あとタイトルで正直ピンときた貴方 正解です
――それは、金剛との特訓が始まった次の日くらいの事。
基本的にアイツの指導は夕方ぐらいから始まる。それまでは暇だ。
特にやる事も無い俺は、大会に備えて自主練でもしておきたいと思ってはいたが、
一人でどうこうできる自信は無え。
かといって、誰彼構わず教えを乞えば、ソイツが出場者、こっちの手札が割れる。
なんてのはシャレになんねえ。
だから俺は、この手の道楽にゃ手を出さなそうな人を当たる事にした。
『すんません、鳳翔さん。ちょっといいすか?』
『あら、オルガ君。どうしたの?お店はまだだけど…』
俺がよく呑みに行く居酒屋の店主、鳳翔さん。
この人ならその辺りの懸念はまず問題無え。
なにせ店出してる奴がああいう大会とか出ちゃ気まずいだろうしな。
それに口も堅くて、何より料理の腕といえばこの人か間宮さんかってくれぇ上手い。
この時期に師事してもらう奴の条件としちゃあ、まさにこれ以上ないうってつけの人材だ。
幸い、向こうも出撃だ何だが無い影響か、この頃暇みてぇで快く承諾してくれた。
とりあえず俺が現状どこまでできるか知るために、
まず試しに一品作ってみろ、と言われたのでパッと軽く出してみる。
だがそいつを一口食べてすぐ、鳳翔さんは眉をしかめた。
『………オルガ君?』
『…はい』
『なんて言えばいいのかしら…。うーん…料理っていうのは、武器じゃないのよ?』
『…と、言うと?』
『オルガ君の料理ね、殺気みたいなの感じるの。こう…「早くとにかく上に行く!」みたいな。
造りそのものは金剛さんの仕込みで丁寧だけど、内側に秘めてるのが溢れてる…。
って、言えばいいのかしら。まずはもう少し肩の力を抜く所から始めましょう』
実際、鳳翔さんの言う通りだ。この大会でのし上がる。その一点にこだわりすぎてちゃあ、
本番じゃロクな結果も、更にはその後料理するようなことがあってもうめぇモンは作れねえ。
そっから俺は、金剛にゃ技術を、鳳翔さんには心構えをそれぞれ教わる事になった。
『料理を一番おいしくするのは、やっぱり愛情ですね。
ほら、私って、みんなからよくお母さんとか言われますし…。
理由はよく分からないんですけどね。
「家族に出す」って事なら、みんなにおいしい、って笑ってほしいでしょう?
特にカレーは、最近の子には「
『? …は、はぁ』
「家族」…ああ、鳳翔さんにとっちゃあ艦隊の奴ら。俺にとっては鉄華団。
どっちもミカや吹雪達みんなの事だ。
そいつらに出すつもりっつてんなら、
確かにみんなでバカ笑いしながら食える、うめぇモンにしてぇよな。
…ま、それでも、いつも思ってる最短で上がりてぇって意思も、
多少のスパイスにゃなっから変わらず込めるがな!
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かくして俺は、大会へは心技体、完璧に仕上げたと思える状態で挑んでいる。
っつても、数分前くらいには、「ここまでやってきたから大抵の奴は」と粋がっていたが。
それもさっきの瑞鶴のフライパン投擲のショックでスッキリした。問題無え。
だがそんな俺にも一つ不安があった。あん時の鳳翔さんの言葉。
『
…そいつがどうにも、理解できなかった。
何せ俺らは孤児だ。親の顔なんざ知らねえ。ましてや味なんざ分かるはずもなかった。
がな、この本番真っ最中でようやくひらめいたんだ。
俺には知り様のねえおふくろの味、真心、すげぇ料理に仕上げる為の
そいつがピンときた瞬間、俺は次の段階へ進む明確なステップが頭に浮かんだ。
まずは止まんねえ意思を込めて全身に気合を入れる。
予想通りあん時のミカみてぇに身体が輝きだした。
―――こっからだ。
「…見せてやるよ!俺の、大規模改装って奴をな!!」
「オルガさんの体が輝いて…!」
「ほう。…改、か。…アグニカポイントを移譲しよう」
「オーウ!なんかよく分からないケド!やっちまえー!オルーガー!」
まずは両腕を一度広げ、左右の手を交互に握りしめ、叫ぶ。
「俺は!金剛から学んだ『技術』と、鳳翔さんから学んだ『心構え』を融合!
自在に形を変える神秘の渦よ、いま一つとなりて、新たな『王』を生み出さん!
融 合 召 喚 !
生誕せよ!
