艦隊オルガ   作:Nyose

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怪獣大決戦回




黒き怪物 白い悪魔

「うっ…ぐっ…ハッ!?」

 

海域全体に響き渡る獣のような咆哮。

その叫びで鉄華団団長、オルガ・イツカは目を覚ました。

 

敵の一撃が思いの外重く、蘇生が入ると同時に昏倒していたらしい。

まずは位置を把握する。海を漂いかけていたようだが、戦場からは少し離れた程度。

 

まだ少しクラクラするものの、起き上がり海面に立つ。

どうにも水を踏むというこの感覚に慣れる事はないな、と思いつつ、次に戦況を確かめる。

 

…劣勢。

 

ルプスは未だ武器を取り戻せておらず、吹雪たちも徐々に追い詰められていく。

 

「何やってんだ…あいつ等は…!」

 

こうしてはいられない。オルガは戦線へ復帰すべく走り出した。

 

__________________________________________

 

 

「くっ!神通!増援はまだ!?」

 

「もう少し…!近くの海域に……誰か…」

 

「こっちはそろそろ体力の限界!」

 

「やっぱり全然当たらない!川内さん!あとちょっと粘って!」

 

「分かってる!よっ!」

 

戦艦棲姫に次にマークされたのは川内さんだった。

改二が忍者だって言ってたのは本当みたいで、相手の拳や足を紙一重でかわしながら逃げ回る。

けどそれも、かれこれ数分間ずっと続けている。

本人の言う通り、川内さんのスタミナは残り僅か。赤疲労の表示が出そう。

 

私と睦月ちゃんで援護射撃もしてるけど、二人の動きが速くて役に立ちそうにない。

神通さんは必死に長距離通信を試みているけど中々うまくいかないみたい。

 

三日月さんのほうも状況はかなり良くない。ルプスの腕についている砲で牽制するも、

敵の艤装はまるで意に介さず、出鱈目に奪ったソードメイスを振り回しながら距離を詰めていく。

まずはあの武器を奪い返さないといい勝負にならなさそう…。

 

「吹雪ちゃん!後ろ!何か来てるよ!」

 

「敵!?当たってください!」

 

睦月ちゃんの声を聞いた私は、とっさに背後に向けて砲撃する。

 

「ヴヴッッ!!」

 

あ、オルガさんだった。目が覚めたんですね…。

 

「ご、ごめんなさいオルガさん!」

 

♪いつもの曲♪

「あぁ…分かってる。だからよ…止まるんじゃねえぞ…」

 

今度はすぐにオルガさんは起き上がった。

さっき夕立ちゃんと那珂ちゃんさんが下がっちゃったから、今はオルガさんの手も借りたい。

とりあえずオルガさんに現状の報告をしようと口を開くと、

 

「吹雪!状況は大体みりゃ分かる。まずはミカだな…」

 

そう言って数発ほど戦艦棲姫の方向へ威嚇射撃をしつつ、三日月さんの方へ短距離通信。

 

「ミカ!随分と苦戦してんな?」

 

≪こいつ硬い。それに今のバルバトスじゃ殺しきれない≫

 

「素のバルバトスやレクスに変わればいけんじゃねぇか?レクスなら性能的にも苦戦しねぇだろ」

 

≪駄目だよオルガ≫

 

「はぁ?お前状況分かってんのか?」

 

≪…明石に怒られる。そっちもそっちで面倒臭い≫

 

「あー…整備士に嫌われんのは良くねぇな。分かった」

 

 

話が終わると今度はこっちに顔を向けてくるオルガさん。

 

「…しかしすげぇな。あの怪物みてぇな女の動きもそうだが、それに防戦できる川内がよ」

 

オルガさんの言う通り、確かにあの艤装のなし戦艦棲姫の動きに、ほぼ追従できてるのは流石だなぁ。

 

()()()()()()勝算があったみたいです…」

 

「あぁ…俺らのせいで苦戦してんのか……ん?」

「吹雪ちゃん、オルガさん!いいから手を動かしてよー!」

 

ごめん睦月ちゃん。さっきの私の言葉でオルガさんが何かピンときたみたい。

それ次第で動きを変えるかもだからもう少し頑張って…。

 

「なあ吹雪…。()()()()()()使()()()()()()

 

「え?あの時って…私は見てないけれど、最初の…ああ!!」

 

「そうだ。俺らで先にあの格闘女を倒す。そうすりゃ後に残るミカの相手は大幅に弱体化する筈だ」

 

「確かに、艤装と違って本体の大きさはそのまま!…でも…あの速さと接近戦。私達じゃ…」

 

 

 

「――つまり、俺らの出番って訳だな?」

 

 

 

