え?タイトルが不穏?はははそんなまさか
≪さあ、全てのカレーがここに出揃いました!いよいよ最終審査の時です!≫
長い、とても長い時間がかかったような気がする。
今まで踏み越える事になった瑞鶴さん達、島風ちゃん、オルガさん達、タービンズの人達、
そして足柄さん達。みんなに報いるためにもこの最後の審査で優勝しなくちゃ。
勿論優勝はわたしや雷、電、響みんなの願いだけど、それは石動さんもおんなじ。
≪すべてと言いつつ2つしかない上に、そこに至るドラマが色々言いたい部分もありますので、
そういう雰囲気になる前にさくっと終わらせてくださーい!≫
那珂ちゃんさんが身も蓋も無い事を言ってる…けど…、
概ねその通りなのでそこにはみんな何も言わずに審査が始まった。
「では…まずは石動のカレーから頂くとしよう」
「分かった」
「構わぬぞ」
仮面の紳士さんに合わせ、審査員の人たちはまず石動さんのカレーを食べる。
ちょっとただようフルーツ系のにおい…。
「ほう…すった果実を入れているのか…」
「フルーティーさとスパイスが合わさって…これなら、大人でも問題なく食べれる甘口ね」
「はむっ…ん~、美味い!
貴様、戦いが終わったら店を開くのはどうだ?余がオーナーになってやってもいいぞ?」
「いえ、これは准将に捧げる為の一品です故」
「その忠臣ぶり…ますます気に入ったぞ!ナガート、貴様はどうだ?」
「む、ああ…これは…中々だな…」
すごい…石動さんのカレー、かなり評価高くない…?
すりおろしたバナナとかリンゴとかのほのかな香りが確かにしているし、相当手が凝ってる…!
「はわわ…これは、大丈夫なのです…?」
「分かんない…分かんないけど、もうとにかく祈るしかないわ!」
「そうだね。やれることはやった」
「次は第六駆逐隊のカレーだ。見せてみろ…君達の力…!」
石動さんのをそこそこ食べ、ついにわたしたちのカレーの番がやってきた。
どうしよう。あの人みたいにそんな凝った事してない…!
せいぜい野菜を星やハートに切ったり、一夜漬けで覚えたオリジナルのカレー粉調合くらい。
全然勝てる予感がしないよぉ…!
「…ほう」
「んむ…んむ!」
さっきより妙に仮面のモンタークさんや長門さんの顔がうれしそうな気がする…。
多分、気のせいだと思うけど。
「両者とも、甲乙付け難い…。だが…!」
≪さあ!両者のカレーの審査が終了しました!
採点は食べている間に置かれた名前の書いてある札を挙げて行っていただきます!≫
≪ それでは、結果発表~~~~!! ≫
でんでけでけでけ、とよくこういう時に聞く音楽が流れる。
わたしたちと石動さん。優勝するのは一体どっちなんだろう…!
≪みなさーん!一斉に札を挙げてくださーーいっ!!≫
でーーん! の音とともに審査員の人たちがいっせいに札を挙げる。
そこに書かれていたのは…。
モンターク:第六駆逐隊
長門:第六駆逐隊
陸奥:第六駆逐隊
ネルソン:石動・カミーチェ
≪ゆ、優勝はっ!!第六駆逐隊ーーーーっ!≫
「「「「や、やったぁーーーーっ!!」」」」
≪それでは、第六駆逐隊にはカレーナンバーワンの優勝トロフィーと、
一年間カレーが食堂で振舞われる栄誉が与えられます!≫
金剛さん、オルガさん、三日月さん…!終わったよ…!
「じゅ…准将ぉおおおおおっ!!誠に…誠に申し訳…ありません…ッ!」
あ…そっか…そうだよね。石動さん…。
そりゃあ地に膝付けて、悔しくなっちゃうよね…。
「あ、あのっ!石動さんっ!」
「……?」
「わたしたち、石動さんのおかげで、この大会を通して色んなことを学びました!」
「今まで怖い人だと思ってごめんなさい。本当は凄くまじめでいい人だって分かりました」
「「「「だから、これからもどうかよろしくお願いしますっ!」」」」
「…お前達…」
「さあ!手を握って!ここからはみんなでカレーパーティーよ!
