艦隊オルガ   作:Nyose

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かぜひいた おくれた 喉がえらいつらい
毎回喉ばっか痛めてんな


動き出す者たち

朝。起きてすぐの軽いトレーニングを終え、今日はどうしようかと辺りを散策する。

昨日の朝、姿を消していたミカも今日は一緒だ。

 

しばらく歩いた時、ふと、壁のあちこちに張られている紙が気になった。

 

「何だ、こりゃ?」

 

「鎮守府…カレー大会?…ふーん」

 

へぇ、『自慢のカレーで優勝』…ねぇ。普段は戦いばっかのお嬢さん達だ。

たまにゃこういう楽しい祭りをやってガス抜きするって訳か。マクギリスの奴も考えたな。

 

「…ま、俺らにゃ関係ねぇか。どっちかと言やぁ作るより食う側だからな。行くぞミカァ!」

 

「うん」

 

今日は敵襲が来る気配が微塵もしないし、ミカの面倒見てる農園、俺もちょっと見てみっか…。

ここまで平和なら、俺が死ぬような事も起こらねえだろ…。

 

 

 

そう思えたのは、壁伝いから広場へ一歩出るまでの短い間だった。

踏み出したその瞬間、俺の真横に何かがぶつかる。

 

「ヴヴッ!!」

 

♪いつもの曲♪

 

「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」

 

ああ…結局こうなんのか…。やっぱ…俺は死の運命から逃げらんねえのかよ…?

 

意識が…遠のく…。

 

________________________________________

 

「アアッ!ソ、ソーリー!…ひゃっ?し、死んでル?!」

 

オルガにぶつかった何かが謝罪と共に倒れ伏す彼に驚く。

声や容姿から、どうやらぶつかったのは少女のようだ。

もさもさとしたツインテールの金髪に、手には地図のようなものを持っている。

 

「大丈夫。いつもの事だから気にしないで」

 

「アー…。そうなんデスか。で、デハ…。 怖っ…

 

ぶつかっただけで動かなくなった大男とそれを当たり前のように流す少年を見た少女は、

『明らかに異常な奴等と出くわした』とでも思ったのか、

なるべく穏便に、なるべく関わらないように努めてその場を後にした。

 

「じゃあね」

 

オルガが一時的な死から目覚めたのは、それから数十秒後だった。

 

 

「ってぇ…。ミカ、さっき何があった?」

 

「地図見てた女の子がぶつかったみたい。多分艦娘。あんま見ない子だった」

 

「へぇ。さしずめあの大会ってのに呼ばれた客ってとこか」

 

「………」

 

とりあえずこの場から動こうとしたオルガを、三日月は突然じっと見つめだす。

 

「何だよミカ。そんなに見られたら動けねえだろ」

 

「また脆くなった?」

 

「勘弁してくれよ…」

________________________________________

 

それからしばらく歩いてみたはいいものの、

どこもかしこもカレー大会とやらに備えてんのか、やけに騒いでる連中が多く見えた。

 

…こいつらも、そん中の一部だな…。

 

「オオーーッ!!オルーガー!ムーンボーイ!こんな所で会うなんてまさに運命ネーー!!」

 

金剛の奴に、捕まった。

 

「どうしたの?」

 

「よくぞ聞いてくれたネー…」

 

いつもの格好の上にエプロン姿、片手にはおたまを握って、何やら困っているらしい。

隣には比叡もいるが…。あと二人、足んねえな。

 

「どした金剛?変な恰好で悩み事か?お前らしくねえな」

 

「ウーン、実はワタシ達も、というかワタシが今回のカリー大会のきっかけなんだけどネー」

 

「ほう…?」

 

「いざ出場しようと思ったラー!霧島は実況をやるから手伝えないと言うシー!

 榛名は突如として姿をくらましたネー…。これでは人数が足らないネーー!!」

 

「人数の指定は無かったように見えたぞ?比叡と二人で出りゃいいじゃねえか」

 

「どうせなら手が多い方がより良いものが作れそうな気がするデース!

 しかし…ブッキー達には即答で断られ、このままでは戦力不足で出場する事になるデース…。

 ワタシはどうしても!どぉーーしても勝ちたい相手がいるネー!」

 

「成程な…。それで、俺らみてぇなのでも戦力に加え入れたいと…」

 

「その通りデース!」

 

「だが、アンタにとっての敵が俺らにとっての敵にもなる。そういう不利益はどうする?」

 

「問題ないネ…。それにオルーガーには、どうしてーも出たくなる理由があるネ…」

 

「何っ!?何なんだよそいつは…!」

 

料理の大会だぞ?俺のような男手で…そんな理由あるはずが…。

今日の金剛、なんかおかしくねぇか…?

 

「そう…それは…」

 

確かに金剛が語る『俺の参加したくなるワケ』って奴は、十分たりえる理由だった。

そいつは…。

 

 

 

 

「料理のできる男はッ!!モテるネーーー!!」

 

「な…何ぃいぃーーーーっ!?」

 

 

―――モテる。

 

この女だらけの鎮守府において、それは絶対的な優位性(アドバンテージ)となる。

つまりは王だ。

 

王になる。火星の王改め、()()()()()。地位も名誉も、全部手に入る。

 

ミカやマクギリスがモテてんだ。

俺にだって…いや、このカレー大会で、大勢虜にしてやりゃあいいのか。

 

つまりそいつは俺にとっての、これ以上ない、すげぇ「あがり」なんじゃねえのか?

 

 

「…分かった。鉄華団は、あんたの側に乗ってやる」

 

「オルガの命令なら、俺もやるよ」

 

「フッ…では、共に駆け上がるデース…」

 

なんか既視感のあるやりとりをしながら、俺は金剛と握手を交わした。

これにより、俺らは鉄華団チームとしてカレー大会への出場を決める事となった。

 

しかしまずは料理が出来なければ意味がない為、開催までの数日間、

俺は地獄の料理特訓へと身を投じる事となるのだが、それはまた別の話だ。

 

_______________________________________

 

鎮守府敷地内 隅の方にあるであろう雑木林

 

 

「うぅ…お姉さま…お許しください…逃げ出してしまう榛名をお許しください…!

 比叡は…比叡は危ないと…あれほど申し上げたのに…。

 だからもう榛名は逃げ、身を潜めるしかないのです…!

 あのような惨劇をまた見るなんて…榛名は…大丈夫じゃないです…お許しください…!!」




書き終わるころにはかぜなおってきた ひでぇ目に遭った
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