京太郎「ミーはおフランス帰りざんす☆」   作:狗頭郎

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タイトルは『好奇心は邪悪な欠点』。
日本で言う好奇心は猫をも殺すです。
もともとアメリカなどでは9つの魂を持つと言われている猫。
そんなしぶとい猫でさえ、好奇心によって簡単に命を落としてしまう。
そういった戒めのあることわざらしいですよ。


06 La curiosité est un vilain défaut.

――曰く、健全な青少年の育成を目的としたスポーツ麻雀の普及。

何故そこで麻雀なのか。

こんな運の絡むゲームより、チェスや将棋などでも良かったし、よっぽど健全だ。

何故オカルトなどという曖昧なものが存在し、黒い噂の絶えない麻雀が選ばれたのか。

まぁ、それが答えの全てなんだろうけど…。

 

 

【マフィア】。

もともとは、イタリアのシチリア島から発生した「シチリア・マフィア」だけを指す言葉だった。

それが今では、闇社会の住人の総称として使われてる。

マフィアやギャングをひっくるめて、ヤクザものと呼ぶ感覚に近いかな。

 

そういった闇社会の事を、フランスでは【ミリュー】と言う。

そんなミリューの中でもっとも有名な組織はどこか?

 

――それが明華の属する組織、【ユニオン・コルス】だ。

 

ユニオン・コルスは、地中海に浮かぶコルシカ島の文化と、それを取り巻く環境が作り上げた。

血族を重んじるコルシカ人は氏族(クラン)と呼ばれる集団を作り、クラン同士での仇討ち(ヴェンデッタ)や、山賊行為(バンディティスム)などの文化を持つ。

そんなコルシカ出身のある2人が、売春で資金を稼ぎ、マルセイユで暗黒街を組織した。

それがユニオン・コルスの始まりだ。

 

ユニオン・コルスは、ベトナム南部がコーチシナと呼ばれてた頃、あるものの密輸を始める。

麻薬だ。

 

1930年。

ユニオン・コルスは、東洋のパリと呼ばれた上海租界から、阿片をフランス本国へと運び始めた。

その上海を牛耳っていたのが青幇だ。

青幇はフランス総領事まで便宜を図っていたので、植民地機関の郵便袋まで密輸の道具だった。

 

更に、ユニオン・コルスはシチリア・マフィアやカモッラと協力し、タバコも密輸した。

タンジールで仕入れたキャメルやマールボロが、7倍の価格で転売できた。

 

その繋がりは麻薬でも応用される。

トルコ・マフィアが【黄金の三日月地帯(ゴールデン・クレセント)】などから集めてきた阿片を買い付け、ユニオン・コルスはマルセイユ近郊の工場でヘロインを製造した。

 

第2次世界大戦後、ユニオン・コルスはトルコから仕入れた麻薬を、シチリア・マフィアを通してアメリカへ流通させる。

かの有名な【フレンチ・コネクション】だ。

 

こうして麻薬によって隆盛を誇っていたユニオン・コルスも、フレンチ・コネクションの崩壊によってすっかり鳴りを潜めた。

シチリア・マフィアに吸収されたとも言われている。

 

でも、未だにユニオン・コルスはフランス南東部の政治に対して深く食い込んでいた。

考えてみて欲しい。かつて世界を麻薬で支配していた組織が、そう簡単に消えるものだろうか?

 

彼らは消えたわけではない。ただ姿を変えただけだ。

時代を経て、ヨーロッパの姿も大きく変わった。

E.Uの締結後、ヨーロッパでは多くの国が、シェンゲン協定で国境検査が消えた。

それは、マフィアにとって密輸や人身売買などの犯罪行為が、より行いやすい環境になったことを意味する。

そんな環境の変化から、彼らも国を越えて1つとなる道を選んだ。

 

今、彼らは【ユーロ・マフィア】と呼ばれている。

 

 

 

「要するに今のユニオン・コルスは、ヨーロッパ内のフランスみたいなものです。

 美味しい麻薬(ごはん)をたくさん作って皆様にお届けする。素敵ですね♪」

 

全然素敵じゃないです…。

あとその美味しいは、食べる側じゃなくて作る側にとっての美味しいですよね。

なんでこんな重い話聞かなきゃなんねーんだ。そりゃ関係者以外立ち入り禁止になるはずだよ。

 

