やる夫とクラスメイトがバトロワに参加させられたようです 作:MASUDA K-SUKE
「ほえええええっ!?」
「(0w0)<ウェッ!?」
「(0M0)<ナニイテンダ、フザケルナ!」
ハーメルン学園3年β組45名 名簿
○→生存、●→死亡
● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
○ 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
○ 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
○ 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式
【生存者 残り28人】
56
「秘蔵のエロゲを差し上げるお!本棚の漫画も画像フォルダも全部渡すお!だから見逃してほしいお!命だけは!命だけはお助けお!」
やる夫は土下座して命乞いをした。そんなやる夫のもとに阿部が駆け寄ってくる。阿部は右足を後ろへ引き、やる夫の体を蹴り飛ばそうとする。
「ヒィー!」
やる夫は叫び声を上げつつ、瞬時に転がり、阿部の蹴りをかわした。
「くっそ、やっぱり美少女モノでは阿部さんの説得は出来ないお。でも、ゲイ向けエロゲなんて持ってないし――」
「オイィィィ!やる夫、お前はこの期に及んで何を言ってるんだ!それよりも――阿部!さっきのはどういう事だ!?お前、俺たちの事をずっと騙してたのか!?」
やらない夫は繰り出される山田の攻撃をかわしつつ、叫んだ。
「その通りさ。さっきも言っただろう」
「テメエ――よくも俺たちを!」
やらない夫は山田の体を突き飛ばし、阿部へと向かう。やらない夫は阿部へとパンチを繰り出す。だがそれは阿部の左腕で易々と止められた。
「騙すのが悪い事なのか?このゲームでは騙し合い等、日常茶飯事に過ぎない。戦場で後ろから掘られたと騒ぎ立てる兵士がどこにいる?」
「う――うるせえ!」
やらない夫はもう一方の腕で阿部の体にパンチを入れた。だが阿部が全く動じない。
「それにやらない夫、お前だってこのゲーム中で誰かを騙そう、利用しよう、裏切ろうと考えたりはしなかったのか?」
「そ――それは――!」
阿部がやらない夫の体にパンチを入れた。苦痛に顔を歪め、やらない夫はその場に倒れた。
「やらない夫!」
やる夫がやらない夫のもとに駆け寄る。
「阿部さん!さっきからなんて酷い事をするんだお!やらない夫はちょっとキモイ奴だけど、殴られて喜ぶタイプではないんだお!だからこんな事はやめるんだお!」
やらない夫が呻くように俺はキモくねえ、と言った。阿部はやる夫に話しかけてくる。
「やめる?お前も馬鹿だな。まあ、俺の演技も見抜けなかったぐらいだしな。いいか、お前らはこの俺に騙されていたんだ。俺はお前らから武器でも奪ってやろうかと思って、お前らに近づいたんだ。結局、使える武器は持ってないようだし、本当の仲間である山田と合流したからここらで演技も終了って訳さ。騙すなんて酷いだなんて言わないでくれよ? 騙された方が悪いんだ」
「ああ…阿部の言う通りだ。ルール無用のこのプログラムでは裏切り、騙し合いなんて当たり前。すまないやる夫。お前まで巻き込んでしまって…」
痛みで顔を歪ませながら、やらない夫がやる夫に言った。
「気にするなお!やる夫は二人に会えてここまで楽しかったお!いや、辛い事もかなりあったけど」
「それにやる夫――お前にはもう一つ謝っておかなければならない事があるんだ。最初にお前の名を呼んだ時から俺はお前を利用するつもりだったんだ。転校初日で、俺以外のクラスの奴を知らないお前なら利用できそうだって思ったんだ――」
「やらない夫――」
バクラは携帯電話で山田と阿部の動き、発言を操っていたが、一度携帯電話から指を離した。
ハハハハハッ!やらない夫も転校生を騙してたのか!本当に可哀そうな転校生だな、同情するぜ!ヒャ―ハッハッハッハッ!いいぜ、やらない夫。最後の相手がオレ様で良かったなあ。オレ様は優しいから、お前に懺悔の機会をくれてやるぜ。
「やらない夫、今でもやる夫の事を利用しようと考えてるのかお」
「いや――。今はそんな事思っていない。これだけは本当だ」
「ならオーケーだお!やる夫とやらない夫は仲間だお!」
「やる夫――?」
やらない夫の目が点になった。
「ほら立て、立つんだ、やらない夫!それともお前はやる夫の手助けが無ければ立つことも出来ねえのかお?」
「ば…馬鹿野郎!これっくらいのパンチ、大した事無いだろ…!」
やらない夫は殴られた腹を左手で押さえながら立ち上がった。
「流石やらない夫だお!立てるならさっさと立てって話だお!」
「――ああ。すまなかったな、やる夫。色々と面倒をかけただろ」
「気にすんなお!もう済んだ事だお!それより、今のやる夫達にはやるべき事があるんだお!」
そう言うとやる夫はやらない夫に手を差し出した。
あ?オレ様の予想とは違った展開になったな…。
遠くからこの様子を見ていたバクラは顔をしかめた。
「そうだな…やる夫、ありがとう…」
照れくさそうにやらない夫は言った。そしてやる夫の手を力強く握った。
やる夫は笑みを浮かべていた。
「でもそれとこれとは話が別だお!」
そう言うや否や、やる夫はやらない夫の頬を殴った。
「やる夫を騙そうとした罪は重いお、やらない夫ー!罰として、帰ったらやらない夫には真昼間のコンビニで大量のエロ雑誌を買ってもらうお!勿論女性の店員相手になあ!」
やる夫はやらない夫を指さして楽しそうに叫んだ。
「ああ――なんて惨い事を考えるんだお前って奴は。でも――分かったよ、やってやるよ!十冊でも二十冊でも買ってやるよ!」
殴られた頬を擦りながらやらない夫が言った。
「よく言ったお、やらない夫!それでこそ男だお!そして阿部さん!男と男の約束だお、裏切った阿部さんのキンタマは、やる夫が責任もって潰してやるお!」
やる夫が力強く阿部を指さした。
それを聞いてバクラは頭を抱えた。
こいつらそんなくだらねえ約束してたのかよ…。それよりもこいつらに妙な結束が生まれたのが厄介だな。情けなんてかけるモンじゃ無かったなあ――そろそろテメェらをブッ殺す事にするぜ!
