艦隊オルガ   作:Nyose

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読み飛ばせるシリーズの中では比較的重要回


虚王の崩御、欠けゆく月 (読み飛ばし可)

遡る事数分前。

 

 

「准将が…くっ!私もモビルスーツを出せれば…!」

 

悔しそうに言葉を漏らす石動。

 

「何だよ…お前は出来ねえのか?」

 

「ああ、准将のように私もできるか何度も試した。だがどうやっても行かんのだ」

 

「それじゃアンタは戦えねぇって事か」

 

「戦力として准将のお役に立てない今、私にできるのは

 本来准将が行う演習や遠征など日々の任務をほぼ全て指示する程度しか…」

 

(ん?要するに仕事を全部石動がやってるって事はマクギリスは普段何してんだ…?)

 

鎮守府の謎がより一層深まった直後、長門が叫ぶ。

 

「…おい見ろ!…何やら嫌な予感がするのだが…あれは?」

 

長門が示しているのは海上に佇むキマリス。

何やら槍を構えている。

 

「槍の側面から露出している弾頭…まさか!ダインスレイ…」

 

石動が気づいた時には遅かった。

射線上にはガッツリとオルガ達のいる提督室もある。

逃げる暇すら与えない超高速の弾丸が、バルバトス、バエル、そして

鎮守府を貫いた。

 

「ヴゥゥゥァアアアアアアアア!!」

「准将ぉおおおおおおおおお!!!」

「ぐぁぁっ…!」

 

着弾の余波でオルガ達のいる提督室は全壊。

さらに衝撃で吹き飛んだ瓦礫などが容赦なく降り注ぐ。

※吹雪達の周辺は無事。「なんか揺れて大きい音したね。地震かな?」程度。

 

様々な破片に埋もれたオルガが最期に見た光景は―――

 

__________________________________________

 

 

「これで…ようやくアイツを終わらせられるのか…」

 

煙と砂塵にまみれる鎮守府を眺めガエリオが呟く。

まるで本来いてはならないものをようやく祓ったかのように。

 

しかしその安息はすぐに破られる。

 

煙が晴れ、白い人型が空に佇む。

 

「!!…あれは…バエル…!」

 

「まさかお前がここまで手段を択ばないとは。イカれているな!ガエリオ!」

 

「正気言うな!マクギリスゥ!!!」

 

キマリスが下ろしていた槍を構える前にバエルが突撃する。

その途中、バエルは折れていた右手の剣を捨てる。

 

猛スピードで繰り出されたバエルの体当たりは直撃。

キマリスは仰け反り、二機は密着する。

 

反撃しようとキマリスは右手のドリルランスを向けるも、

バエルの剣をランスの柄に引っ掛けられほじくり落される。

 

反対の腕に持つ刀も降ろうとするがこちらはバエルの右腕で肩を掴まれ、

通常のガンダムフレームより強力といわれる膂力でキマリスの左腕は千切られる。

 

 

この瞬間、バエルの両腕は開かれ、胴体がガラ空きになった。

 

武器と腕を奪われたものの、ガエリオはこの一瞬の隙を見逃さなかった。

 

 

キマリスの右膝から棒状の物が伸びる。

 

 

バエルはそれを見た瞬間蹴りの構えを取ろうとするが、もう遅い。

 

 

「……さらばだ、マクギリス」

 

マクギリスは迎撃が間に合わない事を悟ると、一瞬、笑みを浮かべ、

 

「フッ…ガエリオォオオオオオオオーーーー!!!!」

 

慟哭とともに、

 

バエルの胸はドリル二ーに貫かれた。

 

___________________________________________

 

 

沈んでゆく。

 

暗い水底に。狼王は沈む。

 

ガンダム・バルバトスルプスレクスは左半身を大きく破損。

左腕は丸ごと無くなり、全身はズタズタになっている。

 

ダインスレイヴは直撃していた。

 

目の前のバエルに集中していた三日月は視界の外のキマリスへの警戒を緩めていたのだ。

 

発射の瞬間を目撃していたバエルはそれでもなお拘束しようとしたレクスの抵抗空しく

剣一本折れたのみで他に大きな損傷は無かった。

 

