この堅物どうやって落とす   作:へか帝

5 / 10
赤城はなぁーっ!!
自分だけを見てもらうためならどんな障害だって超えるけどなぁーっ!!
指揮官の意思を無視してまで思いを遂げようとはしないんやで(キャラスト参照)
ええ子や……

それよりもごめんな今回もこの有様なんだ。
加賀は一体どこに向かっているんだろう……


ほどほどにな

「ふぅ、危うく流れ弾で沈むところだった……。」

 

 すぐに血は止まったらしく、手拭いで身だしなみを整えてから加賀が這い出てきた。開けた穴のサイズからして、またしても尻尾がハマるのではと思ったが、床板の強度よりも強靭な尻尾が勝ったらしくメキメキと穴を広げ無事に脱出してきた。

 そのままふわりと九尾を寝かせて丸椅子に腰掛けた加賀は、口元に手のひらを翳し、僕に流し目を寄越しながら言った。

 

「同じ轍を踏む私ではない」

「まだ何も言ってないぞ」

 

 狐耳がぴこっと動いた。頭に乗っていた木屑がパラパラと音を立てて落ちる。

 順序無視してでも僕にそれを伝えたかったのかお前は。 

 

「しかしなあ、お前……。掘った墓穴は大きいぞ。覚悟しておくことだな」

 

 加賀が何事もなかったかのようにしれっと続きを始め出したぞ。なんというメンタルの強さだ。しかし墓穴? 特に自分の首を絞めるような行動をした覚えはないが。

 

「身に覚えがないな。赤城が墓石を聞いてきたのと関係あるのか?」

「貴様その調子だと食われるのがパンツだけじゃ済まされなくなるからな? 警告したぞ私は。それより、なあ、ほら。私に聞きたいことがあるんだろう? なんでも聞くがいい。嘘偽りなく答えてやる」

 

 警告も何もあれは赤城渾身のジョークじゃないのかあれは? 今まで積み上げてきた信頼を鑑みるに彼女がそんな凶行に走るだろうか。いやありえん。というか加賀はなんでこの面接にそんなに乗り気なんだ。いややる気があるに越したことは無いんだが、それが加賀だとどうにも不気味というか不安というか。

 

「そんなに身構えなくても、大層な質問はないぞ。早速だが、現在の環境に何か不満あるか?」

「恒例の質問だな? 存分に戦う場も用意されているし、姉さまもお前の気質の影響かいつも大人しくて気苦労も少ない。いや、姉さまについてはこれからに不安が残るが……まあおおむね満足している」

 

 恒例の質問……。そういえば何かと床下から出現する加賀だが、あれはひょっとしてずっと待機しているのか? いや、僕は勝手に明石あたりが重桜の居住区と繋げているものだと思い込んでいたが……。いや、そうなると前回天井裏からエントリーしてきたツェッペリンの説明がつかなくなる。だいたいどいつもこいつもなんで扉から入ってこないのか。

 まあ、いい。しかし赤城が本来より大人しいだのこれからに不安が残るだの、なんというか加賀

の語る赤城と僕の認識に乖離を感じるぞ。いや赤城が僕に見せない一面があるのも当然だし、僕はそれを無理に知ろうとも思わない。思わないが、いくらなんでもこう、未知ゆえの恐怖的なものが僕の中で生まれつつあることは否定できない。

 

「そうか? 赤城は普段から落ち着いていると思っているんだが」

「指揮官、それはついさっきまでの話だ。お前は姉さまのブレーキを破壊したおそれがある」

「ブレーキを破壊されると、どうなる?」

 

 加賀が神妙な顔で言った。

 

「こわれる」

 

 僕は聞いた。

 

「こわれると……どうなる?」

「私のよく知る姉さまになるだろうな」

「つまり?」

「私が指揮官の義妹になる日が一歩近づく」

「何を馬鹿な」

 

 加賀の言葉は僕と赤城が籍を入れることを意味する。だがそれはありえない話だ。具体的には高嶺の花の彼女と僕じゃあ釣り合わないとか上官と部下だからとか、まあ理由はいくらでも思いつく。そういった方面の理由だ。一応、彼女が由来の知れぬ兵器だからとかそういう理由ではない。加賀が珍しく深刻そうな表情だから何が飛び出すかと身構えていたが拍子抜けじゃないか。

 

「まあ、実際あの調子だと逆に遠のいたかもしれんが」

「あの調子……脱兎の如くだったな」

 

 あれほどまでに機敏に動く赤城は初めて見た。あまり言いたくないがエンタープライズの去り際に少し似ていた。いや、だからどうしたという話なんだが。

 