バクラは携帯電話を操作する。それを受け、山田と阿部がやる夫、やらない夫に襲い掛かる。
「行くぞ、やらない夫!」
「おう!」
「「逃げろおおおおおおおおお!」」
やる夫とやらない夫が同時に叫ぶ。やる夫とやらない夫は山田、阿部の攻撃をかいくぐり、二人で勢いよく走って逃げ出した。
突然の事にバクラの思考が一瞬停止する。
は?
――ハッ、逃げたか。ククク…確かに今の貴様らにとって正しい判断だ。武器も無いのに、阿部と戦うなど、千年の盾を攻撃表示にするぐらい愚かな事だ。だがオレ様はこのまま黙って貴様らを見逃しはしねえ。精々、余生を楽しみな。山田と阿部、奴らを追いかけて殺せ!
バクラは携帯を操作する。それを受けて、山田、阿部も走ってやる夫とやらない夫を追いかける。逃げるやる夫はやらない夫に話しかけた。
「単刀直入に聞くお。やらない夫、今の阿部さんを見てどう思う?」
「凄く――驚いたな。そして嫌だった。まさか阿部が俺たちを裏切るなんてのは正直信じたくないだろ…」
「そうなんだお!阿部さんはやる夫が見てきた男の中で、間違いなく1,2を争ういい男だお。そんないい男が騙すような卑怯な真似はしないお。仮に阿部さんが最初からやる夫たちの敵だったのなら、正々堂々と真っ向勝負をするはずだお」
「――ああ、そっちの方が阿部の性格に合っている。でも実際に阿部は俺たちを裏切ったんだし――」
「今の阿部さんはおかしいお!あれは裏切ったんじゃなくて操られてるんだお!きっとあの黒髪パッツンの子が操ってる黒幕だお!女の子を洗脳して色々と命じるのはそそるお!でも、女の子に洗脳されて意のままに操られるのもまた一興だお」
「だからお前はいきなり話を脱線するのを止めろ!それに、人を意のままに操るだなんてそんな事が――いや、このクラスにならいてもおかしくないかもしれん。違う、ここではそういう類の特殊能力は使えない筈だし――」
「人を操る武器があるんじゃないかお?ファンタジーの剣に、変身ベルトまで支給されているこのプログラムなら、人を操る武器の一つや二つあってもおかしくねえお!」
「確かにな――。待てよ、だとしたらさっきからの違和感は――、っておいやる夫、後ろ見ろ、あの二人、追いかけてくるぞ!」
「ゲェー!やる夫、もう足パンパンだお!」
「耳を貸せ、やる夫!確かめたい事がある」
やらない夫はやる夫に耳打ちした。やる夫はうなずき、親指を立てた。
「その策、やらない夫に任せるお!それにしても、いちいちそんな事を気にするなんて、やらない夫はホント、細かい男だお!」
「うるさい!観察力があるとか、注意深いとか言え!」
「お前ら――盛り上がってるところ悪いが、逃げられると思っているのか?」
二人の背後で阿部がそう言った。
阿部は既に、やる夫とやらない夫のすぐ後ろにまで近寄っていた。阿部がやらない夫に跳び蹴りをする。
やらない夫は転がるようにして前に跳び、阿部の攻撃をかわす。
一方で、やる夫も山田に追いつかれた。山田は高く跳び、やる夫目がけて真空跳び膝蹴りを仕掛ける。
「――見えたお!」
やる夫の目が輝く。その直後、やる夫の顔面に山田の真空跳び膝蹴りが入った。やる夫は後ろに転がっていく。
「ゴブハァァァアアー!」
「やる夫―!攻撃、見えたんじゃないのかよ、思いっきり当たってるじゃねえか」
「攻撃とは別の物に目を惹かれたお。視線の誘導とはやりおる…」
地に倒れたやる夫は顔面を手で擦りながらそう言った。
「やる夫――何色だった?」
「フ…自分の目で確かめるお」
分かったよ…、とやらない夫は言った。
そして、やらない夫は、顔を押さえながら倒れているやる夫の前に立った。真っすぐ阿部の目を見る。
「阿部。お前がこんな卑怯な奴だとは思わなかっただろ。俺の怒りの炎が燃え滾ってるぜ。そのままお前を燃やし尽くせるほどにな」
「おれはこういう人間さ。これで鬼ごっこは終わりだ。もしや――戦う気にでもなったか?だったら、お前らを裏切った詫びに死ぬ前に天国を見せてやるよ」
阿部は残った制服のズボンに手をかける。
「その手は止めろ。阿部、お前の言う通り戦ってやるよ。ああ、せめて剣でも支給されればよかったんだがな。知ってるだろ、俺の武器なんかプラスチックのフォークだぜ。これじゃあお前のイチモツを切り落とす事も出来ねえよ」
「運が良ければ少しはダメージを与えられるかもな。突き刺さったら痛いぜ」
「ところでよ――阿部、何でコイツの事、転校生って呼ぶんだ?少し前まで名前で呼んでただろ」
やらない夫は親指で後ろをさす。しばしの沈黙。そして阿部が口を開いた。
「忘れたよ――今から死ぬ奴の名前なんてな!」
そう言うと同時に阿部がやらない夫に飛びかかる。
「ド忘れするような名前じゃないだろ、常識的に考えて。そして阿部、俺の支給武器は拡声器だ。そう言っただろ、忘れたのか?さあ――やっちまえ、やる夫!」
「ニュー速学園から来たやる夫だお!以後お見知りおきを、そして二度と忘れるんじゃねーお!やる夫という名を、しかと記憶に刻み込めお!」
やらない夫がその場にしゃがむ。それと同時に、背後のやる夫が立ち上がる。
やる夫の手には既に刀身に龍が巻き付いた金色の剣が握られており、埋め込まれた赤い宝石は既に赤い光を放っている。
やる夫は剣を振るった。やる夫が剣を振ると同時に、剣から赤い光弾が阿部を目がけて放たれた。光弾が阿部の体に当たり、爆発が起こった。やる夫、やらない夫、山田もそれを受けて後ろへ吹っ飛ぶ。その後、やる夫は剣を大地に突き刺して立ち上がる。
「おっしゃー!洗脳を解くにはショック療法が一番だお!これで阿部さんは元に戻るのかお?」
「まだ分からん。だがさっきのやり取りで分かったぜ。阿部はずっと誰かに無理やり喋らされていたんだ。動きだけでなく、発言まで操るとは恐ろしいな…」
「これでもまだ阿部さんが正気に戻らないなら、操ってる奴を倒せばいいお!あの黒髪パッツン女子か、それとも別の誰かかお?あの子を倒すならやる夫に任せて欲しいお!」
それよりさあ…、とやらない夫がつぶやき、爆心地を見た。そこではまだ煙が立ち込めている。
「やる夫…もう少しあの光弾の威力を下げることは出来なかったのか?」
「…。あ、阿部さん!粉々になってないかお!?」
「なってたら困るだろ…。洗脳が解けて、体が無事であることを祈ろう…」