そして大破状態となったレクスは今、海底へ没しつつあった。

 

 

浸水してゆく操縦席。

 

レクスの表面になにやら小さな黒い塊や色の白い人影がまとわりつき始めていたが、

 

数秒前に気絶から目覚めた三日月には関係のないことだ。

 

 

「………バルバトス。……生きてる?」

 

少し操縦桿を動かしてレクスの動作を確かめる。

塊や人影は散った。どうやらまだ動く。

 

 

「…そっか。そうだな。まだ止まれない。おい、バルバトス、

 お前もまだ止まりたくないんだろ?」

 

 

レクスの瞳が赤く輝く。

 

 

「じゃぁ……行くかぁ…!!!」

 

________________________________________

 

 

海が爆ぜる。

 

沈んでゆくバエルを眺めていたガエリオ爆ぜた水面へ目をやると、

 

 

次の瞬間、すぐ近くにはボロボロのルプスレクスが迫ってきていた。

破損状態はそのままだが、なぜか色は白・黒・灰の三色のみに変わっている。

 

「あの色は深海棲艦…!……貰うぞ、マクギリス」

 

もう動かないバエルの腕から剣をもぎ取る。

 

しかしその動作の間にもレクスは目前まで来ていた。

 

(間に合わな…!)

 

 

「諦めるんですか!ガエリオ・ボードウィン!!」

 

 

レクスの手刀がキマリスの間近まで迫った瞬間、

空の彼方から深緑色の機体が現れ、レクスの姿をキマリスの視界から奪い去る。

 

「チッ!邪魔が…!」

 

「ええ、その通りです!私はあなたの邪魔をしに来ました!」

 

脚を畳み、レクスを蹴り飛ばし距離を取る。

 

「ジュリエッタ!お前まで何故ここに!」

 

深緑色の大型モビルスーツ。レギンレイズ・ジュリア。

搭乗者、ジュリエッタ・ジュリス。

 

「それはこちらのセリフです!なんですか突然!

 急に『奴がいた。俺が止めなきゃならない』と飛び出して!」

 

どうやらガエリオを追って来たらしい。

そして目の前には彼にとってのマクギリス同様因縁の相手。

 

「ゴチャゴチャうるさいな。お前も、消えろよ」

 

切羽詰まった状況であることを把握したジュリエッタは眼前の「敵」に立ち向かう。

 

走り出すレクス。ジュリアは両手の蛇腹剣を伸ばしレクス向け振るう。

瞬間移動に等しい速度で移動しレクスはこれを回避。

 

逆にブレートテイルをジュリア向け放つが、

同じく高速で移動してきたキマリスがこれを剣で弾く。

 

蛇腹剣を畳み接近してきたレクスと打ち合うジュリア。

 

「私には、貴方を超えらえない!」

 

「は?」

 

「私には!貴方の様にはなれない!与えられてばかりの私には!

 貴方の様にただ生きて!貴方のように勝ち取って!掴んで!進めない!」

 

「……」

 

「でも!それでも私は!貴方には遠く及ばないにしても信念がある!決意がある!

 届かなくても!そんなもの貴方には必要なくても!私はそれだけででも貴方と張り合いたい!」

 

両者の凄まじく激しい攻防は長く、永劫に続くとも思えた。

途中途中キマリスの援護は入るものの徐々に押され始めるジュリア。

 

「…与えられずに生きてる奴なんかいないさ。俺だって、オルガに全部貰った。」

 

何度目かの蛇腹剣とレクスの尾の絡み合い。

瞬間移動したキマリスが持つバエルの剣にブレードテイルは切り落とされる。

 

「オルガに貰った命はもう使っちゃったけど、今のだってオルガの為に使う。それに―――」

 

ジュリアのバルカンの直撃を受け、限界を迎えていたレクスの装甲はばらばらと崩れ落ち、

残っていた右腕も落ちる。

 

「―――俺も、誰かに何か…あげれたの…かな…生きてくための…」

 

 

最後の一閃が、レクスを裂いた。

 

 

(あぁ…腕輪、汚しちゃったなぁ。春雨怒るかなぁ…。如月も一緒に…謝って…くれるかな)

 

