魔法少女リリカルなのはvividー青年の物語・・・・・の後の物語 作:Rainーのち大洪水
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では続きです。
歓声沸き立つ会場、耳を塞いでも意味が無さそうな音量がそこら中に響き渡る中
俺は周りの音が一切聞こえてこない感覚に陥っていた。
思考が定まらない、整理できない、その原因は言わずもがな目の前の二人だった。
しっかりと此方を見ている二人、言わずもがな「社会復帰は絶望的」と言われた精神疾患、廃人が入れさせられる隔離病棟に入っていた二人だ。
実際にあって同情しなかったと言ったら嘘だ、助けたいって独り善がりな気持ちになった。
・・・・でも、何も出来なかった、出来ずにただただ、悪化の一途を辿るのをただ見てることしか出来なかった。
俺には何の力もないから。
「・・・・・初めまして、かな?カズマさん」
「・・・・あっちでは随分お世話になりました、カズマさん」
その二人が正常な状態で目の前にいる。その事実が余計に言葉を詰まらせた。
なのは「・・・・・カズマ君?」
フェイト「・・・・・・」
なのはさんとフェイトさんも俺の存在に気付いたのか、レントさん達と俺を交互に見てくる。
安堵、心配、驚愕、混乱、様々な感情に苛まれて口を開くことも出来ず、レントさん達の言葉に返事すら返せない事が、今度は自分に対して煩わしい思いがわいてくる。
でも・・・・
カズマ「・・・・・った」
どうしてこんなところに!?体は大丈夫ですか!?言いたい事はそれこそ山ほどあった。
カズマ「・・・・・・か・・・った」
けれども、俺は考えた言葉より先に違う言葉を口にしていた。
カズマ「━━━━良かった」
ただ単に「助けられない人が」助かった事に対する言葉、治って良かった、これから大変な人生が待ってるだろうがともかく
カズマ「本当に、良かった」
俺は頬を伝う何かを自覚しながらも、関係ないと言わんばかりにそう言った。
ーーーーーー
なのは「カズマ君・・・・・」
愛娘が「お兄ちゃん」と慕う青年が溜まった感情を吐露するように「良かった」と呟き続ける。
カズマはいつも堂々としていた。知っていることはあまりにも少ないけども、「あぁ、この子ならヴィヴィオを任せても全然問題ないなぁ」と思わせられる何かを持っている青年だと、以前の強化合宿の時に感じた。
でも余りにも自分は彼を知らなすぎたのかもしれない。
なのは「(そうだよね、カズマ君だって人なんだよね)」
皆に慕われる姿、場を盛り上げられる姿、時にカオスに引きずりこむ姿、 たった数日だけどいつも中心にいたカズマを自然と「何でも出来ちゃう子」と思い込んでいて、何があっても悠々と受け入れちゃう「すごい子」なんだと、なのはもフェイトも・・・・一部を除いた皆がそう思っていた
確かにそれは合っているのかもしれない。
フェイト「っ・・・・・」
フェイト
隣で親友が息を飲み込み目を見張っていた。それほどまでに私達は彼を知らなかった。
━━━カズマは泣いていた。
事情は知らないけども、「良かった」と安堵するカズマ、しかしそのなかに僅かながら「罪悪感」や「後悔」、「自己嫌悪」が入っているのがなのはにもフェイトにも分かった。
ぐしぐしと乱雑に目元を拭き。困惑するイオとレントに向かって優しい笑顔を見せて「はい、こんにちは、そして初めまして」と言った。
なのは「・・・・・・・」
当然だがカズマは、どこまでも人だった。
フェイト「カズマは強いね、皆が慕う気持ちも凄く分かる」
親友が呟いた一言になのはは自然と頷いていた。
カズマ「━━まぁ、話したいことも聞きたいこともあるけど今は試合を観ませんか?」
カズマはそう言ってリングに目を向ける。
なのはも「あっ」と言っていそいそとリングに目を戻す。
カズマ「━━━親友と妹分が今、戦ってるんです」
ーーーーー
ミカヤが動く、先程とは全く違う攻撃優先の攻めの立ち回り。先のセイクリッドディフェンダー、確かに厄介だが要はヴィヴィオの反応速度を越えれば良いだけの事
そう当たりを付けて、居合刀特有の間合いの広さを利用して動き続け四方八方から斬撃を叩き付ける。
ミカヤ「(そうは上手くいかないな)」
内心苦笑し、今も構えて此方を見ている再び変身身体強化を施したヴィヴィオ、そして姿は見えないがセイクリッド・ハートを見据える。
このヴィヴィオとクリスがまぁ手強い。
ヴィヴィオはミカヤの動きに振り回されつつもちゃんと反応して「セイクリッドディフェンダー」で防いでいるし、クリスはヴィヴィオが反応できない攻撃を障壁で防ぐ。
そしてミカヤの僅かな隙をついてカウンターを返してくるのだ。
ミカヤ「(若干の倦怠感が出始めてる、流石に飛ばしすぎたかな?