みんなで楽しみましょう!」
「………ああ、そうだな」
あっ…石動さんの笑った顔、初めて見た。
本当に…本当に、良かった…
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大会終了後しばらくの、薄暗い提督室。
長門とマクギリスは、部屋の隅で画面を前に固まり、陸奥は少し距離を取り立っていた。
「…お疲れ様。審査員、大変だったわね。良かったじゃない。
これからしばらく、カレーは第六の甘口で。提督も喜んでる。
長門も提督も、本当に辛いの苦手だものね…」
「…ああ、そうだな。しかし石動には悪いことをした…。
あれほどの忠誠心を見せておきながら、やはりどうしても…」
「ああ、石動…彼の忠誠は、間違いなく本物であることは以前から知っている。
だが……これには抗えぬものだ…」
長門とマクギリスが眺める端末の画面。そこに映っているのは…。
≪すぅ…すぅ…≫
≪うぅー…ん…≫
≪なのです…≫
≪もぉー…みんな私に頼りすぎぃ…≫
それは、部屋に秘密裏に置かれたカメラから流れる、
机の上に置かれた優勝トロフィー。そして、
勝利の余韻と大会での疲れで眠りに落ちた、第六駆逐隊の姿。
「「天使だ…」」
長門とマクギリスは同好の士である。
…もしかすれば、勝利者は例え何があろうと、決まっていたのかもしれない。
「…はぁ。やれやれ…」
呆れた陸奥は、『こいつらのこういう所には流石に付き合い切れん』
そう心の中で呟いて、この薄暗い部屋を後にした。
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目覚めた時には、いつかと同じ医務室のベッドの上。
横には随分と落ち込んだ顔のミカと、未だに目を回している金剛と比叡。
それとそいつらを看病する榛名と霧島の姿。
そして…。
「あ、ようやく目が覚めたんですね!オルガさん!」
「うっ…うう…!おお、吹雪…」
「オルガさん達、比叡さんが手を加えたカレーを飲んで凄い事になって、
その後三日月さんだけ起きて必死になっちゃったのか、更にすごい事で…!
今は三日月さん、ちょっと反省中なんでそっとしておいてあげてください!」
「あ、あぁ…」
ミカの奴、なんかやらかしたみてぇだな…。後で話しておかねえと。
それよりなんで吹雪が…。ここに運ばれてからずっと看ていてくれてたのか?
「色々あってカレー大会は無事に、暁ちゃん達の優勝で終わりました。
それでもうすぐ名瀬さん達タービンズの皆さんがお帰りになるそうなんで、
これから一緒に見送りに行きませんか?」
「おう…。なんか、色々世話かけちまって悪りぃな。サンキュ。
目覚めたばっかにゃちと情報過多だが、兄貴が帰るってんなら行かねえと」
「はい!とりあえずこっち…」
とりあえずベッドから起き上がって吹雪についていこうとする。
だがさっきのダメージがまだ残ってんのか、床に足を付けた途端よろめき、そして、
「おっ、と…と…ヴヴッ!」
♪いつもの曲♪
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
そのまんますっころんで顔を強打し、倒れた。なんか、最初を思い出すな…。
今度はすぐに生き返り、吹雪に連れられて港へと向かった。
(…そういえば、あの女の子はどこに行ったんだろ?あれから見てないなぁ。
三日月さんがあんな状態だったとはいえ、抑え込めるなんて…)
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「よう!わざわざ見送りに来てくれたのか」
「そりゃ兄貴が行くってんですから。ミカの奴はちょっと…」
港には既に支度を整えたタービンズ艦隊の面々が、
なるべく近くに停泊させたハンマーヘッドの前で俺らの見送りを待っていた。
