化物語 こよみサムライ[第二話]   作:3×41

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「それで、どうする気なの阿良々木君」

 

 僕はエルザと彼女の屋敷を訪れる約束をした後、戦場ヶ原にことの成り行きを説明して、とりあえず戦場ヶ原の家に来るように言われ、言われるがままに戦場ヶ原の家を訪れて、今はちゃぶ台を囲んで正面に戦場ヶ原が座っていた。

 

「ずいぶんと回りくどい手を使ったものね、あの英国娘の目的はなんなのかしらね」

 

「それは僕にもわからないよ」

 

「彼女の屋敷に行くのでしょう?」

 

「そのつもりだよ」

 

 戦場ヶ原ははぁとため息をついた。

 しかしながら、その選択肢しかない。向こうは火憐ちゃんと、神原の身柄を預かっている。ならばはなから僕に拒否権はない。

 

「でも阿良々木くん?行ってどうするの?ほかに誰もいない屋敷に二人きりで」

 

「そうだなぁ。とりあえず言って、交渉してみようと思う。エルザの目的がなんなのかわからないし、それにもよるかもしれないけど。少なくとも神原は取り戻せるようにするつもりだよ」

 

「エルザ?あらあら、仲がよろしいこと」

 

「あ、いや……」

 

 エルザの目的。それは今はわかりかねた。彼女は僕に奴隷になれと、そう言っていたが、それが意味するところのものはなんなのだろう?そうすれば二人は返してもらえるのだろうか?

 

「でも阿良々木君。交渉するのはそれでいいと思うけれど、成立するにせよ決裂するにせよ。交渉が必ず交渉で終わるとは限らないわよね。端的に言うけど、暴力ごとに発展することだってありえるわよ」

 

 戦場ヶ原は、冷静な目でもって僕を見て続けた。

 

「そのときは勝算はあるの?」

 

「勝算、かぁ…… 僕はその手のことに関しては完全に素人なんだよなぁ……」

 

 言って畳に両手をつきながら、先日の廃工場のことを思い出す。

 エルザはその身に西洋七大怪異である金光鳥、ヴィゾープニルを宿し、光と化したその体は光速、光の速さで動くことができる。

 その戦闘能力は、正直戦車だろうが戦闘機だろうが勝てるとは思えなかった。

 

「ちょっと勝てる気がしない、けど。その道のプロなら何かわかるかもしれない」

 

 そう、忍野メメのような。しかしやつは今この街にいないし、連絡を取る術もない。おまけに人質のようなものまでとられて時間もなかった。

 忍野メメのような、その道の、対怪異のスペシャリスト。

 それにはもう一人、正確には6人の心当たりがある。しかしそのうちで連絡がつくのは一人だけだった。

 

『はい。ノースホワイトですが?』 

 

 僕が耳に当てた携帯電話から、条件反射で背筋が凍りそうな声が返ってくる。

 

「よぉフルエちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今時間いいかな?」

 

 電話越しにたずねると、電話の向こうの嫉妬女、フルエ=ノースホワイトは「あー」とけだるそうな声を出して少し考えるようにした。

 

『おーい!ペルシド!ちょっと来い…… いいから来い!!』

 

 電話越しに叫び声が聞こえる。それからしばらくしてボソボソ何か聞こえたが、その声まで判別することはできなかった。しばらくしてフルエの声が返ってくる。

 

『あぁ、阿良々木くんだったなぁお前。今戦場ヶ原ってやつの家にいるようだが、浄化してほしいにしてはまわりくどいことするじゃないか。えぇ?今すぐ行くからまってろ』

 

 やばい。殺気MAXだった。どうも思った以上にフルエちゃんと呼ばれることが気に障ってしまった。

 

「すまんノースホワイト…さん!エルザがそう呼んでるって言ってたからちょっと出来心だったんだよ!!」

 

『おーぃヴァレリアァ~。ちょっと怪異ころしてくるわー』

 

 携帯電話の向こうから不吉な内容が聞こえてくる。やばい殺されてしまう。どうにかしないと。

 

「ちょっと待て!…… そうだお前らエルザと懇意にしたいんだろ!? 僕を殺したらその目的から遠のくことになるぞ!! いいのか!?」

 

 あんまりなはったりだった。

 しかし携帯電話の向こうでしばらく沈黙があったかと思うと

 

『そういえば、お前はミスノイマンの気に入りだったか。ああ妬ましい。なにか用件があるとか言ってたな? さっさと話せ』

 

 どうやら僕を浄化する気はなりをひそませたようだ。

 対怪異の専門家である彼女に尋ねる。

 

「それなんだけど。そのエルザ・フォン・リビングフィールドと、僕が1対1で戦ったとして、どうかな、僕に勝ち目っていうのはあるかな?どんな方法でもいいんだけど」

 

 携帯電話の向こうでしばしの沈黙。

 僕の目の前では戦場ヶ原が僕を見つめている。

 

『あのな阿良々木君』

 

 フルエが携帯電話越しに答える。かわいた声である。

 

『わかりやすく説明するが、もし私とお前が戦ったとして、1対1で私の圧勝だ、それは知ってるだろう?お前が100人で1対100でも私が余裕で勝てる』

 

 先日の廃工場での出来事を思い出す。僕はフルエの魔女髪を前に、ひたすら一方的に殺されるだけだった。一瞬で2、3回致命傷をもらったことをおぼえている。

 

『その私が、信じられないことだが七大罪の一角である魔女髪のフルエが、ああ妬ましい、私が100人で束になってもミスノイマンには傷ひとつつけることもできずに瞬殺されるだろうよ』

 

「あ、そう」

 

『そういう奇跡みたいな存在なんだよ、ヴィゾープニルを宿したあのミスノイマンは。いいか、今度ミスノイマンにあったら私がお前によくしてやったことをよく言い含めておけよ』

 

「あ、うん」

 

 なんか必死だなこいつら。

 まぁ確かに、1万人以上いるエクソシスト集団をたばねるらしいこいつらが必死になる価値は、あるのかもしれないけど。

 

『そういうことだ。用件はそれだけか?』

 

「ああ、うん。一応聞いておこうと思ったんだよ」

 

『ところでお前、この電話番号をどうやって入手した?』

 

「それなら学校の連絡網だよ。一応同じクラスだからな」

 

『チッ。じゃぁ電話切るぞ。じゃぁな』

 

 それで通話は切れてしまった。

 電話をはなすと、何も言わずに僕のほうを見ていた戦場ヶ原が相変わらず僕のほうを見つめていた。

 

「どうだったのかしら阿良々木君」

 

「それなんだけど、専門家に意見を仰いだ結果、絶対に交渉で終わらせるという結論に達したよ」

 

 その後、僕は戦場ヶ原と少し話して、その後ひとりで戦場ヶ原の家を出た。

 家を出ると、家の前の道路に一台の黒塗りのリムジンが止まっており、その前に正装をした老人が一人たっていて、僕に向かってうやうやしく頭を下げた。

 

「阿良々木暦さまですね。エルザお嬢様がお屋敷でお待ちです。どうぞこちらに」

 

 その人は先日エルザにじいやと呼ばれていた老人だった。

 彼があけた車のドアに僕は礼を言って乗り込んだ。

 そのこの街にはいささか場違いの黒塗りのリムジンは僕を乗せるとすぐにこの街の北西の屋敷に向かって静かに走りだした。

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