艦隊オルガ   作:Nyose

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やはり戦闘したい欲が溜まっているので存分に暴れさせたい
あといよいよ設定のガバが見え隠れしだすけど許して


Emergency Mission

「っと…ここは…あの敵連中についてか。

 兄貴の調べ…『タービンズ・レポート』。すげぇ厚みだなこりゃ。

 …深海棲艦の脅威に晒されている。でも、被害は具体的にゃ分からない…?

 なんでか知んねえがオーストラリアってトコには大穴が…」

 

「何してるの?オルガ」

 

「おお、ミカ。名瀬の兄貴がこの世界についての資料を置いてってくれてな。

 そいつに目を通してるんだが…何分量が多くてな。

 タブレットで用意してくれりゃよかったんだが、紙なんだ。

 なんか、俺らのいた所とはやっぱ技術力がちょいと違うらしい。

 ハンマーヘッドにある分しかねぇから、ああいうのは温存したいとさ。

 けどその割には、どこの基地も明らかにモビルスーツを運用してたらしい痕跡があんのか…」

 

「ふーん…。痕跡、ってどんなの?」

 

「あー…兄貴も内陸は調べられられねぇ感じだったようだが、

 海沿いの基地に入った時、モビルスーツデッキらしき所へ行く道が塞がれてたんだと」

 

「……それで?」

 

「ただ妙でよ、コンクリみてぇので固められてんだが、()()()()()()()

 そんで、その事を現地の奴に聞いたとこ、そもそも道すら認識してなかった。

 …まるでなんかの術にかかってるみてぇにだ。それもどこ行っても、だ」

 

名瀬の兄貴の資料には他にもおかしいトコが沢山あった。宇宙との断交に、

ギャラルホルンがあってテイワズが欠片も見当たらねぇのもそうだ。

 

んで、軍・民間問わずのあらゆるデータベースにゃ、規模だけ人間業じゃねぇ量のくせに、

このレベルならやらねえほうがいいくれぇのずさんな記録の改竄・偽装。

けど元データはやたら丁寧に破壊されて修復不能。んで、こいつも誰も気にしてる様子が無ぇ。

 

世界まるごと人間の認識が書き換わってる、ってのが今んとこの結論だが、

なんだってそんな事を?どんな目的で?

MSの運用も少し前までしてたのが、まるで昔から使ってたみてぇに艦娘に切り替わってるしよ。

 

「あー…クソ。訳分かんね。結局兄貴でも艦娘とはそもそも何なのか、掴めなかったみてぇだ」

 

「別にいいでしょ。吹雪もみんなも、もう俺ら鉄華団の一員だし。

 それが何なのか、なんてどうでもいい。俺達だって似たようなもんでしょ」

 

「…そう、だな…」

 

ミカに言われちゃしょうがねえな。俺らみてぇな死人が生き返るような世界だ。

元が俺らのいたトコと組織とかは似てはいるが、

風景もなんもかんも別モンだ。なんでもありなのかもな。

 

謎は多いが、俺らは今生きていて、ぶっ潰すべき奴がいる。そこは前と変わんねえ。

家族も増えたし、今はそれでいい。

どの道俺らは進み続ける。とにかく止まらなけりゃ、そのうちなんか分かるだろ。

 

 

 

俺がレポートを読む傍らで、ミカがヤシを食い始めて暫くたった頃。

部屋の外から足音とノックが聞こえた。…誰だ?

 

「すまない。オルガ団長、三日月・オーガス。君達にしか頼めない任務がある

 作戦室まで同行してもらえないだろうか」

 

マクギリスじゃねぇか…。

あんなんでも一応ここの提督様だ。それに俺らにしか頼めねえ?…聞いておくか。

 

___________________________________________

 

作戦室に到着すると、俺らと同じ部隊の面子…吹雪達がいた。

 

「…俺らだけ、じゃねえのかよ」

 

「そのつもりだったが…本人達の要望のようだ。仕方がない、共に作戦に当たってくれ」

 

「はい!よろしくお願いします!オルガさんっ!」

 

「んで、まずは俺らを呼び出した用件を聞こうか」

 

 

俺がそう聞くとマクギリスの奴は少し逡巡してから、

 

「…実を言えば、緊急の任務でね。

 先日、とある鎮守府から艦娘が一部隊、消息を絶った。普段通りの哨戒中、突如として。

 通常であれば単なるKIA、もしくはMIA認定なのだが、

 いなくなったと思われる海域周辺にいた艦娘が、妙な物を目にしたと報告していてね。

 

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そうだ」

 

「ッ!?」

 

「…」

 

そいつは…もしかして…。

と、言おうとした直前。先に止められるようにマクギリスは口を開いた。

 

「まだそう結論付けるのは早い。が、恐らくは。念のためだ。今回は私も、バエルを出そう」

 

