東方鉄拳翔~Iron Shrine Maiden~ 作:水石Q
博麗霊夢:巫女。人間。バスタオルは毎日洗うタイプ。ちゃんと弾幕も撃てるが、本作ではほとんど肉弾戦しかやらない。誰だこんなキャラにしたの。俺だ。
霧雨魔理沙:スーパーウルトラプリティ愛され系大魔法少女(本人談)。人間。最近、バク宙が出来るようになった。周りからは「いい加減地毛なのか染髪なのかハッキリしてくれ……」と思われているが、本人は気づいてない。髪は地毛。
八雲紫:幻想郷を統治する賢者。スキマ妖怪。好きなアニソンはTHE REAL FALK BLUES。ビバップで好きなキャラはジェット。キノコ回で盆栽に語りかけるシーンがたまらないのだとか。
第一話 巫女とヴラド
*~『東方紅魔郷』編 悪魔だった姉妹~*
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この世のどこかにあるという、もう一つの可能性の世界。我々が住む世界とは不可視の壁で隔てられた、不可視の世界。
『幻想郷』と言われるその小さな“世界”は、人間の他に、我々が『幻想』と切って捨てたモノが多々住まう。
妖怪。妖精。仙人。神。種族は多岐にわたるものの、彼等はそれぞれに手を取り合い、平和な日々を送っている。箱庭を取り巻く時はゆるゆると流れ、生き物の営みは続けられていく。
だが。
そんな幻想郷も、時には存亡の危機に立たされる事もある。数多の非常識的存在によって引き起こされる様々な事件──通称『異変』は、幾度となく幻想郷の民を混乱に陥れた。
ある時は空が紅に塗り潰された。
またある時は冬が長引いた。
ある時は明けない夜が続き。
またある時は季節外れの花がそこら中に咲き乱れた。
こういった異変は並大抵の人間では太刀打ちできず、人々はその脅威に怯えていた。
しかし、人類とてただ指を咥えて幻想郷の崩壊を目にしていたわけではない。事実、幾多の困難に襲われても、彼等の住み処は確かに在る。
幻想郷を守護する、異変解決の専門家がいるのだ。彼女達によって、楽園は楽園足り得る。
この物語は、彼女等の長きにわたる激闘の記録である。
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闇に満たされたホールの中には、悪魔共が
「お嬢様、準備が整いました」
銀糸の如き髪を短く切り揃えたメイド服姿の少女はそう言って、恭しく頭を下げた。
「ありがとう、
それに答えるのは、咲夜と呼ばれたメイドより一回りも二回りも小柄な少女。華美な玉座にふんぞり返った彼女は、肘掛けに垂らした右手の中でワイングラスを弄んでいた。
「月が綺麗ね、私達の門出に相応しいわ」
咲夜がグラスの中にワインを注ぐ。少女はそれを呷ると、口腔に広がる
「えぇ、お嬢様。お嬢様が支配するこの世界は、さぞや素晴らしき世界となる事でしょう。それこそ、真の意味の“理想郷”となる筈です」
「違いない」
少女は玉座から立ち上がり、グラスを掲げた。背後の窓から射し込んだ月明かりが、液体を透かして濃密な紅にその色を変える。少女はその美しさに感嘆したようにふっと溜め息を吐いて、その直後、吐き出した息を大きく吸い込んだ。
「親愛なる悪鬼羅刹の諸君ッ!」
びん、と。空気が一気に張り詰める。蠢くナニカがしんと静まり、次いで一斉にかしずいた。
「これより、“紅霧の儀”を実行する!」
高らかに少女が宣言すると、ドッ──と歓声が沸き起こる。甲高く、騒々しい。怖気を催す、人外共の愉悦。
「此れは聖戦に非ず! 故に聖人は殺せ! 此れは統治に非ず! 故に従わぬ者は殺せ! 此れは蹂躙に非ず! 故に抗う者は殺せ!」
殺せ。殺せ。そうだ、殺せ! ホール内のボルテージは、悪辣なまでに跳ね上がる。
「諸君等に必要なものは大義名分でも、武器でもない! 諸君等が他に反吐の如く吐き散らす、邪悪な殺意のみ! ……ツェペシュの末裔の名の下に、人間共を串刺しに!」
『ツェペシュの末裔の、名の下に!!!』
数多の音の重なりとなって、少女の宣言が復唱される。少女は締めとばかりにグラスを一層高く掲げ、浴びせられる歓声を一心に受けた。
舞台の幕引きと言わんばかりに、少女は観衆に背を向けてそこを去った。後を追ってくるのは、忠実で優秀な使用人の咲夜のみ。
自室へと続く通路を歩きつつ、少女は密かに拳を握り込んだ。
──待っていろ、フラン。必ず、お前を……。
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宵闇の妖怪・ルーミアは、ただただ不思議な思いで空を見上げていた。
──おかしい。これはおかしい。
ルーミアが見上げている空は、その時確かに異常を来していた。
いつもはこの時間になれば宵闇が辺りを支配し始める頃合いなのだが、その日はいつになっても夕焼けがしつこく居座っていた。
──いや。“夕焼け”という表現は、些か適切ではないと訂正しよう。何故なら木々の間より垣間見える夕焼けの色は、茜色というよりも
「およー……」
ルーミアにもその異変はある程度察知できた。いつもと違う空の様子に、僅かながら不安を覚えていた。
だがふとした物音から、彼女の興味は赤い空からいとも容易く移ってしまった。
枯れ枝を踏み砕く、小気味好い音。大木の幹に手を掛けて現れたのは、ふてぶてしい顔つきの少女だった。
肩甲骨の辺りまで伸ばした髪を、大きな赤いリボンで一つ結びにしている。背中には
彼女はルーミアの姿を認めるや、はぁーっと大袈裟に溜め息を吐いた。
「夜の境内裏はロマンティックで良いけれど、あんたみたいな碌でもないのがいるから惜しいわね」
「あなたはー?」
「あんたの獲物よ」
「そうなのか」
ルーミアの瞳がパッと輝いた。残光となって、少女の眼前に光の尾を引きながら。
いつの間にかルーミアは少女のすぐ後ろに飛び上がっており、今にも少女の細い首を切り落とさんとその腕を振るっていた。少女が肩を揺らすがもう遅い。
ルーミアの五指が、その柔肌を切り裂く──。
かに思われた、瞬間。
「なんてね」
そんな呟きが聞こえてきたかと思うと、気づけばルーミアの攻撃は空を切っていた。ルーミアにも理解できる。避けられた。しかも、少女の姿勢は先程から大きく変わっていない。まるでルーミアの攻撃が見えていたかのように、最小限の動きで回避してみせたのだ。
驚愕する間もなく、伸ばしきられた右腕がガッシリと掴まれた。
「本当は、あんた
掴まれた右腕が、凄まじい勢いで近くの大木に打ちつけられる。頑健な妖怪の右腕はそのまま幹にめり込み、ルーミアは動きを封じられる。
少女はルーミアを釘付けにすると、流れるように体を半回転させ、ルーミアの首筋に肘鉄を叩き込んだ。
その間、僅か五秒。
昏倒する寸前、ルーミアは消えゆく意識から懸命に言葉を紡いだ。
「あ……な……た……は……?」
「なーに、また同じ質問?」
少女はルーミアから手を離すと、既に興味は失せたとばかりに彼女に背を向けて歩き出した。
「
お読みくださりありがとうございました。前書きの人物紹介は魔理沙のアレを書きたいが為に作りました。反省はしてるけど後悔はしてません。
次回から本格的に紅魔郷編スタートですので(いつになるかは分からないけど)ご期待ください。
では、また次回。