東方鉄拳翔~Iron Shrine Maiden~ 作:水石Q
☆今回の登場人物☆
チルノ:氷精。霊夢の前に立ちはだかる。意外と頭がいい。ネプリーグのファイブボンバーでも3秒と経たず答えちゃう。
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霧の湖。春夏秋冬昼夜問わず、常に濃い霧が立ちこめる広大な湖。
平時より濃密な霧に巻かれながら、霊夢は湖の上空を漂っていた。持ち前の勘の鋭さでここへ来てみたものの、これではどこも見通せはしない。空から窺おうにも紅い霧がそれを邪魔する。文字通り、
「これではどこも見通せやしない……それに、何だか寒いわ。今は夏の筈」
独りごちて腕を擦る。夏も真っ盛りだというのに、いくら何でも寒すぎる。決して水場にいるからではない。この寒気は異常だ。
動き回って寒さを誤魔化そう……そう思って霊夢が調査を再開しようとした、その時。
「道に迷うのは」
声のした方を見ると、濃霧の中から進み出てくる影があった。不思議な事に、その人影の周りだけ嘘のように霧が晴れ、その姿を露にした。
青いショートヘアをリボンで結び、髪よりも濃い色の青いワンピースを身に付けている。一際目を引くのは、その背中から生える、氷でできた三対の翼。
「妖精の仕業なのよ」
そう言って、不敵な笑みを浮かべるのは、“妖精”チルノだ。
「この霧はあんたの仕業?」
「どっちのよ」
「
「なら答えはノーだよ」
「じゃあ、あの赤い霧について何か知ってる? 誰が、どんな理由でとか」
霊夢が訊くと、チルノは腕組みをしてフフフとほくそ笑んだ。
「知ってるよ」
「へぇ、教えてよ」
「いいよ。でも……」
チルノは両手を広げた。彼女の周囲に、身を刺すような冷気が渦を巻く。
「あたいに勝てたらの話だがな!」
次の瞬間、渦巻いていた冷気がねじ曲がり、極太の氷柱を形成した。あの妖精は、冷気を操る力があるらしい。
氷柱はしばらくその場に漂っていたが、霊夢が瞬きをした瞬間、猛スピードで射出された。
「ッ!」
息を詰め、空中で身を翻し、氷柱をかわしていく。チルノはどんどん氷柱を形成しては撃ち出し、息吐く暇さえ与えない。
対する霊夢も、卓越した空中機動によって攻撃に掠りもせず避けていく。そして氷柱の隙間を見つけては飛び込み、着実にチルノとの距離を詰めていく。やがて彼我の距離は縮まり、一足一刀の間合いとなった。
「私に勝負を挑もうだなんて、度胸だけは褒めてあげる!」
霊夢はそう言って、拳を振りかぶった。霊力が込められた拳打は先程の氷柱もかくやという速さで振るわれ、吸い込まれるようにチルノに──。
刹那。
チルノが口角を吊り上げ、ニヤリと嗤った。それは可憐でありながら寒気のするような、まるで悪戯が成功しそうな悪童の如き、幼稚な悪意に溢れたものだった。
霊夢はチルノの笑顔に何かを感じ、咄嗟にその場を飛び退いた。
足許から飛沫を噴き上げて、巨大な氷柱が突き上げられてきた。避けきれず、霊夢の体は浅く切り裂かれた。血の珠が宙を舞う。
「くッ……」
「ッあははははははは! 引っ掛かったなぁ!」
チルノの哄笑が響き渡る。濃霧のせいで気づくのが遅れた。それだけではない。
「これで、トドメェ!」
チルノが腕を振り上げる。霊夢のすぐ下の湖面が泡立つ。
まずい……!
あわやまともに喰らうかに思われたその時、霊夢の体を凄まじい力で引っ張る者があった。ガクンと揺さぶられる視界。僅かに焦げ臭い匂い。
白黒の服に身を包んだ、魔法少女然とした少女が、箒に乗っかって霊夢を抱えていた。
「おい、巫女どのともあろうものが、雑魚妖精ごときに死にかけてんじゃねぇよ」
「
「あぁ、スーパーウルトラプリティ愛され系大魔法少女、
「馬鹿、あんたの助けなんかなくたって……」
「この体たらくで良く言うぜ。それに、私もこの異変に興味が湧いた。ここは共闘といこうぜ」
「キィ~! 無視すんなー!」
向こうで地団駄──といっても、空中に浮いているので手足をバタバタさせているだけである──を踏むチルノに、二人は向き直る。
「おいたが過ぎたわね、妖精。焼き尽くしてあげるから覚悟しな」
「特にお前には何もされてないけど、ついでにぶちのめしてやるぜ」
お読みくださり、ありがとうございました。
次回、VSチルノです。
では、また次回。