_____________________________________________

 

 

(…ミカ。よくやったよ。しくじっちまったからってよ…気に病むんじゃねえぞ…)

 

陸に広がる瓦礫の海。かつて提督室と呼ばれた場所で生きているのは、

瀕死で寝そべるオルガのみ。

 

オルガが最期に見た光景は苦いものでも、決して悲しいものではなかった。

 

 

「だからよ……止まるんじゃねえぞ……」

 

 

そう言い残したオルガの真上に、わずかに残っていた天井が降った。

 

_____________________________________________

 

数週間後 ギャラルホルン附属病院

 

敷地内の中庭、車椅子の男とそれを押す女性の姿があった。

 

「あの鎮守府を吹き飛ばした件、何とかなって良かったですね…」

 

「全くだ。たまに思うんだよ。もしオルガ・イツカに死を引き寄せる呪いが掛かっているのなら、

 俺には出撃の度何か巻き添えを起こす呪いでも掛かっているのか?…って」

 

「今度お祓いにでも行きますか?私の知り合いにその手の関係者がいるんですよ」

 

あの戦いで少なからず傷を負ったガエリオはジュリエッタの見舞いを受けていた。

友を、宿敵を討った二人。多くの犠牲の上に立つその地を踏みしめながら語り合う。

 

「今回の件で大本営は大きく変わるだろう。そしてそこから生まれる新しいギャラルホルン。

 次の担い手は君だと皆が噂している。悪魔の首を取った凛々しき女騎士」

 

「あれは殆ど貴方のおんぶにだっこでした…。相も変わらず無力な私が嘆かわしい。

 でも人間としての…人らしい強さとは…何となく…」

 

「そうだ。ジュリエッタ、このあとの仕事は?食事をする時間くらいはあるんだろ?」

 

「ハァ…。貴方は変わりませんね。ちなみにこの後はライブです。」

 

「ライブか。…お前そんな仕事してたっけ?」

 

「この間見せたでしょう」

 

「あー…あれか。かなりいい歌だったが、まさかお前だったとは。…そのあとは?」

 

「特撮の撮影が」

 

「アレ…あー?…いつも見てるよ。何だっけ?ピンクだったか、イエローだったか

 お前も最近多忙だな。……よく戦いと両立できてるな?」

 

「もうっ…!その後なら空いてます。多分夜くらいになるでしょうが。肉を所望します」

 

「肉か。いいね。お前ももう少し肉をつけたほうが俺好みに…」

 

ジュリエッタが車椅子を握り走り出す。

 

「ちょっ!速っ!おい、乱暴だって!」

 

その直後に遠くのほうからなにやら赤い一つ目のついた黒いボールのようなものが弾んでくる。

 

「ボードウィン特務三佐!ソコニ居マシタカ!探シマシタヨ!」

 

「げぇっ!アイン!ジュリエッタ!予定変更だ!このまま連れてってくれ!速く走れ!」

 

「え…?どうしてです?あれは確か貴方の…」

 

「アイツあの体手に入れてから俺の母親みたいになってきたんだよ!」

 

「オ待チクダサイ!キチント病院食ヲ食ベテクダサイ!

 私ガ栄養ヲ監修シテイマスノデ特別二傷ヲ癒スノニ最適ナ献立二シテオリマス!」

 

「いつも残さず食べているからたまにはいいだろう!ちょっとくらい肩の力を抜かせてくれ!」

 

「…と、とにかく行きます!しっかりつかまってて下さい!」

 

「待ッテクダサイ!特務三佐!ボードウィン特務三佐!私ハ…私ノ正シ……」

 

 

(鎮守府崩壊を含めた)一連の騒動はマクギリス・ファリド事件と呼ばれ、

全責任を背負わされたその名の本人の死によって幕を下ろした。

またイシュー家、クジャン家、ファリド家を失ったギャラルホルン大本営は

セブンスターズによる合議制を廃止。より民主的な組織として再編され、

その初代代表にラスタル・エリオンが就任した。

 

人類と深海棲艦との戦いは、これからも続いてく。





艦隊オルガ これにて一旦完結
読み飛ばし可の記載があるにも関わらず読んでくださった方はありがとうございます
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