それを聞いた北上がぼやく。

 

「えー。提督出るのー?また曲芸して終わり、とか」

 

「フッ…。以前は相応しい相手などいなかったからね。あのように遊んでしまったが、

 今回は君達にちゃんと、バエルの力を示すとしよう。大淀、今度は本気だ。

 私の出撃停止を解除してくれないか?」

 

「え…ええ…。まあ…今回はオルガさん達もいますし…。

 お二人が来た時、あれがきちんと戦えるのもまあ見はしましたから…いいですよ…?」

 

どんだけ疑われてんだよ…。マクギリスの奴、過去に相当アレではしゃぎやがったな…。

 

「決まりだ。では征こう。今回、バルバトスはルプスレクスに設定してある。

 各々、万全の状態で挑むとしよう」

 

ん?いや待てよ。もし本当にアレが出たってんなら…。

 

「待ってくれ!万全の体制だっつーんなら、

 今回はやっぱ、吹雪達はここで待っててくれねぇか?」

 

「えっ」

 

いくらなんでも艦娘にあんなもんの相手をさせんのは気が引ける。

何より危険すぎる。そんな無茶はさせられねえ。

 

「待ってくださいオルガさん!お願いします!今回の緊急任務、連れて行ってください!」

 

「駄目だ。アンタらにゃ荷が重すぎる。…ま、本当にいたら、だがな」

 

「何がいるのか知りませんが、まだ仮定の段階じゃないですか。もし違っていたら…」

 

「そん時はミカとマクギリスで大概はどうにかなる。だから…」

 

「それでも!いつも一緒だったじゃないですか!私達も連れて行って下さい!お願いします!」

 

まさか、ここまで吹雪が意地張るとはな…。今までこんな事は無かったし、

確かに戦艦なんちゃらの時も吹雪達がいなきゃ勝てなかった。

…もしかすると今回も、いや、そこまで甘い相手じゃねぇ。が…。

 

「…分かったよ。俺の負けだ」

 

「! 本当ですか!?」

 

「ただし指揮権は俺だ。俺の命令には必ず従ってもらう。

 例え吹雪だろうと単独行動は絶対に許さねえ。いいな?今までの相手とは違うんだ。

 ミカもマクギリスも、それでいいか?」

 

「もとより私は、彼女達が望むのであれば連れて行くつもりだったさ」

 

「…オルガがいいんなら、俺もいいよ」

 

「みんな…ありがとうございます!よぉし!私達もすぐ準備!

 いつもよりなるべく重武装でいくよ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

_________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

――某海域、海底。

 

「イやア!ちゃあンと動いテ、本当二良かッたでス!

 しかも、私達じャあンなに苦戦すルアイツらを、あアも簡単二!

 すゴいデスよネ!欧州水姫さン!多分すグ本番でスから、楽しミですネ!」

 

「…………」

 

撮れたての記録映像だけが明かりになるような暗い底。

鉄兜の女性と白い少女は、新しい玩具がうまく動いたことを確認し、

()()()()()と少女は微笑む。

 

「あレ?どうカしましタか?」

 

「……イヤ」

 

(何ガ良カッタ、ダ。私ガ同盟ヲ断レバ、マズ私二アレヲ刺シムケル気ダッタロウ二…。

 アンナモノ、ドコカラ?バミューダデ拾ッタト言ウノモ、ドコマデ本当カ…。

 

 コンナオカシイ奴ノ要請二応エタ時点デ私ノ負ケダガ、

 ドノ道、コチラモコイツモ戦力ガ困窮シテイタノト、敵ガオナジナノハ一緒ダ。

 

 ソレニアノ化物ノチカラ、私二ソノウチ…トイッテイタ。

 セイゼイ利用シテ、奴等ヲ沈メタ後、コノ気色悪イ奴モ潰シテヤルトシヨウ…)

 

こんな何を考えているか分からない奴の下につく事は不服であったが、

力を得られるならば今は耐えよう。鉄兜の女性はそう思った。

 

白い少女は映像を何度も再生しては同じシーンで手足をばたつかせ喜んだ。

 

自分たちの敵が、虫に集られる場面と、熱線で薙ぎ払われる所で、何度も、何度も。

 

鉄兜の女性は、傍でそれを眺めては、覆った眉をひそめる。

 

「…楽しイでスね!欧州水姫サん!」

 

「…アア」

 

利害は殆ど同じとはいえ、なんでコイツと組むことになったのか。

 

この悪趣味さが、どこを見てるか分からない目が、全部知ってるような言動が。

とにかく気に食わない。用が済めば消してしまおう。彼女は何度もそう思った。

 

________________________________________

 

 

 

「……結局今回の任務って、捜索?それとも何かがいるから、っていう討伐?」

 