着いてすぐ吹雪はなぜかネルソンに呼ばれて少し離れた所に行った。
どうやらお互い新入り同士、なんか水入らずで話したいことがあるらしい。
「…ま、三日月は大事にならずに済んで良かったな。
アイツ聞いたところじゃ、最近の戦いで本調子が出ないみたいでよ、
自分でも知らねえうちにイライラしてたんじゃないかと思う。
ここの連中は皆いい奴らでよ、
すぐ察してくれた上に、誰も気にしちゃいねえみてえだから心配すんな」
「…そっか。ホント、あいつらには世話になりっぱなしだ。
最初なんか、ここいら全部俺らのせいでぶっ壊しちまったっていうのに。
特に吹雪のやつはよ、俺らについてったせいなのかな。
ロクに経験も無えっつーのにいっつも戦場で半端ねえ苦境に付き合わせちまう。
けどよ、毎度毎度笑って言うんだ。俺らのおかげで頑張れる、ってよ」
(※この辺から鉄血2曲目のEDが流れ始める)
「ハッハッハッ!オルガ、お前にゃ勿体無ぇくらいよく出来た妹じゃねぇか。
…守ってやれよ!ここで出来た、新しい家族をよ」
……は?妹?…いや、そうかも知れねえ。
そうだ。今度こそ、この世界で出来た新しい家族を守り切らなくちゃな。
皆俺の鉄華団の新しい団員だ。この先に何が待ち受けていようが、
俺とミカとで守ってやんねえと。
それが団長としての、オルガ・イツカとしての新しい仕事だ。
「…ああ!今度こそ。任してください、兄貴!」
「そういやよ、ラフタが時間いっぱいまで探してたが、
…やっぱここにはいないのか。明宏」
「…すんません。今んとこ、ここにいんのは俺とミカと、あいつらだけです」
「そうか…。いつか、会えるといいな。そん時にゃよろしく言っといてくれ。
…んじゃ、そろそろ行くわ。元気でな、オルガ」
「兄貴も、お元気で」
「この後はアメリ…ま、俺らなりに言うとSAUの辺りに行く。
その後も色々予定がギッチリでな。多分次会えんのはだいぶ後、
もしかすると全部終わった、さらに後かも知んねえな。
っと、そうだ。お前ら、ここの外やこの世界がどういう所か、
多分まだ色々調べが追い付いて無いだろ。色々まとめといた資料置いてくわ。
ちょいとカッコつけて、タービンズ・レポートとでも呼んでくれ。
…にしてもネルソンの奴、いつまで話してんだ…?」
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「…ですよねー!やっぱりお互い新入りで苦労してますね…」
「ああ、そうだな。余もタジタジ、というものだ」
何とはなしに応えてみたネルソンさんのお誘い、と言っても立ち話だけど。
やっぱり海外艦の皆さんのお話はどれも興味深く、勉強になる事ばかり!
…でも、なんだか中々本題が切り出せてないような気がするので、
堂々としているネルソンさんに恐れながらも聞いてみる。
「…そ、それで、どういう用件なんでしたっけ…?」
「おお!そうであった。フブキ、同じ新人のよしみだ。
最後に一つ、どうしても伝えたい事がある。心して聞け?」
な、なんだろう。こっちが聞いたからなんだけど改まって…。
ネルソンさんはそのあと、オルガさんと名瀬さんのほうをチラチラ見て、
聞こえていなさそうなことを改めて確認。
すぅーっと深呼吸してから真剣な目で口を開いた。
「貴様たち、ここのところ快進撃のようで何より。きっとこの先、行動範囲も増えるだろう。
だが…もし、もしもだ。できれば無い事を祈るが、
――欧州に行く事があらば、『余』に気をつけよ。
我らは元々、余に敗れてここへと逃げ延びたような形なのだからな…」
………? どういう意味なんだろう。
でもせっかく仲良くなったネルソンさんの言う事だ。肝に銘じておかなくちゃ。
「はい!分かりました!…ネルソンさんもお気をつけて!