そうだ、これが…鉄華団団長………いいや、違うな…!」
湧き出てくる本能に従い、俺は勢いよく自分の肩を掴み、衣服を脱ぎ捨てた。
その場の全員が俺の突然の行動に驚愕するが、まだだ。
「え…え?アイツ、何をする気よ…」
「何だぁ?オルガの奴、急に光って今度は脱いで、宴会芸か?」
「名瀬、ここは静かに見ておくもんよ」
俺の身体の輝きは更に強まったのち、
段々と光は晴れ、その新たな姿を衆目の前へと現そうとする。
「 俺が…俺こそが…ッ! 」
「 エッチでビッチな、オルガ母さんだぞ…ッ!!! 」
そうだ。母の味、母のぬくもり、母の真心。そんなもんを知らねえ俺がそこに至る最短の道。
恰好がどういう訳だか白いビキニ姿みてぇになってるが、なぁに、そんなもん些細な事…。
「嫌ああああああああーーーーーッ!!」
「変態ぃぃっーーーー!」
「ぎゃああああっ!!」
「ぽぃいぃいぃぃっ!」
「オルガさん!オルガさん…ッ!最低!最ッ低です!!」
「あれが鉄華団の団長…思っていたよりひどいですね。幻滅です」
おいおい、他の連中が一気に騒ぎ出しやがった。水着姿の何がいけねえ?まあ、女物だけどよ。
多分だが、俺の思う母性のイメージから具現されてんだ。
正直こんなん俺も着たくねえけど、んな事言ってる場合じゃねえ。
ともかくこれが俺なりの「改」の姿って訳だ。だからそう睨むなよ吹雪…傷つくぜ。
一応きちんと隠す場所は最大限なってっから、な?…大丈夫だよな?
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実況席、並びに審査員席ではこの珍妙な事態に対し、
どのような判断を下すべきか協議が行われた。
「…提……モンターク殿。審査員長としてどう見る?あんなふざけた格好、つまみ出すべきか?」
「いや、あのままにしておこう。あれがオルガ・イツカの大規模改装だというのであれば、
ここからさらに劇的な演出が行われる事となるだろう。それに…見ろ、長門」
「…あー、あまり見たくは、ないのだが…」
「彼は今、一種の悟りの境地のような状態になっている。外見だけで判断するものではない。
この大会、更に凄まじくなるぞ」
これにより、審査員長である謎の仮面紳士の一存で、
鉄華団チームは破廉恥な恰好による失格を免れる事となった。
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「…しっかし、ひでぇ格好だな。オルガの奴よぉ」
「あら?あんただってタービンズの忘年会の時あれよりもっと酷かったじゃないか」
「えっ?そんな…あ、あー!何年か前の!あん時相当深酒してて覚えてねぇんだ!
今の今まで忘れていたし今も覚えちゃいねぇけどよ、何があったんだ?なあ?ラフタ!?」
「えー?…うーん、覚えてない方がいいこともあるよ?だーりん」
「あのオルガの宴会芸が引き合いって事ぁ、そういう事か?そういう事なのか?!」
「フフッ…」
「なぁ、頼むから誰か教えてくれよぉー!」
「ほらほら、いーから手を動かす!」
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「…で、オルガ。そんな恰好でメシ作れんの?」
「あぁ?まぁ見てなって!」
ひと騒動あったが、とにかく俺の「改」がすげぇモンだという事を知らせなければいけねぇな。
まずは適当な奴を炒めて…。
しまっ!油が跳ねて俺の腹だ腕だ脚だにッ!
「ヴヴッ!!」
♪いつもの曲♪
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
…やっぱ、布面積はいるな。
「あー……すまねえミカ。やっぱエプロンか割烹着、頼めるか?」
「うん、分かった」
そう言って早速ミカは駆けだしていった。
どの道アイツは料理の特訓してねぇから、少しはやる事与えてやんねぇと。
え?じゃあこの数日、何してたかって?…特に何もしてなかったな…。
横で見てるか、一回だけ突然バルバトス持ちだしてどっかいったくらいか。
「よーっし!オルーガーがめでたく改になったし!ワタシもがんばるネー!」
「おう!頼むぜ金剛!カレーの王への道はアンタにかかってんだ!
カレーの煮込みそのまま続けてくれ!俺は何とか付け合わせを仕上げる!」
その後、何とかミカがちょうどいいフリフリがついたハートのエプロンを持ってきて、
そいつを着た後は早かった。自分でも驚くくれぇ次々と調理が進んでいく。
金剛のやたら澄んでるスープカレーに合わせた付け合わせも間もなく仕上がる。
ここまでの完成度は前日の練習でもいくらやっても出来なかった。
これなら優勝は間違い無ぇ。そうしたら…俺は…!
ふと、金剛と目が合う。…あの、自信に満ち溢れた目は…。
「フフフ…オルーガー、やはり思っていることは同じみたいデスネー」
「ああ…そうだな」
「優勝は私達で決まりデース!…そうしたら…ンフフフーッ!ダメだよテートクーゥ!」
「カレーの…王…!地位も名誉も…全部手に入れられるんだ…。
…これ以上無い、あがりじゃねぇか…!!」
ああ、そうなったらこの先は楽しみで仕方ねえな!ついに俺にもモテ期が…!
