東方鉄拳翔~Iron Shrine Maiden~   作:水石Q

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よろしくお願い致します。今回、同じくハーメルンで活動しておられ、更にTwitterで交流もあるやつは様に挿絵を描いて頂きました! とんでもなくキマってる(クスリ的な意味ではなく)霊夢さんです。超感謝です。(掲載許可は頂いております)

☆今回の登場人物☆
橙…マヨヒガを守護する化け猫。蹴りを主体にしたファイトスタイルとアクロバティックな動きで霊夢を翻弄する。目玉焼きにはソース派。


第四話 賢者の企み

 

【挿絵表示】

 

 

 #####

 

 何が起こったのか、一瞬、霊夢は判断しかねた。

 瞬きの後に、体の至る所から()()()()()()()()のだ。

 ()()()()()()()()、と気づいたのは、橙が脚を振り抜いた姿勢のまま止まっていたからだった。

 脚から力が抜ける。関節を斬られた。どうと崩れ落ちる。

 

「おやァ? 大口叩いた割には、随分とダウンが早いな」

 

 橙が脚を下ろしつつ言う。霊夢は起き上がろうとするが、少しでも身動ぎすれば、鋭い痛みと共に血が迸った。

 

「あんまり動かない方がいい。なるべく深く広く傷をつけたからね。そのまま大量出血でお陀仏なんて、私に蹴り殺されるより格好つかないよ?」

 

 ……速い。これが妖怪の力。

 霊夢と(いえど)も人間。ヒトの域を超えた妖怪の業には所詮敵わないのだろうか。

 

 ()()

 

 ()()()()()()()()()()

 

 

「……まだよ」

 

 霊夢は震える手で懐に手を入れ、数枚の御札を取り出し、傷口に貼りつけた。寝そべったままで印を結ぶと、

 

「〜ッ!」

 

 御札が発光し、ジュウウと音を立てて霊夢の肉が焼かれる。橙が顔を歪めた。

 

「なるほど、霊力で熱を生じさせて傷口を焼いたか」

「少しは……マシに、なったわ、ね……」

 

 立ち上がり、構える。しかし、その構えは少々特殊だった。武術らしく腰を落とす下半身はそうでもないが、両手を下げ気味に広げている。まるで、抱きつこうとする人を受け止めようとしているかのような形だ。

 

「何のつもりか知らないけど……どうやったって本気の私にゃ勝てないよッ!」

 

 橙が駆け出した。側転、バク転から跳躍、空中で捻りを加えての飛び蹴り。それに対して霊夢は、僅かに上体を横に逸らした。

 狙いを外された橙の蹴撃は、霊夢の脇腹を掠めるだけに留まった。橙、着地してすかさず、蹴り足を跳ね上げた。しかし、それも躱される。いや、狙いを定めた首筋と、橙の脚の間に、霊夢の篭手が差し入れられ、脚の軌道を逸らしたのだ。

 連続の蹴撃を、霊夢は立て続けに避け、流していく。まるで滝を蹴っているようだと、橙は思った。攻撃は受け流され、裏拳や掌底にて橙の脚はじりじりと傷つけられていく。具足越しでも伝わってくる、途轍もない衝撃だった。

 

 橙は焦っていた。

 全力で打ちかかった。霊夢も最初は対応しきれず防戦一方だった。なのに今は、橙が押しているように見えて、実は橙が追い詰められていた。

 

 

 実はそれこそが、博麗式戦闘術の真髄であった。

 不定形の影のように敵の攻撃を受け流し、同時に陽光の如き鮮烈な攻撃。

 (防御)(攻撃)一体の格闘メソッド。

 

 博麗式戦闘術壱の型、『森羅結界』。

 

 

「な……!?」

 

 遂に、霊夢の掌底が橙の脚を弾き飛ばした。予想外のカウンターに思わず体勢を崩す橙。

 倒れ込み見上げた天井は、紅白の巫女によって覆い隠されていた。

 

