朝日が昇り切り、いよいよ出撃の時が近づく。
私と睦月ちゃん、そしてオルガさんはその為の待機所へ向かっています。
そうだ、丁度いいから先程触れないでおいた疑問を解消してみよう!
「…あの~、オルガさん?」
「あ?何だよ」
凄く寝起きの悪そうな顔で反応されてちょっと怖い。
半死半生で意識も朦朧とした状態で朝早くから海を漂い、
その後赤城さんに蜂の巣にされたり私に一喝されたりして、ようやく目覚めたって雰囲気だったし当然かな…?
「あんまり聞きたくないけど…どうして早朝から漂流してたんですか?
あのまま私が見つけてなかったら沖に流れてましたよ?」
「あぁ…。その件か…。…話せば長いぞ?」
オルガさんは眉間を抑えながら答える。
特にあちこちにこびりついてるコンクリみたいなのが気になるなぁ…。
「私も知りたい…けど、複雑な経緯なら別にいいですよ?」
睦月ちゃんも興味があるみたい。
それとなく話す雰囲気にしていく。
「ああ分かったよ…。あれはお前らと別れた後の事だ…」
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晩飯が過ぎてもミカは戻ってこなかった。んで、仕方ねぇからそのまま寝る用意をしてた。
そしたらよ、ようやく帰って来たんだ。アイツ。
「おお、ミカ!」
「…ただいま」
「晩飯食ったか分からねぇし、とりあえず茶と菓子でも出そうか?
こないだ売店でいいモン見つけてよ、イモモチってのとゴマミツダンゴ、
あとキュウシュウ?ってとこの温泉饅頭!よく分らねぇチョイスだったが買ってみたんだ」
随分と疲れた様子だったし、とりあえず何があったかは聞かない方針で行った。
…正直、昨日のミカはちょっと羨ましかったのもあるが。
とりあえず目についた菓子と茶を出すとそのままほおばりだしてな。
ここの茶の味も大分慣れてきたって感じだった。
「ねえオルガ」
「何だ?明日は出撃だぜ?早めに寝といた方がいいんじゃねえか?」
が、
…多分、結構気にしてたんだな。
「もうちょっと俺と如月達の仲見ててほしかったんだけど、どうしてどっかいったの?」
「へ?は?いや、でもよ、お前結構振り回され気味だったんじゃ」
「なんかよくわかんないんだけど、如月がさ、
『アツアツなとこ見せようぜ(サムズアップ)』
…ってこっそり言ったんだ。でもオルガ達すぐ行っちゃったもんだから、
ちょっと如月へこんじゃってさ」
「いやそれ俺にアピールされても困るんだが」
ひょっとしてこいつらは所謂バカップル化しつつあるんじゃないだろうか。
と思った次の瞬間。
なぜか俺はミカに引きずられ、
「待ってくれ!」
いつのまにか港に運ばれ、
「頼む!鉄華団の団長である俺の命だけは!」
空のドラム缶と、コンクリが用意され、
中に放り込まれ、そいつを流し込まれ、
最後はそのまま海に蹴り落された。
「何やってんだミカァァアアゴボボッボボボッボボボ!!!」
「オルガは…死んでいい奴だから。あと一回こういうのやってみたかった」
(※多少虫の居所が悪くて手荒な真似をしても生き返るから)
♪いつもの曲♪
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
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「…その後、何度目かの蘇生でようやくドラム缶から脱出するも、
そのまま体力を使い果たし今度は海を漂うドザエモンって奴だ…」
うわあ…すごくどうでもいい…。
(うわぁ…オルガさん可哀そうだけど動機しょうもない…)
「最近のミカはわりと変な…いや、いつもだけどよ。奇行が目立つからな…。
単に疲れて苛立ってたんだろ。うん」
いや…苛立ってた割には念の入った殺され方だったような…。
この二人はいつもきっとこんな感じなのかな?
こういう…仲良しの形も…あるの…?…かな?
「如月ちゃん…前からからかい好きで色々すごい子だったけど…。
三日月さんと会ってすっかり夜遊びとか好きそうなイケイケギャルみたいに…」
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どこか別の場所
「―――ギャル!?」
「どうしたんですの鈴谷。ソシャゲ周回の手が止まってましてよ?」
「ねえ熊野!イケイケのギャルって!」
「…もうひと眠りしたほうがよろしいんじゃなくて?」
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で、完全に無駄な時間を過ごしたな、って顔をする吹雪と睦月を眺めてた時。
俺にもふと疑問が浮かんだ。
「そういやよ、前回といい今回といいマクギリスの奴は出ないのか?