次第に煙が晴れていく。
その中心で、阿部は佇んでいた。
「おお~。阿部さんは無事だった――お?」
「どうしたやる夫?阿部に――あ?」
今の光弾を受け、残っていた阿部の制服のズボンも吹き飛んでいた。今の阿部は一切の衣服を身にまとっていない。そして阿部はやる夫とやらない夫の方を向いていた。言うまでもない、やる夫達からは阿部のイチモツが丸見えだった。
「うぎゃあああああっ!阿部!お前、本当にそういうのやめろって!せめて前を隠せ、前を!」
やらない夫は横を向いて叫ぶ。
一方のやる夫はしっかりと前を見据えている。その後、やる夫は下を向いた。やる夫はもう一度阿部の方を向き、再び下を見る。やる夫は左手で額を押さえた。やる夫は真っ白に燃え尽きてしまった。
最初から真っ白だけど。
「どうしたやる夫―!何で燃え尽きてんだ―!?」
「この世界は残酷だお…やる夫と阿部さん、同級生なのにどうしてあんなにも差が…」
「身長だって違うだろ。そういう物だと思って諦めろ」
「くっ…。やる夫だって成長期、これから――ん?や、やらない夫、阿部さんの下腹部を見るお!なんだか変な物が刺さってるお!」
「いや、見たくねえ」
「今回ばかりは真面目な話だお!見ろ!じゃないとやる夫のを見せるお!」
そう言われ、やらない夫は目を細めて阿部の下腹部を見る。イチモツに視線が向くのを耐えながらやる夫が言った通り、下腹部を見た。
小さい針のようなものが刺さっていた。
やる夫とやらない夫は知らないが、そこに刺さっていたのはバクラの支給武器に含まれていたアンテナであった。
「本当だ――針みたいな物が刺さってるぞ。阿部はああいった物を付ける趣味は無いし――あの針が阿部をおかしくした原因か?確か阿部がおかしくなったのは、転校生の女が現れてからだっただろ。そういえばあの転校生、阿部に向かって倒れこんだな――あの時に針を刺されたのか!?」
「とりあえず阿部さんの針を抜いてみるお!あれを抜けば万事解決だお!」
「まだ確証はないが、試す価値はあるだろ。やる夫、転校生の女にもう一発光弾を撃てるか?あいつも針が刺さっていれば、別の誰かが操っている証拠になる」
「それは――やる夫にあの子の制服を吹き飛ばせっていう事かお?」
「まあ――ちょっと心は痛むが確認するのは大事だろ。べ、別に下心なんてないぞ――」
「カーッ!これだから素人は困るお!いいかやらない夫―!今のあの子は制服を着てるんだお!女学生に制服、これは黄金の組み合わせだお!これを脱がすなんてとんでもない!そうやってすぐに服を脱がしてエロ展開に持っていこうとするなんて、ホント愚かだお、やらない夫! やらない夫は想像力が足りないお!脱がせばそれで終わりだお!でも制服には夢があるお!その制服を可愛い女の子が着ているだけで十分に萌え要素だお。それに今のあの子を見て見るお!所々ほつれたり、破れたりしているが衣服としての機能はまだ十分に保ってるお。あの破れたスカートの間からチラッとみえる太もも、何て魅力的なんだお!色々と想像を駆り立てられて、かなり萌え萌えだお!やらない夫、これだけは覚えておけお。世の中、何も着ていない状態よりも着ている方が萌えるという事がいっぱいあるんだお!だからやる夫はあの子には攻撃しない、制服の上から針を探すお。やらない夫にチラリズムの本髄を教えてやるおー!」
「うわっ、自分の好みや考えを言うとなると、突然早口でまくしたてやがった!キモッ!今ので400字以上、原稿用紙1枚分も喋りやがった!キメェーー!キモすぎて妊娠させられそう!これが歩く性犯罪か!」
やる夫とやらない夫の救いようのないやり取りを聞きながらも、バクラは焦っていた。
チッ、正解だよテメエら。なんてカンの良さだよ…。顔に似合わずなかなか鋭いカンをしてるじゃねえか、転校生――いや、やる夫。それにあんな武器を隠し持っていたなんてな。コイツは一本取られたぜ。さて、阿部が裏切ったのではなく、操られてるのがバレちまったなら――奥の手を使わせてもらうぜ!限界を超えて動け、阿部!
バクラは携帯を操作する。
猥談を続けていたやる夫とやらない夫の前で阿部が先ほど以上の速度で走り出した。阿部はやる夫とやらない夫に体当たりをした。やる夫、やらない夫の二人が吹っ飛ばされた。
「やっぱりまだ阿部は操られているか――!それよりも何だ今の速さ!」
「これじゃあ阿部さんから針を抜くのは大変だお。何とかして動きを止めないと。考えるお…。――はっ!やらない夫、やる夫が阿部さんの動きを止めるから、その瞬間に針を抜いて欲しいお!」
「やる夫――本当にそんなことが出来るのか?」
「阿部さんが教えてくれたんだお!こんな時こそケツの穴を引き締めるんだお!」
そう言うと、やる夫は持っていた剣をキーホルダーに戻した。それを持った手を後ろに回した後、やる夫は阿部へと向かって走り出した。
やる夫の行動に疑問を持つやらない夫。そのやらない夫にも操られた山田が襲い掛かる。やらない夫は山田の攻撃をかわすことに専念しつつ、じわじわと阿部へと近づく。
やる夫は叫びながら阿部へと向かう。やる夫は阿部へと体当たりをするが阿部は軽々かわす。勢いそのまま、やる夫は転んでしまった。やる夫は手をついて立ち上がろうとする。だがそれよりも早く、阿部の両手がやる夫の両足を押さえつけた。
「じゃあな、転校生いや、やる夫。最期に天国を見せてやるよ」
そう言って、阿部はやる夫のズボンを脱がした。
「マズイ!このままじゃ、やる夫が掘られる!くそっ、どけ!」
やらない夫は山田を突き飛ばし、やる夫を救うべく走る。
身動きが取れないやる夫の尻に阿部の下半身が近づく。
「かかったな、阿部さんを操る黒幕め!こいつをくらえ!」
やる夫が叫ぶと同時にやる夫の尻が光り輝く。やる夫の尻から瞬時に剣が伸び、阿部の股間に突き刺さった。
阿部の動きが止まった。
剣に刺された阿部の股間からは血が流れ出ている。
この出来事に、バクラは開いた口が塞がらない。
何だとお!?――そ、そうか、やる夫の剣は伸縮自在――、さっき剣を縮めて――自分の尻に挟んで隠したのか!まさか、さっき転んだのも――わざと隙を作ったってワケか!尻を見せれば、オレ様が阿部を操って襲わせるという事を想定しての行動か!クソッ、やってくれるじゃねえか!