「それで、次の質問は何だ」

「ん、ああ。加賀は何か好きな装備はあるか」

「無論バラクーダだ。勝利にはあれを持っていくのが一番手っ取り早いからな。ところで指揮官よ、今私に与えられているバラクーダはtier2だな?」

 

 おっとこれは良くない流れだな? こういう時は相手にしないに限る。

「そうだな」

「バラクーダにはもう一段階上のtier3があるな?」

「そうだな」

「指揮官、私が何を言いたいかわかるな?」

「そうだな」

「つまり私と運命を共にしてくれるんだな?」

「そっ……ん?」

「チッ。いや間違った。私にバラクーダtier3を預けてくれるという話だったな」

「いや待て、そんな話はしてないぞ」

「む? 何? ヘルキャットtier3とデストロイヤーtier3も付けてくれるのか?」

「いやだから」

「油圧カタパルトtier3まで!? ふ、ふふふ。そうか、指揮官はそれほどまでに私を信頼し、期待しているということだな? いいだろう。最高の戦果をお前に持ち帰ってやる」

 

 いかん、三度の飯より戦闘大好きな加賀にすべきでない質問だったと気づいて適当にあしらって誤魔化そうとしたのが完全にあだになった。僕が同じ返答しかしないことを利用して要求がだんだんエスカレートしていく。このまま一方的に押し切られる僕だと思うなよ。

 

「あんまり馬鹿言ってると21型やコルセアに替えるからな。なに、渡りに船だ。在庫処分には困っていてな」

「いやあバラクーダはtier2でも一線級の素晴らしい装備だな指揮官! くっ、勢いで何とかなると思ったんだが」

 

 いっそ清々しいまでに加賀が手のひらを返した。そんなにバラクーダ以外が嫌か。というか勢いだけで僕が装備を明け渡すわけないだろうが。

 

「これでも装備の選別は慎重にやってるつもりなんだ」

「ところで今私が言った装備、誰が持っている? あるにはあるんだろう?」

 

 ここで加賀が脱力しつついかにも何気ない感じを装って確信を突く問いをぶつけてきた。そんな風に瞳を爛々と輝かせていれば誰だってそれが偽りの態度だとわかる。装備の持ち主をあまり言いたくはない、言いたくはないが嘘を吐くのは僕の主義に反する。……言おう。

 

「……全てエンタープライズが独占しているが」

「ずるい!」

 

 加賀がラウンドテーブルに両手を叩きつけ勢いよく立ち上がった。まあ、うん。こうなるだろうとは思った。

 

「ず、ずるいってお前、そんな子供みたいな……」

「ずるいぞ! 私もヘルキャットtier3で薙ぎ倒すように制空権を奪ってデストロイヤーとバラクーダtier3の圧倒的火力で敵艦を木っ端微塵に蹂躙したい!」

「駄々をこねたってダメだ! 無い袖は振れないからな!」

「だがグレイゴーストは持っているんだろう!? だいたいなんであいつが全部独占している! 納得のいく説明を要求する!」

「彼女の最大の強みである攻撃力を、更に引き伸ばすためだ!」

「じゃあ私にも分けろ! そうやって甘やかすからあんなお笑い謎空母になったんだぞ!」

「お笑い謎空母とか滅多なことを言うな! だいたいお前は今の装備で十分だろう!」

「ああーっ! ダメだ急に式神が飛ばせなくなったしまったぁー! これは何というか……その……そう! 金分類の装備を何か一つでも分けてもらわないと思い出せない! 私の願望で動く航載機がそういってるから間違いない!! あー! このままでは戦えないなあー! 困ったなあー!」

「何だそのお前に都合のいい航載機は!? やめろやめろのたうち回るな! お前の尻尾で埃が舞うだろうが!」

 

 バーの床に寝転がった加賀が転がり回ることで白銀の九尾が縦横無尽に節操なく振り回される。もはや手が付けられない。恥も外聞も完全にかなぐり捨てた全身全霊のおねだり。

 ──流石にこうなるとは思ってなかった。

 

「(チラッ)」

「そんなイノセントな目で見るな!」

「さきっちょだけ!さきっちょだけで我慢するから!」

 

 床に這いつくばった姿勢のままで加賀が僕のズボンにしがみ付いてきた。なんという執念深さだ……!

