1.くろーい空、ひろーい奈落……
――問:目標世界到達までの所要時間は?
――答:目標世界到達まで、あと約74秒。
ふぅ、ようやく到着か。長かったな。
『どうせ大半は寝てたじゃねえか』
そうだけども、それでも何となく
さて、俺達は行動時のルールを決めていて、
・世界ごとに行動するのは基本一人だけ(他の人は念話のみ、場合により一時交替アリ)
・世界の存続を脅かしたり、枠組みを大きく変えるような行動は取らない
・あまり大きな力を振るわない
・一世界における滞在期間は最長六十年ほど
という感じ、ただしいずれも緊急時はこの限りではない。
前にレイジと語ったあのディストピアな世界での顛末に限らず、やらかして大変な目に
『やらかしたのはほぼオマエだけじゃねえかよ』
『そうだな』『ですね』
ちょっと待ってそんなこと多分ないだろ酷くね!?
『ひとつひとつ事例を語っていけば、アスカさんも納得しますかね?』
御免なさい古傷抉るのは勘弁してください。
で、今回は誰が出る? 出たいヒト立候補どぞー。
『オレはパス』
『僕も今回は辞退しますよ』
レイジは?
『不要だ』
ほかのひとはー?
『このタイミングで眠ったままの者は出る意志がないとみて問題なかろう』
ですよねー。てことは俺の番か。
『がんばってくださいね』
『高みの見物してるわ』
いでやんとフルミんの落差がひでぇ。まぁ構わんけど。
そんじゃ、いってきますかねっと。
見知らぬ世界に俺、参上! あーいきゃーんふらーい!
――報:現在の権限レベルでは
ちょ、おま、飛べない!? コンマ7秒前がいきなり大嘘にされたんだけどマジどゆこと!?
な、なんなのだこれは!? どうすればいいのだ!?
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
――報:現在の権限レベルでは現在構築中の神業術の行使はできません。
――報:現在の権限レベルでは現在構築中の神業術の行使はできません。
――報:現在の権限レベルでは神業術式【
なんかことごとく駄目出しされるんだけど! ホントどういうこと!?
いや今は原因よりも打開策を
『どうせ不死身なんだし、いいじゃねえか墜落くらい』
死ななくても再生に時間(5秒)かかるしそもそも死ぬほど痛いから却下!
そういうの『死なないからまぁいっか』で許容してると大事な大事な人間性つーものを
『いやそれ手遅れじゃ』
黙らっしゃい! 次の案どうぞ!
『パラシュート装備したらいいんじゃないですかね』
いでやんナイス! って言いたいけど今まで必要になったこと無いからパラシュートは持ってないな。まぁ
――報:現在の権限レベルでは現在構築中の神業術の行使はできません。
のわぁぁそうだったぁぁぁぁ!?
このあと滅茶苦茶ついらくした。
結局、フルミの『どうせ不死身なんだし』を採用してしまった。結果論だけど。
死ぬほど痛い、全身既に治っているが未だに痛い。幻肢痛みたいなものか。いや違うか。
脳みそもいっぺんネギトロと化したせいか、再生完了してる今も酒精酔いと車酔いと船酔いと3D酔いと地震酔いのいずれも激しいのが同時にきて色々な感覚がひたすらぐっちゃぐちゃ。普段はどれだけ呑もうと揺れようと俺こんな酔ったりしないんだけど。
ともかく、また一つ心に残る人間性が磨り減って、カンペキな人外に近づいたような気がした。泣きたい。景色が
『いい大人が雪山のてっぺんで体育座りして "の" の字を書いていじけるって、見ていて痛々しいんでやめてくれませんかね』
『てゆーかコイツまだ人間のつもりでいやがる』
そもそもさマジで何事なの?
『それなんですけどね』
いでやん何か心当たりが?
『3つほど前の世界を抜けた後で、みんなで話し合ったの覚えてます?』
うぇ? えっと、まぁ、そうね……あぁ、思い出した。
能力を規制するって言ったっけ? そういえば俺も同意した。いつ始めるとは聞いてなかったけど。
『僕達もそのへんはさっぱりだったんですけどね。詳細は【
オーケー了解、事情はわかった。
だからってさぁ、空飛ぶ手段まで片っ端から封印することなかったんじゃないの?
――問:OKオラクル、どういうことなの?
――答:調整ミスりました。てへ☆
マジでどういうことだぁぁぁぁぁぁぁっ!?