バクラの顔には冷や汗が浮かんでいる。
股間に剣が刺さった阿部は苦悶の表情を浮かべている。だがやる夫も無事ではなかった。
「ぎゃあーっ!持ち手が!剣の持ち手が!奥に食い込んでるお!」
「あと5秒だけ耐えろ、やる夫!」
やらない夫が阿部に駆け寄る。
チッ!こいつはマズい!追いかけろ、山田!
命令を受けた山田はやらない夫を止めるべく走り出す。だが山田はやらない夫に追いつけない。山田の足は小刻みに震えており、走るたびに、両足がもつれて転びそうになっている。
やられたぜ――!山田の体を酷使しすぎたか!もう無理やり動かそうとしても力がほとんど出ねえじゃねえか!なら阿部だ!剣を抜いて――いや、それよりも先にやらない夫を追い払う!それだけじゃねえ、オレ様も――動かねえとコイツはマズい!
バクラは走りながら携帯を操作する。バクラの命令を受け、阿部がやらない夫に殴りかかる。それとほぼ同時にやらない夫が阿部の下腹部のアンテナに手を伸ばす。
阿部のパンチがやらない夫の頬に入った。やらない夫が後ろへ吹っ飛んだ。
ヒャ―ハッハッハッハッ!!どうだテメエら!惜しかったなあ、結構面白かったが、そろそろ闇に飲まれる時間だぜ!
バクラは携帯を操作し、阿部に剣を抜くように命じた。
反応は無かった。
バクラは瞬時に携帯電話を見る。そこには現在操作できる人物の名前、山田葵の名前しか表示されていなかった。
まさか――!
殴られたやらない夫の手にはアンテナがあった。やらない夫は両手で力を込めてアンテナをへし折った。それと同時にやる夫が剣をキーホルダー状に戻す。阿部の股間、やる夫の尻から剣が抜けた。二人共、非常に息が乱れている。
「へへ…やったな、やる夫。これで阿部も元通りか?」
やらない夫もゆっくりと二人に近づいた。
「やる夫の作戦は完璧だったお。キンタマを潰すという阿部さんとの約束も果たせたお。ただ持ち手も伸びるのを忘れてたお。そのせいで童貞より先に処女を失って――やらない夫、危ねえお!」
「ファルコオオオオン!」
物陰から現れたバクラがそう叫び、山田から奪っておいたキチガイレコードをやらない夫に投げつけた。
そいつは衝撃を加えると炎上する。オレ様の駒を潰した分のツケは払ってもらうぜ!
この瞬間、倒れていた阿部が立ち上がった。阿部はやらない夫の前に立ち、飛んでくるキチガイレコードに背を向けた。そして阿部は自分の尻でキチガイレコードを挟み込んで止めた。衝撃を加える事なくキチガイレコードを止めたため、キチガイレコードが炎上する事は無かった。
「やる夫にやらない夫。二人共、これまで散々迷惑をかけた。本当にすまなかった。謝って許される事じゃない。だがせめて、お前らを守るぐらいはさせてくれ」
尻に挟んだキチガイレコードを外して阿部はそう言った。そして現れたバクラを見た。
「俺と山田さんを操っていたのはバクラ、お前か――。こりゃ、きついお仕置きが必要だな」
「フン――今回はオレ様の負けにしといてやる…。だが覚えとけ…!オレ様は必ず、貴様らを永遠の闇に葬ってやるぜ…!」
「はー?負け惜しみとか見苦しいお!人を操るなんて姑息な手を使わず、最初っから自分の手でかかってこいや!」
バクラはやる夫の発言を意に介さず、携帯を操作した後、この場から走り去った。その後ろを操られた山田が不自然な動きで追う。
「待て!」
阿部が追いかけようとするが、その場に崩れ落ちる。
「阿部さん!」
「阿部、悔しいが今は怪我を治療すべきだろ」
「ああ…」
阿部はそう言って頷く。阿部の顔には汗が浮かんでいた。
【男子22番 やる夫】
【身体能力】 E 【頭脳】 E
【武器】 剣のキーホルダー
【スタンス】 委員会を倒して島からの脱出
【思考】 阿部さんが戻って良かったお
【身体状態】 中ダメージ、肛門に小ダメージ 【精神状態】 正常
【男子21番 やらない夫】
【身体能力】 B 【頭脳】 B
【武器】 高性能拡声器、カイザギア
【スタンス】 やる夫、阿部と共に島からの脱出
【思考】 とりあえず今は一安心だな
【身体状態】 中ダメージ 【精神状態】 正常
【男子02番 阿部高和】
【身体能力】 S 【頭脳】 A
【武器】 ウホッ!!いい男たち~ヤマジュン・パーフェクト、キチガイレコード
【スタンス】 いい男を掘りつつ委員会を倒して島からの脱出
【思考】 やる夫にやらない夫、本当にすまなかった…!
【身体状態】全身、股間に大ダメージ 【精神状態】 正常
57
なるほどね。阿部君と山田ちゃんはバクラ君に操られてたのね。さて――今の阿部君たち三人は満身創痍。今の私でもさほど苦戦はしないと思うわ。でもね、誰だって追い詰められると予想外の行動に出る事だってあるんだし、彼らと戦うのは危険だわ。それよりもあの地獄の傀儡師、獏良了は見逃せないわ。私は名探偵のうさみちゃん。このプログラムで優勝する事も大事だけど、逃げる悪人を放っておくなんて名探偵失格よ。獏良君は私が倒す、数の子大好きうさみちゃんの名に懸けて!
