・何か来た→ドローン?
・ドローンを追え→車を発見
・第三種接近遭遇
「……え、生身?」
第一異世界人のファーストコンタクトにおける第一声がコレ。
車中には二人いるようだったが出てきたのはかわいらしい少女が一人だけ。
服装はダッフルコートとマフラーとイヤーマフ。あと右手にマシンガンぽいものと背中に筒状の何かを装備。バズーカかな?
それなりに物騒な装備である。
対して俺の恰好は、薄手の黒いロングコートとジーンズ。靴はスニーカーで、額に鉢巻き。それ以外に装備品は無し。武器もなし。
一応ロングコートなので雪の中にいてもそうおかしくはないが、ポストアポカリプス環境下となるとどうか。
屋外の汚染は既に肌身で感じている。おそらくだが人類が生存するには厳しいくらいに汚染されていることだろう。化学的な汚染は肌から浸みて健康を害し、放射能的な汚染は遺伝子を破壊しガンを誘発あるいは細胞を間引きするように殺して身体機能を低下させる。屋外に出るなど危険極まりなく、止むを得ず出るなら全身を覆う防護服が必須なのではないか。ロングコート程度ではどうにもならない。
少女が俺を見て驚いた理由はそんなところだろうと推測した。俺は防護服なんて持ってないし、錬金で適当に作るのも今は無理だし。
もっとも、少女のほうも見るからに生身。でも俺と似たような理由で問題ないのだろう。すなわち、
「はじめまして、
そう、外見だけなら人間そのものだけど、彼女の身体は生体系の部品と金属骨格や機械的部品でできている。俺には見ただけでそれがわかる。人工のものであろう構造で、見事にヒトを再現している。
ロボット、と言うには動きも構造も人間に近すぎる。
アンドロイド、と言うと地球で流行ったデバイスの名前とかぶる。
オートマトン、と言うと以前レイジが見せてくれたコンピュータプログラムとかぶる。
なので、オートマタ、という呼称が一番似合う。私見なので反対意見は受け付けよう。
この星の言語は地球にあるどれとも違うから、こっちから出した単語が通じるかどうかはわからんけどな。
まぁニュアンスくらいは受け取ってくれるんじゃなかろうか。
「名乗ってくれると嬉しいんだけども」
「名前を聞きたいなら、まず自分から」
「俺さっき車上から名乗ったじゃん。アスカだよ」
「そうだった」
コイツけっこうなおとぼけキャラのようである。てへペロとかやったらかわいいんじゃないですかね。
「メアリ」
「メアリか、了解。
さて、どうする? このままここで立ち話、ってのは俺としてはちょっと嫌なんだが。空気悪いし」
「空気悪い、で済むの?」
「俺ならそれで済む。メアリもそうなんだろう?」
「あなた、オートマタじゃないのに?」
俺の体内には機械などない、そんなのあったら全身バラバラも5秒で修復とかいう人智を超え過ぎた再生能力の邪魔になる。俺は見た目と構造だけなら
てか吐き気がするのは再生能力自体のせいじゃないな、怪我のひとつもないのに全身バラバラになった強烈な感覚(痛覚もちろん込み)が襲ってくるので、どう控えめに言っても正気をゴリゴリと削り取られる。SAN値直葬ってやつだ。嘘だと思うなら経験してみるといい。あーでも普通の人間は再生能力ないから即死だわ。SAN値じゃなくて命が直葬。
「
「違うと思う」
「何にしても、あなたは得体が知れない、だから拘束する」
「それは困るな」
「問答無用」
言うが早いか、メアリが背中にあったはずの筒を左手で流れるように構えて打ち出してきた。筒の中から飛び出る捕獲用ネット。
装備の割に古典を感じる攻撃手法だが、自由をこよなく愛する俺は捕まるなんて御免
まず着火仕様のボルト3発が捕獲ネットに当たって縄をほぼ燃やし尽くす。
ほぼ同時に衝撃仕様(通常)のボルト7発をメアリへと飛ばす。ネットを燃やした何かが自分に迫るのを見て、顔を青くしてマシンガンで迎撃するメアリ。
その隙を突いて本命の一撃、背後にこっそり回った麻酔仕様ボルトがメアリの首筋を強襲する。