え、ナニこの返答? 【
――答:固体名ウィル、別名
ヒトのせいにしないでくれるかな!?
もとより謎の多い能力ではあるけどココまでわけがわからない反応を見たのは初めてだよ……能力が愉快な性格してるって誰得? そもそもまさか能力に自我あるの? こえーよ。
ま、
――問:現在の権限レベルとやらで使用可能な能力の一覧よこせ。
――答:現在の権限レベルで使用可能な能力は以下のとおりです。
◇
魔力を矢の形にして飛ばす。
◇神業術式【
他の世界へ移動するための航路を開く。
当世界における充分な探索が完了後に使用可能。
◇生活用途レベルの既式および無式の神業術
――以上です。なお常時稼動かつ内部で効果が完結する術式・能力に関しては制限の対象外です。
…………え、これだけ?
実質【
単独行動で重要な能力って情報>移動>防御>攻撃だというのに、確実に使えるのが攻撃しか無いってピーキー過ぎるだろ。
――答:最適化が未完了のため適切な行為の許可が正常にできない状態です。
釈然としない……が、これはごねても仕方ないな。幸い【
くそっ、責任者がいるなら問い詰めたい気分だ……せめて出た瞬間だけでも飛べるようにするとかさ。
危機の真相がわかり、これ以上は悪化しないという意味で一応問題なくてほっとするものの、盛大に内ゲバやらかされた気がして滅入ってくる。
つくづく雪の日にはろくなことが無い。きっと今日こんな目に遭ったのも雪のせいに違いない(八つ当たり)まぁ今は降っていないので少しマシか。心中で愚痴ってる間に止んだようだ。
墜落した現場だけ雪が飛び散って地肌が見えている。雲の上くらいの高さから落ちてきて、まともにブレーキできなかったのだから、そりゃあこれくらいの惨状にはなるか。不死身でなかったら俺もバラバラ死体だったわけだが、ていうか一回ホントに全身バラバラになったが5秒で全快した。但し痛みだけは5秒で治まらない。さすがに5分も経てば動ける程度にはマシにはなるが。
気分もようやく多少落ち着いたのであたりを調べるか。まずここは小高い丘の頂上らしかった。風がそこそこあるが、あんまり気分のいい風ではない。というより多分これ空気が汚い。【
空を見る。分厚くて
目を横に向けると、丘からさほど離れずして雪景色が途切れている。目測で1キロ少しない程度か。白の先で何かがうねっているように見える暗黒、ありゃ海だろうか。海ってより奈落にしか見えない黒々っぷりだ。あからさまに汚い。
言うなれば……
「くろーい空、ひろーい奈落……こんなんでいい気分に浸れるかぁぁぁぁぁ!!」
叫ばなきゃやってらんないよ全くもう。
◇主人公ズの行動時のルール
各世界に降り立つに際して、一応の基本方針を決めてあり、それに従って行動している。
・世界ごとに行動するのは基本一人だけ(他の人は念話のみ、場合により一時交替アリ)
・世界の存続を脅かしたり、枠組みを大きく変えるような行動は取らない
・あまり大きな力を振るわない
・一世界における滞在期間は最長六十年ほど
あくまでも基本方針であり、条件次第ではやむを得ず破る場合もある。
自主規制的なものなので破ってもペナルティは特にない。
◇【
対象に翼を与えて、飛行能力と防御能力とステルス性を付与する。
今回は不発に終わった。
◇【
全て神業術の術式。どれもだいたい名前どおりの効果を持つ。
今回は全て不発に終わった。【
◇どうせ不死身
ミンチより酷くなろうと、ネギトロになろうと、5秒で再生が完了する。
ただし痛みは感じるし再生後も残る。
アスカは「人間性が磨り減るから」として致命傷を受け再生能力に頼ることを善しとしない。
◇【
必要な情報をノーヒントで正確に得られる、というチートな能力。
得られた能力は必ず正しいが、必要とする情報を得られない場合がある。
たまに受動的に発動する。この場合、どうでもいい情報を得る場合がまれによくある。
◇【
魔力を矢の形にして飛ばす、という初歩的な魔導攻撃手段。
通常、矢が当たった相手には粘土弾をぶつけるのと同じような衝撃を与える。
◇雪の日にはろくなことが無い
ろくでもない思い出ばかりなせいで、アスカにとって降雪はちょっぴりトラウマ。