化物語 こよみサムライ[第二話]   作:3×41

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第一話 エルザバード
001


 

 エルザ・フォン・リービングフィールド

 僕が彼女に出会ったのは、高校三年の6月上旬のことだった。

 

 この名前を聞くと、日本人ではないのか、はたまた一般的な日本人が中学二年の時分に罹患する気の毒な病の類かと思うかもしれないが、幸い彼女はイギリス人である。

 

 というか中二病なのは僕だった。それはそれとしてここで自虐的になっても気分が落ち込むだけなので話を進めよう。

 

 彼女に出会ったのは何も僕だけではない、僕が通っている私立直江津高校の生徒全員が彼女に出会っているわけで、

 つまりは彼女がこの6月上旬に転校してきたのだった。

 

 彼女が所属することになったのは僕や戦場ヶ原、羽川が所属するクラスのひとつ隣で、したがって僕と彼女の接点はまったくありはせず、

廊下を歩いているときにふと彼女の明らかに日本人とは異なる銀色がかった金髪を目にする程度だった。

 

 アッシュブロンドというのだろうか、腰まで伸びるその髪は、

ちょうど戦場ヶ原や羽川と、まぁ羽川はいつも三つあみにしているが、同じくらいの長さだった。

 だからということもあるのだろう、校則にわざわざ反発してみせようなどと考える生徒が少ないこの進学校で、髪といえば黒な人だかりの中で、彼女のアッシュブロンドの髪はまるで暗闇の中にともる蝋燭のようにとにかく目立った。

 

 

 というのが僕、阿良々木 暦(あららぎこよみ)が廊下で彼女を見かけたときの簡単な感想だった。気のせいかもしれないが僕が彼女を見たとき、ちょうど彼女も僕のほうを見ていたように思うのだけど、まぁそれはやはり気のせいだろう。

 

 思春期特有の勘違いである。もうこの時分というのは少し気立てのいい女子と見れば、何かにつけ自分に好意があるのではないかと望むあまりに、ほんのわずかな挙動であっても、それが目があったのではないかという勘違いでさえも、自分への好意だと変換してしまうのだった。

 

 ちょっと気立てのいい女子でそれである、それがいきなりこの学校に彗星のごとく現れた絶世の美女といわれても誰もが納得してしまうような異国の少女であったとすれば、それはもう自明の理というものである。

 

 少し冷静になってみればわかりそうなことだ。

 彼女はこの学校に転入してきた初日から、友達1000人できるかなという勢いで、

瞬く間に学校に溶け込んだ、溶け込んだという表現ではなまぬるい。

頂点にたったと言ったほうが的確だろう。

 彼女のことを知らない人間はもはやこの学校にはいないし、彼女を嫌っている人間も、一部の嫉妬深い人間を除いては、まぁいない。

 

 彼女、エルザ・フォン・リービングフィールドの、リービングフィールドという姓は母方のもので、本当はノイマンという姓らしかったが、そのフォンという部分は、イギリスではいわゆる貴族の称号らしく、彼女はそのイギリス貴族の中でも社交界の星であったというのだから、こんな日本の片田舎の一高校の人間たちの心をつかむなど、朝起きて寝ぼけ眼で歯を磨くよりもたやすいことなのだろう。

 

 そのイギリス社交界の星、私立直江津高校の頂点、なんだか自分の母校ながらイギリス社交界のあとに並べるのもおこがましい気がするけど、そんな彼女が、僕のようなほとんど友達もいない、特にぱっとしない、帰宅部の、こんな僕を気にかけることはありえそうにない。

 

 そう、こんな僕にわざわざ付き合ってくれる人間がいるとすればよほどの奇特者か、菩薩のような人間くらいなのだ。

 

 

 

「ほんとに私は菩薩のような人間だわ」

 

 放課後の教室で、僕が座る机の前に陣取った少女、戦場ヶ原ひたぎがそういった。

 