「折角ですからもう1つ面白い話をしましょうか。

 日本にもフランスの総領事館はありますが、そういった在外公館は外交特権を持っています。

 例え話になりますが、在外公館内でどんなレートのゲームが行われようが、どんな品物が取引されようが、それはフランス国内で起こることであり日本は介入できません。

 知ってましたか?フランスの外交ネットワークはアメリカに次いで世界2位の規模なんですよ。

 面白いですよね~」

 

すんません明華さん、全然面白くないです。さっきから胃がキリキリして仕方ないです。

俺、絶対に見てはいけない深淵を覗きこんじまってますよね?

 

「それにしてもビックリだよねー。みんな昔から顔見知りだったけど、まさかこうやって偶然にも同じ学校になるなんて」

「そうですね、ネリー。私達青p…いえ、洪門も昔から仲良くさせて貰ってましたが、学校どころかクラスまで同じになるとは不思議な縁です」

「まったくだな。本当に偶然や縁とは面白い。そういえば偶然にも皆麻雀が得意だな」

「これが運命を感じるというやつでスネ」

 

神はサイコロを振らない。この世に偶然はなく、全ては人間の行動による必然だ。

同卓のネリーとお嬢、そして慧宇とメグを見ながら、俺はそんな得にもならない事を考えてた。

 

「おや、手が止まってますよ?あまり長考がすぎるのは関心しませんね」

 

普段どおりの微笑み顔で、明華が俺にツモを促す。

10人が見れば、10人ともが顔を赤らめる美貌だ。俺の顔はきっと違う色だろうが。

ふと気がつけば、お嬢とネリーも俺を見つめていた。恐らくメグや慧宇も俺を見てるんだろう。

 

美少女たちに囲まれてるハズなのに、気分はライオンに囲まれた草食動物(カピバラ)だ。

生きてる心地がしねぇ。背中も冷や汗でビッショビショ。

正直ハンドの試合で出会った誰よりも怖い。腕力や体力で圧倒してるのに勝てる気がしねぇ。

恐怖で腕が震え、奥歯もカチカチと鳴っていた。

だが。

 

「へへっ…」

 

自然と笑いが漏れた。口の端が釣り上がるのを止めることができない。

込み上げる高揚感が、俺の胸を燃やす。

 

彼女たちは間違いなく強く、そして恐ろしい。

麻雀の技量も、経験も、知識も、戦略も、そして情熱も、何もかもが俺よりも上だ。

ただでさえ男子と女子の間には隔絶した力の差があるといういうのに。

圧倒的な力量差。まず俺は蹂躙されるだろう。勝てる確率は0に近い。

でもだからこそ、全力でぶつかっていける。

 

――タン。

 

不要牌を捨てた音が耳を打つ。指の震えはもう止まっていた。

 




※あくまでフィクションです。実際の団体や組織とはいっさい関係ありません。
 臨海女子は可愛くて麻雀の強い素敵で立派なカタギの女子たちです。いいね?

マフィアの話で分量使いすぎました。今までで1番長いですねぇ。
その割に中身が薄くて話が進まない。
追い詰められて闘争本能に火がボーボーの京太郎氏。なお次回冒頭でロンを喰らう模様。

在外公館の所で、ベトナムの話したかったんですが上手く書けませんでした。無念。
折角なのでここで書いておきます。

ベトナムにもフランスの総領事館はあります。場所はホーチミン市。
市はベトナム最大の経済都市であり東南アジア最大の世界都市でもあります。
そんなホーチミン市の市街中心部の旧称はサイゴン。
フランスの傀儡国家、コーチシナ共和国の首都だったところです。
それと、黄金の三日月地帯が広がるアフガニスタン、パキスタン、イランにもフランスの在外公館はあります。トルコにもあります。

いやぁ偶然って怖いですねぇ。調べれば調べるほど邪推できる事案がポロポロ出てきますねぇ。
でもあくまでフィクションですので。全部偶然ですよ?

それと、チェスや将棋でも賭けはあります。特にチェス。
チェスや将棋で賭け事をする人の事を、真剣師と言うらしいですよ。
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