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オルガさんと金剛姉さまが何やら浮かれている。恐らく料理の完成が近いのでしょうか。
私も野菜を切ったりと尽力はしていましたが…何かこう…仕事が少ないような…ッ!
横でずーっと見てる三日月くんに聞いてみよう。
「ねえ、三日月くん。…なんか、私達、やること少なくない?」
「…そうかな。俺はオルガの命令を待ってるだけなんだけど…。
確かに、ここも俺らにとっての戦場なんだけど、あんまりやることないね」
「おお!三日月くんもそう思いますか!ええ!…そこでなんですけど、アレを見てください」
私は金剛姉さまの横にあるカレーの鍋を指差す。
「…別に、普通そうだけど」
「いえ!あのカレー、具がないんです!オルガさんも色々やってはいるようですが!
カレーとは具のあるものと私は思っています!」
「…確かにそうだね」
「ここはひとつ、私達の出番ではないでしょうか!こんなこともあろうかと!
色々使えそうなのを持ってきました!普通のカレーじゃインパクトが足りませんからね!
特殊な具材?になりそうなの?を幾らか!」
そう言って私は調理台の下あたりからザルに入った自分でもよく分からない物体を取り出す!
海岸辺りで拾った…貝類的な何かとかクラゲっぽい何かとか!これを入れたらきっと、
みんなが驚くようなカレーになるはずです!
「へぇ。すごいじゃん。…俺もオルガの役に立つために、なんかしたほうがいいのかな」
「ええ勿論したほうがいいですよ!具材はカレーの重要部分です!」
「アトラも言ってたな。何を入れてもおいしくなるのがカレーだって。
…じゃあ、この携帯食と地球ヤシも入れてみた方がいいかな」
お、三日月さんはいつも持ち歩いてるブロックみたいなスナック?とデーツですか!
…確かデーツ、ヤシは海外では料理に入れるところもあるみたいでしたっけ。
それにあのスナックは栄養が豊富とかそういう系のアレ!ヘルシーなカレーになりますね!
「いいですね!じゃあ一緒に入れましょう!」
「うん。そうだね」
「「せーの!」」
「お姉さまの為に!ドバ―――ッ!!!」
…私と三日月くんで同時に具材を入れた途端、カレーの色が変わったけど…まあいっか。
なにせこれが私とお姉さまの合作…。ハッ!愛の共同作業なのでは…!
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「…よーしみんなー!完成も近いし、ここは一斉に味見デース!」
「おお!待ってましたって奴だな!」
「うん。いいね、それ」
「分かりました!お姉さま、小皿に盛るのはお任せください!」
さあて、いよいよか。
高級感溢れるスープカレーでありながら、どこか馴染みのある家庭的な雰囲気を織り交ぜた
日常と非日常を同時に味わえる究極のカレーに仕上がっている予定だが…どれどれ。
ミカや比叡を含めた俺らはほぼ同時に、一斉に小皿に注いだスープカレーを味見した。
…なんかさっきと色が変わっていたような気がしたが…。
いや…やっぱ気のせいじゃねえわ!何だこ…息が!でき…。
「ヴヴッ!!」
「「うぅっ!」」
「……!」
♪いつもの曲♪
どういう事だよ…。チラリと横を見たら金剛も比叡も、
そして多分俺とミカも、顔を七色にしてぶっ倒れた。
口の中に、表現できねぇような得体のしれない味なのか刺激なのかも分からないモンが…
あ、ダメだ。これは流石に…。
「止まるんじゃ…ねえぞ…お前らが…止まんねえ限り…その先に…俺…は…ゴフッ」
こんだけのダメージじゃ…次、目ぇ覚めんのは終わった後…だ…な…。
≪カウントワン!トゥー!スリーッ!
あーーっと!お姉さま方!まさかのカルテッドダウーーン!!≫
≪霧島さんが身内の不幸なのにテンション上がってるよ?!≫
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強豪と思われた鉄華団チームの脱落は他チームには大きな衝撃となった。
「オルガさんと金剛さん達がやられたのです!」
「嘘っ!?あれだけ強そうだったのに?!変な恰好に進化もしたのよ?!」
ある者は驚き、
「あらあらぁ?本番前あんなに粋がっていたチームがこのザマ…。
もう残るライバルはあと少し。優勝はこの私!足柄に間違いないわね…」
ある者は勝利を確信し、
「結構いいとこまで行ってたんだがなぁ。オルガの奴よぉ。ま、後は俺らが頑張りますか。
今度は俺達がオルガの仇をとってやんねえと」
ある者は決意を改め、
「…准将の為に…准将の為に…!」
ある者は消して動じなかった。
大勢が参加していたこの大会も、残すところあと四組。
激闘はいよいよ終幕へと加速を始めてゆく。
オルガ改「オルガ母さん」の格好は流石に原作と違って
普通にオルガにフィットしてる大きめの水着姿です
普通の、女物の、水着です(強調)