「学校が出した、脳が半分寝ててもとけるような宿題に苦戦してしまうようなあららぎ君に、わざわざ同情してこうして手伝ってあげてるんですもの。アララギ君、あなたは今日寝る前に私に手をあわせて三回は拝み倒さなくちゃ不敬というものよ」

 

 そういって机に開いたノートを指さして、ポイントを解説する、その彼女は、

明らかに菩薩というには不遜にすぎるので、奇特者ということになる。

 

 入学当初のある事件から、羽陽曲折を経て、ほんとうにいろんな事件を経て、

僕は今彼女とお付き合いをさせてもらっている。

 いや、日本男児がそのような奥手な物言いを言うのはやめよう。

 戦場ヶ原ひたぎ、彼女は僕の彼女だった。したがって、奇特者の中の奇特者、僕にとっては世界一奇特な人間である。

 

「それじゃあ阿良々木君、ポイントは解説したから、この問題は、そうね、5秒で解いて頂戴」

 

「グッ・・・」

 

 たとえ自分の彼女であっても、僕は今ガハラさんに宿題を見てもらっているわけだから、このような無理難題を暇つぶし程度に課されても、とりあえずはしたがうしかなかった。

 日本男児は恩に弱いのである。

 

「っていってもガハラさん。5秒って全速力で手を動かしてもそんな短時間じゃとけないだ…」

 

「はい5秒たちました。あららぎ君、あなたには失望したわ」

 

 僕の言葉をさえぎって彼女は涼しい顔でそういった。

 

「別に宿題を早く解く必要はないだろ。だいたいこんなのどうやって5秒でとくんだよ」

 

「え、それは…」

 

 彼女は思案顔になる。

 

「シュシュシュっと解けるわ」

 

「急に抽象的にしないでくれよ」

 

「じゃぁザク、ズシュっととけばいいじゃない」

 

「急に猟奇的になった!?」

 

 しかも投げやりだ。

 しかし彼女の解説は的確だったし、早く説く必要はないがとりあえず期限にまではやってしまわないといけなので、とりあえずノートの上にシャーペンを走らせていく。

 

「そうだあららぎ君、それが終わったら、帰り際にマスタードーナツにでもよりましょう」

 

「ああ、僕はかまわないよ」

 

 ん?マスタードーナツ?

 

「はぁ、せっかく私がボケてあげたのにつっこめないなんて、あなたに少しでも期待した私がおろかだったわ」

 

「自分で振って勝手に失望しないでくれよ…それに突っ込んでほしいならもうちょっとわかりやすく言ってくれ」

 

「女の子に突っ込んでほしいなんて、セクハラで訴えようかしら」

 

「そういう意味でいってねぇよ!」

 

「あららぎ君は普段から女の子に突っ込むことばかり考えてるくせに肝心なところで使えないのね」

 

「僕ってそんな変態だと思われてるの!?」

 

「じゃぁ考えてないの?」

 

「・・・」

 

「まったく汚らわしい変態だわ」

 

 しまった、一瞬迷ってしまった。

 まるで道ばたのゴミを見るようなガハラさんの視線がそこにはあった。

 というかその視線を向けられているのは僕だった。

 一応僕にだって本能と理性の区別くらいはある。

 

「僕だって思春期の健全な男子なのは認めるが一応知性のある人間だよ」

 

「あららぎ君の変態趣味を健全な男子の妄想だとはずいぶんよく言ったものね」

 

 別に僕はガハラさんの言うような変態趣味は持ち合わせていない。

 一般的な健全な男子高校生の持つ範疇の中のものだと自負している。

 

「それであのお店、今キャンペーン中でクッションがもらえるじゃない?」

 

強引に話を戻された。

 

「ああ、わっか状のクッションだろ?あのライオンのタテガミみたいなところのやつ」

 

 ちょうど月火ちゃんがほしがっていたのだった。

 たしかポイントでもらえるんだっけ?