「何かいるから捜索は打ち切り、討伐みたいネー。

 光の線の目撃報告が出た途端、大本営直々でウチに来たみたいデース」

 

「にしても静かな海ね。途絶えたポイントはこの辺りのようだけど、今の所何もないわ」

 

加賀さんの言う通り、今回の作戦海域は本当に静かでした。天気も快晴。

…本当に、この辺りで私達と似たような子がいなくなったなんて、信じられないくらいに。

 

私達はなるべく後ろの方にいろ、というオルガさんの指示に従い、

なるべくまとまって、それでも速度は出して、この静かな海を進んでいます。

 

というのも、先導しているのは三日月さんのルプスレクスと、

提督の乗っている…バエル?だっけ。

本物は初めて見たけど、提督もあんなの持ってたんだ!かっこいいなあ…。

 

雲一つない空と輝く海。そこに『映える』白い翼のガンダム!

六駆の子達がいつも大喜びしてたって言うのも本当だと思う。

 

それで、その二機がかなり速度を出しているので、置いてかれないよう、

頑張ってこっちもスピードを出している所です。

あ、オルガさんはレクスの肩に乗ってます。 乗っているというか、しがみついてます。

 

「…なあミカ、他にいい方法あると思うんだが…?!」

 

≪オルガが水の上走るの、そんな速くないでしょ。それにすぐ命令出さないとだから。

 このくらいのが丁度いいでしょ≫

 

「だったらもう少し速度を落とし…ウヴヴヴヴァアアアァアァ!!!」

 

あ、オルガさん吹っ飛んだ。バルバトスの肩ってつるつるしてるもんね。

今までむしろよくしがみついてたと思う。

 

そのままオルガさんは高速で水面に頭から叩きつけられ、

私達の真横を転がりながら通過して、

 

♪いつもの曲♪を流していた。…首が変な方向に曲がっていたような。

 

「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」

 

 

≪…大井、拾いに行って≫

 

「…ヒッ!アッ!ハイっ!」

 

「あ、あはは…」

 

「ホント最近、大井っち大人しくなったよねぇ~…。ま、いーんだけどさ」

 

 

 

「…にしても私のワガママにつき合わせちゃって…。みんな、ごめんね?」

 

「いーって事デース!ブッキーは、ワタシ達の旗艦デスから!」

 

「どのみち私達もそろそろ出撃したかったし。この頃ホント平和で平和で…」

 

「五航戦はそんなに戦いたい戦闘狂なのですか?…まあ、私も言えた義理ではないけど」

 

 

 

 

蘇生したオルガさんを大井さんが前方へ運び終わって暫く。

先導しているレクスとバエルの動きが止まる。

 

「どうしたんですか?…あれ、なんか…いる?」

 

二機の視線の先には、うっすらと鳥のような何かが見える。

雰囲気的にかなり距離があるけど、あの大きさって事は…おっきい鳥だなぁ…。

 

≪…やはり≫

 

≪うん。…来る≫

 

え?来るって?何が? あ、なんか光ってる。なんだろう。

 

 

戸惑う私達をよそに、今度はバエルの肩に乗っていたオルガさんが振り向き叫ぶ。

 

 

「ッ!お前ら、今すぐ散らばれぇえええええぇーーーッ!!」

 

「はっ!はいっ!」

 

血相を変えて怒鳴るオルガさんに言われた通り、即座に左右に散らばる私達。

それに合わせてオルガさんもバエルの肩から飛び降りた、

 

 

 

次の瞬間、

 

 

 

 

まるで踏切でよく見る光景のように。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何!?今のは?!」

 

「何なのよアレ!避けてなかったらどうなってたの?!」

 

「総員!戦闘態勢っ!オルガさん!あれが…?」

 

 

「ああ、まさにあれこそが…。

 

 

 モビルアーマー、じゃねぇか…!

 

「もびる…あー、まー…?」

 

 

三日月さんと提督も、あの巨大な鳥をずっと睨んでる。

 

≪……ぁーー…≫

 

≪ついに…今の私の前に…この時が来た、か…。

 三日月・オーガス。()()()、私も、助力して構わないかな?≫

 

≪…うん。前となんか違う。頼むかも≫

 

≪有難う。…では≫

 

 

二機のガンダムは突撃の態勢を取り、武器を構える。

 

 

 

 

 

≪―――三日月・オーガス。ガンダム・バルバトスルプスレクス≫

 

≪マクギリス・ファリド。ガンダム……バエル!≫

 

 

 

≪≪ ―――……行くぞ  ≫≫

 

 

 

どうしてオルガさんが私達を連れて行くのを躊躇ったのか。

そして三日月さんや提督が見た事ないような真剣な顔をするのか。その答えは、すぐに分かった。




マッキー参戦! これがどう影響を与えるか・・・?

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