━━━しかしヴィヴィオちゃんもそろそろ魔力がキツいと思う」
セイクリッドディフェンダー、確かに無敵と言っても過言ではない強力な防御魔法だ。
━━━だからこそ、「魔法」だからこそ欠点が生じる
セイクリッドディフェンダー、その正体は防御魔法、当然魔力は消費される。部分展開だから消費される魔力は微々たるものと思うかもしれない、だがそれは大きな勘違いだ。
ミカヤ「(部分展開だからこそ、一転集中型だからこそ結構な魔力を消費する。何せ私の斬撃をかわすのではなく防いでるのだから)」
強打者
ミカヤはミウラのようなハードヒッターではないが、重心の乗せ方、踏み込みの動作、呼吸、振り抜く速度、振り切る速度、晴嵐の切れ味を生かしきる事で常に最高最速の一撃を産み出してきた。
それに未完全とはいえ、カズマから教わった「エクシード」最初はてんでダメだったが、それでもカズマ指導の元、「少し」なら見に纏い身体能力の底上げに成功した。
━━━故に全力のミカヤの一撃は一発が、砲撃魔法を越える一撃と成っている
それを無傷で済ませられる強度の障壁を展開しているのだ、それも何十回も
相当の魔力を使っているだろう。
そしてその推測は━━━
ガッ!
ヴィヴィオ「っくぅ!?」
当たっていた。
ヴィヴィオの張った障壁がミカヤの斬撃を通してしまった。
高町 ヴィヴィオ
LIFE
14100→8200
ヴィヴィオ「っ何で・・・・━━━っ!」
視界の端で晴嵐の刃が一瞬煌めいたのを確認したヴィヴィオは本能に身を任せ、バックステップでそれをかわす。
死角からの奇襲をやり過ごしたヴィヴィオはそのままさらに後退しようと足にちからを入れ
ヴィヴィオ「!?」
━━━後ろに下がると同時にミカヤも同時にヴィヴィオへ距離を詰めていた。
ヴィヴィオ「(━━動きが読まれて・・・・かわせない!?)」
ミカヤ「っシ━━━」
呼び動作を感じさせない程の抜刀でヴィヴィオに一太刀させようとして
『ここで1R終了です!』
1R終了のゴングが鳴り響いた。
ミカヤは、静かに一礼して自身のセコンドの元へ歩いていった
ヴィヴィオ「・・・・・」
最後の一太刀、あれはかわせなかった・・・
ヴィヴィオは背中に張り付いた嫌な汗を自覚しながらも、ミカヤが去っていた方向をじっと見ていた。
ヴィヴィオ「・・・・・・」
だらんと下げていた両手の拳を握りしめながら。
ーーーーー
ミカヤ「・・・・・・・」
「し、師範代?大丈夫ですか?汗が尋常じゃ━━━」
ゆっくりとした足取りで静かに戻ってきたミカヤに安堵の息を吐く門下生
試合は一見するとミカヤの優勢であり、実際にそれは間違っていなかった。
━━━しかし
ミカヤは用意された椅子に近づくなり、ドカッと乱暴に座り、パイプ椅子の脚が僅かに軋む、ギョッと目を見開く門下生等など気にしてないようにスポーツドリンクの蓋を開けて一気に煽る
ミカヤ「ング・・・・ング・・・・」
一気に大量の水分を含んだからか、飲み口の端からいくらか溢れて、ミカヤのBJの胴着へと首を伝って落ちる
どこか妖艶な姿に男子の門下生が生唾を呑み込んだ。
「ご、ごくり・・・・」
「死ね」
「!?」
同じく門下生(女子)が間髪入れずに言った辛辣な言葉にビックリする門下生を横目に一気にスポーツドリンクを飲みきったミカヤが思いっきり息を吹き返した。
ミカヤ「っぷは・・・・・・」
甲斐甲斐しく汗を拭ってくれた門下生に「ありがとう」と述べてミカヤは楽しそうに破顔した。
ミカヤ「いやぁ!ヴィヴィオちゃん強いなぁ・・・この状態の私にあそこまでついてくるとは・・・本当に恐れ入った、お陰様で疲労困憊だ」
背もたれに身を完全に任せて休むミカヤの姿に門下生はキョトンとして、苦笑いを浮かべた。
「というか師範代!何ですかあの動き!前のミウラ選手の時もそうでしたけどいつあんな凄まじい動きを・・・・」