 

「あれってほら、あららぎ君の頭につけたらとてもよく似合うと思うのだけれど、二人で通えばすぐもらえるわ。私も協力を惜しまないと約束しましょう」

 

「勝手に僕が乗り気なことにしないでくれよ。それに僕に似合うって絶対悪い意味で言ってるだろ」

 

「あら、そんなことはないわ」

 

 ガハラさんは意外そうに驚いた風な表情をした。

 もしかして本当に僕に似合うと思っているのだろうか、僕にはよくわからない感性だ。

 

「でもライオンモードになったときは私の近くを歩かないでね」

 

「やっぱり悪い意味じゃないか!!」

 

 というかライオンモードってなんだよ。僕にそんなモードはない。

 まぁいいや、とりあえずさっさと宿題をやってしまおう。

 

 僕は机に向かってカリカリとシャーペンを動かし続けた。

 教室の窓から夕日が入ってくる。

 ちょうど教室の入り口から見たら僕たちの姿は黒いシルエットのようになっているかもしれない。

 

「そういえば、彼女、いまやすごい人気よね」

 

 戦場ヶ原がポツリとつぶやいた。

 

「ああ、エルザ・フォン・リビングフィールド、さんのことだろ?すごいよな。もうファンクラブまでできそうな勢いらしいぜ。聞いたことはあるけどさ、まさか自分の学校に誰かのファンクラブができそうになるなんて思わなかったよ」

 

「あら、私、ノイマンさんのことだなんて一言も言ってないわよ」

 

 そうだった。

 ガハラさんがこちらを見ているのがわかる。

 僕はノートを見ているから直接見てはいないけど。

 しかし今学校で話題になっていて、大人気で、そんな彼女といえば、誰だってエルザ・フォン・リビングフィールドの名前を挙げるのではないだろうか。

 

「あららぎ君もやはりああいう女性が好みなのかしら?ああいう金髪で、見目麗しくて、ボンキュッボンで、バインバインな、ああいうタイプ」

 

 戦場ヶ原が両手を胸のところにやってバインバインと揺らしているのがわかる。

 なんておっさん趣味なジェスチャーだろう。

 いや、僕はノートを見下ろしてるんだけど。

 

「そんなことはないよ」

 

 とりあえず否定しておく。

 

「かわいいというか、綺麗だと思うし、学校中が夢中になるのはわからないでもないけど、ほら、やっぱりクラスが違うしさ、リビングフィールドさんが光とすると、僕なんてまぁ影みたいなもんだし、まるで別世界って感じで現実感がないっていうかさ」

 

「それはあららぎ君が根暗で卑屈で友達のいない日陰者だから彼女と引き合わないととってもいいのかしら?」

 

「どんだけ僕は自虐的なんだ」

 

「それにあららぎ君は決して影なんかじゃないわ」

 

「そうかな。別になぐさめてくれなくてもいいんだぜ」

 

 現に僕に学校で友達がほとんどいないっていうのも事実なんだし。

 正当化というわけじゃないけど、それは僕個人が抱える事情と、自分自身その必要があると思わないというのもありはするんだけど。

 

「あえて言うなら無ね」

 

「影ですらない!?」

 

 余計に悪かった。

 

「彼女、単に社交力が尋常じゃないだけじゃないのよ。この前の学期テストだって、羽川さんとタイでトップだったわ」

 

「へぇ、あの羽川と同点なんて、頭までいいんだな」

 

 羽川翼、委員長の中の委員長、委員長界の頂点に立つ存在だ。

 そんな世界があるのかはしらないが、僕たちのクラスの委員長で、

学校の規則を完全に遵守する彼女はその頭脳も明晰で、

入学してからこれまであらゆるテストというテストで

トップを独走し学力において孤高にして絶対の存在だった。

 

 普段からそうとう勉強しているのだろうが、

先日授業で聞いたことはほとんどそのとき頭に入っているといっていた、

 なんていう理解力と記憶力だ。

 

 まぁそれはそれとして、そんな学生超人羽川翼に並走できるとは、エルザ・フォン・リビングフィールド恐るべしだ。

 