麻酔仕様と言ったが生物以外にも効果はある。ロボットなら命令伝達用の導線を絶縁すればよい。幽霊なら霊的エネルギーの内部循環を阻害すれば似た状態になるだろう。対象に浸透した魔力はそれが続く限り必要なあらゆる事象を起こし、対象を麻痺させる。よほど特殊な構造の相手でなければ効果があるはずだ。
それをまともに食らったメアリは当然、麻痺って倒れた。ついでにマシンガンで相殺し切れなかった分の衝撃仕様ボルトも全部入った。ありゃちょっと痛いかもな。
「はい制圧完了(1.3秒で)」
「……痛い……今の、なに?」
「話し合いだけで済んでれば、拒否られたとしても乱暴する気はなかったんだけどねぇ。安易に暴力に出るのは悪手じゃないの?」
「…………」
麻痺ったとはいえしゃべれる程度には動ける彼女だが、俺の言に押し黙った。
ま、短絡な手に出ちゃう気持ちもわからんでもないんだよね。アンノウンにいきなり拠点に接触されて、何されるかわからん状況となれば後がない、慌てもする。
とはいえさて、こっからどうするかなぁ。
暴力に訴え出でるつもりはなかったんだけど、先にやられたからには黙って立ち去る選択肢はもう無し。
あーでもコイツ多分ただの実働部隊でブレイン別だよな。責任者でてこーい、って叫んだら出てくるんかね?
とりあえず雪の中に倒れ伏したままというのは敵(暫定)とはいえかわいそうなので、助け起こしてやろうと
「待ってください!」
歩み寄ったところで車体スピーカーに制止された。あーこの声は中に残ってるもう一人っすね。
「降参します! 降参しますから彼女の命だけは――」
ち ょ っ と 待 て 。
『あ、これトドメ刺そうとしたって思われましたね』
『オマエどんだけ悪人顔してんの?』
しーてーまーせーんー! いつもニコニコ人類のお傍に這い寄って静かに暮らしたいだけの人間だよ俺は。
『その一言の中にどれだけのウソがあるやら』
ウソなんて一つもないアルよ!?
「ヴァーサ、だめ、降伏なんて」
「メアリ、君がいなくなったらどのみちジオグラフォスは終わりだよ。なら少しでも子供たちが生き残れそうなことをするしかない」
「だったら俺に武力行使とかしてないで逃げりゃよかっただろうに。
「? 聞いたことない言葉ですね」
ありゃー。スウェーデンのことわざと中国の故事は、異世界では通用しないようだ。
「ジオグラフォスは小さい島なので、謎の人物、あなたのことですが、放っておけばすぐに拠点が見つかってしまいます。そうなれば子供たちの命が危ない。それは絶対に避けたかったのです」
「それで喧嘩売ってあっさり返り討ちになってりゃ世話無いだろうに」
「返す言葉もありません。正直なところ、メアリでも苦労せず捕まえられると、見くびっていました」
「人は見かけによらないものだからな」
『ヒト……?』
『見かけ……』
『コイツは人間の皮を被った邪神だから仕方ないな』
おいこら、特にレイジ誰が邪神だコノヤロウ。
「それじゃあ、降参を受け入れよう」
◇アスカの容姿
・身長179センチ。筋肉も贅肉も皆無の痩身体型。
・髪色は異色の紫。瞳も紫。
・顔は堀浅め(日本人的?)で中性的。声も高い。
・ハーフエルフだが外見にエルフ要素は皆無。
・ロングコート、ジーンズとスニーカー。額に鉢巻。他に装備品なし。
・汚染環境に対して、どう見ても防護服なし。つまり生身。
◇【
着弾時の効果や威力は調整が可能であり、初歩の魔法のような見た目に反して応用性が非常に高い。
今回使用したのは効果は以下の3種類。
・着火仕様:着弾地点に熱を与えて着火する。今回の場合、強制的に燃やすほどの効果はなく、耐熱素材だとうまく燃えない。
・衝撃仕様:着弾地点に衝撃を与える。標準の効果。今回の場合は1キロの粘土玉を投げてぶつけたのと同じくらいの衝撃。
・麻酔仕様:着弾した相手を麻痺させる。今回のものは機械類にも効果を発揮する。