ミカヤ「うーん・・・・まだ企業秘密かな?それにこの技術は確かに人間の「可能性」を広げるけど、扱いなれてない身では手痛い「しっぺ返し」がくる」
「それが、今の師範代の「休みなしで2週間ぶっ通しで仕事したオッサン」みたいな格好なんですね?」
そんな細かい例えをぶっ混んだ男子門下生にミウラと女子門下生から殺気が籠った視線をぶつけられる。
「ヒィッ!?」と尻餅をつき涙目になる男子門下生にミカヤが俗にいう「口元笑って、目笑わず」の状態でゆっくりと立ち上がる。
ミカヤ「・・・・ふふ、そうか私は嬉しいよ、そうやって「稽古もって厳しくしてちょんまげとったら只のハゲ」アピールしてくれるなんてね・・・・
期待に応えなくてはな」
この瞬間、男子門下生の全身筋肉痛フルコースが決まったテーマは「限界を越えろ!」で決まりだろう。
「師範代、私も天瞳流の技のじっけん・・・実験体が欲しかったんです」
全く言い直していない門下生とミカヤが握手している光景は男子門下生を
「・・・・・・・・」
白目気絶系男子に仕立てあげた。
ミカヤ「(・・・・ヴィヴィオちゃんはあれでしっかり学習するタイプだ
━━━恐らく第2Rはキツいだろうなぁ)」
ーーーーーー
ノーヴェ「セイクリッドディフェンダーを過信し過ぎだ馬鹿」
ヴィヴィオ「うぅ、返す言葉もございません・・・・」
ノーヴェ達の元へ戻ってきたヴィヴィオに対しての第一声にヴィヴィオはしゅんとなり、ウェンディは苦笑いだ。
ノーヴェ「・・・・まぁ、コロナ同様説教は後だ、反省会含めてな
━━━━で?どうだった?」
困ったような、怒ったような、そんな顔をしていたノーヴェが纏う雰囲気を真剣なそれに変わったことにウェンディは自然と息を飲む。
しかしヴィヴィオは全く動じず言葉を返した。
ヴィヴィオ「うん、速いし、重いし、巧い、コンタクトモード込みのクリスのパックアップが無かったら、最初の段階で5発目にはヤバイの貰ったと思う」
無言で続きを促すノーヴェにヴィヴィオは続けた。
ヴィヴィオ「でも、最後の踏み込みからの一太刀、あれを除いたら動き自体はすこしづつだけど精細さにごく僅かに欠けてきていたし、速さも絶対に見切れないほどでは無かった」
ノーヴェ「よし満点」
ウェンディ「へ?」
難しい顔を崩して柔らかい表情を作るノーヴェにヴィヴィオは頷く。
ノーヴェ「いいか?お前が観察して感じ取った事に間違いはない、確かにあのミカヤちゃんの技術は凄まじい、遠目に見てもあたしらじゃ目で追い付くのが精一杯だった。」
ウェンディ「え?私は見えなかった━━━ぐふぇ!?」
ノーヴェの言った言葉に異を唱えようとしたウェンディが「黙ってろ」という意思がたっぷり詰まったノーヴェの肘鉄に膝をついた。
「オーバーなやっちゃな」と言わんばかりにあきれ顔を見せるノーヴェに「ひどいっす」と涙目で訴えるが無視される。
ノーヴェ「前のミウラ戦で見た通り、ミカヤちゃんがあれを使うと程度の差はあれど疲労感が著しい、多分扱い慣れてないからだ━━」
ノーヴェ、ヴィヴィオ『だから、次ラウンドからは使用を控えてくる』
二人同時に同じ言葉を言い終えた、ヴィヴィオは笑みを浮かべ、ノーヴェは頷いた。
ポカンとしているウェンディを他所にノーヴェが続ける。
ノーヴェ「でも、要所で使ってくると思う・・・・弱いところをついてけばクロスレンジに分があるお前に有利だ」
ヴィヴィオ「オス!」
そう力強く応え、リングに戻っていくヴィヴィオを見送るノーヴェ。
━━━しかし突破口を見いだしたにも関わらずその顔は難しいままだった。
ウェンディ「ノーヴェ姉?」
ノーヴェ「・・・・」
━━━━━ミカヤちゃんの恐い所はその居合術もあの速さもそうだけど本当に恐いのは
ノーヴェ「気を付けろ」
「先読み」だ
誤字、指摘などがございましたらよろしくお願いします。