聞き慣れない声がした。

振り返って見えたのは、私達と同じ艦娘。

 

剣を肩に担ぎ、仁王立ちのまま滑るように海上を進みこちらにやってくる。

黒と白の衣装。もさもさした髪。なぜかついてる眼帯。

 

「あんた…俺達の為に…?」

 

「あぁ!ようやくコイツを使える戦況みたいで腕が鳴るぜ!すげぇバケモンいるし。

 改二になって最初の戦いが救援ってのは、中々ヒロイックだよな?なぁ?」

 

「うふふー。たまたま近くで演習してたらぁ、なんか聞こえてくるんだものぉ」

 

眼帯の艦娘の背後からもう一人、似たような黒白の服と、濡れたように滑らかな髪。

それと頭に天使のような輪をつけた艦娘がひょっこり顔を出してきた。

 

「貴女達は…!」

 

「えっ?嘘!?アンタ改二になったの!?うわっと危ない!」

 

「よう神通、川内!盛り上がってんな!あー、知らねぇ顔も幾らかだな。

 よし、ここはいっちょ!

 

 

 

 

   俺の名は天龍!フフフ、怖いか?なんたって世界水準越えだからな! 」

 

 

 

 

「俺は…鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ…!」

 

「お、いいねぇ!張り合んのは嫌いじゃねぇぞ? …何で男が海の上に立てるんだ?」

 

「初めまして~龍田だよ~。今日のお相手はどっちの大きいのかしら~?」

 

天龍さんと龍田さん。二人とも改二…凄い強い証なんだっけ。そんな人が助けに来てくれたんだ!

って、龍田さん、にこやかに手を振ってるけど、

三日月さんを敵と勘違いしそう…。すぐに誤解を解かないと…。

 

「ふ…吹雪です!えっと、トリコロールのほうは私達の味方です!あと、頼みたいのはあっち…」

 

「早くこっち来てー!ぐうっ!!」

 

「数ガ幾ラ増エテモ…!!」

 

私が戦艦棲姫を指差すと同時に、彼女の鉄拳が川内さんを穿つ。

悠長にしている暇がないことに気付いた天龍さん達はすぐ戦艦棲姫の前に立つ。

 

「へぇ。あのでけぇの、外した上に更にデカくできたのか。

 そんで、その格闘術はどこで習ったんだ?いいとこあんなら紹介してくれよ」

 

「私達モ日々鍛錬シテイルト言ウ事ヨ?ジキ、海ノ勢力図ハ変ワル。

 私ハソノゴ挨拶ツイデ、ッテ所ネ。アノ悪魔ハ討タセテモラウワヨ?」

 

「よくわかんねーけどアレは俺らの仲間みてぇだし、そうは、させねえよ!!」

 

まともな一撃を受けてよろめく川内さんに代わり、天龍さんと戦艦棲姫の戦いが始まる。

猛スピードでジグザグ移動を挟みつつ肉薄する戦艦棲姫。

繰り出される拳や足の一撃一撃を剣で受け止め、流す天龍さん。

うちの川内さんでも防戦一方だったのに、この人はちゃんと反撃もできている!

 

「す…すごいです…」

 

「ああ。ありゃただモンじゃねぇ」

 

「天龍ちゃんも私も長いからね~。あ~でもぉ…」

 

龍田さんが、まるで何かを察したように穏やかな目で天龍さんを見つめた途端、

私の視界から龍田さんの姿が消える。

 

「うわっ!?」

 

天龍さんの一閃をしゃがんで避けた戦艦棲姫。

そのままの姿勢で素早く放った回し蹴りが天龍さんの脚に直撃。大きく体制を崩し、転ぶ。

 

「沈ミナサイ!」

 

眼下に捉えた天龍さんへ鋭い平手を突き刺そうとしたその時。

 

「?!」

 

戦艦棲姫の胸の中心から刃が生える。

 

龍田さんの槍が、背後から彼女を貫いたのだ。

 

「ガッ…グッ…?!」

 

「…天龍ちゃんよりは、上手でしょぉ?」

 

「龍田ぁ!俺をダシに使ったな?!」

 

「あらあら。手助けしてあげたのよぉ?それに~

 行くとき腕試ししたいって天龍ちゃん聞かなかったでしょ~?

 元々、連携無しで突っ込むのは見えてたから~そのまま傍観しちゃった☆」

 

「お前なぁ…」

 

「とにかく今よ~。 やっちゃって~!」

 

「ガァアッ!!」

 

「させっかよ!」

 

胸に刺さった槍から逃れようと反撃を試みる戦艦棲姫。

しかし今度は天龍さんが長剣で両腕を串刺しにして拘束を完全なものにする。

このチャンスを逃す手はない!