「ちょ、待って! ムリムリムリムリムリムリ──」

「『夢想封印・鉄拳翔』ッッッ!!!!!」

 

 直後。轟音と共に、マヨヒガが()()()()()()()()。インパクの中心には霊夢。クレーターの中央で、橙の腹に拳をあてがっていた。

 すっ、と拳を離し、立ち上がる。

 

「邪魔っけな民家もなくなったわね。さぁ、先に行かせてもらうわよ」

「……」

 

 橙は答えない。気を失っていた。

 興味は失せた、と言わんばかりに飛び去っていく霊夢。その背後で、()()()()()()()()()()事には気づかずに。

 

 ぞゅる。

 

 形容し難い怪音を立てて、空間そのものが裂ける。その裂け目──スキマの中には無数の目玉が忙しなく蠢いており、両端のリボンは、まるでスキマの拡大を阻止するかのような絶大な霊力をひしひしと感じる。

 そのスキマから伸びた手が、橙の頬をペチペチ叩いた。

 

「橙……起きなさい、橙……橙ったら、ちぇーんー。……ほーら、マタタビですよー」

 

 その手が一度引っ込み、マタタビの入った袋を橙の鼻の前で振ると、猫又はバチィッと音がしそうなほどの勢いで目を見開いた。そのまま袋にしがみつき、恍惚の表情で頬擦りする。

 

「うにゃーっ!」

「起きてるじゃない、橙ったら、最初からマタタビが狙いだったのね?」

 

 呆れ声と共に上半身を虚空から出現させたのは、紅魔館で霊夢たちを手助けした妖怪賢者、八雲紫であった。橙は彼女の──厳密に言えば、彼女が使役する式神の──式神である。紫の指示で、霊夢の()()()()()()()()()()

 

「それで?」

「うにゃあ……?」

 

 すっかり骨抜きになった橙に、紫は訊ねた。

 

()()()()()、と訊いているのよ」

「あー……うーん、そーですね」

 

 ひとまずマタタビから顔を離し、橙は思案顔になった。どうだったかと訊かれても、それは紫様が一番知っているはずなのに。

 

「強かったです、すごく。こっちの本気にとんでもない速さでついてきてました。あれが博麗の巫女に代々伝わるっていう?」

 

 紫が首肯する。

 

「清流の如く攻めをいなし、激流の如く攻めを砕く。万物を拒む事なく受け止める、幻想郷らしい体術ね。教えた甲斐があったわー」

 

 嬉しそうに話す彼女。しかしその目は、どこか遠くを見つめているようで。

 

「でも、まだ足りない。あの子は現時点において博麗式戦闘術は完成に至ったと思っているわ。事実『鉄拳翔』なんて()()()()()()()()まで編み出しているその実力は認めるけれど、私に言わせればそれすら()()()よ」

「え……」

「それに鉄拳翔も百パーセントオリジナルとも言えないのよね。夢想封印は先代が独自に編み出した拳技だし」

「……」

「あの子はまだまだ強くなる。それこそ、誰よりも、ナニよりもね。これから起こる、地獄も冷えきるような戦乱を勝ち抜くほどに。その為に、今回の異変を仕込んだのよ」

 

 橙は寝そべったままで話を聞いていた。

 

 ──怖い女だ。ただの人間に、どこまで課すつもりなんだ?

 

「さ、そろそろ帰りましょ。今日の夕飯はすき焼きよー」

「……また肉ばっかり食べて、鍋を緑色にしないでくださいね」

「ぶー、しないわよそんな事……たぶん」

 

 橙が体を潜り込ませると、スキマはぴっしりと閉じた。

 そこには何もなかったかのように、誰もいなかったかのように、静けさがただ在った。

 

 

 

 




お読みくださりありがとうございました。
なんだこのボリューム! 全然読み応えがねぇ!
プロットの都合でこんなんなりましたし、博麗式戦闘術のくだりは推敲に推敲を重ねてもこんなんにしかなりませんでした。すみません許してください! 何もしませんけど!

次回は何とかなります。てかします。
では、また次回。
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