人類は壁の向こうに衰退しましたが、人魚はよく釣れます。(完結)   作:ダブルパン

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宗教とむろみさん ☆

「この世が平穏に保たれていたのは全て壁様のおかげなのです。壁様が我々を外敵から守ってくれたからこそ、今まで平穏でいられたのです」

 ウォールローゼ南部。

 神聖なる壁のすぐ傍で、ウォール教のニック司祭は十数人の信者たちに説教をしている真っ最中だ。

「壁は今現在、海という驚異に晒されています。確かに海からは塩が採れます。魚も採れます。我々に様々な恵みを与えてくれます。しかし忘れてはなりません。海とは壁の向こうの存在なのです」

 首からネックレスをぶら下げた信者たちはニック司祭の言葉に耳を傾けている。

「海とは恐ろしい巨人どもと同じ壁の向こうの存在なのです。ですから壁の向こうから来た人魚もまた我々の脅威なのです。忘れてはいけません。あの優しい顔の人魚も巨人と同じ外の存在であることを……なので」

 そこでニック司祭は言葉を切り、ちらりと信者たちの間を見た。

「そこの人魚。何故ここに居るのですか!?」

「え、あたし!?」

 ビシィ!! と指を指され、驚くむろみさんにニック司祭は舌打ちした。

「この邪教の徒よ! 今すぐここから出て行きなさい!」

「なんでアタシが出て行かなきゃならんとね! 善良な宗教つったら普通来るもの拒ます去る者追わずっちゃろが! 断固人種差別はんたーい!!」

 涙目でぴぴぴーと笛を吹きながら拳を上げるむろみさんを、周囲に居た信者たちはまぁまぁまぁと宥めた。

「むろみちゃん安心して。私たち、貴方たちとあったばかりで存在的にまだ容認されてないだけよ」

「そうだよむろみさん。大丈夫だよ。皆にはこれから少しずつ解ってもらえば良いんだよ」

「あの、司祭様……むろみさんは良い子なんですよ? 我々が飢えている時に食べ物を与えてくれた壁様からの使者じゃないのですか?」

 まさかの信者たちの擁護に、ニック司祭はぐぬぬという顔をしながらも深呼吸をして心を落ち着けると咳払いをする。

「皆さん、惑わされてはいけません。あどけない顔をしながらも、その人魚は邪教の徒です」

「なんで!? アタシ別に壁に悪いことしとらんっちゃん!!」

 むろみさんと共にそうだそうだと信者たちが意義を申し立てると、ニック司祭はくいっと親指を壁に向ける。

 壁の下には、兵士たちが壁の上で釣った魚の食べカスやら酒盛り後の空の酒瓶やら、焼いた後の燃えカスや壊れた釣針、釣り糸等のゴミが大量に落ちていた。

「壁様を汚す者の、どこが邪教徒じゃないと言うのですか?」

 見下したように鼻で笑うニック司祭に、むろみさんはぐぬぬぬぬと歯ぎしりをする。

「ちくしょー!! 覚えてろよー!!」

 そして、むろみさんはその場からダッシュで去って行った。

 

 

 

 ☆   ☆   ☆

 

 

 後日

 

 

「はいはーい!! ゴミは持ち帰ってゴミ箱へ捨てること!! ジャン! ゴミ捨てない!!」

 壁の上では、ゴミ袋と火バサミを携えたむろみさんが大声で兵士たちに向かって叫んでいた。

「なんだ? むろみさん。突然美化に目覚めたのか?」

「何か、ウォール教の司祭を見返してやるって言ってるらしいよ?」

 コソコソ話をする駐屯兵団。その近くではポイ捨てをした兵士がむろみさんに尻を叩かれている。

「あいたぁ!! 火バサミで叩くなよ!?」

「ポイ捨て禁止ー!! さっさと拾う!!」

 アグレッシブにゴミ拾いをするむろみさんに、兵士たちは肩を震わせた。むろみさんは結構力が強いのだ。

「怖いな」

「ああ。俺達も今後は気を付けよう……」

 その後、壁の周囲にゴミのポイ捨ては少なくなったそうな。

 

 

 

 

 人類は今日も壁の中

 




遅くなってしまって済みません!! やっぱり某所やピクシブと全部同じというのも申し訳ないので、短いですがちょっぴり新作です。今後もネタが出来次第、短いのを挟むかもしれません。
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