うさみちゃんは逃げたバクラと山田を追いかけた。
58
佐天涙子と美樹さやかは木の陰からそっと顔を出した。彼女らの視線の先には、両腕を折ったまっちょしぃと、倒れて動かなくなった井之頭五郎がいた。
「なんて激しい戦いだったんでしょう。巻き込まれなくてホント良かった…」
「ねえねえ、見てよ佐天さん。今のまっちょしぃは五郎との戦いで満身創痍じゃん。これならあたし達でも勝てそうじゃない?」
「ええっ!?まっちょしぃさんと戦うんですか!?そんなの止めましょうよ!勝ち目無いですって!」
「だからさー、五郎との戦いの直後で弱ってる今だからこそ戦うんでしょ。むしろ、この機を逃せばまっちょしぃが回復して倒せなくなっちゃうって」
「いやいや、そもそもあたしは戦いなんて嫌なんです。まっちょしぃさんに気づかれる前に、早くここから逃げましょう」
そう言って佐天はこの場から離れるべく、静かに歩き出した。ちょっと歩いた後、佐天は後ろを振り向いた。
さやかがシャフ度で佐天の顔をじっと見ていた。さやかの目にはさっきまでとは打って変わって光が無い。
何故今シャフ度?ってか、怖っ!目、怖っ!クラスで目が怖いのは、うさみちゃんだけでいいんですって!それよりも――美樹さん、まさかあたしを殺す気じゃ…!
佐天は足音を立てること無く、早歩きでさやかに近づき、その両手を握った。
「分かりました、美樹さん…。まっちょしぃさんと戦いますから、どうか命だけはお助けを…」
「うんうん、その意気だよ佐天さん! あたしが正面から攻撃するから、佐天さんは後ろから回り込んでまっちょしぃに不意打ちして。じゃ、行こうか!」
言い終わると、さやかはまっちょしぃへと向かっていく。
ああ――こうなりゃもうヤケクソだー!
佐天も走ってまっちょしぃの後ろに回る。
一方、まっちょしぃも周囲に人の気配を感じたのか、辺りに目を配っている。まっちょしぃは右足をそっと後ろへ引く。
「まっちょしぃ!その首、貰ったあー!」
さやかが叫び声を上げながら、まっちょしぃへ正面から飛びかかる。それと同時に、まっちょしぃの後ろから佐天も静かに襲いかかった。
まっちょしぃの目が光る。まっちょしぃは静かに右足を上げた。そして左足を軸にしてコマの様にその場で回転を始めた。
ひぃっ!
佐天はまっちょしぃの足が当たる直前で急停止をした。だが、さやかは回転するまっちょしぃにはじかれてしまう。さやかは地面を転がるもすぐに頭を押さえながら立ち上がる。
「いてててて。さっきまで五郎と戦ってたのに、まだこんなに動けるなんて――流石ね、まっちょしぃ!でもさあ、思ってたよりも痛くないね!」
「普段から鍛えているから当然だよー。でも――やっぱりゴローちゃんとの戦いの傷が癒えて無いせいか、力が普段の半分も入らないのです…。えーと、次の相手はさやかちゃんと佐天さんですか。ゴローちゃんを倒したばっかりなうえ、2対1の戦いとは――戦いとは何が起こるか分からないから楽しいのです♪」
「待ってください、まっちょしぃさん!あたしは別に戦うつもりなんてないです!ただ死にたくないだけなんです!」
佐天はまっちょしぃにそう弁明した。それを聞いたまっちょしぃはため息をついた。
「佐天さん――。人生とは戦い。戦いとは人生。戦い無くして人生無し。戦おうともせずに生きようとするその考えが間違ってるのです!」
「その通りよ、まっちょしぃ!佐天さんにもっと言ってやって!」
「み、美樹さんはどっちの味方なんですか!?」
さやかの野次に佐天は過敏に反応した。
「味方?あたしと佐天さんは、強い武器を手に入れるまでの間、同盟を結んだだけよ!」
胸を張ってさやかが答える。さやかの返事を聞いて、佐天はずっこけてしまった。その佐天のもとに、まっちょしぃが近寄る。
「戦え――戦え――佐天さん。佐天さんが逃げても、まっちょしぃは地の果てまで追いかけて、とどめを刺すだけだよ。でも――佐天さんが戦い、まっちょしぃを倒せば生きることが出来るのです。さあ決断の時です、佐天さん。戦わずして逃げて死を選ぶか――戦ってまっちょしぃを倒して生きるか――。戦わなければ生き残れない!」
「はぁー。分かりましたよ。戦えばいいんですよね!」
佐天さんはバトルドームを両手で持って上段に構え、まっちょしぃへと走り寄る。さやかもまっちょしぃに攻撃を仕掛けようとする。
まっちょしぃの左右から佐天とさやかが近寄る。まっちょしぃは動じることなくその場でジャンプした。それと同時に両足を勢いよく左右に開き、その足で近寄って来た佐天とさやかに蹴りを入れた。
佐天とさやかは同時にのけぞる。
「や、やっぱり勝てないじゃないですかー!」
倒れながらも佐天が叫んだ。そんな佐天に構う事なく、まっちょしぃがじりじりと近づいてくる。
「戦おうという佐天さんの意志は立派だったよ。さあ、佐天さん。おやすみの時間なのです」
うずくまっている佐天の側でまっちょしぃは右足を後ろに引いた。
その瞬間、まっちょしぃの顔が歪み、口から息が漏れる。そしてまっちょしぃの体がその場に崩れ落ちた。
え…?
佐天は突然倒れたまっちょしぃを観察した。まっちょしぃの左足には数枚のトランプが突き刺さっていた。まっちょしぃの左足からは血が流れ出ている。
トランプ…?