 

「みんな、いくよ!」

「ヴヴゥゥゥアアアア!!!」

 

川内さん、神通さん、睦月ちゃんとオルガさんそれぞれに合図を送って一斉に雷撃。

(オルガさんだけは銃撃)

一直線に戦艦棲姫の方向へ進む魚雷。間違いなく直撃ルート!

巻き込まれないよう後退する天龍さん達。

その時、敗北を確信した戦艦棲姫の口がわずかに動く。

 

「…ダメミタイ…ネ…ゴメンナサイ…██…」

 

「あ?」

 

何か喋ったみたいだけど、この距離じゃ天龍さんくらいしか聞こえなさそう…。

 

次の瞬間、戦艦棲姫は大爆発に包まれ、今度こそ海の藻屑と化したのでした。

_______________________________________

 

敵の本体が倒れ、後に残るのは艤装という名目の化け物だけ。

俺はさっきからずっとその化け物がこっちに来ねぇよう引き付けていたミカを見る。

 

≪…今なら!≫

 

本体が爆ぜた途端に艤装の動きは明らかにのろくなっていた。

メイスを振る速度もかなりスローだ。

 

ゆっくり振るわれるメイスを掴むルプス。けれどパワーはまだ辛うじて残っているらしく

やはり中々手放しそうにない。

 

「手伝います!三日月さん!えいっ!!」

 

弱体化した今ならいけると判断した吹雪の砲撃が化け物の手に弾ける。

吹雪の狙い通り、化け物はついにメイスを本来の持ち主に返す事となった。

 

「ナイスだ吹雪!」

 

「はいっ!」

 

武器を奪い返された化け物はノロノロと肩の連装砲をルプスに向けるが、もう遅い。

ミカを前にしてそんな悠長な真似、許すわけが無ぇよな?

 

≪コイツが欲しいなら…くれてやる!≫

 

ルプスは化け物の左肩の砲を押さえつけて潰し、それを支点にして、跳び、

 

 

ソードメイスをあんぐりと空いた化け物の口へ真上から突き刺した。

 

 

僅かな唸り声をあげ、化け物は沈黙。

メイスが引き抜かれると同時に静かに海の底へと沈んでいった。

 

「やった…私達、勝てました!」

 

「フウゥ、一時はどうなるかと思ったぜ」

 

「ぽ…ぽい…」

 

「夕立ちゃん起きたよー!まだ立てないからこのまま私が担ぐけど!」

 

「いや~……W島の時より命の危険感じたよ…」

 

「ごめんなさい姉さん…あまり援護できなくて…」

 

神通、そんな気にする事ねぇよ。お前のおかげで天龍達が救援に来てくれたんだ。

接近戦もこなせる艦娘がいたなんて正直驚きだ。こいつらには借りができたな。

 

 

「あーいや、お礼とか別にいいわ。俺ら、お前らとは別の鎮守府だし」

 

「どうしてもって言うならそっちに送ってね~」

 

 

そう言い残して二人は颯爽と去っていった。

敵も何とか倒せたし、俺らも帰る事にしよう。

「しっかしアイツの最後の言葉…龍田、お前は聞いたか?」

「さぁ~?…何て言ったのかしらねぇ」

 

 

帰路の最中、吹雪が俺とミカの近くに寄って来た。

 

「どうした、吹雪?」

 

「…今回、すごく危なかったですね…」

 

「そうだな、日に日に強くなってんのは、俺らにもよく分かる」

 

≪吹雪≫

 

「え?はいっ!何ですか、三日月さん」

 

≪あの時の援護、助かったよ≫

 

「そ…そんな…たまたまですよ。いつも三日月さんにはお世話になりっぱなしで…」

 

≪だから。 今日の、俺だけでも、吹雪達だけでもきつかったと思う。ありがと≫

 

「…よかったな、吹雪。ミカがお前の実力、ようやく認めたぞ」

 

≪…別にそんなんじゃ。…でも、なんかおごらせて≫

 

「おごり!? 三日月さんが、私にですか!?…そうですね」

 

「こう見えてミカは持ってっからな。…どこで調達したか知らねえが」

 

 

吹雪はしばらく逡巡したのち、

 

 

 

「…じゃあ!一緒に、スイカ!食べましょう!この間食べ損ねたし…」

 

≪…いいね、それ≫

 

「おっし!決まりだ!俺とミカで山ほど運んでやっから覚悟しろよ?!

 

  ―――今日はトコトンまで行くぞぉ!!! 」

 

 




強敵撃破! 吹雪の成長出せてるといいのですが
次回は元通り艦隊オルガ5に行きます

・・・しっかしすげぇよ、ISオルガは・・・ ありゃ最高だ
動画もノベライズも テンポからまるで違う
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