そういえばこの小説も赤城がかわいいから書いたんだった……。
ダクソ前になんとか更新
「赤城、ただいま参りましたわ~」
「ああ。そこにかけてくれ」
予定していた時間ジャストだ。流石赤城といったところか。いやはや、エンタープライズと加賀の間に赤城を挟んでいおいて本当に良かった。良い清涼剤になってくれるだろう。なお椅子には背もたれのない丸椅子を用意したので、九尾の尾が邪魔になることはないだろう。
しかしなんだ、隠れ家じみた寮舎の雰囲気も相まってまるで密会でもしてるかのようだ。
「さて、早速だが赤城は今の環境に何か不満はあるか?」
「不満? まさか。指揮官様は冷静沈着な方で大局を見誤らない安心感がありますし、ここには加賀もいますもの。珍しいのよ、戦場以外であんなに楽しそうにしている加賀は」
「そうなのか? 僕の見かける加賀はいつも活き活きしているが」
いや本当に。赤城と同じく希少な常識人だというのに、はしゃぎだすと手に負えなくなるんだ加賀は。
「あら、やっぱり。きっとそうだと思っていましたわ」
「む、分かるのか」
「ええ、姉妹ですもの」
やはり何か姉妹同士にだけわかるものもあるのだろうか。わかっているなら止めてほしい。それとも加賀が赤城を止められないように、赤城も加賀を止められないのかもしれない。
「そういうものか。ともあれ、次の質問に移ろう。赤城は今、欲しいものはあるか?」
「"今"は指揮官様からの信頼を頂けるだけで赤城は満足ですわ~」
「そうか? 信頼ならとっくに預けているつもりだが、赤城は欲がないな」
「いいえ。わたくしはとっても欲深い女です。ええ、とっても」
「そうなのか。いや僕にはよくわからんが」
「ふふ、指揮官様はそれでよいのです」
いくら僕とて赤城にはこれ以上ないくらい尽くしてもらっている自覚はある。無理のない範囲でなら彼女の願いを叶えるのもやぶさかではないと思っていたが、特にないというなら無理に叶えることも無いか。彼女の言う通り、これまで以上に彼女を信頼し胸を借りるとしよう。
「赤城がそういうのならきっとそうなのだろう。次の質問だ。注目、あるいは気にかけている艦はいるか」
「でしたら、やはりグレイゴーストでしょう。ええ、彼女が良き好敵手であることは認めなくてはなりませんわ」
「ああ、まあおおよそ予想通りの答えだな、二人はよく何かを競っているのを見かける」
「お恥ずかしい限りですわ」
正直なところ、この機会に普段何についてエンタープライズと争っているのか聞いてみたい自分がいる。だが、それを聞いてしまうと僕が赤城に抱いているイメージが音を立てて崩れる確信がある。やはり聞かずにおくべきだな。
「次だ。最近なにか感情を揺さぶられた出来事はあったか?」
「それでしたら、まさしく今この瞬間ですわ。まさか指揮官様が、こんなおしゃれな場所で、二人きりで会ってくださるなんて思ってはいませんでしたもの」
「まあ、いつか必ず通らなければならない道だからな」
「……! そうですよね、一つずつ、順序良くですわね。まずは小さな逢引を重ねてお互いの気持ちを確認してからですよねっ」
「うむ、流石は赤城だな。よく本質を捉えている。やはり逃げてばかりではいかんと考えていてな。ここはひとつ、初心に帰りしっかりと向き合い心と心を通じ合わせなくてはならないと思っていたのだ」
赤城が胸元に両手を組んでテーブルに身を乗り出す。その表情には光に満ちていた。
「指揮官様、ついに赤城の気持ちに応える気になって頂けたのですね……。この赤城、感無量です……!」
「ああ。早めに君に打ち明けられて良かった。これからも(終戦までの)長い付き合いになるだろうからな」
「(生涯を共に歩む)永い付き合い……!! で、でしたら指揮官様、わたくしからも質問させてよろしいですか!?」