首をかしげる佐天。その時、声が響き渡った。
「ハッハッハッハッハ!私はムスカ大佐だ。跪け、命乞いをしろ!」
高笑いと共に、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタが現れた。
「げ…ムスカさん」
佐天の顔が青ざめる。
「やばい、逃げろ!」
そう言うと、さやかは瞬時に立ち上がって走り出した。
「えー!?美樹さん、あたしに散々戦えとか言っておきながら、あたしよりも先に逃げてるじゃないですか!」
佐天も体に力を入れ、さやかの後を追うべく立ち上がった。
「ほう――どこへ行こうというのかね?」
ムスカの手の中でゾリンゲン・カードが広がる。そして逃げ出そうとする佐天を狙ってトランプを投げつけようとする。だがムスカはトランプを投げつける寸前でその手を止めた。
まっちょしぃがムスカを目がけて体当たりをしてきたからだ。
ムスカはまっちょしぃのタックルを機敏にかわす。口元に笑みを浮かべ、ムスカはまっちょしぃに話しかける。
「これはこれは――まっちょしぃさん、君はそれだけの傷を受けても、まだ立ち上がるのかね?」
今や、まっちょしぃは無傷の右足一本で片足立ちしていた。流石のまっちょしぃも顔に疲労の色が濃く出ている。
「ムスカ君。まっちょしぃは佐天さん、さやかちゃんとの戦いの最中だったのです。乱入とは――ダメだよ。ちゃんと決着がつくまで待って欲しいのです…」
「君は――このプログラムをクラス最強の生徒を決めるトーナメントか何かの様に考えているのではないのかね。このプログラムで優勝したければ、無用な戦いは出来るだけ避けたまえ。確実に勝てる相手とのみ戦って、参加者の数を減らすのが正攻法だ。わざわざ強い相手と戦うなど、実に非効率的だ。まっちょしぃさん、いや、まっちょしぃ。お前は戦いすぎた」
「ムスカ君の考えは受け入れられないよ。まっちょしぃは目があえば、誰とでも戦うのです。そして、どれほどの傷を負っても、命ある限りまっちょしぃは戦い続けるのです!腕が折れても――足が折れても――まっちょしぃの心は折れてないのです!」
まっちょしぃは右足で力強く大地を蹴り、ムスカに飛びかかる。だがまっちょしぃの体がムスカに触れるよりも早く、ムスカの手から放たれた数枚のトランプがまっちょしぃの胸に突き刺さった。まっちょしぃの体から血が噴き出し、力を失ったまっちょしぃは静かに落下した。
あれー?まっちょしぃの心臓、止まっちゃった―――。
これを最後にまっちょしぃの肉体が動く事は無かった。
ムスカは地面に転がるまっちょしぃの体、そして離れた所にある井之頭五郎の体を見た。それらの周囲にバッグがある事に気づき、それらを手に取った。
ムスカはまず、まっちょしぃのバッグを開いた。バッグの中に入っていた懐中時計をムスカは手に取った。
懐中時計はまっちょしぃが息絶えた時刻を示して止まっていた。
【女子16番 まっちょしぃ 死亡】
【生存者 残り27人】
59
ムスカは動かない懐中時計を放り捨てた。続けてまっちょしぃのバッグを見たが、武器として使えそうな物は入っていなかった。次にムスカは五郎のバッグを漁った。そこからは複数個の煙玉が出て来た。
煙玉か。攻撃用の武器でないのが残念だが、中々使えるな。攪乱、不意打ち、逃走等、戦闘の補助にはなってくれるだろう。
ムスカは煙玉を自分のバッグにしまった。
そして、ムスカは立ち上がり、さやかと佐天が逃げた方向へと走り出した。
二人が逃げた先は森だった。ムスカは用心深く、周囲の木々や茂みを観察する。
ほう…これ程の木々があれば、身を隠すには好都合だな。それに不意打ちも出来る。
ムスカは手にゾリンゲン・カードを取る。息を潜め、ゆっくりと歩みを進める。
しばらく森を歩いたムスカだが、さやかと佐天の姿を見つけることは出来なかった。
くそう、逃がしたか。美樹や佐天の足ではこの短時間でそれほど遠くまでは逃げられないと思ったが――。まあいい、深追いは危険だ。事を急ぐと元も子も失くすのは、制服さんだけでいい。一段落したらこんな森、全て焼き払ってやる!
ムスカは不満げな表情を浮かべ、森から出るべく歩き出した。
そのムスカの姿を、佐天とさやかは息を殺して遠くから見ていた。
「うう…ベタベタして気持ち悪いです…」
「我慢してよ、佐天さん。これのおかげでムスカに気づかれずに済んだんだから。でも、あのムスカにもばれないなんて、これ結構使えるね。作戦変更、ステルス作戦で優勝を目指すよ!」
【女子06番 佐天涙子】
【身体能力】 C 【頭脳】 C
【武器】 アメリカンバトルドーム
【スタンス】 生き延びる
【思考】 大変な事になっちゃいました…
【身体状態】 小ダメージ 【精神状態】正常
【女子17番 美樹さやか】
【身体能力】 B 【頭脳】 D
【武器】新感覚ソース・大草原
【スタンス】 優勝を目指す
【思考】 優勝するのはこのあたしよ!
【身体状態】 小ダメージ 【精神状態】正常
【男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ】
【身体能力】 A 【頭脳】 S
【武器】 ゾリンゲン・カード、煙玉
【スタンス】 優勝してラピュタ王となる
【思考】 次の獲物を探す
【身体状態】 正常 【精神状態】 正常
60
しばらくの間走っていた獏良了はその歩みを止めた。後ろからバクラが操っている山田葵がついて来た。
山田――コイツはもう駒として使えねえ。そしてオレ様もアンテナを一本失った。だとしたら、コイツを生かしておく必要はねえな――!
バクラは携帯を操作した。
命令を受け、山田は自分の腕で自分の首を絞め始めた。
ククク…。山田を闇に葬った後は、再び駒を探さねえとな。高い身体能力の持ち主か、使える武器を持ってりゃ誰でもいい。使えねえ奴にはアンテナを刺してから、そいつ自身の手で殺せばいい。そして、阿部にやらない夫、そして転校生のやる夫――!貴様らにはオレ様の手で最高の恐怖と絶望を与えてから殺してやる!それまでは精々、つかの間の憩いを満喫しな!フハハハハハハハ!
その瞬間、一筋の青い閃光が山田を貫いた。
山田の体は宙を舞い、後方へ飛んでいった。
何ィ!?
バクラは瞬時に横へ跳ぶ。だがそれよりも速く閃光がバクラの体を捉える。閃光はバクラのわき腹を貫いた。
ぐおっ――!
バクラのわき腹から血が噴き出す。さらにバクラの口からも血があふれ出た。
バクラの体も山田と同様に後方へと飛ばされた。そしてバクラの体は地面に強く打ちつけられた。だが、バクラの体を襲う激しい痛みがバクラの意識が途切れるのを防いでいた。
遠距離からの――狙撃か!?誰だか知らねえが――やってくれるじゃねえか!
バクラは自分の隣に既に事切れた山田の体がある事に気づいた。
くっ――まだだ、アンテナがあれば――まだオレ様は負けちゃいねえ!がっ――!
地に倒れたまま、バクラは山田の首元へ手を伸ばす。それだけで、バクラの体に痛みが走る。だが、バクラは歯を食いしばって痛みを耐える。遂にはバクラの手が山田の首元に突き刺さったアンテナに触れた。バクラは力を込めて山田からアンテナを引き抜いた。
「犯人はあなたよ。獏良了」
あ――?
