原村の申し出は半荘4回勝負。
原村が勝てば、俺は顧問を辞める。俺が勝てば、原村のおもちを揉みしだく。
おもち云々は冗談にしても、ここで凹ませて何か弱みでも握ろうという腹づもりだった。
『おい教師。あと早々に浮気とは感心せんな。
唯でさえ面倒な事になっているのに、これ以上私に火消しをさせるな』
「いやぁ、冗談のつもりで言ったんですけどねぇ。奴さん相当キてたみたいです。
それに血筋なんだから良いじゃないっスか。得意でしょ?」
今、明華は賭場荒らしがマイブームらしい。相当手ひどく潰し回ってんだとか。
お嬢が何を言っても、
「ムシャクシャしてやりました。反省して欲しかったら京太郎をシルヴプレ」
と言ってまったく反省する気配がないとの事だ。
『で、お前の鼻っ柱がへし折られたのか?』
「もっとオブラートに行きません?」
事実だけど。
流石はインターミドルチャンプ。ぽっと出のシロウトじゃ太刀打ちできねーわな。
まぁアイツのお陰で、その話自体有耶無耶になってるけど。
『それにメガネかけたままだったんだろ?』
「あぁ、すんません。そういや今もかけたままでした」
いけねぇいけねぇ、どうもまだ慣れてないせいか、ついつい忘れちまう。
メガネをケースにしまい、ゆっくりと目を見開く。
それだけで、俺の意識は切り替わった。
「失礼しましたお嬢。随分と失礼な口をきいてしまいました」
『気にするな。そういうお前も新鮮で面白い。
しかしクスリまで使って自己暗示を行うとは…。お前も真面目というか、不器用な奴だな』
俺にとっての1番の懸念は、他人を騙し通せるかという事だった。
いたいけな少女たちの一生を左右する仕事だ。
明華たちの世界で生きていくと決めたからといって、素面ではキツイ。
なので俺は一計を案じることにした。
自己暗示と明華に用意してもらったクスリ。その2つを使い、俺は疑似人格を作り出した。
そのスイッチがさっきまでかけていたメガネだ。
少し陰気な体育教師。麻雀に対する興味はそれほどなく、仕方なく顧問をしている。
明華が言うには、「砕けた調子の、少し煤けた京太郎」らしい。
『正直お前がそこまでするとは思っていなかったよ』
「やるからには徹底的にやる性格なもので。
それに、1番の目的は龍門渕ですからね。これくらいやっておかないとボロが出そうで」
――龍門渕。
6年連続で県代表となっていた風越女子を抑え、全国出場を決めた前年の長野代表校。
何気にうちとは因縁持ちだったりする。
理事長の孫である龍門渕透華を筆頭に、メンバーの誰もが一流の雀士。
その中でも頭1つ抜けた化物が、龍門渕透華の従姉妹。
牌に愛された子――天江衣。
そんな天江衣の情報を収集するのが今回1番の仕事だ。
残念なことに、前年ではメグが他校を飛ばしたせいで天江衣の出番がなかったらしい。
オマケに、彼女は公式戦にほぼ出ていないため、碌な牌譜が存在しない。
なんとかして情報が欲しいが、龍門渕に潜り込むのは不可能。
なので、こうして清澄に潜り込んで情報を収集する、という作戦を取ることにした。
清澄を選んだ理由は、単純に他に目ぼしい高校がなかっただけだ。
敦賀は女子校だし無理。風越も同様。まぁ風越の場合はそれだけではないけど。
『ああいう輩は消すのが1番なんだがな。家が家だけに簡単には手が出せん。
お前、何とかしてハイエースできないか?』
「出来なくはないですが、そのネタ自分で言います?」
俺、その偽造ハイエースでお嬢達に嵌められたんですよ?まだトラウマなんですけど。
『すまんすまん、冗談だ。私も雀士の端くれ。正々堂々叩き潰してやるよ』
「さすがですお嬢」
でもお嬢は先鋒ですよね?絶対に天江衣とは当たらないですよ。
「それでお嬢、清澄の話に戻るんですが、少し気になる娘がいます」
『なんだもう乗り換えるのか?』
「滅多なこと言わないでくださいよ!」
どこで明華が聞いているか分からないのに!バレたら俺の下半身がヤバイんですよ!?
ほら、今にも携帯にメールg…。
差出人:雀明華
宛先:須賀京太郎
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後でお話があります。
……俺、週末東京に戻るのやめようかな。
だめだ、その場合明華が来る。もっとヤバイ。
タイトルに意味は『ローマにおいては、ローマ人のようになせ』。
日本で言う、郷に入っては郷に従え。
高校に入っては高校生か教師のようにしないとね。ヤクザのままじゃ捕まるよ。
京太郎に新しい設定が盛られちゃった回。
京ちゃんはブラクラのエダみたいなもんです。
因みにサングラスかけるとヤクザっぽさが増えます。マサオくんかな?
京ちゃんは毎週末は東京に戻ります。戻ったらエロ回だね。
そろそろ闘牌描写をまた書きたいですけどなかなか難しい。