阿部―!」

 やらない夫は炎に向かって叫ぶ。

 それと同時に炎の中からやる夫と阿部が姿を現した。二人は勢い余って地面を転がる。やらない夫はその二人に駆け寄る。

「大丈夫か、やる夫!阿部!」

「間一髪ってところだったぜ。制服を中に忘れたのが残念だな。もう手遅れだが仕方ないか」

 そう言うと阿部は立ち上がる。阿部の上半身にはいくらか軽度のやけどの跡が見られる。阿部のズボンもわずかに焦げて黒くなった場所がある。

「ほら、やらない夫忘れものだ。大事な武器と食料だ」

 阿部はやらない夫にバッグを手渡す。それをやらない夫は受け取る。

「あっ、俺のバッグ。すまねえ、俺がバッグを忘れたせいで余計な手間をかけちまって。それで脱出が遅れたんだろ?」

「気にするなよ、やらない夫。俺だってバッグの事はやる夫が言うまで忘れてたんだ」

「そうだったのか。やる夫、――ありがとう」

「どういたしましてだお」

 やる夫は転げたまま笑顔でやらない夫の方を向き、親指を立てる。

「聞いてくれお、やらない夫。阿部さんが凄かったんだお!やる夫とバッグを抱えて、家が燃え上がると同時に窓を蹴破って――」

 やる夫の言葉が途切れる。やる夫は口を開いたまま、離れた一点をただじっと見つめている。

 やる夫の視線の先には一人の男子生徒がいた。その男子生徒の頭は奇妙な形をしていた。まるで玉葱の様である。玉葱男も離れた場所から燃え上がる民家を眺めていた。恍惚の表情を浮かべている。

 玉葱男もやる夫に見られている事に気づいたのか、視線を燃え上がる民家からやる夫へと向ける。やる夫と玉葱男の目が合う。

 玉葱の――目じりが下がり、口角が上がる。

 ああ――玉葱は――。

 笑っている。

 玉葱男はやる夫に背を向け、遠くへと走り出した。

 突然固まったやる夫に、やらない夫が不思議そうに尋ねる。やる夫はやらない夫を見てこう言った。

「玉葱が――やる夫を見て笑ったお」

「玉葱――まさか!」

「間違いなく――黒太陽神拳の使い手だお!」

「違うそうじゃない」

「ウェズリー・スナイプス?」

 違う、そうじゃない。鈴木雅之だろ――。

 

【男子22番 やる夫】

【身体能力】 E 【頭脳】 E

【武器】 剣のキーホルダー

【スタンス】 島からの脱出

【思考】 玉葱男が怖いお

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【男子21番 やらない夫】

【身体能力】 B 【頭脳】 B

【武器】 高性能拡声器、カイザギア

【スタンス】 生き延びる

【思考】 玉葱男――永沢か!

【身体状態】 正常 【精神状態】 正常

 

【男子02番 阿部高和】

【身体能力】 S 【頭脳】 A

【武器】 ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクト

【スタンス】 いい男を掘りつつ島からの脱出

【思考】 いっそ全部脱ぐか…

【身体状態】 小ダメージ、軽度のやけど 【精神状態】 正常




ハーメルン学園3年β組45名 名簿

○→生存、●→死亡

● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
○ 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
○ 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
○ 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式

【生存者 残り31人】
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