バクラは倒れたまま声のした方へと首を回す。そして、バクラは声の主を睨みつける。
「テメエは――うさみちゃん!」
バクラは声を荒げる。それと同時にバクラの口から血が噴きこぼれる。
バクラの体は血に染まっているが、バクラの目には生気に満ちている。バクラはまだ負けを認めてはいない。
一方、うさみちゃんは、バクラに向かって人差し指をピンと伸ばしている。うさみちゃんの目は大きく、鋭くなっている。この目でバクラの目をじっと捉えて離さない。
「もう何をやっても手遅れよ。この島では通報できない、だから――バクラ君はここで死ぬのよ」
「うるせえ!ほざきやがれ!」
バクラはアンテナを持った腕をそっと上げる。だが、名探偵のうさみちゃんはバクラのわずかな動作も見逃さない。
「その針を私に刺して、今度は私を操ろうっていうのかしら?無駄よ。バクラ君の武器の効果は既に見切っているの。タネが分かった以上、名探偵の私にそんな小細工は通用しないわ」
「ケッ、そうかい。だったら――コイツはどうだ!?」
地に伏せたまま、バクラは自分の体にアンテナを突き刺した。
バクラの体から、勢いよく金色のオーラが噴き出す。
バクラの武器、
自動操作モードに入ったバクラは全身が金色のオーラに包まれ、戦闘能力は格段に上昇している。今のバクラに意識は無く、うさみちゃんを殺すまで止まる事は無い。
うさみちゃんを殺すべく、バクラはうさみちゃんに飛びかかる。
だが、うさみちゃんは慌てない。落ち着いてひらりマントを取り出す。うさみちゃんはひらりマントを振り、飛びかかって来たバクラの体を振り払う。
バクラの体が宙を舞う。だが、自動操作モードに入ったバクラは着地を決める。瞬時にバクラはうさみちゃんへと走る。バクラの口や脇からは血がとめどなく流れ出ているが、バクラの体は止まらない。
その姿にうさみちゃんはため息をついた。
「追い詰められた犯人の行動は本当に予測不可能ね。自分の体を犠牲にしてでも私を殺そうとするなんて、普段のバクラ君からは想像できないわ」
うさみちゃんがひらりマントを振る。
それと同時に空中を青い閃光が走った。その閃光がひらりマントに当たった瞬間、弾道が曲げられる。そして閃光はバクラの体を貫いた。
閃光に貫かれたバクラの体が再び後方へと飛ばされる。バクラの体は勢いよく地面に打ち付けられる。この衝撃でバクラの体に刺さったアンテナが折れた。
バクラの体を包んでいた金色のオーラはもう見えない。閃光に撃ち抜かれたバクラの意識は、闇へと葬られた。
「バクラ君、さっき言ったでしょ?光の速度の前では――もう何をやっても手遅れよ」
【女子20番 山田葵 死亡】
【男子14番 獏良了 死亡】
【生存者 残り25人】
61
うさみちゃんは倒れた獏良了へと近づく。二度も閃光に貫かれたバクラの体からは血がとめどなく流れ出ている。うさみちゃんはバクラの死を確認した。
あらあら。これで要蔵君にバクラ君と二人も殺しちゃったわ。これで私も立派に殺人探偵の仲間入りね。でもいいの。名探偵が人を殺してはいけないなんて、ノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則でも書かれてなかった筈よ。たぶん。
考え事をしながら、うさみちゃんはひらりマントを振るう。うさみちゃん目がけて閃光が走るが、ひらりマントがその弾道を変えた。
「さっきはナイスサポートをありがとう。ベータちゃん」
うさみちゃんは閃光が飛んできた方向へ向かってそう言った。うさみちゃんは手を振るが、もう一方の手には用心深くひらりマントが握られている。
うさみちゃんが呼びかけた方向から、EM銃を手にしたベータが現れた。頬を膨らませ、不機嫌そうな顔をしている。手に持ったEM銃の銃口は、しっかりとうさみちゃんへ向けられている。
「サポートって何ですかぁ?私、貴方と手を組んだつもりなんて、一切無いんですけどぉ」
「でも結果論として、ベータちゃんは私の探偵助手としての役割を十分に果たしてくれたわ。ありがとう小林少年。普段だったら、ベータちゃんを私の助手として雇ってもいいんだけど、この島ではそうはいかないの。ああ残念ね、残念だけどベータちゃんもここで死んでもらうわ」
「へぇ~。うさみちゃん、私を殺す気ですかぁ?意気込みは立派ですけどぉ、名探偵らしく、現実を見た方がいいですよ?」
そう言うと同時に、ベータのEM銃から弾丸が放たれる。光速で撃ち出された弾丸は青い閃光となってうさみちゃん目がけて飛んでいく。
それに対し、うさみちゃんは勢いよくひらりマントを振るった。それにより、放たれた閃光がひらりマントによって跳ね返される。その閃光がベータの左腕の二の腕をかすめた。
「きゃあ!」
ベータが悲鳴を上げる。閃光がかすめた二の腕から血が流れだす。ベータは右手で傷を押さえる。
「あら?ベータちゃんの心臓を狙ったのに、狙いが外れちゃったわ。精密に狙った場所へと跳ね返すには、まだ練習が必要みたいね」
「ちょっとお聞きしちゃいますが、光の速さがどれくらいか知ってますかぁ?普通、跳ね返すどころか、反応すらできないと思うんですけど」
「およそ秒速30万キロメートル。名探偵ですもの、それくらい知ってなくちゃ務まらないわ。それに弾丸が光速でも、ベータちゃんが撃つまでには銃を構え、引き金を引くという動作があるでしょ。これは目でも十分に追える動きだから、対策も取れるわ。加えてベータちゃんの銃から放たれる閃光についても既に観察済みよ。それらの情報から閃光がどの様に飛んでくるかは予測できる。どんなに弾が速くても――飛んでくる場所が分かれば跳ね返すのは簡単よ」
うさみちゃんが勝ち誇ったように言った。
「へー、そうですかぁ凄いですね。だったら――銃を使わずにお前を潰せばいいだけだろ!」
ベータの赤紫色の瞳が青紫色に変化し、目尻が吊り上がった。口調もこれまでの穏やかなものから荒々しいものへと変化した。
ベータには二つの性格がある。普段のベータは優しい性格をしているが、気が高ぶったり、攻撃態勢に入ったりすると攻撃的な荒々しい性格へ切り替わる。この時にベータの瞳の色が赤紫色から青紫色へ変化する。一人称も私から俺へと変わる。
断っておくが、二重人格ではない。人格は一定に保っており、記憶が途切れるようなことも無い。普段はおとなしい人が運転する時に性格が変わったり、無口な人が自分の興味のある分野について語る時は饒舌になったりする事と似たものだと思って戴きたい。
