京太郎「ミーはおフランス帰りざんす☆」   作:狗頭郎

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『よい夕食は必ず空腹によって始まる』
空腹は最高の調味料的な意味ですね。

でもウチの明華にとっての最高の調味料は京太郎ですよ。
食事においても、人生においても。


04 Bon repas doit commencer par la faim.

「ご馳走さまでした。相変わらずの腕前ですね」

「お粗末さん」

 

満足気にビズをしてくる明華に、俺はため息混じりにそう返した。

正直美人とのビズとか純粋にご褒美です。ありがとうございます。

そう思っても絶対に口には出さない。だってぜってー調子乗るし。たぶんバレてるけど。

 

「また京太郎の手料理が食べれるなんて夢のようです。今度はイクラをお願いしますね♪」

「明太子ご飯で勘弁してくれ」

 

相変わらずの魚卵好きか。今はまだ若いから良いけど、ホドホドにしないと痛風になるぞ。

そーいや、よくキャビアのカナッペをおやつで作らされてたな。俺の自腹で。

そのたびに明華のとびっきりの笑顔が見れてたが、財布へのダメージも半端なかったなァ。

おっと、思わず遠い目をしちまった。

 

「それでデザートはまだですか?」

「清々しいほど図々しいな。週末でもないのにあるかよ」

 

須賀だけに。ごめんなさい。心の中で謝っておきます。

何故今日来ると思ってなかった相手のために、デザートを用意しておかなければならないのか。

実はありまぁす。だがムザムザ奪われてなるものか。

 

「ふふ、嘘はいけませんよ。京太郎は変な所で拘りますからね。絶対に作ってあるハズです。

 たとえなかったとしても作らせます。麻雀で!」

「こちらが本日のデザートのブラマンジェになります!」

 

俺が冷蔵庫から取り出したのは、フランス語で【白い食べもの】を意味する冷製のデザート。

中に肉や魚を入れたりもする。昔は甘いスープとして食べてたらしい。

本来は牛乳に砂糖と生クリーム、アーモンドミルクを加えてゼラチンで冷やし固めて作る。

今回は牛乳ではなく豆乳を使い、アーモンドミルクの代わりに白ごまを加え、仕上げにきな粉と黒蜜をかけてある。

ブイヤベースに鰹節やいりこ出汁を使ってたので、同じく和風に合わせた。

なかなかに上等な出来だと思われるそれが、明華の胃袋へと消えていく。

 

因みにだが、ゼラチンではなくコーンスターチで固めたものがパンナコッタ。

アーモンドミルクではなく杏の種の中にある【仁】を入れたものが、杏仁豆腐だ。

でも最近では杏仁が貴重なんで、代用でアーモンドミルク入れたりするらしい。

もう区別ねーじゃん。

 

「おいしい! まったく京太郎は天才ですね!」

「だとしたら、それは間違いなく明華のお陰だな」

 

明華に麻雀で負け続けてたお陰で、料理人としても菓子職人としても腕を磨けた。

…あれ、喜んで良いことなんだろうか?

もっと負けん気を発揮して、麻雀の腕を磨くべきだったんじゃなかろうか?

 

「ふふ~ん、京太郎は私が育てました♪」

「ドヤ顔すんな」

 

メチャクチャ可愛いけどウゼー。

明華の頬を突きながら、俺は食後のホット・カフェオレを差し出した。

美味しく入れるコツは2つ。

カップをよく温めておくことと、よく冷えた牛乳をスチームドミルクにすることだ。

あと、脂肪分の多い牛乳のほうが、きめ細やかで舌触りの良いスチームドミルクになる。

少量の砂糖を入れても、泡立ちがよくなるぞ。

 

「それで、結局今日はどんなご用でお越し頂いたのでしょう、お嬢様?」

「あら、好きな殿方に会いに来るのに、それ以外の理由が必要なんですか?

 もう私の気持ちは正直に伝えているんですから、あまり意地悪な事は言わないで下さい」

 

カフェオレを飲んみながら、にこやかな顔でどストレートをぶん投げられた。

ここまでストレートに好意を伝えられると、ドギマギしてしまう。顔が熱い。

さすがは愛の国フランス。長いことあの国にいたが、俺の性分ではそこまで素直になれねー。

嬉しい半面、いたたまれない気持ちになる。水を飲んで落ち着こう。

恥ずかしさを誤魔化すために半眼で睨んでみたが、明華の余裕顔は崩れる気配はない。

 

「ふふふ、京太郎は本当に昔からシャイで可愛いですね。

 なんだか年下と接しているような気分になります」

 

おのれ明華、調子にノリやがって!でも俺自身でさえ明華の事を年上に思える事があるのも事実。

クソ、また明華のペースにハメられてる。咳払いを1つして気持ちを切り替えよう。

 

長年の付き合いで分かる。言ってる事は本心だが、彼女が来た本当の理由は別にある。

 

思い当たるフシは1つ。

俺が日本に来た理由であり、そして恐らく明華が日本に来た理由だ。

 

―――明華は俺を殺しに来たんだ。

 




イチマツがオソマツとかいうギャグ。
そろそろ話に動きを出していきたい所存。
好きだけど殺しに来たんだろうなという発想。京太郎はサイコパスか何かなんだろうか。
明華がやたら食べる娘みたいになってますが、フランス人なんでしゃーないね。
大食い家というより、食べる事が好きって感じのイメージです。

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