 

「ええい離せ! 装備にさきっちょもクソもあるか!」

「ほーしーいー!」

「ならんならん! 諦めろ!」

「私のこと好きにしてもいいから!」

「もっと自分を大切にしろォ!」

「貴様以外にこんなこと言うか! 私を受け入れるまで絶対にこの手を離さないからな私は!」

 

 抱え込むようによじ登ってきた。その鬼気迫る表情からは加賀の余裕なさが窺える。いや窺ってる場合じゃない。というか僕のズボンを握り込んだ手が内側に捻られており、その尋常ならざる力も相まって僕の脚は軋むように悲鳴を上げていた。豊満な胸が押し付けられている? それがどうした。僕は確信する。

 

──このままでは、折られる……!

 

「ね、寝言は寝て言え! だいたいそれじゃお前の大好きな戦闘に参加できないぞ!」

「(……すっ)」

 

 一瞬の逡巡の末、加賀が腕の力を緩めた。その表情は俯いたままで伺えない。僕の脚を締め付ける力は弱まったものの、依然としてその圧倒的握力は未だ健在。どっちだ……。

 

「助かった……のか?」

「指揮官」

「な、なんだ」

 

「私と一つになろう」

「アークロイヤルッ! 助けてくれぇーっ!」

 

 コールタールのようにねっとりと淀んだ瞳と目が合った時、僕は本格的な身の危険を感じた。どういう思考経路でその結論に至ってしまったのか想像もつかないが、多分戦闘に赴くことと、この固く握られた手を離さないことを両立しようとしたが故にバグってしまったとかそういうんだろうな。

 いや冷静に分析している場合ではない! こうしているうちにも、加賀は僕を椅子から引きずり落とそうとしてくる。底なし沼に生者を引きずり込む亡者の如く。きっと最終的にはあの加賀が現れた床穴にお持ち帰りされてしまうのだろう。

 だが大丈夫だ! こういう時の為にアークロイヤルを呼んである、頼んだぞ!

 

 

 

『駆逐艦の子たちが委託から帰って来る時間なので、お先に。』

 

 

 僕はここまでのようだ

 

 




完全に加賀が私のコントロールを離れた。一番最初に目からハイライト消えるのがお前だったなんて。

ていうかいまいち加賀のキャラが掴めずにいたんですが赤城と指揮官の仲を応援しているけど絶対さも当然のように一緒に着いていく気だし赤城も加賀が相手なら快く迎えるだろうしそもそも恋愛感情うんぬんとは別に指揮官に構ってほしい一心からインパクトのある登場で自分を指揮官に印象付けたいという下心があったりなかったりしてだいたい指揮官と二人きりの時に自分の哲学を熱心に言い聞かせてる時点であれだし誰に理解されなくともいいと思っている自分の思想が同意こそされなくとも尊重と容認してくれる指揮官に加賀なりに思うところがあるに決まってるわけで加賀としては中身のない同調じゃなくて真っ向から向き合ってくれちゃったりなんかしたら好感度うなぎ上りに決まってるからなお前なそんなことしてるから赤城よりもずっと早くブレーキこわれちゃうんだよまったくもうでもブレーキがないからといってここでアクセルを緩めるような女に一航戦の片割れは務まらない具体的には全力ではっちゃけつつも常に指揮官にいいところを見せようとつい頑張っちゃうしそれでいて指揮官には飾らない自分をさらけ出したくもあるという何だお前は乙女か乙女だったのか純愛じゃんかよ泣かせるじゃないかやめろよ突然もうでも加賀お前はきっと指揮官と結ばれるのがだれであろうと新居の押し入れあたりに自分の城築いてごく自然と家族の仲間入り果たしそうだよなそれで結構馬鹿にならない収入とか指揮官夫婦に収めてこう追い出しにくい環境を作りつつ生まれたやがて生まれた第一子かなんかが育った暁には初恋とかさせちゃうくせして加賀本人はやっぱり指揮官一筋なところあるから当然振るしでも告白されたままの勢いで既婚の指揮官にプロポーズ突撃とかするよねきっとねでも指揮官はそこで靡くような半端な男じゃないしここで揺れるようだったら一番失望するのはきっと加賀だしこの一件からなお更に吹っ切れて日々老いていく指揮官を風が凪ぐように静かに笑顔で眺めて寿命まで見送るだろうしもっといえば指揮官の家系にずーっと仕え続けるまであるそれでそれで彼が逝ってから夜な夜なこっそり抱き着いた指揮官の温もり思い出してしんみりしたり降りしきる雨の中で冷えた唇で小さく声を漏らして瞳のしずくが震えてそれであれから幾千の夜を数えただろうとか思い出したりしてで最期には指揮官の墓前でこの身消えても想いはここにって言って見果てぬ夢を追うんだきっと……。


(´・ω・`)<尊い

(´・ω:;.:… サラサラ... .. .
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。