ベータは瞬時にうさみちゃんへと飛びかかる。そして、ベータはうさみちゃんの顔面を目がけて蹴りを放つ。
一方のうさみちゃんはこの事も予測していたかのように、自然な動きでひらりマントを顔の前に構え、振るった。
ベータの足がひらりマントに触れた。それにより、ベータの体が宙で回転する。だが、ベータは体を打ち付ける事無く見事に着地した。ベータは後ろへ跳び、うさみちゃんと距離を取った。そして、うさみちゃんを睨みつける。
それを受け、うさみちゃんも目をさらに大きく見開き、ベータの目を真正面から見据える。
「どう?このマントは向かって来るもの、それが弾丸だろうと、生命だろうと跳ね返せない物は無いの。そして流石ねベータちゃん。サッカー部でフォワードをやってるだけあって凄まじいキックね。あんなキックをまともにくらえば、顔面がめり込んで前が見えなくなっちゃうわ」
うさみちゃんが言った。
「チッ、ムカつくぜ。でも今の俺じゃあお前には勝てねえか…」
ベータが苛立ちながらそう言った。そしてベータはうさみちゃんから離れるべく走り出した。
「あら、逃げるの?」
「うるせえ!一旦、形成を立て直すだけだ!」
そう言うとベータはさらに走る速度を上げた。
遠ざかっていくベータの姿をうさみちゃんはじっと見ていた。うさみちゃんにはベータを追いかけようという気は毛頭なかった。
「逃げたわね。でも勝ち目のない相手にはそれが正解。ベータちゃんは頭まで超次元ではないみたいね」
うさみちゃんがそうつぶやき、目から力を抜いた。
それと同時に、うさみちゃんの手からひらりマントが落ちた。
うさみちゃんは落としたひらりマントを拾おうと手を伸ばした。この時、うさみちゃんの腕にかすかに痛みが走った。だが、腕を動かせない程の痛みではない。ひらりマントを拾ったうさみちゃんは自分の腕が小刻みに震えている事を確認した。
ふう…。いくら何でも、光速の弾丸を何度も跳ね返すのは腕への負担が半端ないわね。今後の戦いに備えて、今は腕を回復させないとね。あーあ、こんな事なら普段からもっと頭だけでなく体も鍛えておくべきだったわ。バーロー並みの身体能力も名探偵には必要よね。よーし、帰ったら肉体のトレーニングも始めるわ。何かスポーツでも始めようかしら。――ん?これって死亡フラグじゃない?いいのよ、死亡フラグは死亡フラグだって言う事で死亡フラグじゃなくなるの。
【女子01番 うさみちゃん】
【身体能力】 B 【頭脳】 S
【武器】 ひらりマント
【スタンス】 頭脳を駆使して優勝する
【思考】 腕を揉んで疲労回復よ
【身体状態】 腕の疲労 【精神状態】正常
【女子13番 ベータ】
【身体能力】 A 【頭脳】 B
【武器】 EM銃
【スタンス】 優勝を目指す
【思考】 ムカつくぜ、うさみちゃん!
【身体状態】 左腕に小ダメージ【精神状態】正常
62
「ねえ見て、マルフォイ君。またレーダーに反応があるよ。この先に誰かいるみたい」
「その様だが――今度こそ仲間になってくれる人であってほしいね」
「はう…」
木之本桜とドラコ・マルフォイはレーダーで彼らの進行先に一人の生徒がいる事を確認した。そして二人は木の陰に姿を隠した。
「マルフォイ君、もうすぐ目の前を通りかかるよ」
「分かった。相手を確認するまではここで隠れていよう」
しばらくして、二人の視線の先に一人の男子生徒が姿を見せた。
鍛え上げられた肉体と魅力的な髭。
現れたのはベネットだった。
ベネットの姿をマルフォイとさくらは確認した。さくらが無言でマルフォイの方を見る。マルフォイは目を閉じて頭を左右に振った。
さくらも残念そうな表情を浮かべた。
この時、マルフォイとさくらにとって予想外の事が起こった。
二人の視線の先を歩くベネットの後ろから、もう一人のベネットが姿を現した。
ベネットの後を歩くもう一人のベネットはベネットの姿をコピーしたコピーロボット、コピーベネットである。だが、マルフォイとさくらは勿論そんな事を知らない。
「うわああああああああああああっ!!」
「ほえええええええええええええっ!!」
マルフォイの顔が恐怖と驚きに染まり、目と口を大きく見開いて悲鳴を上げた。
その隣でさくらも青ざめた顔で悲鳴を上げた。
二人は悲鳴を上げた直後、ハッとした顔で口を押え、お互いの顔を見た。その直後、二人はこの場から逃げるべく走り出した。
二人の悲鳴をベネットとコピーベネットが聞き逃す筈もない。新たな獲物を見つけたベネットとコピーベネットは満面の笑みを浮かべ、悲鳴の聞こえた方向へと走り出した。
ハーメルン学園3年β組45名 名簿
○→生存、●→死亡
● 男子01番 浅倉威
○ 男子02番 阿部高和
● 男子03番 天野河リュウセイ
○ 男子04番 泉研
○ 男子05番 オルガ・イツカ
● 男子06番 井之頭五郎
● 男子07番 剛田武
● 男子08番 相楽左之助
○ 男子09番 じーさん
● 男子10番 先行者
● 男子11番 多治見要蔵
● 男子12番 でっていう
○ 男子13番 永沢君男
● 男子14番 獏良了
○ 男子15番 ヒューマンガス
● 男子16番 日吉若
○ 男子17番 ベネット
○ 男子18番 ドナルド・マクドナルド
● 男子19番 ケニー・マコーミック
○ 男子20番 ドラコ・マルフォイ
○ 男子21番 やらない夫
○ 男子22番 やる夫
○ 男子23番 ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
○ 女子01番 うさみちゃん
○ 女子02番 木之本桜
● 女子03番 桐敷沙子
○ 女子04番 日下部みさお
○ 女子05番 古明地こいし
○ 女子06番 佐天涙子
● 女子07番 沙耶
○ 女子08番 水銀燈
● 女子09番 枢斬暗屯子
○ 女子10番 フランドール・スカーレット
○ 女子11番 ちゅるやさん
○ 女子12番 デデンネ
○ 女子13番 ベータ
● 女子14番 北条沙都子
○ 女子15番 ポプ子
● 女子16番 まっちょしぃ
○ 女子17番 美樹さやか
● 女子18番 見崎鳴
● 女子19番 ルーシー・モード・モンゴメリ
● 女子20番 山田葵
○ 女子21番 山村貞子
● 女子22番 両儀式
【生存者 残り25人】