「それだけじゃなくて、スポーツまでできるそうよ」

 

 ガハラさんは机にひじをついてそういった。

 特に嫉妬のような響きもなく、スーパーで大根が80円で売ってたのよ、と

同じようなニュアンスだ。

 戦場ヶ原もテストでは毎回上位10以内に確実に入っている、これはもっているものの余裕というものなのだろうか。人間がみんなこうなら世界ももう少し平和なのだろうが、

 しかしそれだと僕が存在できるスペースもなくなりそうだから悩ましい。

 

「ああそういえば校庭で体育の授業をしてるとき見かけたよ、彼女の金髪は目立つからね」

 

 エルザ・フォン・リビングフィールドは運動性能まで突出しているようで、

 いろんなクラブで引っ張りだこになっているらしい。

 おまけにヴァイオリンの腕まで相当なものらしかった。

 天は人によっては二物も三物も与えるらしい、実際のところ、その本人の努力がまったく介在していないかのようなそのものいいはあまり好きではなかったのだけど。

 一般論として、もはや天才、ギフテッドと言わざるをえないような人間は存在するといわれている。

 

 イギリス社交界の星にして私立直江津高校の話題の中心、彼女、エルザ・フォン・リビングフィールドは僕のような一般人から見ればまさしくギフテッドといってもいいのじゃないだろうか。

 

 

 

 僕は話しながらカリカリとシャーペンを動かし続けた。

 ええと、ここはグラフ化して閾値の最大値と最小値で評価すればいいのか?

 

 それにしてもわからないのは、そのイギリス社交界の星が、

なんだってはるか極東の、それもその中でも片田舎の中にポツリと立っている

この私立直江津高校などに転入してくることになったのだろうか。

 彼女ならホームのイギリスで華々しくしかるべきルートをひた進めるはずなのである。

 まぁそんなことを極東の片田舎でつつましく生きている僕が考えても仕方のないことか。

 

「ほら、あららぎ君、また考えてる、あのイギリス少女」

 

 戦場ヶ原が窓の外を見ながらいった。どこか遠くでカラスが鳴いているのが聞こえた。

 

「エルザ・フォン・ノイマンさんのこと」

「エルザ・フォン・リビングフィールドのこと?」

 

 違和感。

 僕の耳はどうかしたのだろうか、ガハラさんの声がダブって聞こえる、

いや、ダブってるなら少なくとも同じ言葉が聞こえるはずだが、

その言葉も途中で違っている。

 

 僕と戦場ヶ原はほぼ同時にはっと声のするほうを見た。

 

 そこには、腰まで伸びる金髪、僕を見下ろす青い目、均整のとれたプロポーション、イギリス社交界の星、エルザ・フォン・リビングフィールドの姿があった。

 

「私はノイマンより、リビングフィールドって苗字で読んでもらえるとうれしいよ。戦場ヶ原さん」

 

 あっけにとられる僕をよそにリビングフィールドは言った。

 

「そう?ではお言葉に甘えて、リビングフィールドさん」

 

 ガハラさんが言った。少し防衛モードになっているような気がするのは僕の気のせいだろうか、まぁ彼女はここ最近まではずっとこうだったから、これが自然と言えば自然なのかもしれない。

 

「ありがとう戦場ヶ原さん。あ、でも私のことはエルザって読んでくれていいわよ。だってリビングフィールドって長いでしょう?私は気に入ってるんだけどね」

 

 そういって彼女は僕のほうを見た。

 深い青い瞳にハッとしてしまう。

 彼女が僕を見ながらその整った唇をひらいた。

 

「あなたもエルザって読んでくれていいわ。阿良々木 暦くん」

 

「え、あ…」

 

 何も言い返せなかった。彼女、エルザは人をよせつけない雰囲気が、微塵もなかった。

 異国から来た外国人であるにもかかわらず、これは僕自身驚くべきことだったんだが、懐かしさのようなものまでこのとき感じていた。

 

