要するに類は友を呼ぶ。
誤字報告を頂いたので、ちょっと分かりにくかった部分を修正しました。
ご報告頂きありがとうございます。
――Aux armes, citoyens,
『ラ・マルセイエーズ』。
フランスを代表するこの曲は、フランス革命政府がオーストリアへ宣戦布告した時に生まれた。
――Formez vos bataillons,
後にテュイルリー宮襲撃以降、パリ入城でマルセイユ義勇兵が口ずさんだ事から民衆へと広がる。
――Marchons, marchons !
ナポレオンが皇帝時代には、現在の軍歌である『出陣の歌』が国歌となった。
しかし、七月革命以降は再び『ラ・マルセイエーズ』が国歌に返り咲いた。
――Qu'un sang impur
かなりの声量だが不快には思わない。
乾いたスポンジに水が染み込むように、身体の中に入って来る声だ。
――Abreuve nos sillons !
魂を震わせる勇壮さと気高さを併せ持つソプラノ。
歌が歌だけに、その姿はまるで白百合の旗を振り、戦場を駆けたジャンヌ・ダルクを思わせる。
「何時にも増して機嫌が良さそうだな」
「ええ、お陰様で。
改めてありがとうございます、智葉。京太郎を捕まえておいてくれて」
「まぁウチにも益になる話だったからな。金も貰ったし」
「ネリー達も協力したんだから、ちゃんと感謝してよね。形のあるもので」
「私自身はラーメンで大丈夫デス。組織にはすでに便宜を図って貰ってますノデ」
和やかに卓を囲むお嬢とネリー、メグ、そして明華。和やかじゃないのは俺の心だけです。
現に今の会話だけで胃がキリキリする。
つまるところ、最初から全部仕組まれてた訳だ。
お嬢がハイエースされてた事も。その現場を俺が目撃し、助けることも。昨日の再会も。
全てが全て仕組まれた事だった。
俺は、日本に来た時点で既に詰んでいたんだ。
ただ、結果として俺は死なずに済んでいる。もう墓場に入ってるようなもんだけど。
しかし昨日のお嬢の般若顔。あれも演技だったのか。
代紋背負うより女優になった方が良いんじゃねーのかな。
パタリ。子気味いい音とともに明華の手牌がさらされた。
{白白東東東西西西南南南北北北}
「字一色、四暗刻、大四喜ですね。
点数は32000オールで許しておきますよ」
「トップな上にラス親で何してるんだお前…」
お嬢がドン引きなさっておられる。そういう俺も開いた口が塞がらない。
ダブル役満の点数で言ってるがトリプル行ってないか?1生に1度あるかないかの確率なんじゃ…。
「少し気合が入りすぎました」
麻雀って気合でトリプル役満上がれるゲームだったのか。んなわけねーだろ。
見ろ、同卓のネリーとメグも何言ってんだコイツ?みたいな顔してるじゃねーか。
「トップなんだから、そこは安目早上がりで良いでしょうニ」
「取り敢えずお金かけてなかった事に、ネリーは死ぬほど安心してるよ」
終わって早々にメグはラーメンをすすり、ネリーは空気の抜けた風船のように卓に突っ伏した。
明華の和了によって場の空気が緩んだようだ。
「余程貴方との再会で気を良くしているようですね」
…びっくりしたぁ。いつの間に隣に来たんだ。
内心の動揺は表に出さず、俺は隣に立っていた香港からの留学生―郝慧宇―へと目を向けた。
中国麻雀小学生チャンピオン、仁川アジア大会銀メダリストの実力者。
アジアンビューティーという言葉がよく似合う、クールな少女だ。
ただそんな彼女もまた明華たちと同類。闇社会の住人、マフィアなんだよな。
「京太郎、卓へどうぞ」
にこやかな顔で対面を勧めてくる明華。
さっきまで座っていたメグは、すでに端でカップ麺をすすってる。
「京太郎が勝ったら私を好きにして良いですよ。
私が勝ったら京太郎を好きにする上に、今日の夕飯はイクラです♪」
……選択肢がねーじゃん。
最大のアンチ・ヘイト要素。臨海女子みんなマフィア説。
まぁ麻雀関係なんだし、そっち筋は連想しやすいですよね。
原因は智葉サン関係でお嬢とかカタギとかのそれ系の単語から。
智葉サンはまぁ長ドス持ってるし、どう考えても極道。火消しの血を継いでるとか言ってますし。
明華さんはユニオン・コルス。
出身のソフィア・アンティポリスを調べたら、マルセイユとコルス島とイタリアのど真ん中という、ちょっと背筋が寒くなるポジションだったので。
ネリーはロシアン・マフィア。ハオは鴻門もしくは青幇。
あと、ラ・マルセイエーズの歌詞はリフレイン部分です。以下ウィキペディアの意訳。
武器を取れ 市民らよ
隊列を組め
進もう 進もう!
汚れた血が
我らの畑の畝を満たすまで!
咲関連のスレで出てくると明華がよく歌ってますが、何度見ても殺す気満々の歌詞で草生える。
因みに国賓を歓迎する際や、テロの追悼式典でも歌われるらしいですよ。