「ああ、それはもちろんだ。しかし盲点だったな、思えば確かに僕が一方的に質問を投げかけ続けるというのも趣旨に反していた。赤城には本当に頭が下がる。それで、聞きたいこととはなんだ?」
「ええっと、ええっと……」
九つある尾を右往左往させながら赤城があたふたし始めた。付き合いの長い僕もさすがにこんな赤城は初めて見るぞ。何をそんな慌てているのだろう。
「ああ、そんなに焦ることはない。僕はどこにも逃げないぞ」
「──で、では、入るお墓はどんなのがいいですかっ」
墓!? 迷った挙句に選び抜いた質問が墓!? いや、だが赤城なりに選んだ大切な意味のある質問なのかもしれない。全く意図が掴めないが真摯に答えるべきだ。
「墓……特にこだわりはないが。質素で作りのしっかりしたものがいい。」
「質素でしっかり……。指揮官様らしいですわ。ええ、確かに」
どこからともなくメモ帳と万年筆を取り出し、目にもとまらぬ速さで何かを記した。よくわからないがいつもの調子を取り戻したらしい。
「指揮官様は大きいのと小さいのではどちらの方がお好きですか」
矢継ぎ早に赤城から次の質問が飛び出す。その視線は真剣みを帯びており、先ほどの墓石に続き重大な問いのようだ。しかしえらく抽象的だな、心理テストか何かか?
「まあ、大きいほうがいいんじゃないか」
「具体的には?」
「随分踏み込んでくるな。そうだな……大きすぎて邪魔になってしまっては意味が無いから、無理の無い範疇に収まってくれれば嬉しい」
「なるほど」
安堵したようにほっと息をつく赤城。この問いかけにはどんな意味があったのだろうか。というか赤城が過去に類を見ないようなアグレッシブさを発揮しているが、いったい何がトリガーだったのだろう。脈絡が無さ過ぎる。今までの会話の中に何かターニングポイントがあったか? ダメだ、思い当たらん。やはり女性の心というのは僕には理解できそうにないぞ。
ここで赤城が、万年筆を握る右手を胸元に添えて大きく深呼吸した。なんだ、何か聞きづらい質問でも──
「指揮官様にとって、どんな女性が好ましいか、教えてくださいませ」
──どんな女性が好ましいか……だと?
これは困ったぞ、そんなものは今まで考えたことがない。だが、先ほどから続く赤城の態度からしてここでシラを切るような返答は礼を失するだろう。いま、ここで考えなくては……。
「あー……。そうだなぁ……。好みの女性ということであれば……」
赤城の深紅の瞳がひたむきに僕を見つめている。考えろ……考えろ……! ダメだ、気の利いた言い回しなど思いつかんぞ! シンプルに伝えるしかないか……!
「……一途な女性は、ただそれだけで僕には魅力的に映る。……これだけじゃダメか?」
いや、自分で言っておきながらなんだが、これはないだろう。いくらなんでも中身がなさすぎる。
ここでふと、アークロイヤルがどうしようもない愚か者を見るような顔で僕を見ていることに気づいた。彼女のアイコンタクトの意味はこうだ。
『閣下は私が想像もつかないような、考えうる限り最大の悪手をとった』
僕がその意味を理解するよりも早く。
──耳まで顔を真っ赤に染めた赤城の声が僕の思考を遮った。
「あぁーっ!!! 困ります指揮官様!!あーっ!!! 困ります指揮官様!!
あーっ!! 困ります困ります!! あーっ!! 指揮官様ぁああああ!!」
赤城は逃げ出した。
「これは、一体……?」
テーブルには、訳も分からず呆然とする僕の姿だけが残され──
「指揮官、お前それは反則だろうがっ……!」
加賀が、床板をぶち抜いて姿を現した。
──溢れ出る鼻血を手のひらで押さえながら。
赤城がかわいいとき、加賀が面白い事をし始める因果。あると思います
なんなんだお前は。