私もこれから、もっと頑張りますかラ!」
「ああ!さらばだ!友よ!」
「お元気で!」
こうして、タービンズ艦隊の人たちは暁の水平線に消えていった。
本当にいい人たちだったなぁ。いつか、また会えるかな?
さてと、私達も帰らなくちゃ。大会の打ち上げパーティー、まだおかず残ってるかなぁ?
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(※どの辺りが流れていようとこの辺でEDが急に止まる)
「…でハ、皆サン!お集マりいタダき有難ウごザイマす。そシテこコしばラく、
私達、深海棲艦ノ、本能!『陸ヲ海に沈めメたイ』、『奴等ヲ水底二沈めタい』
そウいッタ衝動を抑エ続けル。実にゴ苦労様デシた!
まア、こうイう単純ナ手が、敵の油断・警戒ヲ誘ウの二、一番手っ取リ早イでスよね!」
某海域、その深い底。
バエル鎮守府の面々が祭り騒ぎの中、一瞬たりともその姿を見せなかった深海棲艦。
『この辺りの』ほぼ全てがこの場所に集結していた。
海底は数キロ単位で小石一つすら見つけられぬほどに数多くの彼女達に埋め尽くされている。
その中心、巨大な平ための岩の上に、彼女達を統べる『真っ白な少女』が立っていた。
「皆様のゴ協力にヨリ、私ハ全てノ準備を完了すル事が出来まシた!
連中ハ今まさ二油断しテイる中、無事、戦力ヲ整えル算段がツきましタ。
マズはご紹介いたしまス!はるバる欧州かラやって来テ下サイました、
こちラ!欧州水姫さん!!」
白い少女が暗闇に手をかざすと、その先が下から照らされ、
闇の中から甲冑のような印象を受ける服装をした女性が現れた。
「…本当二、アノ悪魔ヲ倒ス用意ガアルノデショウネ?
ワタシタチ亡霊ノヨウナモノガ恐ルル二価スル、アノ鉄ノ悪魔ヲ。
…コチラモ妙二硬イ船ノ連中二、独還姫、船渠棲姫、仏棲姫ヲヤラレ、
ソノ後遠方ヲ任セテイタ新棲姫ラガ、悪魔二斃サレテル。
下ラン会合ナラ早々二帰ラセテモラウゾ?」
深くかぶった鉄兜からは表情は窺いにくいが、余裕のない様子を見せている。
しかしそんな彼女に合わせる気配すらなく、白い少女は続ける。
「ゴ安心下さイ!私ハココしばらク、バミューダトライアングルでアる物ヲ
サルベージしテいまシた。ソレを見レばキットご納得シた上で同盟締結ガ出来ルト、
私ハ考えテいまス。何分こチらも幹部ノ殆どヲ失いマして…。
お互い敵ハあの悪魔。そしテ私ハ奴に対シて多くノ知識ヲ持っテいます。
そちラは欧州を制圧セしメた戦力ヲ提供すルだケ!いイ取引だト思いまスが?」
「ホウ…?ヤレル、ノダナ?アノ悪魔一体ダケデモ、我等ヲ殲滅ナド容易イダロウ。
ソンナ脅威ヲ早急二処理デキルノデアラバ…」
「運が良けレば、貴女二トドメヲ刺すチャンスが来ルかモ…ですヨ?」
「フン。ドウダカナ…」
「アー……論よリ証拠、いッとキます?そノ、例の奴、見た方ガ早イデスかネ?
でハ皆さン!お待チかネのショータイムでス!
これガ、私ガはるバる遠くかラ掘り出シ、
深海棲艦とノデータリンク、内部情報アップデート、システム最適化、
その他微調整を行イ、『
私 た チ の 救 い ノ
モビルアーマー、ハシュマル!!!! 」
…そう。あいつ等は十分に楽しい時を過ごした。
ならば、次に起きるのは、惨劇と相場が決まっている。