「わかったよ。エルザさん、ありがとう」

 

 何をお礼を言っているんだ僕は。

 このときの僕は、彼女の風変わりな容貌と、それにまったく似つかわしくない親しみやすさにどうも完全に呑まれてしまっていた。

 

 その当人は、泡を食う僕をよそに、僕とガハラさんが囲んでいる机を見下ろしていた。

 彼女の金髪が少し彼女自身の顔にかかって、それがまた目を引いてしまう。

 

「阿良々木君は宿題をやってたんだね。それで戦場ヶ原さんが宿題を手伝ってあげてたんだ」

 

「ええ、そうよ」

 

「戦場ヶ原さんは優しい人なのね」

 

「ありがとうございます」

 

 うわぁ、ガハラさん、とりつくしまもない、という感じだ。

 もともと彼女は人見知りなほうなので、こんなこと本人にはいえないが、基本的にこんな反応なのだ。

 しかしむしろそれは慈悲といってもいいかもしれない。

 ガハラさんの言葉責めは心に刺さるんだぜ。

 逆に最近なんだか悪くない別の感情が呼び起こされる気さえする。

 いやだ、僕はティーンのうちからそんな感情に目覚めたくはない。

 

「阿良々木くん、私も手伝ってあげようか?ちょうど今手がすいてるし、

私と戦場ヶ原さんがセコンドについたらすぐ終わるわよ」

 

「え、・・・いいのか?」

 

 ガハラさんとエルザさん。ともに学年テストで上位10位以内の二人である。

 その二人に宿題を見てもらうなど、野良犬に三ツ星レストランのフランス料理フルコースが振舞われるくらい、それはもうどうしようもないほどもったいないことのように思われた。

 

「ごめんなさいエルザさん」

 

 戦場ガハラが言った。

 見ると、彼女は席を立って、右手に鞄を持っていた。

 

「私たち、そろそろ帰宅する時間なの、ねぇあららぎ君?」

 

「あ、ああ」

 

 とりあえずあわせておく、ガハラさんの目が怖いし。

 そんな時間だったかはわからないけど、まぁ戦場ヶ原がそういうならそうなのだ。

 

「あら、それは残念ね」

 

 小さくため息をつくエルザをよそに、

 戦場ヶ原は僕の隣にたっていった。

 

「それじゃぁあららぎ君。校門前で待っていてくれる?私はお花をつんでからいくわ」

 

 エルザが頭の上にハテナを浮かべるように疑問の表情をしている。

 お花をつむとはつまりトイレにいくということなのだが、イギリスから転入してきてすぐの彼女にはそこらへんの語彙はまだないようだった。

 

 戦場ヶ原が僕の耳元に顔をよせてささやくようにいった。

 

「お花っていってもあっちの花じゃないわよ」

 

 わかってるよ!ていうかその情報って今いるのか!?

 そんなことを表情で主張している間に、彼女は教室の扉を出て行ってしまった。

 

 教室には僕とエルザさんだけが残されてしまった。

 僕もノートを鞄にしまって、鞄を右手に持って席を立った。

 

「それじゃぁ僕もいくよ。エルザさん、ありがとう、気持ちだけうけとっておくよ」

 

 エルザさんは、僕がそういうと、まるで花のように可憐に笑った。

 僕はその表情を見てハッしてしまった。

 それはそれはもう、可憐な、綺麗な、美麗な微笑みだった。

 イギリス社交界の星と言われる彼女の、人々の心をつかんではなさない、そういう笑みが僕に向けられていた。

 

 彼女は笑い、窓から教室に入る光に彼女の綺麗な髪を金色に輝かせて、その整った唇を開いて、ゆっくりと、確かな口調で言った。

 

 

「阿良々木くん、あなた、私の奴隷になりなさい」

 

 

 それが、僕、阿良々木 暦と、

 彼女、エルザ・フォン・リビングフィールドとの

 最初の出会いだった。

 

 

 

 

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