バエルがあるだろ。なのにミカのバルバトスにはかなり驚いてたじゃねえか」
「言われてみればなんで司令官はアレ使わないんだろう…」
「うーん…私もよくわかんないや…」
二人とも知らないらしい。
すると近くの茂みから人影が現れる。
「あっ!神通さん!」
「それについては私からお話いたします。どうも、吹雪ちゃん、睦月ちゃん。
多分姉さん達は違う道から出撃する場所へ向かってるわ」
神通か。どうやらなんか知ってるらしい。
「それで、なんでアイツは出ないんだ?」
「提督、前は私達の出撃にたまに同行してくれるんです。
でもまさかあの機体にあそこまでの力があるなんて知りませんでした」
どういう事だ?一緒に出撃してんのに、強さが分からない?
…まさか。
「お察しの通り。…いえ、多分それよりアレだと思います。
だって戦闘や移動の最中何かあるたびに…。
『革命は終わってはいない!』
『諸君らの気高い理想は、決して絶やしてはならない』
『アグニカ・カイエルの遺志は、常に我々と共にある!』
『ギャラルホルンの真理はここだ』
『皆、バエルの下に集え!』
『バエルなのです!』
『アグニカ・カイエルの魂なのだわ!』
『ハラショー』
『そうよ!ギャラルホルンの正義は私達にある!』
『『『おおーーーっ!!』』
…って変なポーズばかり取るんです。
一部の駆逐艦の子には人気があるんですけど…戦闘中はちょっと…」
「は?」
…アイツは正気なのか?え?戦いもせずに?
そういえば確かにそういう奴ではあったが。
「ですので、私が直接出ないように言っておきました」
「は?」
今何て言った?多少指摘してもバエルを理由にして聞く耳持たないのに?
「ええ。
き つ く 言 っ て お き ま し た 」
満面の笑みでドスを聞かせた声で神通は語る。
…この人は怒らせたらダメなタイプだな。気を付けておこう。
ああ、なぜか正座した状態で叱られるマクギリスの画が浮かぶ。
つーか、さっきの俺の死因に匹敵するしょうもねぇ理由だが…。
いいのか。ここ。上がそんな調子で。
ホントの無駄話を終え、ようやく俺らは出撃前の待機所へとたどり着く。
すでに先に着いていた艦娘達でひしめいている。
「さぁ~~~!夜戦だ夜戦だ!腕が鳴るぅ!!」
「上機嫌だな」
「そりゃそうよ!だって夜戦だよ!」
早速川内が張り切っている。
こいつの大好きな夜戦ってのがどんなもんか見せてもらおうじゃねえか。
「私も…体が火照ってしまいます」
神通もか。意外だな…いや、確か前に夜間演習で指揮取ってるって聞いたな。
相当なスパルタらしいし、こいつも夜の方が好きなんだろう。
「おびき出すのは任せてね?那珂ちゃんの魅力で、みーんな誘惑しちゃうから!」
「うん。頼んだよ」
ミカもいるな。雰囲気からしてありゃ寝起きだ。ついさっきまで寝てたか?
そこを那珂あたりに拾われたって感じか。
「それは不安だクマ」
「みんな、置いてかないでねー?」
「大丈夫にゃ。問題にゃい」
こっちの面子は…如月の隊の連中か。ブリーフィングの時に顔だけ見たが、
こういう連中なのか。にゃーはまだ分かるがクマって何だ?
「ねえ、如月ちゃん!」
睦月が如月に近寄る。出撃前の挨拶ってとこか。
「? なぁに?」
「あのね、この作戦が終わったら、話したいことがあるんだ」
「あ~らぁ~。愛の告白かしらぁ?」
「違うよぉ!…って、いや、あんまり違うくないけど…」
「フフッ…分かったわ。約束…ね?」
「うん!!」
微笑ましい親友同士の約束。
その様子を、ミカは神妙な面持ちでじっと見つめ、
観察し終えるとそのままふらりとモビルスーツの格納庫へ歩いて行った。
(とても嫌な予感がする……よく分かんないけど、俺がやらなくちゃ…)
今回は苦労した。
次回いよいよ出撃です マクギリスが用意したミカ用の何かとは一体